不動産投資、変動金利で長期ローンを組む際のリスクと対処法

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不動産投資では、金融機関が定める融資条件を満たしていれば、物件の購入に必要な資金の融資を受けることが可能です。しかし融資を受けることができると言っても、ローンは固定金利と変動金利の2種類あるため、どちらを選べばいいか分からないという方も多いのではないでしょうか?

この記事では、変動金利で長期ローンを組む際のリスクと対処法について解説します。

目次

  1. 変動金利の魅力とは
  2. 変動金利で長期ローンを組むリスク
    2-1.将来金利が上昇する可能性がある
    2-2.返済計画を立てにくい
  3. 変動金利のリスクの対処法
    3-1.余裕のある返済計画を立てる
    3-2.ローンを一括返済する
  4. まとめ

1.変動金利の魅力とは

不動産投資を始めるにあたって、金融機関の融資を受けることを検討している方の中には、固定金利と変動金利のどちらにすべきか悩んでいる方も多いと思います。

固定金利とは契約期間中の借入金利が変動しない契約方法、変動金利とは契約期間中に金利が変動する契約方法のことです。

「金利が変動しない固定金利の方が安心できるのでは?」と考える方が多いと思いますが、実際には変動金利を選ぶ方の割合の方が多いと言えます。なぜなら、固定金利は変動金利よりも金利が高く設定されており、契約期間中に市場金利の変動がなければ、変動金利の方が返済総額を抑えることができるからです。

また、今後市場金利が下がった場合には、固定金利の借入金利は変わりませんが、変動金利では下がるので、その恩恵で返済総額を抑えることができます。

変動金利が選ばれる背景には、このような変動金利の特徴が大きく影響していると言えるでしょう。

2.変動金利で長期ローンを組むリスク

固定金利よりも金利が低く、将来市場金利が下がればその恩恵を受けられるという特徴を考えると、固定金利よりも変動金利を選ぶ方が良さそうに思えます。しかし、変動金利には以下の2つのリスクを伴うので注意が必要です。

  1. 将来金利が上昇する可能性がある
  2. 返済計画が乱れる可能性がある

それぞれのリスクについて詳しく見ていきましょう。

2-1.将来金利が上昇する可能性がある

変動金利でローンを契約中に金利が契約時よりも下がった場合は、その恩恵で返済総額が少なくなりますが、金利が契約時よりも上がった場合は逆に返済総額が増えるので注意が必要です。

例えば、4,000万円の返済が20年間残っている状況で、金利が2%から3%に変動すると、1ヶ月の返済額は202,353円から221,839円と19,486円増加します。その後、20年同じ金利が続いたとすると、当初の予定よりも約468万円多く返済することになります。

なお金利が変動しても、すぐに変動した金利が適用されるわけではありません。一般的な条件として、金利の見直しは1年に2回、そして5年に1回返済額の見直しが行われます。つまり、金利が変動しても、5年間は返済額自体は変わらないのです(ただし元本の返済比率が下がるため、完済は遅くなります)。

また、急に金利が上昇しても、通常は従来の返済額の1.25倍を上限にするというルールが適用されているので、急激な返済負担の懸念は小さいでしょう。しかし金利が上昇した場合には、月々の返済額や返済総額が増えることには変わらないので注意が必要です。

2-2.返済計画が乱れる可能性がある

固定金利でローンを契約すれば契約期間中は金利が変動しません。そのため途中で市場金利が変動した場合でも、月々の返済額や返済総額が変わらないので、返済計画を立てやすいのがメリットと言えます。

一方、変動金利でローンを契約すると、先述のように将来金利が上昇すると月々の返済額や返済総額が変わるため、返済計画が乱れる可能性があります。金利の上昇が許容範囲の場合はともかく、想定以上の金利の上昇が生じた場合にはキャッシュフローが悪化して返済が行き詰まる可能性もあるので注意が必要です。

変動金利にはメリットもありますが、このようなリスクも伴うため、変動金利を選ぶ際にはこれらのリスクを把握した上で選びましょう。

3.変動金利のリスクの対処法

変動金利を選んだ場合、上記のようなリスクを伴いますが、これらのリスクは事前に対策を練っておけば大幅に軽減することが可能です。変動金利のリスクの対処法として、以下の2つが挙げられます。

  1. 余裕のある返済計画を立てる
  2. ローンを一括返済する

それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。

3-1.余裕のある返済計画を立てる

不動産投資におけるローンの返済は、家賃収入から行っていくのが一般的です。例えば、20万円の家賃収入が毎月発生する物件を購入して、ローンの返済が毎月20万円だった場合は、金利が上昇して返済が毎月22万円になると家賃収入だけでは返済できなくなります。

そうなると不足分を給与所得や貯金から返済しなければならなくなるため、キャッシュフロー悪化によって不動産投資の継続が困難になる可能性もあります。

しかし、借入の際に頭金を増やす、返済期間を長くするなどの工夫によって、例えば毎月の返済額を16万円に抑えることができていれば、金利が上昇してもまだ家賃収入の範囲内で返済を行うことが可能です。

変動金利を選んだ場合は、金利が上昇して月々の返済額や返済総額が増えるリスクと常に隣り合わせとなるため、余裕のある返済計画を立てておくことは必須と言えるでしょう。

3-2.ローンを一括返済する

現在のように低金利の状況であれば、固定金利を選択するというのも1つの方法ですが、既に変動金利でローンを組んでおり、どうしても固定金利に切り替えたいという場合には、固定金利でローンを借り換えて一括返済する、または不動産を売却して、その売却代金で一括返済するという2つの方法があります。

変動金利でローンを借りてから市場金利の上昇が続いており、今後も上昇が続く可能性が高い状況になった場合不動産投資を安定的に継続するには固定金利でローンを借り換えて一括返済するという方法を検討するのが良いと言えます。

固定金利でローンを借り換えることができれば、金利の上昇で月々の返済額や返済総額が増えるというリスクを抑えることが可能です。しかし、変動金利の借入金利上昇に合わせて固定金利も上昇するため、固定金利で借り換える場合には金利の上昇が始まった初期段階でなければ金利削減のメリットは享受しにくいでしょう。

また不動産の売却を視野に入れている状況で金利が上昇した場合には、そのまま不動産を売却して、売却代金でローンを一括返済するという方法が良いと言えます。この方法を選んだ場合には、一括返済を行って残った額を頭金にし、次の投資用不動産を購入することも可能です。

ただし、一括返済を行う場合には、金融機関によっては違約金が発生する可能性があります。一括返済をした方が良いのか、そのまま継続した方が良いのかの判断は難しいため、不動産会社や金融機関などの専門家に相談してから行動に移しましょう。

4.まとめ

不動産投資を始める際にはローンを受けるのが一般的ですが、固定金利と変動金利どちらが良いかは迷うポイントです。

実際には、金利の低さを理由に変動金利を選んで契約している方は多いと思います。変動金利は固定金利よりも金利が低く、金利が下がれば月々の返済額や返済総額を減らすことができるという恩恵を受けることができます。しかし、金利が上がれば月々の返済額や返済総額が増えるため、キャッシュフローの悪化が原因で不動産を売却しなければならない可能性もあるので注意が必要です。

変動金利を選ぶ際には、この記事に記載されている対処法を理解した上で選ぶだけでなく、不安な場合は不動産会社や金融機関などの専門家に相談して判断しましょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。