投資・資産運用をしないほうがいい人は?状況別にFPが解説

投資や資産運用に関心を持ち、実行する人が増えました。しかし、中には運用をしないほうがいい人もいます。その理由は様々にあり、状況の改善によって資産運用に取り組むことも可能です。

この記事では、投資や資産運用をしないほうがいいのはどんな場合かを紹介し、状況を克服する方法も解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 資産運用が必要な理由
    1-1.ライフイベントに向けてお金を備える必要があるから
    1-2.給料や年金が減る可能性があるから
    1-3.インフレリスクがあるから
  2. 資産運用をしないほうがいい人と対策
    2-1.余裕資金が全くない人
    2-2.高金利の借金がある人
    2-3.すぐにお金を増やしたいと思っている人
    2-4.他人に勧められるままに運用をしようとする人
    2-5.冷静な判断ができない人
  3. 運用をしないほうがいい人が運用するには
    3-1.IFAのアドバイスを受ける
    3-2.ロボアドバイザーを利用する
  4. まとめ

1.資産運用が必要な理由

現在では多くの人が「資産運用は必要」と考えています。なぜ、資産運用が必要なのでしょうか。その理由について解説します。

1-1.ライフイベントに向けてお金を備える必要があるから

結婚、自動車の購入、マイホーム取得、子どもの教育、老後生活など人生にはさまざまなライフイベントがあり、それらにはまとまったお金がかかることがほとんどです。

人生の三大資金といわれる住宅資金・教育資金・老後資金を、ほぼゼロ金利の預貯金で準備するのは大きな負担になります。たとえば、

  • 3,000万円のマイホームを購入
  • 子ども2人に合計2,000万円の教育費
  • 夫婦の老後資金2,000万円

以上3つが必要だとすると、合計は7,000万円です。

30歳から60歳までの30年間で、老後資金2,000万円を形成するために年利0.1%で運用したとすると、毎月の積立額は5万4,800円必要です。しかし、年利3.0%で運用できれば、毎月の積立額は3万4,200円で済みます。

準備に時間のかけられる資金であれば、運用で増やすことにより、積立の負担を軽減できる期待があるのです。

1-2.給料や年金が減る可能性があるから

私たちの収入は、現役時代も老後も減少傾向にあります。以下は、厚生労働省の平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)のデータの一部です(「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える」より)。

  • 1990年:463.7万円
  • 1995年:468.4万円
  • 2000年:467.5万円
  • 2005年:455.5万円
  • 2010年:431.0万円
  • 2015年:420.4万円

2000年以降の平均給与が、減少傾向にあることがわかります。

次に公的年金のデータを紹介します。厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移です。

  • 2016年度:14万7,927円
  • 2017年度:14万7,051円
  • 2018年度:14万5,865円
  • 2019年度:14万6,162円
  • 2020年度:14万6,162円

厚生年金の支給額が頭打ちになっていることがわかります。

あくまで統計上の結果であり、必ずしも自身の所得が下がっていくとは言えませんが、このように収入の増加が見込みづらい状況では、運用を全くしないと使えるお金が減っていく可能性があるということになります。

1-3.インフレリスクがあるから

インフレとは、モノの値段が上がってお金の価値が下がることです。なかなかインフレが起きなかった日本においても、最近の原油価格の上昇、円安による輸入品の価格上昇などで、すでに物価は上昇傾向にあります。

所得が増えない中で物価が上がることは、生活が苦しくなることを意味します(スタグフレーション)。しかし、預貯金で物価上昇率以上の利息を得るのは、現状ほぼ不可能です。

2015年を100とした場合の消費者物価指数(総合)は、次のようになっています。

  • 2016年:99.9%
  • 2017年:100.4%
  • 2018年:101.3%
  • 2019年:101.8%
  • 2020年:101.8%

上記から、2015年から2020年までに2%近く物価が上昇していることがわかりました。その分、お金の価値が目減りしているというわけです。

預貯金に比べて、株式などはインフレに強い資産です。資産運用によってお金を増やすということは、将来のインフレから資産を守る役割もあるのです。

2.資産運用をしないほうがいい人と対策

以上、資産運用が必要な理由を解説しました。しかし、中には投資や資産運用をしないほうがいい人もいます。具体的にはどのような状況にある人か、そしてその状況を克服するにはどうしたらよいかを解説します。

2-1.余裕資金が全くない人

毎月の家計がぎりぎり、もしくは赤字で資産運用に回す資金が全くない人は、当面は運用を避けたほうがよいでしょう。運用に充てるお金は、すぐに使う予定のないお金でなければなりません。

お金を増やしたいからと生活費や緊急時の予備資金を運用に充ててしまうと、いざというときに経済的に行き詰まってしまいます。

家計を見直して運用にお金が回せるようにする

資産運用に回せる余裕資金がない人が運用を始めるには、まずは家計を見直すことです。適正な節約をしても毎月の家計が収入の範囲でやりくりできないようであれば、転職や副業などで収入を増やすことも必要な選択肢となります。

毎月少額でも運用に回せるお金が確保できたら、生活費などで使ってしまわないうちに運用商品の買い付けをすると良いでしょう。つみたてNISAなどで自動的に買い付けが行われるようにすると、運用が継続しやすくなります。家計の状況に応じて、無理のない範囲で投資額を増やしていきましょう。

2-2.高金利の借金がある人

住宅ローンなど低金利のローン以外に、消費者金融などから高金利の借入をしている人は、運用よりも返済を優先させましょう。借入金利を上回る運用成績を出すのが難しい場合、返済は運用益以上の経済的メリットがあるからです。

一般的な消費者金融の金利相場は、年利約18%です。運用で18%以上の利益を確実に出すことは難しいため、返済によって金利負担を減らすほうが合理的です。なるべく早期に完済し、返済に充てていたお金を運用できるようになったら、投資を検討しましょう。

返済と運用を併用するなら

返済をしながら資産運用もしたい場合、運用は少額にして返済を優先しましょう。完済して運用にお金を回せるようになったら、なるべく高金利の借入はしないですむように家計を見直すことも大切です。

2-3.すぐにお金を増やしたいと思っている人

短期間で投資額の何倍もの資産を作りたいと考える人は、失敗につながりやすいため、投資することは見直したほうがいいでしょう。短期で大きな結果を出そうとするとギャンブル的な要素が大きくなり、損失を被る可能性が高まります。

利益を得るどころか全財産を失うことになれば、二度と運用をしようとは思わなくなるでしょう。リスクを抑えて着実に資産形成をしていく場合、すぐにお金は増えません。資産運用は一攫千金を狙うものではないということを知っておく必要があります。

資産運用はリスクの排除が肝心

短期間で自己資金の何倍もの運用成果を得ようとすると、そのぶんリスクが高くなり、一瞬で全財産を失う場合もあります。運よく最初は上手くいったとしても、成功し続けるのは難しいでしょう。高すぎるリスクをとり続けると、たった一度の失敗が命取りにつながりかねません。

運用で着実に成果を上げるには、大きな失敗を避けることがとても大切です。損失をゼロにすることはできませんが、最小限にする努力は必要です。ハイリスクの運用をするとしても、少額にとどめ、かつ分散投資をするなど、リスク対策をしっかり行うようにしましょう。

2-4.他人に勧められるままに運用をしようとする人

他人から勧められてなんとなく儲かりそうだから、知っている人が儲かった話を聞いたから、などの理由で運用をするのは危険です。自分で内容を調べずに運用して、結果的に損をしても誰も補償してくれません。資産運用は自己責任が大原則です。

他人からの情報をきっかけに始めても問題ありませんが、実行するのであれば内容をよく吟味しましょう。

理解できなければ運用を見送る勇気も必要

金融機関からの勧誘や知人からの勧めで運用商品を買い付ける場合、事前に運用の仕方について最低限の知識を身につけましょう。個別の商品についても、投資対象やリスク、かかる費用などの確認が必要です。

説明を聞いたり、自分で調べたりしてもよくわからない場合には、運用を見送るほうが無難です。興味を持ったことをきっかけに自分で運用の情報を集め、納得できるようになってから始めても遅くはありません。

2-5.冷静な判断ができない人

買い付けた運用商品の価格変動が気になり、的確な判断ができなくなる人は多いものです。しかし、投資には価格変動が付き物です。状況によっては買い付けた運用商品が大きく値下がりしたり、価格が乱高下したりするケースもありえます。

そのたびに熱くなったり落胆しすぎたりすると、正しい取引の判断ができなくなるおそれがあります。投資を始めてすぐの状況では、冷静な判断をするのは難しいため、初心者の人はいきなり本格的な運用を始めないほうがよいでしょう。

まずは少額投資から始めてリスクに慣れる

いきなり余裕資金の大部分を突っ込まず、まずは少額から投資を始めてみましょう。現在は100円から金融商品を購入できるネット証券もあります。また、お金を使わずにポイントで投資信託などを購入する「ポイント投資」ができる証券会社もあります。

そのような方法で投資を始めてみて、自分が買った運用商品の値動きを確認してみましょう。リスクがどのようなものか身をもって理解できたら、徐々に投資額を増やしていけばよいでしょう。

3.運用をしないほうがいい人が運用するには

運用をしないほうがいい人の中でも「余裕資金が全くない」「高金利の借金がある」などのケースでは、状況が改善されるまでは無理に運用しないほうが得策といえます。しかし、それ以外のケースでは、先述した改善策を講じることで運用ができる状況になるでしょう。

また、投資初心者など自己判断で運用する自信がない人は、プロのアドバイスを受けるのも方法の一つです。ここでは、運用のアドバイスを受ける方法として、IFAとロボアドバイザーを紹介します。

3-1.IFAのアドバイスを受ける

IFA(Independent Financial Advisor)とは、金融機関から独立した中立な立場の運用のアドバイザーです。IFAは金融商品の販売手数料を収入源としており、相談は無料であることがほとんどです。

IFAでは運用に精通した金融のプロフェッショナルが顧客に丁寧なヒアリングを行い、個々の状況に合ったアドバイスをしてくれます。IFAの金融商品の販売は営利優先ではなく、顧客の問題解決という位置づけで行われます。

IFAは金融機関と違い、小規模な会社がほとんどです。オンラインセミナーやオンライン相談を行っているIFAもあるので、近くになくても利用できます。気になるIFAがあれば、オンラインセミナーなどでどんな会社かを確かめてみるとよいでしょう。

3-2.ロボアドバイザーを利用する

ロボアドバイザーはAIを利用した資産運用サービスの一種です。対面ではありませんが、個々に合った運用の提案や運用代行をしてくれます。

運用の提案のみを行うロボアドバイザーを「提案型」、運用代行やリバランスまで実行してくれるタイプを「投資一任型」といいます。サービス内容はロボアドバイザーごとに異なりますが、主な投資対象は投資信託やETFです。ユーザーが簡単な質問に答えると、最適な運用を提案してくれます。

「提案型」であれば、実際の商品の買い付けはユーザー自身で行います。「投資一任型」ではユーザーが提案を承認すると、実際の運用を行うのはロボアドバイザー側となります。

投資一任型の場合、ユーザーは運用を「お任せ」できますが、運用の成果に対して責任を負うのはユーザー自身です。投資である以上、元本保証ではありません。自己責任であることを自覚し、ユーザー自身も最低限の運用の知識を身につけるようにしましょう。

まとめ

投資や資産運用は今後ますます必要になってくるでしょう。多くの人が関心を持つのは好ましい傾向ですが、状況によってはすぐには始めないほうがいいこともあります。資産運用に取り組むにあたって問題があるようなら、状況を改善してから始めましょう。

また、大きな失敗を避けたいものの、自分で判断する自信がない人は、IFAやロボアドバイザーなどのアドバイスを受けて資産運用をする方法もあるため、検討してみるのも良いでしょう。

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松田 聡子

松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。運営サイト : 経営体質改善のヒント