不動産投資で宅建資格が必要になるケースは?取得のメリット・デメリットも

通常の不動産投資を行うにあたって、宅建資格(宅地建物取引士資格)は必要ありません。しかし、売却益を得ることを目的として売買を繰り返す場合、反復継続性があると見なされてしまい、宅地建物取引士資格が必要になるケースもあります。

本記事では、宅建資格の概要および不動産投資で宅建資格が必要になるケースについて解説したうえで、不動産投資家が宅建資格を取得するメリットについても触れていきます。

目次

  1. 宅地建物取引士資格とは
  2. 不動産投資で宅建資格が必要となるケースは
    2-1.反復継続性がある売却
    2-2.事業性が高い売買
  3. 不動産投資で宅建資格を取得するメリット
    3-1.不動産の法知識を物件選びに活用できる
    3-2.契約や重要事項説明書の内容を理解し精査、交渉に役立てることができる
    3-3.不動産投資ローンの融資審査において信用性が高く評価されることがある
    3-4.宅地建物取引業を開業するなど収入源の選択肢が増える
  4. 不動産投資で宅建資格を取得するデメリット・注意点
  5. まとめ

1.宅地建物取引士資格とは

宅地建物取引士とは、土地や建物などの不動産取引に関する実務や、法律上の専門知識を持ち、公正な不動産取引が行われるようにチェックする国家資格者です。

不動産業を開業する際は、必ず設置しなければならないとされており、宅地建物取引士には、有資格者しか行うことのできない独占業務があります。独占業務は下記の3点です。

  • 重要事項の説明
  • 重要事項説明書への記名・押印
  • 契約内容記載書面への記名・押印

重要事項の説明とは、不動産の売買や賃貸借において、買主や借主に契約締結前に、契約や物件に関連する詳細情報について説明することを言います。買主や借主にとって、取引に関連する主要な情報がこの重要事項の説明に含まれているといえ、不動産取引の肝となる業務をおこなう資格といえます。

2.不動産投資で宅建資格が必要となるケースは

宅地建物取引業法では、免許を受けていない者が宅地建物取引業を営むことを禁止しています。不動産投資でこの宅地建物取引業に該当するような行為をおこなう場合、宅建資格が必要になるといえるでしょう。

「宅地建物取引業」に該当する行為であるかどうかについては、取引の反復継続性や、取引の目的や態様、物件の取得経緯から事業性の高さなどによって判断されます。

2-1.反復継続性がある売却

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、「宅地建物取引業」に該当する行為の要素として、反復継続性がある取引を挙げています。短期間に購入や売却を繰り返している場合、取引の反復継続性があるとみなされる可能性が高いでしょう。

また、土地を区画分割して売却したりするような複数の者に販売することを想定して行われる行為は、反復継続性があるとみなされるといえます。

不動産投資では、賃料収入を目的として収益物件を保有する際、宅建資格は不要ですが、短期間で売買して売却益を得ていく場合には、宅建資格が必要であるといえます。

2-2.事業性が高い売買

「宅地建物取引業」に該当する行為であるかどうかは、反復継続性のみならず、物件の取得経緯、取引態様なども考慮して判断します。

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、「転売するために取得した物件の取引は事業性が高い」としています。また、「自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高い」としています。

このように、物件の取引経緯や取引態様の観点から、事業性が高いと判断されるような売買をおこなう不動産投資は、宅建資格が必要であるといえます。

3.不動産投資で宅建資格を取得するメリット

「宅地建物取引業」に該当する、売却益を得ることを目的とするような事業性の高い不動産投資は、宅建資格が必要といえます。

ただし、そのような不動産投資をおこなわない場合であっても、資格を取得するメリットは大いにあります。以下では、宅建資格を不動産投資に活用できるメリットについてみていきましょう。

3-1.不動産の法知識を物件選びに活用できる

宅地建物取引士資格試験では、宅建業法の内容のほか、土地及び建物についての各種法令上の制限や、民法や借地借家法の権利関係について問われます。

都市計画法や建築基準法などの法令上の制限では、都市計画制度によって定められた区域・地域に応じて異なる土地利用規制や、建築物の用途・大きさ・高さ規制などの知識を身に付けることができます。

こうした物件そのものに関連する法規制の知識を活用することで、購入を検討している収益物件の販売図面などから、どのような法規制があるのかを理解することができます。建築制限や土地利用規制から物件の価値を測り、物件選びに活用することができるでしょう。

民法や借地借家法の権利関係については、抵当権や借地権、賃借権の内容、売買契約や賃貸借契約の内容などの知識を身に付けることができます。こうした権利関係についての知識も、物件選びに活用できるでしょう。

3-2.契約や重要事項説明書の内容を理解し精査、交渉に役立てることができる

宅地建物取引士資格試験では、上述したように、物件に関連する法令上の制限、売買契約や賃貸借契約の内容などの知識を身に付けることができます。

そのため、収益物件の売買時や入居者の入退去時などに契約内容や重要事項説明書の内容を理解することができ、精査したうえで、買主や入居者などとの交渉に役立てることができるでしょう。

3-3.不動産投資ローンの融資審査において信用性が高く評価されることがある

宅地建物取引士の資格は、土地・建物について法令上の制限にかかる知識や、不動産の権利関係、契約関係の知識があることの証明になります。このような専門知識がある人は、不動産投資の、物件選びや契約、交渉などの局面で大きな失敗をしないであろうと考えられ、その人の信用性が増すことがあります。

たとえば、融資の際には、不動産投資の知識や実績が属性評価の対象となり、融資条件などの審査において良い評価を得られる可能性があります。

3-4.宅地建物取引業を開業するなど収入源の選択肢が増える

反復継続性や事業性が高い、売却益を得ることを主目的とするような不動産投資をおこなう際、宅建資格が必要である理由については前述した通りです。

宅建資格によって宅地建物取引業を開業することで、例えば自身が物件を売買する際に仲介手数料を支払う必要がなくなります。また、他の収益物件の仲介をして仲介手数料を得たり、あるいは、専門家としてライターやコンサルタント業務に従事したりするなど、様々な収入を得る選択肢が増えることにもつながります。

4.不動産投資で宅建資格を取得するデメリット・注意点

宅建資格を取得するには、宅建士試験を受けて合格し、資格を取得することが必要です。合格点は一律に固定されておらず、50点満点中34~38点が合格ラインの目安となっています。科目は下記の4つに分かれています。

  • 宅建業法:20問
  • 民法:14問
  • 法令上の制限:8問
  • 税・その他:8問

これらの科目を勉強して知識を獲得するには相応の時間を必要とします。また、例年の合格率は約15~18%を推移しており、長い勉強時間をかけたとして、必ずしも取得できる資格ではありません。(※参照:不動産適正取引推進機構「一般財団法人不動産適正取引推進機構」)

また、宅建資格の取得に必要な知識は不動産取引における法的な課題に対して役立てることが出来き、上述したようなメリットがありますが、投資的な観点について学べるものではありません。

本業が忙しく試験対策が難しい方や、不動産売買によって積極的に投資規模を拡大する予定の無い方にとっては、資格を取得する重要度が低いケースもあるため、注意しましょう。

まとめ

反復継続性や事業性が高い、売却益を得ることを主目的とするような不動産投資をおこなう際、宅地建物取引士資格が必要といえます。

そのような不動産投資をおこなわない場合であっても、宅地建物取引士資格は、不動産に関連する法知識を身に付けることができることから、物件選びや契約、交渉など様々な点で不動産投資に大いに役立つといえるでしょう。

一方、宅建資格を取得するには宅建士試験を受けて合格しなければならないため、相応の時間をかけて試験対策をする必要があります。あまり多くの手間をかけられない方は、信頼できる不動産投資会社をパートナーとして、不動産投資を進めていくことも検討されてみると良いでしょう。

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佐藤 永一郎

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。