年代別の老後資金の貯め方と運用方法をFPが解説。投資の注意点も

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老後資金といっても、20代・30代にとっては準備の必要性を感じないこともあるでしょう。しかし、公的年金だけでは不足する老後の生活費は、早くから時間をかけて準備すれば負担が少なくなります。また、老後を意識するようになる40代・50代には、資金準備が切実なものとなるでしょう。

この記事では、年代別の老後資金の貯め方を解説します。老後資金の形成のためのモデルケースを知りたい方、本当に老後資金を作ることが必要かどうか気になる方など、ご参考ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年2月28日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 老後資金はいくら準備すればいい?
    1-1.公的年金はいくらもらえる?
    1-2.老後の生活費はいくらかかる?
    1-3.年金からの不足分はいくら?
  2. 老後資金準備に適した資産運用とは?
    2-1.投資信託・ETF
    2-2.つみたてNISA
    2-3.iDeCo(個人型確定拠出年金)
    2-4.ロボアドバイザー
    2-5.不動産投資
  3. 年代別老後資金の運用方法
    3-1.20代の老後資金の運用方法・注意点
    3-2.30代の老後資金の運用方法・注意点
    3-3.40代の老後資金の運用方法・注意点
    3-4.50代の老後資金の運用方法・注意点
  4. まとめ

1.老後資金はいくら準備すればいい?

老後資金を貯めるには、「いつまでにいくら」という目標設定が欠かせません。

1-1.公的年金はいくらもらえる?

国民年金・厚生年金などの公的年金は、老後の資金の柱となるものです。今後は受給できる金額が減ると考えられますが、制度自体は維持されるでしょう。生きているかぎり受け取れる公的年金をベースに、不足分を自助努力で準備するのが基本です。

将来受け取れる年金の見込額は、ねんきん定期便・ねんきんネットで調べられます。ただし、50歳未満の人の見込額は「納めた年金保険料分の見込額」なので、あまり参考になりません。

ねんきんネットでは「今の報酬が60歳まで続いた場合」など、条件を変えた試算ができるので利用してみましょう。

1-2.老後の生活費はいくらかかる?

老後の生活費は個人のライフスタイルなどによってさまざまですが、参考までに総務省の家計調査報告(家計収支編)の2020年(令和2年)のデータを紹介します。夫婦世帯と単身世帯それぞれの1カ月あたりの消費支出は以下のとおりです。

  • 65歳以上の夫婦のみの無職世帯:22万4,390円
  • 65歳以上の単身無職世帯:13万3,146円

これらのデータや現在の生活費を参考に、老後の支出を大まかに見積もってみましょう。

なお、このデータで1カ月あたりの住居費は夫婦世帯1万4,518円、単身世帯1万2,392円と、大多数が持ち家であると推測されます。老後を賃貸住宅で生活する予定の人は、家賃分を想定した金額を設定しましょう。

1-3.年金からの不足分はいくら?

おおよその年金の受給額と老後の生活費がわかったら、不足分を計算します。ここでは、老後の年数は65歳から90歳までの25年とします。

公的年金で不足する金額 = (老後の生活費 - 年金受給額)× 12カ月 × 25年

たとえば、老後の生活費が毎月25万円で受け取る年金額が20万円であれば、公的年金で不足する金額は1,500万円となります。

公的年金で不足する金額は老後資金として最低限準備すべき金額であり、ゆとりある老後を考えるならプラスアルファが必要です。

2.老後資金準備に適した資産運用とは?

老後資金を安全第一だからとすべて預貯金で準備しても、お金はほとんど増えません。そのため、投資に比べて準備のための負担が大きくなります。たとえば、2,000万円を20年で準備する場合、年利0.1%で運用すると毎月の積立額は8万2,500円必要です。しかし、年利3.0%で運用できれば、6万800円ですみます。

必ずしも目標の利率で運用できるとはかぎりませんが、長期運用で平均すると目標とする利率に近づくことが期待できます。ここでは、そのような老後資金準備に適した資産運用の方法を紹介します。

2-1.投資信託・ETF

投資信託は、投資家から集めた資金を株式や債券で運用し、成果を還元する運用商品です。ETFは特定の指標(日経225など)に連動する成果を目指す投資信託の一種で、株式同様に市場で売買します。

投資信託は後述するつみたてNISA・iDeCo・ロボアドバイザーでも提供されており、長期投資に適しています。ETFもつみたてNISA・ロボアドバイザーで用いられる、ローコストな運用商品です。

2-2.つみたてNISA

つみたてNISAは少額投資非課税制度の一種で、積立に特化したものです。1年間に40万円までの非課税限度額の範囲で積み立てた投資信託からの運用益に、税金がかかりません。最長20年間非課税で積立ができるので、老後資金の運用に適しています。

また、つみたてNISAの運用商品は、金融庁が選んだ長期・積立・分散に適した投資信託・ETFです。元本保証ではありませんが、長期で運用すれば堅実な資産形成が期待できます。

2-3.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金の上乗せとなる私的な年金制度です。老後資金準備に特化した制度のため、資産の引き出しが60歳までできません。しかし、加入者は以下の3つの税制優遇が受けられます。

  1. 掛金は全額所得控除の対象
  2. 運用益に課税されない
  3. 受け取り時にも所得控除が受けられる

iDeCoの加入者は、金融機関ごとに提供される投資信託などの運用商品を自分で運用します。iDeCoの運用は60歳まででしたが、2022年5月からは65歳までに延長されます。国民年金の第1号被保険者は任意加入が条件になりますが、第2号被保険者であれば65歳まで掛金の運用を続けられるようになります。

2-4.ロボアドバイザー

ロボアドバイザーはAI(人工知能)を用いてユーザーに合った資産配分や運用商品のアドバイス、運用代行をする金融サービスです。ロボアドバイザーには運用の提案のみのアドバイス型と、実際の運用まで行う投資一任型があります。

人気サービスのWealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO+docomoなど、ロボアドバイザーの運用は主に最新のアルゴリズムに基づいた国際分散投資で、長期の資産形成に適しています。運用知識がまったくない人や、運用に時間をかけられない人にメリットのあるサービスです。

2-5.不動産投資

不動産投資はアパートやマンションなどの賃貸物件を取得し、第三者に貸し出して家賃収入を得る方法です。他の投資に比べて取り扱う金額は高額ですが、ローンが利用できればまとまった資金のない人でも取り組めます。

現役中に不動産を取得してローンを完済すれば、老後は家賃収入の多くを公的年金の上乗せとして活用できます。しかしローンを利用するには安定した収入などが必要であり、誰でも審査に通るわけではありません。

また、不動産投資にはさまざまなリスクがあり、知識がないままに取り組むのは危険です。必要な知識があってリスクコントロールができる人にとっては、比較的手堅い運用といえます。

3.年代別老後資金の運用方法

老後資金の準備はかけられる時間や金額によって、できる方法が異なります。ここでは、年代別に適した老後資金の運用方法と注意点を解説します。

3-1.20代の老後資金の運用方法・注意点

20代は独身の人も多く、自分のために多くのお金を使える時期です。

計画的な運用が大切

この時期にリスクのある運用に慣れ、資産形成の基礎を作ることは人生において大きなプラスになります。多少の値動きで一時的に損失を被っても、長期で運用すれば取り戻せる可能性も高くなります。

反面、収入が少なく、運用に回すお金が十分でない人も多いでしょう。限られた収入をどのように使っていくか計画を立て、老後資金準備に確保できる金額を決めることが大切です。生活に必要なお金や、使い道が決まっているお金を老後資金準備に回さないようにしましょう。

少額投資でリスクに慣れる

まずは比較的少額で始められるつみたてNISAや投資信託などから検討すると、リスクを抑えられます。また、老後資金準備としては税制メリットの高いiDeCoを利用し、できる範囲で積み立てるのもよいでしょう。

3-2.30代の老後資金の運用方法・注意点

30代になると結婚して家庭を持つ人が増えます。20代の頃よりも所得と支出が増え、資金計画が重要さを増してくる時期です。老後資金準備にも時間的な余裕があり、さまざまな選択肢が考えられます。

住宅資金・教育資金を優先する

家庭を持ち子どもが生まれると、住宅取得や教育資金の準備も並行していかなければなりません。そのため、収入をどのように振り分けるかのプラン作りがとても重要です。必然的に老後資金の優先順位は低くなりますが、可能なかぎり少額でも積立は続けるとよいでしょう。

老後資金準備はiDeCo・つみたてNISAを始めている人は継続しましょう。資金的な余裕のある人は、機を見てETFなどを購入するのも老後のために有効です。

30代は不動産投資の始め時

また、安定した収入のある人であれば、不動産投資も30代は始め時といえます。興味のある人は、まずは書籍やセミナーなどで知識を得るとよいでしょう。ただし、不動産投資ローンを利用する場合、住宅ローンの融資限度額などに影響するため、計画は慎重に行う必要があります。

3-3.40代の老後資金の運用方法・注意点

40代になると、老後が気になる人が増えてきます。この時期からの老後資金準備も、遅すぎるわけではありません。多くの選択肢から自分に合った運用を選べます。

老後資金準備の余力に個人差がある

ただし、子どものいる人の中には教育費がピークとなり、老後資金に回せるお金がわずかになるケースも考えられます。反対に独身の人は一生独身で過ごす場合も考慮し、老後資金準備の優先順位が高くなります。

40代からiDeCo・つみたてNISAを始める場合、運用期間がやや短くなるため、リスク許容度は低めになります。投資経験があまり無いならば、いきなりハイリスクな運用は避けた方が無難です。

40代で不動産投資を始めるなら

40代では老後資金を意識して、不動産投資を考える人も多くなるでしょう。資金力・信用力の面からも不動産投資が始めやすくなる傾向にあります。定年までにローンを完済できれば、退職時には家賃収入が年金の上乗せになります。

3-4.50代の老後資金の運用方法・注意点

50代は老後資金準備のラストスパートの時期です。子どもの教育も終わる人が増え、老後資金作りに集中できるようになります。

iDeCoの通算加入者等期間に注意

老後資金準備に専念できる人にはiDeCoは有力な選択肢となります。しかし、iDeCo の受け取りには10年以上の通算加入者等期間が必要です。通算加入者等期間が10年に満たない人は、60歳以降の受取期間が繰り下げになるので注意が必要です。

定年延長などで60歳以降もiDeCoに加入できる人であれば、50歳以降に始めてもよいでしょう。難しければ、つみたてNISAなども検討するとよいでしょう。

安定運用が望ましい

50代になると、実際に蓄積した資産を活用する時期が近くなります。資産を取り崩すときに大きく目減りするような事態は避けたいので、リスクが低めの堅実な運用が望ましいといえます。

まとめ

老後資金の準備は計画がとても大切です。大まかでかまいませんが、年代ごとのライフイベントとかかる支出を見積もり、老後のために回せるお金を決めましょう。また、早く始めるほど少ない負担でまとまった資産が作れます。この記事を参考に、できることから始めてはいかがでしょうか。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント