人口減少の日本で新築マンションが増えている理由は?人口・世帯数などから検証

不動産市場において、人口減少は住宅に住みたい人が減ることを意味するため、不動産価格の下落や物件の減少要因となりえます。

しかし、日本では近年、少子高齢化を背景に人口減少が始まっているにもかかわらず、新築マンションは増加傾向にあり、上記のセオリーとは異なる状況にあると言えるでしょう。

そこで、この記事では世帯数や転入者数、マンション価格の推移などもみながら、日本で新築マンションが増えている理由について検証していきます。

目次

  1. マンションの供給状況と人口の推移
  2. 日本でマンションが増加傾向にある3つの理由
    2-1.世帯数はまだ増加傾向にある
    2-2.都市部の流入数の増加
    2-3.価格が堅調なのでマンション建設を進めやすい
  3. 区分マンション投資を検討するうえでのポイント
    3-1.首都圏の区分マンション投資は相対的にリスクが低い
    3-2.大都市圏は利便性の高さに注目して物件を選別
    3-3.地方物件は相対的にリスクが高い
    3-4.物件タイプはワンルームの方が低リスクな傾向
  4. まとめ

1 マンションの供給状況と人口の推移

2000年~2020年までの20年間における日本国内のマンションと人口の傾向を確認してみましょう。以下は国土交通省が発表している、マンションのストック数(全国で居住可能なマンションの総戸数)と総務省が発表している人口推移を重ねたものです。

マンションのストック戸数と日本の人口の推移

マンションのストック戸数と日本の人口の推移
*左軸:万人、右軸:万戸
出所:国土交通省「マンションに関する統計・データ等『分譲マンションストック戸数(2021年末現在/2022年6月28日更新)』
総務省「第2章 人口・世帯『2- 1 人口の推移と将来人口』

このように、日本の人口は減少が始まっているにもかかわらず、日本のマンションの総戸数が増え続けています。国土交通省では、新築マンションの供給戸数も公表していますが、近年は毎年10万戸前後の供給が見られます。

新築マンションの年間供給戸数の推移

新築マンションの供給戸数の推移
出所:国土交通省「マンションに関する統計・データ等『分譲マンションストック戸数(2021年末現在/2022年6月28日更新)』

マンションは住みたい人がいなければ販売や賃貸が進みません。そのため需給バランスから考えると、人口減少によりマンション需要が減退すれば、それに対応するためにマンションの戸数も減っていくのでは、とイメージしがちです。しかし、現実の日本のマンション市場は、これとは異なるトレンドを示しています。

2 日本でマンションが増加傾向にある3つの理由

日本で人口が減少しているにもかかわらず、マンションの総戸数が増加している背景には、世帯数や都市部の転入者数の増加、そしてマンション価格の堅調な推移があります。ここからはマンションの供給を下支えしている3つの要因についてみていきましょう。

2-1 世帯数はまだ増加傾向にある

総務省は人口データの他に、世帯数のデータも出しています。実は、人口のトレンドに反して、世帯数は現在もまだ増加傾向にあるのです。

世帯数と1世帯あたりの平均人員の推移

世帯数と1世帯あたりの平均人員の推移

出所:総務省「第2章 人口・世帯『 2-12 都道府県,世帯人員別一般世帯数と世帯の種類別世帯人員(エクセル:17KB)』

人口が減りながらも世帯数が増えているということは、1世帯あたりの平均人数は低下傾向に。次のような要因が世帯人数の減少に寄与します。

  • 核家族化
  • 兄弟数の減少
  • 独身世帯の増加

特に近年は晩婚化・未婚率の上昇により「ひとり世帯」を増えていることが背景にあります。マンションはほとんどの場合、1区画に対して一つの世帯が居住します。そのため人口が減っていても世帯数が増えれば、戸数で見たときのマンション需要の増加要因となるのです。

なお、単身や二人世帯が多くなると、ワンルームや1LDKなど小さめのサイズの需要が増えやすくなります。一方で、3LDK以上のファミリーサイズの物件は、需要が減少するリスクが相対的に高くなるでしょう。

2-2 都市部の流入数の増加

都市部、特に首都圏は転入超過の傾向が長年続いています。コロナ禍で密を避ける意識の高まりから東京でも転出超過となる月がありましたが、年単位で見ると転入超過を維持しているなど、コロナを背景とした都市部からの人口流出は一時的なものに留まる見込みです。

3大都市圏の転入超過数の推移

3大都市圏の転入超過数の推移
出所:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果

マンションは人口密集地帯の方が盛んに建てられる傾向にあります。垂直に建物のをのばせば一つの建物で多くの人が居住できることから、限られたスペースでもより多くの人の居住地を提供できるからです。

そのため首都圏をはじめとした都市部の転入が進むうちは、彼らが住むためのマンションが供給されます。なお、都市間の転入・転出は特に若い世代に多い傾向にあります。

東京の転入超過数の年齢別内訳(2019年1月~2021年9月)

東京の転入超過数の年齢別内訳(2019年1月~2021年9月)
出所:総務省統計局「年齢階級別にみた東京都の転⼊超過の状況〜住⺠基本台帳⼈⼝移動報告の結果から〜

大学進学や新社会人になるのを機に転居するケースや、独身者が転勤するケースが多いことが背景にあります。結婚・子育てのライフステージに入ると、相対的に都市間を跨ぐような大きな転居は減少する傾向にあるのです。

学生や若い社会人は独身世帯が相対的に多いため、やはりワンルームなどのサイズの小さい物件の需要が高まりやすいといえるでしょう。

2-3 価格が堅調なのでマンション建設を進めやすい

マンション価格の推移を見ると、次の図の通り、他の物件タイプと比較して堅調に推移しています。不動産価格指数全体も緩やかな右肩上がりになっていますが、その主因は区分所有のマンションにあるといえるでしょう。

不動産価格指数の推移

不動産価格指数の推移
*2010年の平均価格=100として指数化したもの。本データの区分所有は「区分マンション投資目的の所有」のみを意味しているわけではなく、投資目的の区分所有、居住目的の分譲の双方を含んでいます
出所:国土交通省「不動産価格指数

都市部でサイズが小さめのマンションを中心に、人口減少にもかかわらず底堅い需要があることが、価格を下支えしています。さらに、近年はサラリーマンによる区分マンション投資をおこなう人が増えています。投資目的でマンションを区分所有するニーズが増えていることも、価格の押し上げ要因となっていると推測されます。

価格が堅調に推移していれば、マンション建設により充分な売上が発生すると期待できるため、不動産業者及び建築業者は積極的にマンション建設を手掛けるようになります。堅調な価格推移もまた、マンション供給を後押ししているのです。

3 区分マンション投資を検討するうえでのポイント

ここまで紹介したマンションの価格動向や供給動向を踏まえて、続いては区分マンション投資を検討するうえでのポイントを紹介していきます。

堅調な需要が継続する見込みであることを踏まえると、区分マンション投資自体は有効な選択肢の一つとなり得ます。一方で、物件の形態や立地、取得価格、管理面など、個別に判断しなければならないポイントがあるため、注意が必要です。

3-1 首都圏の区分マンション投資は相対的にリスクが低い

首都圏については、足元のみならず、当面の間若年層を中心に転入超過の状況が継続する見込みです。首都圏には大学・企業とも多数立地しているため、年々学生や新社会人が流入するため、少子高齢化・人口減少の影響を受けにくいと想定されています。

特に、若い独身層をターゲットとしたワンルームマンションの需要が低迷するとは考えにくいため、首都圏の区分マンション投資は相対的にリスクの低い投資先といえるでしょう。

ただし、リスクが低い=魅力的とは限りません。損失が発生するリスクが低ければ、少々割高でも購入したいと考える投資家が増える可能性があります。結果的に家賃収入の割に価格が高く、高い収益が期待できない状態になっている物件も少なくありません。

3-2 大都市圏は利便性の高さに注目して物件を選別

首都圏に次ぐ人口密集地帯である大阪・名古屋についても、区分マンション投資の検討余地は充分にありますが、都市圏全体ではわずかな転出超過が続いています。そのため、転出超過のなかでも需要が期待できる魅力的な物件をしっかり選んでいくことが大切です。

大都市圏のワンルームマンションに住む人には、都心部の学校や企業に通う人が多いといえます。したがって、次の二つを満たす物件は入居者がつきやすく、相対的にリスクが低いといえるでしょう。

  • 駅に近い(徒歩10分以内が理想)
  • 最寄駅がターミナル駅へのアクセスが良い(直通が理想)

都市部では公共交通機関を日常的に使用する人が多いため、駅までの距離は重要です。入居者の利便性だけでなく、投資リスクを低減させるうえでは駅から近いに越したことはありませんが、近いとその分価格も高くなる傾向があります。徒歩10分圏内、遠くても15分以内くらいで探すのがよいでしょう。

また、大阪・名古屋クラスなら、ターミナル駅へのアクセスの良さも重要な要素になります。大阪であれば大阪駅・新大阪駅、名古屋であれば名古屋駅に乗り換えなし、短時間の乗車でアクセスできる駅を最寄り駅とする物件は、都市全体でみれば流出超過になっても、長期に渡り底堅い需要が期待できます。

3-3 地方物件は相対的にリスクが高い

三大都市圏以外の地方のマンションについては相対的にリスクが高いといえます。ここまでまとめた通り、ワンルームマンションの市場動向を考えるうえでは、若年層の流入が重要な要素になるためです。

都市によって濃淡はありますが、全体の傾向としては都市の規模が小さくなればなるほど、若年層の将来の流出リスクは高まります。

中にはすでに人口流出が加速している都市も少なくありません。リスクが高いからこそ、割安な物件を見つけ、相対的に高い収益を上げるチャンスがあるため、リスクが高いことが直ちに悪いと決められる訳ではありません。

しかしながら、リスクを抑えた投資を念頭に区分マンション投資を検討している人にとって、地方物件はややハードルの高い投資対象と考えることができます。入居者のターゲット層や家賃相場などを精査する必要があり、専門的な知識や経験が重要になってきます。

3-4 物件タイプはワンルームの方が低リスク

日本全体としては人口減少が続く一方で、独身や夫婦のみの世帯が増えているということは、裏を返すと子供ありの家族世帯は急速に減少しているという計算になります。この傾向は、少なくとも当面は反転が見込めません。

従って、いくらマンションの供給が増えているといっても、ファミリータイプの物件の需要は今後も減退するリスクが相対的に高いといえます。ファミリー層は独身層と比較すると、賃貸ではなくマンションを購入して住む人も多いため、ファミリー向け賃貸物件はもともと需要が限られているという実情もあります。

以上を踏まえると、リスクを抑えた投資を希望する人はワンルームの区分マンションから検討されてみると良いでしょう。逆にリスクを取って割安な物件を仕入れ、一区画でまとまった賃貸収入の獲得を目指す人は、あえてファミリー向けを狙うのも選択肢の一つです。

4 まとめ

日本全体の人口動態だけ見ると、マンションの供給が継続していることに矛盾を感じる人も少なくありません。

しかし、世帯数や都市部への転入数、マンション価格などをみると、大都市のワンルームマンションを中心に、当面は底堅い需要があることを背景に、供給が継続している実情がわかります。

不動産投資の手法として区分マンション投資を検討している人は、自分が許容できるリスクの高さも踏まえて、不動産価格と将来想定される人口動態も念頭に、自分に合った投資物件を選別しましょう。

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伊藤 圭佑

伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。