不動産投資において、不動産を売却して得られる収益のことをキャピタルゲインと言い、月々の家賃収入のことをインカムゲインと言います。キャピタルゲインはインカムゲインと比較すると大きな額の利益がまとまって得られる可能性があります。一方、不動産の売却でうまくキャピタルゲインを稼ぐには、事前に様々なポイントを押さえておかなければなりません。
そこで今回は長年、投資用不動産会社で不動産の査定や売却に携わってこられた仲川光弘さん(仮名)に、売却で成功した不動産投資家が実践している、おすすめの不動産売却方法についてお聞きしたいと思います。
目次
- 不動産の売却計画はなるべく早い時期に立てる
- 不動産一括査定サイトを利用する
- 訪問査定では物件の印象を良くすること
- 売却の仕方には仲介と買取の2種類がある
- 売却戦略をたてる
5-1.最高値で募集するかどうかを検討する
5-2.契約の仕方を検討する
5-3.3ヵ月ごとに広告の見直しをする - 不動産売却のタイミングは築年数がカギ
- 内覧時は必ず一緒に立ち会う
- まとめ
1.売却計画はなるべく早い時期に立てる
不動産投資は長期の運用になりますので、売却はずいぶん先の話だと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、できるだけスムーズに売却するためには、売却計画を早めに立てることが重要なポイントになります。
計画が遅くなると、いざ売却しようとしてもなかなか売れなかったり、物件の値段が高い時期はある程度限られていますので、その時期を過ぎてしまったりする可能性があります。さらに、事前に計画を立てておかないと、どうしても現金化を急がなければならない状況に陥る可能性もあり、その場合、相場より価格を大きく下げて売却してしまいかねません。
計画さえ立てておけば、突発的なことが起きたとしても慌てなくて済みますし、売却条件が良くないうちは売却を見送り、有利になる時期が来るまで保有し続けることもできます。高く売却できそうな時期を逃さないという点や、物件の運用方法の選択肢が多くなる点で、売却計画はなるべく早い時期に立てることが大切です。
2.不動産一括査定サイトを利用する
不動産売却の際は、最初に不動産会社に物件の価格査定を依頼することから始まります。不動産会社1社だけに依頼すると、かたよった査定になる可能性もありますので、査定を依頼する際は複数の不動産会社に依頼することが大切です。
その際に便利なのが、不動産一括査定サイトです。このサイトでは一度物件情報を登録することで、サイトが提携している複数の不動産会社から査定価格の見積もりを提示してもらえますので、とても効率的に複数の査定価格を知ることができます。
不動産一括査定サイトで行う査定は簡易査定といって、机上での計算をもとに査定価格を算出したものです。話が進むようであれば、不動産会社の担当者が物件を見に来て、物件の状態や周りの環境、駅からの距離などをチェックして最終的な査定価格を算出します。物件を実際に確認して査定することを訪問査定と言います。
また、不動産一括査定サイトは実際に売却を依頼するためだけではなく、複数の査定価格から相場を把握したり、最高値や最安値を確認したりするといった使い方もできます。
3.訪問査定では物件の印象を良くすること
訪問査定では物件の状態や、駅からの距離、周辺の施設などがチェックされます。その際にはできる限り清掃などをして、物件の印象を良くすることが大切です。これにより、その物件が本来持っている価値をより判断してもらいやすくなる効果があります。
逆に、物件に汚れや損壊があると査定価格が下がり、本来狙えるはずの価格帯にならない場合がありますので、特に水回りなどを中心に、汚れや損壊を確認のうえ清掃、修繕するようにしましょう。
4.売却の仕方には仲介と買取の2種類がある
売却の仕方には仲介と買取の2種類があり、どちらの方法で売却するかで収益が違ってきます。
仲介は不動産会社が間に入って第三者の買主を発見する行為になります。仲介の場合は市場価格で売却できますので、後述の買取よりも一般的に高く売却できます。しかし、相場の状況や買主との交渉などによって価格を下げる場合もあり、必ずしも希望価格で売却できるとは限りません。また、売却が完了するまでの期間が長期にわたることがあります。
それに対し、買取は不動産会社が直接買い取ってくれる方法であるため、売却までの期間が短くなりますが、不動産会社は買い取った物件をリフォームして再販することで利益を得るため、一般的には仲介より買取の方が売却価格は低くなります。
しかし買取では仲介手数料がかかりませんし、すぐに現金化できるというメリットがありますので、仲介と買取どちらの方法で売却すれば良いのかは、売却する目的や不動産の状態によって変わってきます。以下に仲介と買取の違いをまとめましたので確認しましょう。
比較項目 | 仲介 | 買取 |
---|---|---|
買主 | 第三者 | 不動産会社 |
仲介手数料 | 有 | 無 |
売却期間 | 長期になることがある | 短期間で買い取ってくれる |
価格帯 | 高値で売却できる可能性がある | 仲介より低くなる |
5.売却戦略をたてる
仲介で売却をする場合、不動産会社側で不動産サイトなどに広告を出しますが、キャッチコピーなどの内容によって買い主の反応が違ってきますので、広告の内容や宣伝を行うタイミングなど、戦略を十分検討した上で買主を募集することが重要になってきます。
5-1.最高値で募集するかどうかを検討する
できるだけ高値で不動産を売却するには、査定で出してもらった最高値で募集をするという手がありますが、少し検討が必要です。あまりに高すぎると買い手がつかず、ずっと募集広告を出し続けなければいけない可能性があるからです。
不動産は大きな金額が動く取引ですので、買主も慎重に物件を検討しています。買主としてはできるだけ問題がない物件を購入したいと思っていますので、もしずっと募集を出し続けていると、売れない原因があるのではないかと考えてしまうものです。できれば3ヵ月以内で売却できそうな価格で募集することをおすすめします。
5-2.契約の仕方を検討する
不動産を売却する際に不動産会社と締結する契約方法には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれに特徴があり、契約によって売却までの期間などが変わってくる可能性があります。以下の表を確認しましょう。こちらは3種類の契約方法とその特徴を一覧にまとめたものです。
比較項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社との契約 | ○ | × | × |
レインズへの登録 | 任意 | 必須 | 必須 |
自分で探した買主との直接契約 | ○ | ○ | × |
販売状況の報告義務 | なし | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
契約期間 | なし | 3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 |
この表から、一般媒介契約は複数の不動産会社と媒介契約ができるということがわかります。それだけ窓口が広がりますので、買主を探す機会が広がることになります。しかし、不動産会社にとっては、他の不動産会社で買主が決まった場合は募集活動が無駄になる可能性がありますので、優先順位が後回しになるリスクもあります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合は、1社でしか募集をすることができませんので、不動産会社にとっては、売却活動に労力をかけても無駄になることはありません。それだけ力を入れてくれる可能性があります。
販売活動の報告義務があるかないかでも、営業マンへのプレッシャーが違ってきます。報告義務があるために不動産会社が力を入れるという点では、専任媒介契約や専属専任媒介契約の方がメリットはあると言えます。ただし、一般媒介契約と異なり募集の窓口は1社に限られてしまうため、そのぶん売却までに時間がかかる可能性もあります。
どの契約にするかは周りの相場と物件の査定価格、現金化を急いでいるかどうか、といった状況によって変わってきますので、個別に検討する必要があります。
5-3.3ヵ月ごとに広告の見直しをする
長期間同じ広告を出していると、買主から物件に何か問題があるのではないかと詮索される可能性があるということには触れました。そのような状況を避けるためにも、3ヵ月ごとに募集広告の見直しをすることをおすすめします。
物件の特徴の出し方を変えたり、コピーを変えたり、場合によっては価格も下げなければいけないケースもあります。専任媒介契約、専属専任媒介契約は3ヵ月以内の契約期間になっていますので、そのタイミングで広告の見直しをすると良いでしょう。
6.不動産売却のタイミングは築年数がカギ
より良い条件で売却をするにはタイミングも関係してきます。築年数は浅い方が価格は高くなりますが、ローンの残債を完済することを考えると、築年数が経っても価格帯が下がらないタイミングを探すことが、より多く利益を得るコツと言えるでしょう。
以下のグラフを確認しましょう。こちらのグラフは東日本不動産流通機構が調査した「築年数から見た不動産流通市場」から引用したものです。
このグラフでは、築年数ごとの成約物件の平均価格(2017年のもの)がわかります。新築時から築5年までは一気に物件価格が落ちますが、築5年あたりから築15年くらいまではあまり変化がありません。このことから、築5年くらいから築15年くらいでは、残債を減らしながら価格を維持して売却できる可能性が高いことがわかります。
7.内覧時は必ず一緒に立ち会う
購入希望者が内覧を行った際には、値引き交渉をされる場合があります。その時に売主がその場にいて直接希望者と話しながら判断するのと、不動産会社の担当者を介して話を聞くのでは、契約までのスピードや値引き額をいくらにするかといった判断が違ってきます。
直接希望者と話をしたほうが値引き交渉もスムーズにまとまりますし、担当者を挟んだ時の情報伝達ミスを防ぐこともできます。売却の時期を長引かせないために、また購入希望者からの要求に対して正確な判断を下せるようにするためにも、内覧には必ず立ち会うようにしましょう。
まとめ
良い条件で不動産を売却するには、不動産会社との契約の仕方や、売却をするタイミング、価格などを慎重に検討しなければいけないことがわかりました。また、不動産の売却にあたっては、あらかじめ早い段階で売却のための計画を立てておき、必要な時にスムーズに対応できる状態を作ることが成功のコツとなります。
実際に売却活動を行うにあたっては、一括査定サイトを活用するなどして適正な売出価格をうまく見極めつつ、売出後も広告の反響を見ながら、広告の内容や不動産会社の再選定、価格の値下げなどを検討していく必要があります。
今回の解説を参考にして、まずはなるべく早い段階で売却戦略を立てるようにしましょう。
西宮光夏
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