婚姻期間中、夫婦間で連帯保証人を設定して住宅ローンの融資を受けた方は少なくないのではないでしょうか。
しかし、「離婚後、元配偶者と連絡が取れず、家に住宅ローンの督促状が…」という事態に陥った時、自身が連帯保証人になっているのであれば、たとえローンを滞納した家に住んでいなくても、支払い義務が発生します。
連帯保証人は主債務者である元配偶者がローンを支払わなかった際に債務を返済する義務があるためです。
そこで本記事では、元配偶者が住宅ローンを滞納した時の流れや対処法について詳しく解説していきます。住宅ローンの支払義務があるのか気になる方や、滞納後の対処にお困りの方はご参考下さい。
目次
- 連帯保証人を外れない限りローンの支払い義務がある
1-1.住宅ローンを滞納した時の流れ - 元配偶者が住宅ローンを滞納した時の対処法
2-1.まずは金融機関に相談する
2-2.家を査定し、売却価格とローンの残債を比較する
2-3.売却するか住み続けるかを決める
2-4.元配偶者に連帯保証人を外してもらう - まとめ
1.連帯保証人を外れない限りローンの支払い義務がある
連帯保証とは保証人が主債務者と連帯してローンの債務を負担する事です。住宅ローンの融資を1名では受けられない時、連帯保証人を設定することにより金融機関からの評価を高め、融資審査を有利に進めることが可能になります。
一方、金融機関は連帯保証人を設定することで、債務が返済されない時に主債務者に先に請求せずに連帯保証人に請求できる、連帯保証人が複数いた場合でも債務の総額を全員に請求できる、といった権利を持つことになります。
離婚届を出した後も連帯保証人の契約は有効で、連帯保証人を外れない限り、主債務者(元配偶者)が返済を怠った時は債務を返済する義務が生じます。
1-1.住宅ローンを滞納した時の流れ
住宅ローンを滞納した時の流れを見ていきましょう。
住宅ローンが金融機関に支払われない場合、1~3ヶ月後に金融機関から催告状や督促状が届き、3~6か月後にはローンの一括返済を求める通知が届きます。このタイミングで分割の返済は不可能となり、選択肢は一括返済のみとなります。
さらに滞納を続けると銀行と連携している保証会社が代わりに返済を行う「代位弁済」が行われます。代位弁済により返済先が金融機関から保証会社となり、10ヶ月程度で「家を競売にかける」という通知が来ます。
裁判所から現地調査があった後、家は競売にかけられ購入希望者に入札されます。購入者に家の所有権が移り、立ち退きを要求されます。
競売にかけられると、自身が住み続けていた住宅を手放すこととなります。元配偶者が住み続ける場合でも、競売後に売却代金でローンの残債が残る場合は連帯保証人が支払わなくてはいけません。
また、元配偶者が自己破産した時には、連帯保証人は一括返済を求められ、支払えない場合は財産を差し押さえられてしまいます。住宅ローンを滞納して1~3ヶ月後の督促状が来る段階で連帯保証人にも連絡が来るため、早めに対処していくことが重要になります。
2.元配偶者が住宅ローンを滞納した時の対処法
元配偶者が住宅ローンを滞納し、連帯保証人の元にも督促状や催告状が届いた場合、早急に金融機関に相談しましょう。
連帯保証人にも債務の返済義務があるため、家を売却するか否かを決定し、家の売却価格とローンの残債を比較、結果に応じた対処法を取りましょう。
金融機関からの通知を放置しておくと最終的には競売にかけられ、家は相場より安い価格で売却されることとなります。住んでいる場合は最終的に立ち退きを要求されてしまうため、早目の対応で競売を避けることが大切です。
2-1.まずは金融機関に相談する
金融機関から督促状が届いている場合は、連絡を取り状況を確認しましょう。滞納している住宅ローンを自身で代わりに返済することで、競売を止められる可能性があります。
住宅ローンを滞納して3~6ヶ月が経過すると、契約者は分割で返済する権利を失い一括返済を要求されてしまう可能性が高くなります。一括返済では競売又は任意売却になる流れとなり選択肢が減ってしまうため、早めに相談し状況確認することが重要です。
できる限り早めに金融機関と連絡を取り、代わりに返済する、元配偶者と連絡を取りローンを支払ってもらう等、状況に適した対処を行えるように準備を進めていきましょう。
2-2.家を査定し、売却価格とローンの残債を比較する
次に、不動産会社へ家の査定を依頼して、売却価格とローンの残債を比較しておきましょう。
不動産の査定には複数の不動産会社へ査定依頼ができる、不動産一括査定サイトの利用を検討してみましょう。不動産一括査定サイトを活用することで、効率的に複数社の査定結果や査定の根拠を比較することが可能になります。
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住宅ローンの残債が家の売却価格を上回る場合は「オーバーローン」、住宅ローンの残債が家の売却価格を下回る場合は「アンダーローン」と呼びます。住宅ローンの一括返済が可能なアンダーローン物件であるかどうか、確認しておきましょう。
住宅ローンを滞納している中でオーバーローンである場合、「任意売却」での売却を検討することになります。
任意売却は金融機関に家を競売にかけられる権利(抵当権)を外してもらう代わりに、金融機関が許可した売却価格で家を売却、売却費用をローンの残債に充てます。それでもローンが残ってしまう際は金融機関と相談して返済していく形になります。
アンダーローンの場合は、不動産会社に買取を依頼する、不動産会社に仲介を依頼し家を売却するという2つの売却方法があります。
早急に家を現金化したい場合には不動産会社に買取を依頼しましょう。会社によっては買取価格が決定してからすぐ買取してもらう事が可能です。仲介で家を売却する方法が一番家を高く売却できる可能性がありますが、約3~6ヶ月ほどの期間を要します。
2-3.売却するか住み続けるかを決める
前述したように、ローンを滞納している家に住んでいない場合でも、連帯保証人には債務を返済する義務があります。まずは、返済義務がある状況でも家を残すのか、それとも売却するか、どちらかを決めておきましょう。
なお家を売却するためには、主債務者である元配偶者の同意が必要となります。本人へ連絡が取れない場合には離婚に詳しい弁護士を介すなど、主債務者と連絡が取れるようにする必要があります。
2-4.元配偶者に連帯保証人を外してもらう
元配偶者と連絡がとれ、連帯保証人を外してもらうことができれば、債務を支払う義務がなくなります。
しかし、連帯保証人を外れるには金融機関の許可を得る必要があります。スムーズに連帯保証人を外れるには、他の連帯保証人を立てる、別の財産を担保設定する、ローンを借り換えるという手段を講じる必要があることも少なくありません。
滞納が起きてしまっている状況では、主債務者が返済できない経済状況であると予想されるため、連帯保証を外れることは非常に難しいと言えるでしょう。離婚をしたタイミングで連帯保証人から外れておくことが重要となります。
3.まとめ
離婚後でも連帯保証人であることは変わらず、元配偶者がローンを滞納した時には支払い義務が生じます。
元配偶者と連絡を取り連帯保証人を外してもらう事が出来れば金銭的負担は少なくなりますが、連絡を取れない時は弁護士を立てるためには弁護士費用が必要となります。
ローンの残債と売却費用を比較し、残債の一括返済ができるアンダーローンの際は不動産会社に買い取って貰う、仲介で売却するという2つの手段を講じることが可能です。オーバーローンである場合は、債権者の許可を得て任意売却を検討しましょう。
売却を検討するのであれば、どちらのケースでも主債務者となる元配偶者の同意が必要となります。まずは「相手と連絡が取れるか」「売却の同意を得られるか」という点が重要と言えるでしょう。
田中 あさみ
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