マンション投資では所在階によって経営が影響されることもあり、購入時には検討材料になります。特に、1階住戸は防犯や災害時の不安などのデメリットがありますが、投資用マンションを検討するうえで1階ならではのメリットもあります。
そこで今回のコラムでは、投資用物件として1階の住戸を購入するメリットとデメリットについて、解説していきます。
目次
- マンション投資で1階の物件を購入するメリット
1-1.物件価格が低く、安く購入できる
1-2.マンション1階部分への入居希望者は少なくない - マンション投資で投資1階の物件を購入するデメリット
2-1.入居者が確保できない可能性がある
2-2.売却時の査定価格が低くなる可能性がある - マンション投資で投資1階の物件を購入する際に注意したいリスク
3-1.空室リスク
3-2.災害リスク - まとめ
1 マンション投資で1階の物件を購入するメリット
投資用物件として1階の住戸を購入するメリットには、物件価格と空室リスク回避の2つあります。詳しく見ていきましょう。
1-1 物件価格が低く、安く購入できる
投資用マンションの価格は、土地や間取り、築年数、などの様々な条件を加味して売主により設定されることになりますが、特に重要視されるのはマンションの家賃です。
マンションの家賃については、階数が高いほど上昇する傾向にあり、同じ間取りでも高い収益性を持っていることがあります。つまり、1階部分であれば家賃が低くなるため、物件価格も低くなる傾向にあります。
また、新築マンションの販売価格はマンション販売会社で設定しますが、おおむね下記の4つの要素が物件価格に影響を与えます。
- 階数:眺望や日当たりなどが異なるため、通常は階数が高くなるほど価格が上がる。
- 方角:日当たりや風通しなどに関わるため、通常は南向き、東向き・西向き、北向きの順番で価格は下がる。
- 位置:角住戸は採光や風通しに優れること、隣家がない、数が少ないことなどで価格は高くなる。
- 特殊事情:階段やエレベーターに近い物件は価格が低く、専用庭付き物件などは価格が高くなる。
マンションの販売価格はこれらの要素を組み合わせて、各販売会社が決定します。通常、専有面積が同じで、方角が同じ場合、専用庭付きなどの特殊事情がなければ、1階の物件は価格が低くなります。
1-2 マンション1階部分への入居希望者は少なくない
次に物件購入後の入居者について考えてみましょう。低層階への入居を希望する人の具体的なニーズについて5つ挙げて、解説していきます。
エレベーターの乗り降りがない
1階の物件であれば、ゴミを出したり、郵便や新聞を受け取るなどの際にエレベーターに乗る必要がないため、待ち時間などの煩わしさがありません。
また、朝の忙しい時間帯にエレベーターが来ないという事態になると、通勤の電車に乗り遅れることもあります。その点、1階であればエレベーターの乗り降りがないため、時間が読みやすいという特徴があります。
最寄り駅から近いが家賃は安い
賃貸物件の場合、家賃の安さが優先順位の上位にくることが少なくありません。特に単身者の場合は、通勤時間のことを考えて、最寄り駅からできるだけ近い場所のマンションに住みたいという希望を持っているケースもあります。
つまり、最寄り駅から近い物件で、家賃が安いという条件で探しているケースでは、1階の住戸が選ばれることがあるのです。
下の階の住人への生活音を気にせずに暮らせる
戸建てとは異なり、マンションは集合住宅になっていて、隣人や上下階の住人との距離が近いという特徴があります。そのため騒音をはじめとしたトラブルが起きやすいのも事実です。
国土交通省が行った「平成30年マンション総合調査報告」によると、マンションにおける住民のトラブルの原因は生活音が1位で、2位が駐車や駐輪に関するマナーとなっています。
順位 | トラブルの内容 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 生活音 | 38.0% |
2位 | 違法駐車・違法駐輪 | 28.1% |
3位 | ペット飼育 | 18.1% |
4位 | 共用部分への私物の放置 | 15.1% |
5位 | バルコニーの使用方法 | 12.9% |
6位 | 専有部分のリフォーム | 4.3% |
※参照:国土交通省「平成30年マンション総合調査報告」
鉄筋コンクリート造のマンションですが、どんなに気をつけて生活していても下の階への騒音や振動は発生してしまうものです。しかし、1階の住戸であれば、少なくとも下の住人がいないことから生活音によるトラブルは限定的であることが推測されます。
専用庭やテラス付きを好む
マンション1階の大きなメリットと言えるのが、他の階にはない専用庭が付いている物件があるということです。ガーデニングが趣味の方や、戸建て感覚で子どもを庭で遊ばせたいというニーズを持っている方も少なくありません。
また専用庭があることで居住空間に緑を取り入れたい、開放的に暮らしたいといったニーズを満たせる可能性もあります。居住スペースが狭い場合でも、専用庭があることで圧迫感を感じずに暮らせるといったメリットもあります。こうした理由で、1階の住戸を希望する方もいます。
火災などがあった場合に避難しやすい
火災があった場合、一酸化炭素などの有毒ガスが含まれた煙を吸い込むと命に危険がおよぶことがあります。このような煙は熱せられることによって空気より軽くなるため、上昇することになります。つまり火災が起きた場合、発生階以上の階層に被害がおよぶ危険があるのです。
また、災害時は停電のリスクがあるため、エレベーターが使えなくなります。火災時の避難を考えて上層階への居住を敬遠する方もおり、こうした理由でも、1階の物件には賃貸需要があるのです。
2 マンション投資で1階の物件を購入するデメリット
反対に、1階の物件を購入するデメリットを見てみましょう。メリットと同じく、入居者確保に関するデメリットと価格に対するデメリットが考えられます。
2-1 入居者が確保できない可能性がある
メリットの項目で紹介したように、1階の物件への入居を希望する方がいる一方、1階を避けたいと思っている方もいます。いくつか理由がありますので、詳しく見ていきましょう。
セキュリティ面に不安がある
2階以上の物件に比べると、1階はセキュリティ面に不安があると感じている方が多いようです。窓やベランダから侵入されるケースが考えられるからです。特に女性の一人暮らしの場合は、1階の住戸を避ける傾向があります。
ただし、防犯対策を徹底して行うことで、こうした不安や懸念を軽減することはできます。例えば、下記のような対策方法があります。
- 防犯カメラを設置する
- 複数層の防犯ガラスを採用した窓にする
- 窓に面格子を設置する
- 鍵を二重にする、など
このような対策をすることで、セキュリティ面の安全性を確保することができます。区分マンション投資の場合は共有部分についてオーナー一人の意見では解決できないため、建物管理の管理会社や管理組合の取り組み状況について確認してみましょう。
住戸としての条件が良くないケースがある
1階住戸の大きなデメリットに、日当たりの悪さ、眺望の悪さ、風通しの悪さなどが挙げられます。住戸によって差はありますが、他の物件と並行して内見したとき、印象の悪さから入居が決まらないということも少なくありません。
人通りの多い道路に面していると、話し声が聞こえたり、人の目が気になったり、自動車の騒音が気になるといった理由で1階住戸を回避する場合もあります。ただし前述したように、単身のサラリーマンの方を対象にした物件であれば、このような悪条件でも気にされずに選ばれることがあります。
2-2 売却時の査定価格が低くなる可能性がある
新築時のマンションでは、1階の物件は販売価格が低い傾向があります。それに加え、日当たりの悪さ、眺望の悪さ、風通しの悪さがあると、住戸として売却時の査定価格は低くなる可能性があります。
つまり、1階の物件はどのようなタイミングで売却するといいかなど、出口戦略は慎重に行う必要があり、1階の物件のデメリットの1つになります。
3 マンション投資で1階の物件を購入する際に注意したいリスク
これまで、投資用物件として1階住戸を購入するメリットとデメリットについて解説してきました。1階の物件で最も注意したいのは空室ですが、それらを含めてリスク対策方法について紹介していきます。
3-1 空室リスク
1階の物件には空室になる可能性が高いケースと、低いケースが考えられることを前述しました。これは個々の物件で状況は異なるからです。そのため物件を購入する際には、空室リスクについて対策が可能かも慎重に検討しましょう。
また運営を開始してからも、入居者の動向を探り、空室対策をするようにしましょう。中でも重要なのがセキュリティ対策です。
防犯カメラの設置や窓の仕様変更などはマンションの管理規則に関わる可能性もあるため、1住戸のオーナーの意見だけでは対策できない可能性もあります。その場合は、窓の鍵に二重ロックを採用する、防犯フィルムを貼る、など室内からの防犯対策を強化することも検討されてみると良いでしょう。
そのほかの対策として、下記のようなことも考えられます。
対策の種類 | 対策の仕方 |
---|---|
騒音対策 | ・防音カーテンの事前設置 ・防音シートを貼る ・防音ボードの事前設置、など |
プライバシー対策 | ・レースカーテンの事前設置 ・目隠しフィルムを貼る、など |
湿気対策 | ・除湿乾燥機の事前設置 ・除湿機能付きエアコンの事前設置、など |
防カビ対策 | ・調湿効果のある壁紙の採用、など |
オーナーとしてこのような対策をしておくことで、空室リスクを軽減することができます。また空室リスク対策を講じておくことは、家賃下落リスクや資産価値下落リスクなども回避することにつながります。
3-2 災害リスク
1階住戸のリスク対策として、災害リスクにも注意しましょう。災害が起きた場合、1階は被害を受けやすいからです。
例えば、大雨や台風などによって洪水が発生すると、上階よりも1階の方が被害を受けやすくなります。万が一のときのことを考えて、災害保険には厚めに加入しておくなどの対策が必要です。
また、1階と上階では被害の発生の仕方が異なるため、地震時の対策についても考えておくことが大切です。
マンションでは上階になると揺れが大きくなるため、揺れによる被害は上階の方があります。ただし、マンションが倒壊するくらいに地震の規模が大きい場合は、1階が潰れるといったことも考えられます。
地震の起きやすいエリアの物件購入は慎重になることに加えて、1階の物件を購入する際はこのような災害に関する知識を持って備えておくことも重要です。それが資産価値を守ることにもつながります。
まとめ
投資用物件として、マンションの1階住戸を購入する際のメリットとデメリットについて解説しました。結論としてはメリットもデメリットもあり、物件によって、オーナーによって判断が別れるところでもあります。
デメリットやリスクは、対策をすることで被害を抑えられる可能性もあります。1階部分への投資を検討するのであれば、どのような部分がデメリットになるのか検証し、対策がしっかりできるかどうか慎重に判断することが大切です。
今回のコラムではセキュリティ対策やプライバシー対策、騒音対策などのアイデアをいくつか紹介しました。1階の物件を購入するかどうか検討する際に、ぜひお役立てください。
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倉岡 明広
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