管理費・修繕積立金はマンションの主に共有部分の保守点検や建物の修理等に用いるお金です。これらはマンションの快適な居住環境のメンテナンスに必要な費用ですが、支払えずに滞納してしまうケースは少なくありません。
国土交通省「マンション総合調査結果」によると、24.8%の世帯が「管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納した経験がある」という調査結果があります。
事情により管理費・修繕積立金を滞納しているマンションはどのように売却を行えば良いのでしょうか?本記事では、滞納金のあるマンション売却の対処法や注意点を解説していきます。
目次
- 管理費・修繕積立金とは
1-1.管理費や修繕積立金を滞納している世帯は24.8% - 管理費や修繕積立金を滞納しているマンション売却の対処法
2-1.重要事項説明書に滞納の旨を記載する
2-2.滞納により売却価格が大幅に下がるケースは清算を検討する - 管理費や修繕積立金を滞納しているマンション売却の注意点
3-1.アンダーローンとオーバーローン
3-2.滞納期間が長くなると競売の可能性がある - まとめ
1.管理費・修繕積立金とは
マンションの管理費は主に共有部分に使用されます。例えば、階段や廊下の清掃、エレベーターや自動ドアの点検・修理、給排水設備の保守・点検等に管理費が利用されます。修繕積立金は外壁・屋根等、建物の修理のために必要となる費用の積立金です。
管理費・修繕積立金を滞納している際、買主は売主の支払い義務を引き継ぐことになりますので、滞納がある事実と滞納した金額を説明する義務があります。
現在の法律では、仲介業者に対し買主への説明義務を負わせることにより、買主が予期せぬ管理費・修繕積立金の支払義務を負わない方向性となっています。管理費・修繕積立金に滞納があり買主に告知しなかった場合、トラブルが起こる可能性がありますので必ず仲介業者を通じて告知しましょう。
1-1.管理費や修繕積立金を滞納している世帯は24.8%
2018年に国土交通省が行った「マンション総合調査結果」によると、管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納している世帯は全体の24.8%となっています。雇用・経済状況の悪化や諸事情により払えないケースも考えられ、そのまま売却という流れになる世帯も少なくありません。
管理費・修繕積立金を滞納している物件でも売却は可能です。滞納したことを告知した上で購入希望者が「それでも購入したい」と判断した時は売買が成立し、マンションを通常と同じ流れで売却できます。
ただし、相場の売却価格より低くなる可能性があり、滞納した管理費・修繕積立金を差し引いた金額で売却が成立するケースが多い事をあらかじめおさえておきましょう。
2.管理費や修繕積立金を滞納しているマンション売却の対処法
滞納金のあるマンション売却には、下記2つの注意点があります。
- 重要事項説明書に滞納の旨を記載する
- 滞納により売却価格が大幅に下がるケースは滞納金を清算する
重要事項説明書に滞納がある事を記載し、仲介業者に説明してもらう事で後のトラブルを防ぐ事が出来ます。売却価格が大幅に下がりそうなケースでは、可能であれば滞納した管理費・修繕積立金の清算を検討しましょう。
2-1.重要事項説明書に滞納の旨を記載する
重要事項説明書は、複雑な不動産取引で買主側が予期せぬ損害を被ることのないように専門的な知識、経験、調査能力を持つ宅地建物取引業者が物件の権利関係や取引条件の明示等を書面化したものです。
宅地建物取引業法により、「宅地建物取引業者は、取引の相手方に対し契約が成立するまでの間に取引に係る重要事項について、書面を交付して説明させなければならない」と義務付けられています。
滞納があることを告知しなかった場合、損害賠償を請求されるケースもありますので必ず購入希望者に仲介業者を通じて告知が必要です。滞納した金額が分からない場合には、不動産会社からマンションの管理組合に問い合わせてもらいましょう。
2-2.滞納により売却価格が大幅に下がるケースは清算を検討する
やむを得ない事情で管理費・修繕積立金を滞納している場合でも、購入希望者が「他の住人に知られてしまっているのでは」「管理組合に良く思われてないのでは」といった推測からなかなか買い手が見つからず、売却価格が相場より大幅に安くなってしまうケースがあります。
可能であれば、滞納した管理費・修繕積立金を支払った後に売却を行うと、売却価格が下がる可能性が低くなります。不動産は大きな買い物であり、購入希望者は慎重に検討するケースが多いため、できる限り不安要素を取り除いておきましょう。
3.管理費や修繕積立金を滞納しているマンション売却の注意点
不動産の売却にあたって重要となる点の1つは、ローン残債と売却価格の比較をすることです。ローンの残債を金融機関に確認しつつ、不動産会社へ査定依頼をしましょう。
不動産査定ではできるだけ複数の不動産会社の査定を受け、査定結果や査定根拠を比較することが重要です。複数社の査定を一括で受けられる「不動産一括査定サイト」の利用を検討してみましょう。
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ローンの残債が売却価格を上回る(オーバーローン)か、下回る(アンダーローン)かで売却の方向性が変わってきます。ローンが残っている物件は試算を行ってから売却活動をスタートさせることが大切です。
3-1.アンダーローンとオーバーローン
売却予定のマンションにローンが残っている場合、売却活動の前にローンの残債と売却価格を比較しましょう。
ローンの残債が売却価格を上回る「オーバーローン」である場合、売却後もローンが残ることになります。
一方でローンの残債が売却価格を下回る「アンダーローン」の状態は、マンションの価値がローンの残債より上となり、売却費用でローンを完済した後も手元に資金が残ります。
管理費や修繕積立金を滞納しているマンションの場合、試算を行うにあたり滞納した金額を売却価格から差し引く必要があります。それぞれのパターンを見て行きましょう。
アンダーローンのケース
売却費用が1600万円のマンションで100万円の滞納金があり、ローンの残債が1400万円の場合は手元に100万円の資金が残ります。
(1600万円(売却価格)-100万円(滞納金))-1400万円(ローン残債)=100万円
オーバーローンのケース
売却価格が想定より200万円より安い1400万円になってしまった場合は、100万円の負債が残ってしまいます。
(1400万円(売却価格)-100万円(滞納金))-1400万円(ローン残債)=-100万円
滞納した期間が長くなると競売にかけられてしまう可能性があります。滞納金を清算できない場合やオーバーローンになってしまうケースでは任意売却を検討してみましょう。
3-2.滞納期間が長くなると競売の可能性がある
管理費・修繕積立金の滞納によりマンションの修理や、設備の保守・点検が困難となった際には、管理組合から競売を請求される可能性があります。
競売にかけられると、新聞やネット上に住居の情報が掲載され第三者に知られてしまう、相場の価格の7割前後と安く売却されてしまう、最終的には立ち退きを要求される、等の事態になります。
滞納金を支払えない時やオーバーローンとなってしまうケースでは、競売となってしまう可能性があります。このような状況では、任意売却を検討してみましょう。
任意売却とはローンを契約している金融機関に承諾を得て売却し、家を差し押さえる権利(抵当権)を外してもらう売却方法です。売却しても残債が残るオーバーローンである場合は、金融機関と話し合って返済方法や期間を決めていきます。
ただし、金融機関によっては任意売却が認められない事があり、最低売却価格に対しても金融機関の許可が必要となります。まずは滞納状況を金融機関に相談し、任意売却が可能かどうか、可能である場合はどのような条件となるか、確認しておきましょう。
【関連記事】不動産の任意売却とは?メリット・デメリットや売却手順を解説
まとめ
管理費・修繕積立金の滞納があるマンションは売却価格が相場より低い傾向にあり、ローンが残っている物件はローンの残債と売却価格の比較が難しくなります。可能であれば滞納金を清算する事で、スムーズな売却活動を行うことができます。
事情により滞納金が支払えず滞納金が高額である場合、オーバーローンになってしまうケースでは任意売却が検討できます。競売にかけられてしまうことを防ぐため、早めに金融機関に問い合わせ、対処していくことが大切です。
田中 あさみ
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