収入と投資の割合はどうする?目安や資金作りの方法をFPが解説

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給料などの収入のうち、どのくらいを投資に回せるのでしょうか。堅実に投資で資産形成をするには、無理なく続けられる投資額の設定が重要です。この記事では投資に回すお金の考え方と、資産形成につながる積立サービスを紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年9月26日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. データから見る収入からの預貯金や投資に回す割合は?
    1-1.年代別の年間手取り収入からの貯蓄割合
    1-2.収入別の年間手取り収入からの貯蓄割合
  2. 目的別の資金の考え方
    2-1.家計を見直す
    2-2.目的別の資金を確認
  3. 投資に回す資金を増やす方法
    3-1.先取り貯蓄
    3-2.保険の見直し
    3-3.利用しないサブスクなどの解約
  4. 資産形成層に適した積立投資のサービス3選
    4-1.つみたてNISA
    4-2.iDeCo(個人型確定拠出年金)
    4-3.ロボアドバイザー
  5. まとめ

1.データから見る収入からの預貯金や投資に回す割合は?

収入から投資に回す金額は、いくらが適正なのでしょうか。最初に、金融広報中央委員会のデータをもとに、ボーナスも含めた手取り収入から、預貯金や株式などの金融資産に回す割合を紹介します。

1-1.年代別の年間手取り収入からの貯蓄割合

年代別の手取り収入から貯蓄に回す割合は以下のとおりです。

夫婦世帯

年代 手取りからの貯蓄割合
20歳代 17%
30歳代 14%
40歳代 12%
50歳代 12%

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年

単身世帯

年代 手取りからの貯蓄割合
20歳代 20%
30歳代 16%
40歳代 16%
50歳代 12%

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和3年

夫婦世帯は若いほど貯蓄割合が高いのは、教育費のかかり方が影響していると考えられます。また、単身世帯は夫婦世帯に比べて貯蓄割合が高めです。老後資金などの必要性が高いことが要因でしょう。

1-2.収入別の年間手取り収入からの貯蓄割合

次に、年間収入別の手取り収入から貯蓄に回す割合も見てみましょう。

夫婦世帯

年間収入 手取りからの貯蓄割合
300万円未満 6%
300~500万円未満 8%
500~750万円未満 12%
750~1,000万円未満 14%
1,000~1,200万円未満 15%
1,200万円以上 21%

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年

単身世帯

年間収入 手取りからの貯蓄割合
300万円未満 9%
300~500万円未満 17%
500~750万円未満 23%
750~1,000万円未満 33%
1,000~1,200万円未満 27%
1,200万円以上 37%

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和3年

収入が多い世帯ほど、貯蓄に回す割合は多くなることがわかります。

2.目的別の資金の考え方

データからは年代や収入金額ごとに、収入から貯蓄に回す金額に差があることがわかりました。無理なく積立投資が続けられる金額はケースバイケースです。目安としては最低でも収入の10%は貯蓄にお金が回せるようにすることが望ましいといえます。

以下では、貯蓄を行う目的に応じた考え方について解説します。

2-1.家計を見直す

まずは家計をおおまかに見直すため、簡単でかまわないので家計簿をつけましょう。そこで、支出の内訳を確認します。最低限の生活費、削減できそうな支出、現在貯蓄に回している金額はいくらでしょうか。そのうえで、無理なく続けられそうな貯蓄額を決めます。貯蓄に回すお金が決まったら、以下のように目的別に振り分けます。

2-2.目的別の資金を確認

貯蓄に回すお金は全額投資に回したい人もいるでしょう。しかし、全額をリスクのある投資に回す前に資金を目的別に分けて、必要に応じて資金を振り分ける必要があるのです。

緊急予備資金

投資を始めるにあたり、失業や病気などに備えたすぐに使える資金を準備しておかなければなりません。この資金を緊急予備資金または生活防衛費と呼びます。緊急予備資金の目安は、月間生活費の6カ月分といわれています。

緊急予備資金は何かあったときにすぐに使えないと困るため、預貯金や財形貯蓄などでの準備が必要です。そして、このお金は投資に回してはいけません。

使う予定のある資金

マイホームを取得する予定があったり、マイカーの買い換えの予定があったりする場合の資金は、投資の資金と分けて考える必要があります。近い将来に使う予定のあるお金は、予定通り準備できないと困るからです。リスクのある投資で減らしてしまうことがないようにしましょう。

使う予定のある資金は専用の預金口座などで準備し、投資のお金とは分けて管理します。

すぐに使う予定のない資金

緊急予備資金も準備できて当面お金を準備すべきライフイベントもなければ、貯蓄に回せるお金は全額すぐに使う予定のない余裕資金です。投資で資産形成していきましょう。

投資に回せるお金は、家計や個人の状況によって変化します。臨機応変に無理のない金額で投資していくことが大切です。

3.投資に回す資金を増やす方法

投資は無理なく続けられる金額を設定すべきですが、あまり少ないと資産形成が難しくなります。余裕がないときでも家計を見直して、手取りの10%(できれば15%)は投資に回したいところです。現状、投資金額が少ない場合に、投資に回すお金を増やす方法を紹介します。

3-1.先取り貯蓄

先取り貯蓄とは、あらかじめ決めた貯蓄額を収入から差し引いて、残ったお金で生活費をやりくりする方法です。

生活費を使った残りを貯蓄しようとしても、上手くいかない人は少なくありません。そこで、一定の金額を先に投資してしまって残りを生活費にすると、家計管理が苦手な人でも投資が続けやすくなります。

ポイントは無理なく続けられる金額の決め方です。あまり少ないと資産形成につながらない一方、多すぎて生活できなくなっては本末転倒です。そのため、家計の見直しが大切になります。

3-2.保険の見直し

ムダな支出を見直す場合に効果的なのが、固定費の見直しです。代表的な固定費に、生命保険料などがあります。

食費などの変動費の節約は、物価変動などでままならないこともあります。しかし、一度減った保険料は継続していれば変わりません。効果的でストレスの少ない節約というわけです。

3-3.利用しないサブスクなどの解約

固定費の見直しで保険料以外にチェックしたいのが、利用頻度の低い月額課金サービス(サブスクリプション)です。契約中のサービスで最近使わなくなったものはないでしょうか。1契約ごとの金額は少なくても意外に大きな金額になっている場合があります。

浮いたお金を投資に回せば、長期では大きな差が生まれます。

4.資産形成層に適した積立投資のサービス3選

積立投資は誰でも取り組める、資産形成に効果的な手法です。少額から始められ、一度積立設定をすると自動的に商品の買付が行われます。ここでは、長期の資産形成に適した積立投資のサービスを紹介します。

4-1.つみたてNISA

積立NISAはNISA(少額投資非課税制度)の中で、長期の積立投資で得た運用益が非課税になる制度です。通常の投資で得た利益には20.315%の税金がかかります。しかし、つみたてNISAでは20年間税金がかからず、運用益の全額が受け取れるのです。

つみたてNISAの特色

つみたてNISAには以下のような特徴があります。

投資の目的 問わない
最低投資額 金融機関ごとに異なるが、100円から
年間非課税限度額 40万円
非課税期間 20年
引き出し制限 なし
スイッチング(投資信託の乗り換え) 不可
運用商品 金融庁が選定した長期・分散・積立に適した投資信託およびETF

つみたてNISAの商品は金融庁が厳選しており、本数も投資信託とETFを合わせて215本(2022年8月18日時点)と多くありません。初心者にとっては、商品が多すぎない点もメリットといえます。

つみたてNISAの注意点

つみたてNISAでは、1年間に使い切れなかった非課税枠の翌年以降への繰り越しはできません。また、資産の引き出しは自由にできますが、その場合に非課税枠の再利用はできません。

つみたてNISAの始め方

つみたてNISAは証券会社以外に銀行や郵便局など多くの金融機関で取り扱っています。取扱商品数やサービスの利便性から、 SBI証券や楽天証券など大手ネット証券が便利です。一般的なつみたてNISAを始める手順は以下のとおりです。

  1. NISA口座開設(証券口座がなければ同時に申込む)
  2. 投資信託を選び、積立額を決める
  3. 積立の設定をする

4-2.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは公的年金に上乗せする個人年金制度で、加入者が自分で運用し、60歳以降に年金原資を受け取る仕組みです。iDeCoは毎月の掛金を投資信託や定期預金などで積み立てていく方法です。

iDeCoには、以下のような手厚い税の優遇があります。

  • 掛金が全額所得控除の対象になる
  • 運用中の利益には課税されない
  • 受け取り時も所得控除の対象になる

iDeCoの特色

iDeCoには以下のような特徴があります。

投資の目的 老後資金
最低投資額 5,000円
月額掛金上限額 加入者の属性による( 1万2,000円から6万8,000円まで)
運用期間 60歳(または65歳)まで
引き出し制限 60歳まで
スイッチング(投資信託の乗り換え) 可能
運用商品 金融機関が選定した定期預金や投資信託等(必ず元本確保型を含む)

iDeCoの注意点

iDeCoの年金資産は原則として60歳まで引き出しができません。そのため、無理のない積立額で続けることが大切です。

iDeCoの始め方

iDeCoを始めるには運営管理機関(窓口になる金融機関)を選びます。取扱商品が多く、サービスの利便性がよいのはSBI証券や楽天証券などです。iDeCoを始める流れは以下のとおりです。

  1. 運営管理機関を決める
  2. 運営管理機関に申込む
  3. ポートフォリオを決め、運用商品を選ぶ
  4. Webサイトから掛金の配分指定をする

4-3.ロボアドバイザー

自動積立機能のあるロボアドバイザーを利用すると、運用商品の選定から買付までをすべてお任せできます。ロボアドバイザーとは投資にAIを活用した金融サービスで、代表的なサービスにWealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO+docomoがあります。

ロボアドバイザーには資産運用の提案のみを行う「アドバイス型」と運用を代行してくれる「投資一任型」の2種類があります。簡単な質問に答えるだけで、ユーザーに最適な資産運用のプランを提案してくれる仕組みです。

投資一任型ロボアドバイザーの自動積立機能を活用すれば、商品の買付だけでなくリバランスも自動的に行ってもらえます。

ロボアドバイザーの特色

ロボアドバイザーの投資手法は、ユーザーのリスク許容度に合わせた分散投資です。最低投資金額はサービスごとに異なりますが、積立投資は1万円程度から始められます。

ロボアドバイザーの注意点

ロボアドバイザーはユーザーに最適な運用商品を選定し買付も行ってくれますが、元本保証ではありません。適切な投資判断を行っても損をする可能性はあり、損失はユーザーが負わなければなりません。

また、投資のすべてを「お任せ」できる反面、ユーザーに投資の知識が積み上がらないデメリットもあります。ロボアドバイザーで投資を始めたら、ユーザーもなるべく投資に関心を持つようにしましょう。

ロボアドバイザーで積立投資の始め方

ここでは、ウェルスナビで積立投資を始める手順を紹介します。

  1. 無料診断を受ける(スキップできる)
  2. ユーザー登録をする
  3. 口座開設をする
  4. ログインし、運用プラン診断を受け、運用プランを決める
  5. 入金する
  6. 「積立」メニューから自動積立を申込む(積立額とボーナス時加算の設定)

まとめ

収入から投資に回すお金の決め方には、明確なルールなどはありません。家計の状況を見ながら、最適な金額を考えてみてください。支出が増えたから減額、昇給したから増額するなど、状況の変化にも柔軟に対応しましょう。

積立投資は資産形成の基本になります。無理なくコツコツ続けましょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント