災害で住んでいる家が被害を受けた場合、生活再建に多額の費用がかかります。住宅の再建費だけでなく、仮住まい費や解体・撤去費なども必要です。どのくらいの費用がかかり、公的支援はどの程度受けられるか気になる人も多いでしょう。
この記事では、災害で家が被害を受けたときの再建費用や公的な支援、災害に対しての備えについて解説します。
目次
- 災害で住宅が被害を受け生活再建にかかる費用
1-1.家が全壊して建て替える場合
1-2.家を修理して住み続ける場合
1-3.目立った損傷はなかった場合 - 公的な支援はどのくらい受けられるか
2-1.まずは「り災証明書」を申請
2-2.被災者生活再建支援制度
2-3.住宅の応急修理制度
2-4.義援金 - 災害に備えてやっておくべきこと
3-1.予備資金の準備
3-2.火災保険の見直し
3-3.防災グッズの準備
3-4.建物の耐震補強 - まとめ
1.災害で住宅が被害を受け生活再建にかかる費用
災害によって住宅が被害を受けた場合、生活再建に必要な費用は家の状態や修復の方法によって異なります。ここでは、家が全壊して建て替える場合、家を修理して住み続ける場合、目立った損傷はなかった場合のそれぞれの費用の目安について解説します。
1-1.家が全壊して建て替える場合
台風や地震といった災害によって家が全壊してしまった場合、以下のような費用がかかります。
- 住宅新築費用
- 建物の解体・撤去費
- 仮住まいの費用
- 家財購入費
住宅新築費用
住宅の新築費は建物の構造や規模などによって異なります。内閣府の「防災情報のページ」によると、東日本大震災で全壊となった住宅の新築費用は、平均で約2,500万円となっています。
建築費以外の費用
家の全壊による生活再建費用は、建築費だけではありません。災害によって壊れた建物の解体・撤去の費用は、約200万円かかります。建築中の仮住まいの費用は地域や物件の広さによって異なりますが、月額5万円から10万円、引越費用を含めると100万円程度は見ておいたほうがよいでしょう。
家が再建できたら、家具や家電のような家財の購入が必要となります。家財購入の費用は家族の人数などによって異なりますが、全てを合計すると100万円程度の出費になるケースもあるでしょう。
トータルの費用は約3,000万円
以上の内容を踏まえると、災害で家が全壊して建て替える場合の生活再建に必要な費用は、約3,000万円が目安になると考えられます。
1-2.家を修理して住み続ける場合
家を修理して住み続ける場合の費用は、被害の程度によって大きく異なります。多くの場合、屋根や外壁のような外装部分の修理が必要となります。家の補修費用の目安は、以下のとおりです。
- 屋根の補修: 10万円から20万円
- 屋根の全面修理:50万円から200万円
- 外壁の補修: 10万円から100万円
- 床下浸水の復旧: 30万円から60万円
- 床上浸水の復旧:500万円から1,000万円
被害の程度や工事の内容によっては、仮住まいが必要なケースもあります。仮住まい期間中の賃料、入退去に伴う引越しの費用などが発生すると考えられます。
1-3.目立った損傷はなかった場合
家に住み続けることが難しいほどの損傷がない場合でも、念のために専門家による点検や診断を受けることを検討しておきましょう。
住宅診断の費用相場としては、5~7万円程度が目安です。加えて、点検や診断によって問題が見つかれば、修繕費用が発生します。
2.公的な支援はどのくらい受けられるか
災害で住宅が被害を受けた場合、公的な支援を受けられる可能性があります。公的な支援を利用するには条件を満たすことと、申請手続きが必要です。ここでは、主な支援制度について紹介します。
2-1.まずは「り災証明書」を申請
公的な支援を受けるためには、まず「り災証明書」の申請が必要です。り災証明書とは、災害により住んでいる家が被害を受けた事実を証明するものです。り災証明書によって災害による被害を公的に証明でき、被災者生活再建支援金や税の減免を受けられます。
り災証明書には、以下のような被害の程度(その家の損害割合)が記載されます。
- 全壊:50%以上
- 大規模半壊:40%以上50%未満
- 中規模半壊:30%以上40%未満
- 半壊:20%以上30%未満
- 準半壊:10%以上20%未満
- 一部損壊:10%未満
参照:内閣府「防災情報のページ(災害に係る住家の被害認定)」
り災証明申請書は、市区町村の窓口やホームページから入手できます。申請には運転免許証のような本人確認書類や、被害状況を示す写真や資料などが必要です。郵送や持参のような申請方法は自治体ごとに異なるため、確認しましょう。
2-2.被災者生活再建支援制度
被災者生活再建支援制度とは自然災害により住宅が大きな被害を受けた世帯に対し支援金を支給し、生活基盤の再建を支援する制度です。制度の支援内容は、以下のとおりです。
基礎支援金
住宅の被害程度に応じて、以下の金額が支給されます。なお、単身世帯は以下の金額の4分の3となります。
- 全壊:100万円
- 大規模半壊:50万円
- 解体(半壊解体、大規模半壊解体、敷地被害解体):100万円
- 長期避難:100万円
加算支援金
住宅の再建方法に応じて支給する支援金で、基礎支援金を受給した世帯のみが申請できます。単身世帯は以下の金額の4分の3となります。
- 建設・購入:200万円
- 補修:100万円
- 賃貸(公営住宅を除く):50万円
制度の申請は、市町村の窓口で行います。申請にはり災証明が必要です。
2-3.住宅の応急修理制度
住宅の応急修理とは災害の被害を受けた家が応急的に修理すれば居住可能となる場合に、自治体が修理費用の一部を負担する制度です。
「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」の世帯では70万6,000円まで、「準半壊」は34万3,000円までの支援を受けられます。なお、り災証明書において「全壊」と判定された家でも修理により引き続き居住が可能となる場合は、制度の対象となります。(2024年2月時点)
2-4.義援金
義援金とは大きな自然災害の際の災害支援や復興を目的とした寄付のうち、被災者に直接渡されるお金のことです。赤十字、赤い羽根共同募金、自治体などが窓口となって義援金を集めます。
集まった義援金は義援金配分委員会で決められた配分基準によって自治体に配分され、被災者へ届けられます。
【関連記事】寄付と義援金の違いは?災害支援における特徴や使い道を比較
3.災害に備えてやっておくべきこと
災害で住宅が被害を受けた場合、公的な支援だけでは足りない場合がほとんどです。そのため、災害に備えて自分でできる対策をしておく必要があります。ここでは、災害に備えてやっておくべきことを解説します。
3-1.予備資金の準備
災害に限らず、日常生活には冠婚葬祭や家電の故障といった臨時の支出が発生するケースがあります。このような突然の出費に備え、予備資金を蓄えておきましょう。金額は毎月の生活費の6カ月分から1年分が目安です。
予備資金はすぐに使えるように、預貯金などでの準備が適しています。また、災害時には電気や通信が止まる可能性があるため、ネットバンキングやクレジットカードは使えない場合があります。当座のお金として、5万円から10万円程度をすぐに持ち出せるようにしておくとよいでしょう。
【関連記事】収入と投資の割合はどうする?目安や資金作りの方法をFPが解説
3-2.火災保険の見直し
災害で住宅が被害を受けた場合、住宅の建て替えや生活再建に多額の費用がかかります。火災保険は火災だけでなく、自然災害で受けた損害もカバーできます。そのため、いざというときに役立つように火災保険の見直しは大切です。
自然災害が頻繁に発生したため、火災保険料の値上げ傾向にあります。(※参照:日本損害保険協会「火災保険元受正味保険料の推移」)
保険期間はなるべく長く設定すると、保険料を抑えられます。
地震保険について
地震保険とは地震や噴火、これらによる津波で住宅や家財が被害を受けた場合に補償してくれる保険です。地震保険は火災保険の特約として付帯するものであり、単独では加入できません。地震保険の補償額は、火災保険の補償額の50%が上限となっています。
地震による火災や住宅の倒壊は、火災保険に加入しているだけでは補償を受けられません。地震のリスクを考慮し、地震保険の付帯を検討しましょう。
3-3.防災グッズの準備
災害で住宅が被害を受けた場合、一時的に避難する必要があるかもしれません。その際に必要なものを防災グッズと呼びます。防災グッズには、以下のようなものがあります。
- 食料品:水や保存食など
- 衛生用品:マスクやトイレットペーパーなど
- 生活用品:毛布や着替えなど
- 災害対策用品:懐中電灯やラジオなど
- 身分証明書や保険証などの書類
防災グッズは、家族全員がすぐに取り出せる場所に置いておくことが大切です。消費期限のあるものは定期的に交換しましょう。
3-4.建物の耐震補強
建物の耐震補強とは地震による揺れに強くするために、建物の構造や部材を強化することです。建物の耐震補強は住宅の被害を防ぐだけでなく、人命の保護が期待できます。
耐震改修のためには耐震診断を実施し、建物の耐震性を確認します。耐震性が不足している場合、耐震改修工事が必要です。
耐震改修費用の目安は、以下のとおりです。
- 木造住宅:1棟あたり150万円から200万円
- 鉄筋コンクリート造建物:床面積1㎡あたり1万5,000円から5万円
まとめ
災害で家が全壊した場合、建て替えには3,000万円程度の費用がかかります。公的な支援でまかなえるのは約400万円程度のため、保険などによる自助努力が必要になります。
大規模な災害に備えるには火災保険加入だけでなく、災害被害のリスクの少ない場所にマイホームを建てるといった対策も必要です。
松田 聡子
最新記事 by 松田 聡子 (全て見る)
- 個人の金融資産が2212兆円の過去最高を突破。将来に向けた資産形成のポイントは? - 2024年10月21日
- 高校生が金融教育で学ぶ「貯める・増やす」資産形成の内容は?NISAの仕組みも - 2024年8月8日
- ウェルスナビとROBOPROの違いは?手数料や実績、メリット・デメリットを比較 - 2024年6月22日
- 2024年度の税制改正で子育て世帯はどう変わる?家計のポイントを5つ解説 - 2024年6月9日
- NISAで毎月いくら積立設定するべき?収入や年齢からポイントを解説 - 2024年6月9日