不動産投資というと、マンションやアパートなどの賃貸経営や、オフィスなどの事業用不動産の運用をイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし現代では、金融機関の融資を得て不動産を所有する方法以外にも、不動産投資型クラウドファンディングやREITを活用した小口出資も可能となっています。
そこで今回のコラムでは、「現物不動産投資」「Jリート(日本版不動産投資信託)」「不動産投資型クラウドファンディング」という3つの不動産投資の手法にスポットを当て、メリットとデメリット、さらに注意点についても解説していきます。ぜひ参考にしてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 現物不動産投資
1-1 現物不動産投資のメリット
1-2 現物不動産投資のデメリット
1-3 現物不動産投資の注意点 - Jリート(J-REIT:日本版不動産投資信託)
2-1 Jリートのメリット
2-3 Jリートのデメリット
2-3 Jリートの注意点 - 不動産投資型クラウドファンディング
3-1 不動産投資型クラウドファンディングのメリット
3-2 不動産投資型クラウドファンディングのデメリット
3-3 不動産投資型クラウドファンディングの注意点 - まとめ
1 現物不動産投資
投資家が不動産を所有および運用して、オーナーとして利益を上げていく方法です。購入した不動産を貸借人に貸して得た家賃が、オーナーの主な収入になります。
1-1 現物不動産投資のメリット
現物で不動産を所有することになりますので、賃貸用物件として運用するのに加えて、現物資産を形成することにもなります。運用後には、手元に現物資産を残すことができるため、将来的に住まいとして活用することもでき、家族に相続するといったこともできます。
また、不動産投資に用いることができる不動産にはいくつも種類があります。それぞれに特徴があり、投資家としての意向や好み、予算などを反映させながら、運用できる点はメリットと言えるでしょう。投資用不動産の種類は主に下記の通りです。
区分所有マンション
分譲マンションのひと部屋を所有し、貸借人に貸すことで家賃を得ることができます。代表的なのがワンルームマンション投資ですが、ファミリー向けのマンションを投資用物件とするケースもあります。
このほか、長期間の入居が見込める店舗や事務所向けの部屋を所有し、貸し出す手法もあります。このように区分所有マンション投資の中でもいくつかの手法があります。
戸建て住宅
一戸建て住宅を所有して、貸借人に貸し出す手法です。ファミリー向け物件の場合は長く住んでもらえる可能性があります。
建物内だけではなく、入居者が庭や玄関周りの清掃を適切に行ってくれるため、管理が比較的楽という特徴があります。駅近だけではなく、郊外でも運用でき、物件を選ぶ際の選択肢は広くなります。店舗併用住宅、オーナーの住居も併設されている賃貸併用住宅といった物件の種類もあります。
一棟物件
アパートやマンションを一棟ごと所有し、各部屋を貸借人に貸し出す手法です。物件を所有するには高額の費用が必要となりますが、部屋数に応じて家賃収入が見込めますので、高収入が期待できます。ただし、部屋数が多いため投資額も大きくなり、空室対策、家賃下落対策、資産価値下落対策など管理に対するノウハウも必要になります。
駐車場・駐輪場
土地を所有している場合、初期費用をあまりかけたくない投資家などに活用されているのが駐車場および駐輪場経営です。建物を建てる必要がなく、管理に手間や労力もかからないといった特徴があります。
土地として売却することもでき、場所によっては買い手がつきやすいケースもあります。ただし地域ごとに需要が異なるため、場所選びを慎重にする必要があります。
トランクルーム
トランクルームを貸し出すことで収入を得る投資手法です。建物を建てる方法や土地の上にコンテナを設置する方法などがあります。コンテナ型トランクルームであれば、初期費用を抑えて始めることもできます。
ただし利用者は自宅のスペースが少ない人がメインとなるため、需要が見込める立地を選ぶ必要があります。また、月額利用料の相場が数千円から数万円となっており、投資効率を見極めて始めるようにしましょう。
1-2 現物不動産投資のデメリット
現物の資産を運用する不動産投資において、株やFXなどの金融投資とは異なるリスクがあります。不動産を所有した場合、これらのリスクはオーナーに帰属するため、購入する不動産について慎重に検討する必要があります。不動産投資のリスクには、下記のものが代表的です。
- 空室リスク
- 災害リスク
- 修繕リスク
- 家賃下落リスク(利回り下落リスク)
- 資産価値下落リスク
- 家賃滞納リスク
これらに対応するノウハウや知識が必要になり、怠ると不動産を損失する可能性もあります。
その他、不動産の売却には3カ月以上の期間が必要になるのが通常で、他の投資商品に比べると流動性の低さがデメリットになります。そのため、希望する価格、希望する時期で売却できない可能性があります。
1-3 現物不動産投資の注意点
マンションやアパートなどの賃貸経営は、家賃収入を得て成り立つビジネスモデルです。そのため物件を所有することだけではなく、その物件を利用する入居者を確保していくことが重要となります。物件管理と入居者管理を通じて、前述したようなリスクへの対策を適切に行いましょう。
特に、損害が大きくなりやすい災害リスクには気をつけましょう。物件を選ぶ際は、利回りや最寄り駅などだけではなく、ハザードマップを確認するなど物件の立地も確認することが大切です。
現物不動産投資を行うのであれば、多くの場合、不動産投資会社から物件を購入することになります。まずは複数の不動産投資会社への個別面談やセミナーを介して、情報収集から行ってみることも検討してみると良いでしょう。
2 Jリート(J-REIT:日本版不動産投資信託)
REIT(リート)は正式にはReal Estate Investment Trustと言い、日本語には不動産投資信託と訳されます。日本版不動産投資信託ということから、頭にJをつけています。
リートは、投資法人が投資家から集めた資金で不動産を運用(運用する会社に委託するケースもあり)して、得た利益を分配する仕組みです。投資法人が発行した投資証券を市場で売買するため、不動産投資信託とも言われます。
2-1 Jリートのメリット
Jリートは東京証券取引所で投資証券を売買する仕組みです。銘柄は常に価格が動いており、低いものでは10万円以下のものもあります。そのため高額な費用を用意することなく、不動産投資を始めることができます。投資家のタイミングで投資証券の売買ができるため、流動性が高いのも特徴です。
株式投資と同様に、投資証券を所有することで、不動産投資による運用益が得られるのがリートの収入の仕組みです。
また株式と同様に、この投資証券を売却する際に基準価額が上昇していれば売却益を得ることもできます。つまりインカムゲインとキャピタルゲインの2つの方法で収益を得ることができるということなのです。
2-3 Jリートのデメリット
銘柄の価格は常に動いており、投資法人の運用の仕方に加え、金利の変動や物価、不動産価格の変動などさまざまな要因で変動します。そのため分配金が低下する可能性があり、元本割れを起こすリスクもあります。また銘柄の上場廃止や投資法人の倒産などによって、投資証券の価値が下落する可能性もあります。
不動産投資と言っても、リートは投資証券を所有することで間接的に不動産投資を行う仕組みです。そのためオーナー自身が不動産を所有する訳でもなく、選べる物件も限られています。
短中期的なキャピタルゲイン(売却益)の視点も必要になり、「家賃が振り込まれるのを待つ」という家賃収入とは異なる性質を持った不動産投資であることに注意が必要です。
2-3 Jリートの注意点
Jリートは2001年に創設され、2021年9月時点で62銘柄が東京証券取引所に上場しています。不動産投資と言っても投機的な要素もあり、銘柄を選ぶ際には投資法人ごとにIR情報や運用不動産などの情報を調べる必要があります。
また投資証券の価格は常に動いているため、金融投資の知識も重要なポイントとなってきます。売買タイミングを見極めるなど利益を確定させるための知識やノウハウを獲得するようにしましょう。
なお、J-REITへの投資を始めるには証券口座が必要になります。証券会社によって扱う銘柄にも違いがあるため、複数の口座開設を検討してみるのも良いでしょう。
3 不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディングは、特定の不動産に対して複数の投資家が資金を出し合って運用する手法です。得られた利益を出資比率に応じて分配することで、各オーナーが利益を獲得します。通常は、投資法人が所有する不動産を小口化してオーナーを募集し、運用を開始していきます。
3-1 不動産投資型クラウドファンディングのメリット
不動産投資型クラウドファンディングは一口単位で始められる仕組みになっています。投資法人の設定にもよりますが、一口の単位が1~10万円からと、現物不動産を購入する場合と比較して非常に少額から始められます。
例えば、1億円の物件を所有して不動産投資を始める場合、頭金として2~3割の費用が必要と仮定すると2,000~3,000万円の自己資金が必要になります。一方で一口1万円単位の不動産投資型クラウドファンディングであれば、1万円の自己資金で1億円の物件に投資できるということです。
このように、個人の投資家が実際に取得して運用しづらいような物件でも投資検討できるという点が不動産投資型クラウドファンディングの大きなメリットと言えるでしょう。
また、不動産を小口化して投資を行うため、複数の不動産に分散投資がしやすいというのも不動産投資型クラウドファンディングのメリットです。先程の例で言えば、5万円の自己資金があれば、5つの1億円の物件に一口ずつ投資することができます。自己資金を1つの物件に投資するよりも、リスクが分散できることになります。
3-2 不動産投資型クラウドファンディングのデメリット
実物不動産投資の場合、金融機関の不動産投資ローンを活用することで自己資金以上の資産運用をすることが可能になります。一方、不動産投資型クラウドファンディングでは、不動産投資ローンを利用できないため、ローンを活用したレバレッジ効果は期待することができません。
その他、不動産投資型クラウドファンディングでは条件が良い物件に人気が集まる傾向があるのもデメリットです。狙った物件に人気が集中してしまい、抽選や先着順に漏れてしまうケースもあります。
3-3 不動産投資型クラウドファンディングの注意点
不動産投資型クラウドファンディングは、投資先の物件だけでなく、実際に運用を行う事業者(プラットフォーム)を選ぶことも重要になります。運営会社によって、運用方針や大まかな分配利回り、投資先エリア、リスク対策などの基本的な戦略が大きくことなってくるためです。
また、運用ファンドで大きな損失が出てしまった時に事業者が倒産してしまうリスクもあります。物件に加えて、運営会社としての実績や信用度、運用利回りなどの確認も適切に行いましょう。
まとめ
今回紹介したように、不動産投資には代表的な3つの手法があります。それぞれのメリットとデメリットを把握し、ご自身に合った不動産投資を選択しましょう。また現物の不動産を所有するために、低予算で始められるJリートや不動産投資型クラウドファンディングから始めるという方法もあります。
現物不動産投資では、多額の資金を必要とすることや、属性が低い方だと不動産投資ローンの審査を通過できないというデメリットがあります。このような場合、不動産投資型クラウドファンディングやJ-REITを活用することで、不動産投資の仕組みや市況感を掴み、不動産投資の流れを理解していくことにもつながるでしょう。
倉岡 明広
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