耐震リフォームとは、建物の耐震性を向上させるための改修工事のことです。耐震性向上の改修工事には様々な種類があり、アパートの構造や建材の確認、地震に強い設計や補強工事、耐震装置の導入などが含まれます。
耐震リフォームは地震発生時の対策としてだけでなく、アパートの長寿命化と入居者の安全を確保するために必要な工事です。しかし、内容によっては高額になりやすいので費用相場を確認しておくことが大切です。
この記事では1棟アパートに必要な耐震リフォームについて、費用相場や補助金制度、耐震リフォーム業者を選ぶ際のポイントなどを解説するので、アパートオーナーや不動産経営者の方は参考にしてみてください。
目次
- 1棟アパートに必要な耐震リフォームとは
1-1 基礎補強
1-2 柱や壁の補強
1-3 床の補強
1-4 非構造部分の補強 - 1棟アパートの耐震リフォームにかかる費用相場
2-1 基礎補強
2-2 柱・梁の補強
2-3 壁の補強
2-4 屋根の補強
2-5 防災設備の導入 - 1棟アパートの耐震リフォームで活用できる補助金・融資制度
3-1 地方自治体の補助金制度
3-2 国の補助金制度
3-3 銀行や金融機関の融資制度 - 1棟アパートの耐震リフォーム業者を選ぶポイント
4-1 経験と実績
4-2 施工方法や部材
4-3 価格と予算
4-4 コミュニケーション
4-5 保証内容やアフターサービス - まとめ
1 1棟アパートに必要な耐震リフォームとは
1棟アパートの経営では地震への耐性を高めるための改修工事が重要です。耐震基準を満たしていないアパートが地震発生時に入居者がケガをしたり、物損が発生したりした場合、その責任はアパートの所有者である大家の方にあります。
地震は突然やってくるので、建物を守り、入居者の安全を確保するためにも、アパートが耐震基準を満たしているかの耐震診断を受け、必要な際は耐震工事を検討することが大切です。
1-1 基礎補強
アパートの基礎を補強し地震時の揺れに対する安定性を向上させる工事です。地震の際に建物が揺れると、基礎の弱い建物は傾いたり倒壊したりする危険性があるため、基礎補強によって建物の安定性を確保することができます。
1-2 柱や壁の補強
アパートの柱や壁を補強することで、建物全体の耐震性を向上させます。柱や壁は建物の骨格を支える部分であり地震時には大きな力がかかります。そこで柱や壁を補強することで、建物の耐震性を強化し、倒壊や損傷を防ぐことができます。
1-3 床の補強
アパートの床を補強し、地震時の揺れによる損傷を軽減させます。床は建物の基底となり地震の際には大きな力がかかります。床の補強によって建物の耐震性を向上させ、床抜け、天井の崩落などによる埋没などのリスクから住民の安全を確保することができます。
1-4 非構造部分の補強
窓やドアなどの非構造部分の補強を行うことで、地震時の破損を防ぐことができます。非構造部分は建物の一部ですが、地震の際には破損しやすいため、窓やドアの補強によって、建物全体の耐震性を高め、住民の安全を守る必要があります。
2 1棟アパートの耐震リフォームにかかる費用相場
1棟アパートの耐震リフォームにかかる費用は、建物の面積や工事内容によって異なります。
例えば、30坪程度の小規模アパートの耐震工事では、約300万円~500万円程度が必要です。小規模アパートでは、基礎補強や柱・梁の補強、壁の補強などの工事が主に行われるほか、防災設備の導入も考慮する場合もあります。
次に、60坪程度の中規模アパートでは、約500万円~800万円程度となります。小規模アパートに加えて床の補強や屋根の補強などの工事も行われることがあるなど、耐震リフォームの範囲が広がるため、費用も増える傾向にあります。
100坪を超える大規模アパートでは、約800万円~1500万円程度の工事費用がかかります。中規模アパートに加えて開口部の補強や耐震工法の導入など、総合的な耐震対策が必要となります。
以下、主な耐震工事別の費用相場を確認してみましょう。
2-1 基礎補強
基礎補強はアパートの土台である基礎を補強する工事です。基礎補強には、鉄筋の追加や基礎の補強材料の設置が含まれます。アパートの規模や基礎の状態によって費用が異なりますが、約300万円~500万円の費用が必要です。
2-2 柱・梁の補強
アパートの柱や梁を補強する工事です。柱や梁は建物の骨組みを支える重要な部分であり、地震によって大きな力が加わります。そのため、柱や梁の補強には鉄筋や補強材料の追加、補強金物の取り付けなどが含まれるなど規模が大きくなります。工事費用は、アパートの規模や柱・梁の数、補強の方法によって異なりますが、約100万円~300万円です。
2-3 壁の補強
壁は建物の強度を保つ役割を果たしており、地震時には大きな負荷がかかります。壁の補強には、壁に補強材料を取り付ける方法や壁を補強する工法を用いる方法があります。工事費用は、アパートの規模や壁の面積、補強の方法によって異なりますが、約100万円~200万円程度です。
2-4 屋根の補強
屋根はアパートの上部を覆う重要な部分であり、地震時には風圧や揺れによって大きな負荷がかかります。屋根の補強には、屋根材の強化や補強材料の設置などが含まれます。屋根の補強費用は、アパートの規模や屋根の面積、補強の方法によって異なりますが、目安として100万円~200万円程度を見込んでおきましょう。
2-5 防災設備の導入
地震時の安全確保を目的とした設備の追加工事です。具体的には、地震計や火災報知器、非常用照明などが含まれます。防災設備の導入には、設備の種類や規模によって費用が異なりますが、約50万円~100万円程度が必要になります。
3 1棟アパートの耐震リフォームで活用できる補助金・融資制度
1棟アパートの耐震リフォームで活用できる補助金制度をご紹介します
3-1 地方自治体の補助金制度
東京都では、アパートやマンションの耐震改修に対して補助金を提供しており、補助金額は改修内容によって異なりますが、最大で改修費用の30%を補助する場合もあります。
例えば港区では、民間建築物耐震化促進事業として耐震リフォームにかかる費用の一部を補助する「非木造建築物の補強設計の費用助成及び耐震改修工事の費用助成」を提供しています。(※2024年2月時点)
この助成金は、基準を満たした建物での耐震改修工事に対し、住宅の場合は改修工事に要した費用の3分の2(助成限度額600万円)、賃貸マンションの場合は改修工事に要した費用の2分の1(助成限度額3,000万円)を助成しています。
3-2 国の補助金制度
国土交通省では、建築物の耐震改修に対して補助金を出しています。例えば、「住宅・建築物耐震改修事業(住宅・建築物安全ストック形成事業)」では、耐震診断の民間実施に対して国と地方が3分の2を支援してくれます。
また、耐震改修では「個別支援」と「パッケージ支援」から選択可能となっており、個別支援では「補強設計等」に3分の2補助してもらえるほか、建替えや除却に対しては全住宅が対象です。交付率は地域や建物の種類によって異なります。
一方、パッケージ支援はマンションを除く住宅が対象で、「補強設計等費及び耐震改修工事費」に対して国と地方で合算して100万円が交付されます。ただし、工事費の8割までが限度で、市区町村ごとに条件が設けられています。
3-3 銀行や金融機関の融資制度
国や自治体の補助金とは別に、銀行や住宅金融支援機構などの金融機関では耐震リフォーム工事に対する融資を行っています。
例えば東邦銀行では、「耐震改修ローン」として旧耐震基準により建築された事業用建物を所有し、耐震改修工事を行う法人および個人事業主に対し、事業用建物の耐震改修に必要な資金(3億円以内)を融資しています。
また、住宅金融支援機構の「リフォーム融資(耐震改修工事)」では、限度額1,500万円(10万円以上1万円単位)の融資を受けられます。機構の定める耐震性に関する基準に適合する必要があるなどいくつか条件はありますが、全期間固定⾦利型であることが特徴で、比較的に低い金利で融資を活用することが可能です。
なお、上記は一例であり、実際の補助金制度や融資条件は地域や金融機関、申し込みのタイミングによって異なります。耐震リフォームを検討される際には、関連機関のホームページや窓口で最新の情報をご確認ください。また、補助金の利用には一定の条件や手続きが必要になる点にも留意しましょう。
4 1棟アパートの耐震リフォーム業者を選ぶポイント
信頼できる耐震リフォーム業者を選ぶ際は、注意点もあります。以下、詳しく確認してきましょう。
4-1 経験と実績
耐震リフォームの経験と実績が豊富な業者から選ぶようにしましょう。施工業者のホームページなどに掲載されている過去の施工事例や利用者のレビューを確認するなどして、業者の信頼性をチェックします。業者が地域で長く営業していれば、地域の状況や規制に詳しい可能性も高くなります。
また、耐震リフォームには専門的な知識と経験が必要になるので、事前に業者の施工実績や技術力を確認することも欠かせません。すべての建築士が耐震診断の専門家というわけではないため、耐震診断士や耐震技術認定者などの資格の有無、過去の施工実績などをチェックし、信頼できる業者を選ぶようにしましょう。過去に耐震リフォームの実績がない場合、施工ミスや工事の遅延などのトラブルが発生する可能性も高くなります。
4-2 施工方法や部材
業者の施工方法や使用する材料にも注目します。耐震性の強い部材や筋交いといった高耐震工法を取り入れている業者には安全性の高いリフォーム工事を期待できます。また、業者が施工前にしっかりと現地調査を行い、アパートの状態を正確に把握しているかどうかも確認しましょう。
4-3 価格と予算
耐震リフォームの費用を比較し、予算に合った業者を選定します。耐震リフォームの見積もりや工事内容に透明性がなく、不当な高額請求を行う業者は料金の明示や工事の進行状況の報告などを怠り、最終的には予算を大幅にオーバーさせる可能性があります。
ただし、予算を優先して十分な耐震性能を得られないのであれば、耐震化工事を行う意味がありません。品質と価格のバランスを考慮し、コストパフォーマンスの高い業者を選ぶことが重要です。また、業者に見積もりを依頼する際には、明確な費用の内訳を求めることも大切です。
4-4 コミュニケーション
業者とのコミュニケーションがスムーズであるかも重要なポイントです。リフォームプロセスやスケジュールについての意思疎通が円滑に行われる業者を選ぶことで、余計なトラブルを避けることができます。
また、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで最適な業者を選ぶことができます。また、専門家のアドバイスや地域の耐震リフォーム相談窓口などの情報も活用するなどして、相性の良い業者を見つけましょう。
複数のリフォーム会社を比較できる「リショップナビ」
リショップナビは、全国4000社の中からユーザーに適したリフォーム会社を紹介してもらえる月間平均ユーザー数120万人のマッチングサービスです。利用料無料で手軽に見積依頼を出すことが可能なほか、専門スタッフが依頼主の希望に合うリフォーム会社を最大5社まで選定してくれるので、そのあとは時間をかけて丁寧に検討できるのが特徴です。
リショップナビに登録されているリフォーム会社は、全国で厳しい加盟審査をクリアした約4000社です。都道府県と市区町村を選択すれば、自宅近くの業者を探すことが可能なほか、「水回り」「屋内」「屋外」等のリフォーム箇所を選択すると、その分野に特化したリフォーム会社を探せる仕組みになっています。また、最大5社から見積もりを取ることができるため、手軽にリフォーム費用の相場を把握できます。
4-5 保証内容やアフターサービス
業者が提供する保証やアフターサービスの内容を確認しましょう。耐震リフォーム後のアフターフォローや万が一の不具合対応など、保証内容の充実している業者は安心して任せることができます。このように、信頼性や実績、専門性を示す資格を持っているかなど様々な要素を考慮し、最適な耐震リフォーム業者を選ぶことが大切です。
まとめ
アパートの耐震リフォームは、入居者の安全性や建物価値の維持に重要な役割を果たします。耐震基準への準拠に加え、建物の構造や法定耐用年数、地震保険の加入状況などを考慮しながら、耐震リフォームを行うことが求められます。これから1棟アパートの耐震工事を検討されている方は、こちらの記事を参考にじっくり検討してみてください。
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