それぞれのマンションには、区分所有法に基づいて管理組合が組織されます。しかし、マンション投資を行う場合は自らが居住していないという状況からも、管理組合の役割が見えにくいオーナーも多いようです。
そこで今回のコラムでは、投資用マンションにおける管理組合の役割について解説していきます。また、理事会方式と第三者管理方式のメリットとデメリットも紹介していきます。
目次
- マンション管理における管理組合とは
1-1.管理組合を設置する目的と役割
1-2.管理組合の具体的な業務
1-3.管理組合を設置するメリット
1-4.管理組合の組織 - 投資用マンションにおける理事会管理方式のメリットとデメリット
2-1.理事会方式の特徴
2-2.理事会方式のメリット
2-3.理事会方式のデメリット - 投資用マンションにおける第三者管理方式のメリットとデメリット
3-1.第三者管理方式の特徴
3-2.第三者管理方式のメリット
3-3.第三者管理方式のデメリット - まとめ
1 マンション管理における管理組合とは
管理組合の設置は、1962年に制定された「建物の区分所有等に関する法律(通称:区分所有法)」によって定められています。マンションを管理するために、法律上定められた組織である管理組合にはどのような役割があるのか、見ていきましょう。
1-1 管理組合を設置する目的と役割
一戸建て住宅とは異なり、マンションは多くの人が一つの建物内で生活することになります。各住戸はそれぞれの所有者が所有しますが、マンション自体は区分所有者全員の共有財産になるというのがマンションの原則です。そこで問題になるのが、どのようにマンションの管理を行うのか、区分所有者全員の意見をまとめる必要があることです。そこで設置されるのが、管理組合なのです。
管理組合を設置する目的は、共通財産であるマンションの管理方針を区分所有者が共有することです。マンションには区分所有者の専有部分である住戸と、すべての区分所有者の共通財産である共有部分に大きく分けることができます。この共有部分は、主に下記になります。
- 共用廊下
- エレベーター
- 非常階段
- エントランス
- 給排水や電気やガス配管などの設備
- 集会室
- 駐輪・駐車場
- ゴミ置場などの附属施設
- そのほか敷地内のすべてのもの
これらの共有部分の維持管理を行うことで、住人が快適に暮らせるようになります。そのため組合員による総会などを開催し、マンションの管理について意見をまとめ、それを実行していくのが管理組合の大きな役割になります。
1-2 管理組合の具体的な業務
マンションの管理組合が行う業務は、国土交通省が提示している「標準管理規約(単棟型)」には、下記のように記載されています。
- 敷地および共有部分の保安、保全、保守、清掃、消毒など
- 敷地および共有部分の修繕
- 長期修繕計画の作成など
- 建て替えに関わる合意形成に必要となる調査
- 共用部分の火災保険などに関する業務
- 修繕積立金の運用
- 官公署、町内会等との障害業務
- 防災に関する業務
- 風紀や秩序に関する業務
- 広報および連絡業務
- 居住者間のコミュニティ形成
- 組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な業務、など
このように管理組合が担う業務は多岐にわたっており、中には専門的な知識が伴う業務もあります。以前は管理組合自体が自主管理を行っているケースが多く見られましたが、現在では管理業務の一部または全部を管理会社に委託するケースも増えています。
1-3 管理組合を設置するメリット
管理組合が設置されていることで得られる代表的なメリットは、下記の3つです。
- 快適な住環境が整備される
- マンションの資産価値が維持される
- トラブルの発生が抑制される
居住用でも投資用でも、マンションにはさまざまな人が入居しています。そのためルールを設ける必要がありますが、管理組合ではそうしたルールづくりを主導し、またトラブルに発展しないように調整役、仲介役を担うこともできます。そのため快適な住環境を維持することができるのです。
特に投資用マンションの場合は、トラブルの有無を含めて適切な住環境が整備されていることが入居者を確保するための条件の一つになります。そのため住環境を適切に整備する管理組合の存在は欠かせないと言えます。
また、マンションは区分所有者の共有財産ですから、その財産を守っていく必要もあります。管理組合が適切に運営されていれば、マンションの将来性を見据えて維持・管理した上に、修繕や改修なども計画的に進めることができます。
投資用マンションの場合はオーナーが長期間にわたって居住するのではなく、いずれ売却するケースもあります。資産価値が守られていれば物件価格は下落しにくく、また管理体制が良好ということで買い手もつきやすくなるといったメリットもあるのです。
1-4 管理組合の組織
管理組合を構成するのは、マンション内の住戸を所有している区分所有者です。本人の希望に関わらず、すべての区分所有者が管理組合の組合員になるのが区分所有法で定められています。投資用マンションの場合、オーナーは別の地域に住んでいるケースがほとんどですが、組合員となることに変わりありません。
管理組合には多くの組合員が在籍するため、意見の調整役が必要です。そこで必要となるのが、役員で構成される理事会です。役員の人数はマンションの規模などによって異なりますが、概ね、理事長、副理事長、会計担当理事、監事、理事などを選出して、理事会を運営していくことになります。
理事会では、管理費や修繕積立金の使い道、管理規約の変更などマンションの運営を円滑に進めるための話し合いを行い、総会での議題について決定します。その内容を組合員が全員参加する総会に報告し、意見交換を行うという流れになります。
投資用マンションでは、区分所有者が管理組合の総会に出席できないケースが多くあります。オーナーなどへの連絡や、総会での決議事項の取りまとめなども理事会が行うことになります。
また、投資用マンションで理事会を組織することが難しい場合に、導入されているのが第三者管理方式です。次の項目から、理事会方式と第三者管理方式のそれぞれについて、メリットとデメリットを紹介していきましょう。
2 投資用マンションにおける理事会方式のメリットとデメリット
管理組合の牽引役として理事会を設けるのが理事会方式です。具体的な特徴や、メリットとデメリットについて解説してきます。
2-1 理事会方式の特徴
前述したように、マンションでは区分所有者が組合員となり、管理組合を構成します。しかし組合員全員で話し合うには意見がまとまりにくいことから、意見を取りまとめる役割を担う代表を据えることになります。これが理事会です。
理事会には、理事、副理事、監事などの役職があり、それらの代表者が主導して、マンションの管理を担当するのが理事会方式です。自主管理ではなく、管理会社に管理業務を委託しているケースでは、管理組合の代表として管理会社との交渉などを行うことになります。
2-2 理事会方式のメリット
理事会方式のメリットは大きく2つあります。一つは自分たちが所有しているマンションの方向性を、自分たちで決めることができるという点です。管理組合の理事長は区分所有法上の管理者となり、区分所有者の代表として管理を実行する役割を担うことになります。
管理会社に管理を委託する、管理会社を選ぶ、修繕工事をいつ行う、修繕工事の施工会社を選ぶといった業務も含みます。そのため、理事会および組合員の意見が反映されやすいのです。
また投資用マンションの入居者は居住スペースだけではなく、エントランスやエレベーター、廊下などの共有スペースの清潔さや使い勝手なども物件を選ぶ際にチェックします。そのため適切な管理が行われていないと、所有する住戸の入居率が下がる可能性があります。
区分所有者であっても、マンション管理の維持・向上のために関心を持つことが必要です。理事会方式では理事会が主導し、管理組合が密接に関わることになります。そのため区分所有者に、建物自体も所有しているという意識が強くなると考えられます。この点もメリットと言えます。
2-3 理事会方式のデメリット
一方、理事会方式の大きなデメリットは、区分所有者の負担が大きくなることです。理事長などの役職は立候補制にしているケースも多くみられますが、なり手がいないマンションの管理組合では1年や2年任期での持ち回り制になっていることもあります。
本業を持っている方は、賃貸物件のオーナーの他に理事会の業務も増えてしまうことになります。また会計業務や交渉ごとなどが苦手な人にしてみると、理事会の業務に対して不安を感じるケースもあります。そのため適切な管理が行われなかったり、管理会社に丸投げしてしまうといった事態に陥ることもあります。
3 投資用マンションにおける第三者管理方式のメリットとデメリット
第三者管理方式とは、理事会ではなく、第三者が管理組合を主導していく管理方式です。具体的な特徴や、メリットとデメリットについて解説してきます。
3-1 第三者管理方式の特徴
第三者管理方式とは、管理会社の社員やマンション管理士などの管理の専門家が管理組合の運営を担当する方式です。このような第三者が理事長(管理者)や役員に就任して、理事会の業務を主導していくことになります。
管理者となるのは管理会社の社員のなど、主に下記のような専門家です。
- 管理会社の社員
- マンション管理士
- 弁護士
- 税理士
- 司法書士
- 建築士、など
第三者管理方式は、組合員がマンション管理に携わるケースが少ないリゾートマンションや投資用マンションの管理手法として広く浸透されています。ただし近年は、組合員の高齢化や夫婦共働き世帯の増加などで、居住用の分譲マンションでも導入されるケースが増えています。管理者のなり手不足が兼ねてから懸念されており、理事会が機能していないといったマンションも数多く存在しているからです。
国土交通省では、2011年にマンションの標準管理規約を改正し、理事長の資格要件として設けられていた「現に居住する区分所有者に限定」という項目を削除しています。時代に即したものですが、こうしたことも第三者管理方式が広く浸透するきっかけになっています。
3-2 第三者管理方式のメリット
第三者管理方式を導入するメリットは、次の3つあります。
- 区分所有者の負担が減る
- レベルの高い管理ができる
- 意思決定が迅速になる、など
前述したように、理事会の役員はなり手がおらず、特に投資用マンションでは渋々引き受けるといったケースも少なくありません。理事会の業務量が多い上に、マンション管理の責任も担うため、心理的な負担も大きくなるからです。
第三者管理では、マンション管理の専門家が管理組合の牽引役を担うことで、組合員の負担は大きく減少します。また管理者は専門的な知識を持っているため、管理業務のレベルが高くなることも期待できるでしょう。専門家の判断を参考にできるため、管理組合の意思決定がスムーズになる可能性もあります。
3-3 第三者管理方式のデメリット
一方、第三者管理方式を導入するには、デメリットもあります。ここでは次の3つを取り上げ、それぞれ解説します。
- 管理者への報酬が発生するため管理費が増額される
- 区分所有者のマンション管理に対する意識が薄れる
- 管理者の意向が強く反映されてしまう、など
大きなデメリットとなるのは、管理者を担当する専門家への報酬が発生し、管理費の増額などによって対応する必要がある点です。投資用マンションのオーナーにしてみると、キャッシュフローの悪化につながることになります。
また専門家が主導するため任せっきりにしてしまい、マンション管理に対する関心が薄れてしまうことも懸念材料となります。
その他、管理者が管理会社の社員などの場合、利益を上げるために重要度の高くない工事を自社に発注するといったケースも考えられます。こうした事態が起きないように、管理組合が管理者を監視する体制を構築することも検討する必要があるのです。
まとめ
分譲マンションでは、区分所有者が管理組合の組合員になることが法律で定められています。理組合を主導するのは、大きく分けて、理事会方式と第三者方式の2つのパターンが考えられます。
投資用マンションを供給する不動産投資会社では、オーナーの負担を軽くするためにあらかじめ第三者管理方式を採用している物件もあります。投資先のマンションを選ぶ際は、このような管理組合の詳細についてまで確認し、投資検討されていくと良いでしょう。
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倉岡 明広
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