2022年も残すところあと2ヵ月余りとなりましたが、今年は歴史的にも稀な、急速なペースで円安が続いた年として記憶されることとなりそうです。また、日経平均株価も9月末日で年初から3,300円もの下落をしています。
そこで今回は、今年続いている円安についての解説と、日本株の主要指標である日経平均の相関などについて、詳しく解説していきます。
※2022年9月30日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 止まらない円安の背景
1-1.2022年は歴史的な円安の年に
1-2.円安の要因 - 日本株とドル円の関係性と変化
2-1.日本株とドル円の相関
2-2.足元では正の相関から負の相関へ
2-3.双方に影響を与えるアメリカの金融政策 - テクニカル分析で見たドル円と日本株
3-1.ボリンジャーバンドで見るドル円と日本株の動き
3-2.二つのチャートを利用したテクニカル分析
3-3.今後の動向 - まとめ
1.止まらない円安の背景
まずはなぜ円安傾向が発生しているのか、その理由をまとめます。
1-1.2022年は歴史的な円安の年に
2022年1月3日に115.110円からスタートしたドル円相場は、9月のFOMCが開催された22日のタイミングで、146円に迫る145.902円まで上昇し、年初から30円超もの大幅な円安となりました。
2021年の値動きの幅が8.2円であったことから考えても、2022年の円安が相当急激なものであるかがわかるでしょう。
この大幅かつ急速に進む円安に対して、政府は介入を実施し、ドル円レートは一時140円台まで下落するものの、地合いは変わらず、足元の9月4週目では144円台で推移しています。
1-2.円安の要因
ここまでの急速かつ大幅な円安の要因としては、今年に入りアメリカを始めとする世界各国が政策金利を上げ始めている一方で、日本は頑なに金融緩和政策を維持しているため、2国間の金利差が開くことにより、円が売られているという側面が最も大きいと言えるでしょう。
金融政策のうち、最も経済に与える影響が大きなものが、政策金利のコントロールです。
政策金利の調整は景気の過熱・後退に対する打ち手となりますが、2020年に発生したパンデミック対策として各国政府・中央銀行が実施した異次元の経済対策やゼロ金利政策をきっかけとして、世界経済はパンデミックのダメージを最小に抑えるよう試みてきました。
パンデミックから回復している中で、コモディティ価格を中心として原材料が高騰、インフレ率が急速に上昇し、そこにロシアによるウクライナ侵攻などが物価上昇に拍車をかけ、各国中央銀行が政策金利を急速に引き上げインフレ抑制の対応に迫られているという背景があります。
特にアメリカがどのような金融政策を取るかという点が、日本経済に与える影響としては大きいと言えます。アメリカの中央銀行であるFRBは、今年の3月から政策金利を上げ始め、今年の9月には3回連続での75ベーシスポイント(0.75%)の利上げと、22年末のFF金利目標4.375%と、1年で4%を超える急速な引き上げが予想されています。
2.日本株とドル円の関係性と変化
これまでの日本株とドル円の相関についても、今回は変化が見られます。
2-1.日本株とドル円の相関
日本株とドル円には昔から正の相関関係があることが知られています。これは、日経平均が上がれば円の価値も下がるため円安、日経平均が下がる際には円の価値が上がるため円高となる傾向が強い、というものです。
この動きの背景には、日本がバブルとも言われる際に輸出企業が主導で経済が回復し、円安は日本に良い影響を与えるということが定着したことから、このような動きになっています。
通常、日本以外の国ではその国の株価が上昇すると自国通貨が上昇するという動きでしたが、日本だけは特異な性質を持っていたということになります。
少し古いデータですが、2013年の過去1年間の相関係数を算出すると0.9386、2011年からの過去3年間では0.9739と非常に強い相関関係になっていた時期もありました。
2-2.足元では正の相関から負の相関へ
2022年のドル円と日経平均の過去1年間の相関係数は、2022年9月23日時点で-0.3198、過去3年間では0.302と、かつてほどの強い相関はなくなっています。
また、足元では逆相関となっていますが、この背景として今回の円安が日本株の売買によるものではなく、政策金利の拡大から来ている点には注意が必要です。つまり、金利の高い国の国債を購入するために、円が売られていると言えるでしょう。
2-3.双方に影響を与えるアメリカの金融政策
政策金利の役割は、通貨の流通量のコントロールです。
金融機関は借りた金利よりも高い金利で顧客に貸し出しをしないと利益が生まれないため、金利が低い時は、資金調達コストが下がり金融機関は資金を借入れやすくなり、結果的に貸出先である顧客に低い金利で資金を提供することができます。
金利の低さは資金の借りやすさにつながり、通貨の流通量が増え、企業への投資も増えるため株価は上がりやすい地合いが形成されます。
逆に金利が高いときは、その逆となります。
つまり、金利を上げている時期は国債の金利があがるため、リスクアセットとされる株式市場から資金が流出する結果、株価は下がる傾向となります。そして金利の安い通貨から高い通貨へと資金がながれるため、日経平均も円の価値も下がるという力学が働きます。
3.テクニカル分析で見たドル円と日本株
では、ドル円と日本株の値動きを、テクニカル分析の観点からチャートを見つつ解説していきます。
3-1.ボリンジャーバンドで見るドル円と日本株の動き
上のチャートは、ドル円(上部)と日経平均(下部)の動きを2σのボリンジャーバンドで見たものです。
足元では、逆相関となっているため解釈は異なりますが、正の相関をしている際には、ドル円がバンドウォークしている期間は日経平均でもバンドウォークが発生していたり、どちらかがバンドブレイクすると一方も追随していたりすることが多いとわかります。
常にどちらかが先行して発生する性質のものではないため、トレードの参考とするには経験が必要な部分もありますが、両者の動きを頭にいれてトレードをすることにより、成功する確率を高めることができるでしょう。
3-2.二つのチャートを利用したテクニカル分析
上記の例のように2つのチャートを利用してテクニカル分析をすることは、初心者の方にとっては難しいかもしれません。そのような方のためのアドバイスとしては、テクニカル分析をする際にディテールにこだわり過ぎないことが大切です。
チャートはテクニカルで動いているわけではなく、ファンダメンタルズが起因となり動いた結果が示されているため、金融商品が置かれている環境が違えば、反応の出方も違って当然だと言えるでしょう。
そのため、二つのチャートを利用したテクニカル分析においては、あくまで傾向を掴むためにディテールに拘り過ぎず、大局観を掴む意識で行うと良いでしょう。
3-3.今後の動向
株式市場やFX市場においてトレードで利益を上げるためには、テクニカル分析に加えて、ファンダメンタルズ分析も必要です。
現在の金融市場は、各国中央銀行による政策金利の引き上げの強さに大きく影響されていると言えます。ドル円も日経平均もとりわけアメリカのFRBの政策金利の影響を強く受けますが、今後も引き続き、この傾向は続く見込みです。
特に次の政策金利の引き上げのタイミングで、何ベーシスポイントの利上げが行われそうかという点と、そこに強く影響する雇用統計とインフレ指標に今後も市場の関心が集まると言えるでしょう。
FRBの目下の課題は、8%台まで高まったインフレ率をいかに2%まで下げるかということです。その取り組みは、2022年だけではなく2023年末までは続く予定ですが、その後は政策金利も引き下げへと転換する予定です(参照:JETRO「米FRB、政策金利を3会合連続で0.75ポイント引き上げ、年末までに4%台半ばまで利上げの見通し」)。
つまり、向こう2年の大局観としては、来年いっぱいは株安・円安の傾向が続き、政策金利の引き下げが期待される時期から、相場の大転換が始まると見てよいでしょう。
まとめ
株安・円安の傾向はしばらく続きそうではあるものの、下落・上昇相場の中でも大きな波、反動は来るのが相場です。
トレーダーにとっては、相場に対する大局観を持つ一方で、時事問題のキャッチアップとテクニカル分析を交えた総合的な判断が必要となるでしょう。
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中島 翔
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