神奈川で不動産投資を始めるメリット・デメリットは?人口や家賃推移を検証

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横浜市や川崎市などの3つの政令指定都市を抱える神奈川県は、都道府県別で第2位の人口が居住しています。人口が多く賃貸需要も豊富なエリアと言えますが、不動産投資を始めるにはメリットだけではなく、デメリットやリスクにも注意が必要です。

そこで今回のコラムでは、人口推移や地価推移、家賃の相場などを検証し、メリットとデメリットを解説していきます。

目次

  1. 神奈川県の不動産投資に関する基本情報
    1-1.神奈川県の人口推移
    1-2.神奈川県の地価推移
  2. 神奈川県で不動産投資を始めるメリット
    2-1.犯罪率が低いなど住みやすい要素がある
    2-2.高所得者向けの物件運営も狙える
  3. 神奈川県で不動産投資を始めるデメリット
    3-1.傾斜地が多く、利用できる土地に制限がある
    3-2.物件価格は上昇しているが家賃は横ばい
  4. まとめ

1 神奈川県の不動産投資に関する基本情報

この項目では、神奈川県の人口推移と地価推移のデータを紹介します。

1-1 神奈川県の人口推移

不動産投資に重要な賃貸需要は、人口総数の増減と密接な関係があります。下記の表は、神奈川県の人口推移をまとめたものです。

集計日 人口総数
2003年10月1日 8,639,665人
2008年10月1日 8,910,256人
2013年10月1日 9,072,533人
2018年10月1日 9,179,835人
2019年10月1日 9,200,166人
2020年10月1日 9,237,337人
2021年10月1日 9,236,428人

※出典:神奈川県「神奈川県の人口と世帯」より抜粋。

首都圏では新型コロナの影響もあり人口減少傾向となっていますが、神奈川県においても2020年10月1日から2021年10月1日にかけて人口減少が見られます。さらに最新データである2022年3月1日時点の人口は9,219,037人となっており、2021年10月1日時点より17,391人の減少になっています。

1-2 神奈川県の地価推移

次に不動産投資をするために必要な土地の価格推移を見ていきます。下記は、神奈川県の住宅地の平均地価を表にしたものです。

集計年 住宅地の平均価格
2017年7月1日 176,200円
2018年7月1日 177,800円
2019年7月1日 179,500円
2020年7月1日 179,300円
2021年7月1日 180,600円

※出典:神奈川県「かながわ地価レポート」より抜粋

2020年は前年より下落しましたが、2021年は前年よりプラス1,300円となっており、上昇に転じています。

下記の表は、2022年3月24日に公表された最新の情報である神奈川県政策局の「地価公示の概要(令和4年地価公示)」から抜粋した2022年1月1日の調査時点での対前年変動率です。

市町村名 住宅地の地価の対前年変動率
県全体 0.2
横浜市 0.8
川崎市 0.6
相模原市 0.8
そのほか市 △0.4
町村 △0.8

2021年1月1日の対前年変動率は県全体でマイナス0.6、横浜市でマイナス0.2、川崎市で0.0となっていましたが、2022年1月1日の調査時点での対前年変動率は上昇傾向が見られています。

2 神奈川県で不動産投資を始めるメリット

人口推移と地価推移を確認したところで、神奈川県で不動産投資を始めるメリットを解説していきます。

2-1 犯罪率が低いなど住みやすい要素がある

神奈川県は首都圏の一都三県のうち、最も犯罪件数の少ない県です。下記の表は警察庁の「令和3年警察白書」から、刑法犯認知件数と刑法犯検挙率を抜粋したものです。

都道府県 刑法犯認知件数 刑法犯検挙率
東京都 82,764件 40.5%
埼玉県 44,485件 39.9%
千葉県 34,685件 36.5%
神奈川県 35,241件 49.6%

また、この刑法犯認知件数を人口総数で割って求めたのが、下記の刑法犯犯罪率です。

都道府県 100人当たりの刑法犯犯罪率
東京都 0.598
埼玉県 0.620
千葉県 0.549
神奈川県 0.383

人口に対して犯罪が発生する率が、一都三県の中で神奈川県が最も低くなっています。また検挙率は49.6%で、一都三県の中では最も高くなっています。

2-2 高所得者層の世帯割合が多い

下記の表は、総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」の「表42-3家族類型(8区分),世帯の年間収入階級(6区分),住宅の所有の関係(2区分)別普通世帯数-全国,都道府県,市区町村」から抜粋したものです。持ち家以外に住んでいる世帯の総数について、年間収入階級別に一都三県の実数と割合を示しています。

都道府県(世帯数) 300万円未満 300〜500万円未満 500〜700万円未満 700〜1000万円未満 1000〜1500万円未満 1500万円以上
東京都(3,362,900世帯) 1,230,400世帯(36.6%) 959,300世帯(28.5%) 409,600世帯(12.2%) 285,000世帯(8.5%) 131,900世帯(3.9%) 44,700世帯(1.3%)
神奈川県(1,503,700世帯) 543,600世帯(36.2%) 443,300世帯(29.5%) 214,200世帯(14.2%) 135,200世帯(9.0%) 48,600世帯(3.2%) 9,900世帯(0.6%)
埼玉県(948,400世帯) 366,700世帯(38.7%) 295,300世帯(31.1%) 127,400世帯(7.1%) 67,200世帯(7.0%) 21,400世帯(2.3%) 3,900世帯(0.4%)
千葉県(839,600世帯) 319,900世帯(38.1%) 259,800世帯(30.9%) 112,000世帯(13.3%) 65,100世帯(7.8%) 24,000世帯(2.9%) 4,600世帯(0.5%)

年収700万円以上の比率を見てみると、東京都が13.7%、神奈川県が12.8%、埼玉県が9.7%、千葉県が11.2%となっており、神奈川県では年収700万円以上の12.8%が持ち家以外の住宅に住んでいることが分かります。

特に神奈川県の2大都市である横浜市では14.5%、川崎市では15.1%となっており、持ち家以外に住んでいる所得水準の高い世帯が東京都全体よりも多いことが分かります。

さらに細かく見ていくと、横浜市都筑区が33.1%、川崎市中原区が20.3%、横浜市青葉区が20.1%、横浜市港北区が17.8%などとなっています。つまり、これらの地域では単身向け賃貸用物件に加えて、高所得者向けのファミリー物件の供給も選択肢の一つになると考えられます。

3 神奈川県で不動産投資を始めるデメリット

一方、神奈川県で不動産投資を始めるには注意しておきたいデメリットもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1 傾斜地が多く、利用できる土地に制限がある

内閣府に所管されていた一般財団法人日本開発構想研究所の研究によると、日本国内の都市のうち最も斜面が多いのが横浜市となっています。

傾斜度別に人口集中地区(DID)の面積を計測し、傾斜度15度以上の人口集中地区(DID)が多い上位10都市をまとめたのが下記の表です。

順位 都市 傾斜度15度以上のDID面積
1位 横浜市 4,734ha
2位 長崎市 2,301ha
3位 広島市 2,061ha
4位 神戸市 1,997ha
5位 北九州市 1,958ha
6位 横須賀市 1,904ha
7位 鹿児島市 1,476ha
8位 佐世保市 1,327ha
9位 川崎市 1,125ha
10位 仙台市 971ha

※出典:一般財団法人日本開発構想研究所「日本の斜面都市」より抜粋

上位10位以内に、横浜市と横須賀市、川崎市の3つの都市が入っています。さらに12位には鎌倉市も入っており、神奈川県内の主要都市は斜面が多いことが分かります。

また傾斜度15%以上の面積割合では、下記の神奈川県内の市町が上位20位以内に入っています。

順位 都市 傾斜度15度以上のDID面積割合
1位 真鶴町 65.2%
4位 葉山町 45.1%
6位 逗子市 43.6%
9位 津久井町 42.2%
15位 横須賀市 33.0%
16位 湯河原町 32.7%
17位 鎌倉市 32.6%

※出典:同上

上位20位以内に7つの市町が入っており、長崎県や静岡県(3つ)の倍以上となっています。

このように神奈川県内には斜面の多い土地が広がっているため、不動産投資に適した土地や物件には一定の制限がある可能性があります。また、中古物件を購入する際、建築当初は問題となっていなかった欠陥が顕在化していることもあるため特に注意が必要です。

3-2 物件価格は上昇しているが家賃は横ばい

下記の表は、2008年、2013年、2018年の「住宅・土地統計調査」から一都三県の「1カ月当たり家賃・間代」を抜粋し、前回調査からの増減率を記したものです。

都道府県 2008年 2013年(増減率) 2018年(増減率)
全国 53,565円 54,052円(100.9%) 55,695円(103.0%)
神奈川県 68,009円 67,907円(99.8%) 68,100円(100.2%)
埼玉県 59,187円 58,675円(99.1%) 59,358円(101.1%)
千葉県 57,883円 56,855円(98.2%) 57,421円(101.0%)
東京都 76,648円 77,174円(100.7%) 81,001円(105.0%)

※出典:総務省統計局「平成20年住宅・土地統計調査」「平成25年住宅・土地統計調査」「平成30年住宅・土地統計調査」より抜粋

神奈川県の家賃水準は、2008年から2018年にかけて1.001倍の上昇をしていますが、「1畳当たりの家賃・間代(1カ月)」を見ると家賃下落の兆候も見えます。下記は、2008年、2013年、2018年の「1畳当たりの家賃・間代(1カ月)」の推移を表にしたものです。

都道府県 2008年 2013年(増減率) 2018年(増減率)
東京都 5,178円 5,018円(96.9%) 5,128円(102.2%)
神奈川県 4,110円 4,019円(97.8%) 3,898円(97.0%)
埼玉県 3,417円 3,394円(99.3%) 3,276円(96.5%)
千葉県 3,306円 3,302円(99.9%) 3,198円(96.9%)
全国平均 3,039円 3,051円(100.4%) 3,074円(100.8%)

※出典:同上

この表を見ると、2008年から2018年の神奈川県の「1畳当たりの家賃・間代(1カ月)」は94.8%の増減率となっており、全国平均(101.2%)を下回っています。また東京都が99.0%、埼玉県が95.8%、千葉県が96.7%となっており、一都三県すべてで下落していますが、中でも神奈川県が最も減少しています。

さらに2008年、2013年、2018年の「住宅・土地統計調査」から神奈川県の借家の「1人当たり居住室の畳数」を抜き出すと、8.92畳、9.4畳、9.95畳と部屋が広くなっているのにも関わらず、家賃が低くなっていることが分かります。

長い低金利政策により物件価格が上昇傾向にある中、家賃がやや低下傾向にあるという点は注意しておきたいポイントと言えるでしょう。ワンルームマンション投資のような豊富なキャッシュフローを捻出しづらい投資方法を検討する際は特に、家賃動向に注意して検証する必要があります。

まとめ

横浜市、川崎市、相模原市と3つの政令指定都市を持つ唯一の都道府県が神奈川県です。そのほかにも鎌倉市や横須賀市、逗子市、厚木市など特徴ある市町村が点在しているのが特徴です。県全体ではコロナ禍の影響により短期的な人口減少の傾向にあるものの、東京都内へのアクセスに加えて犯罪率が低いなど、住みやすさを構築する要素があります。

しかし、傾斜地が多いことや今後の家賃推移など注意しておきたいポイントもあります。神奈川県で不動産投資を始める際は現地に詳しい不動産会社からのサポートを受けたり、自身で詳しい調査をしてみるなど、まずは情報収集から始められてみると良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。