不動産投資を成功させる上でキャッシュフローはとても重要なものです。キャッシュフローとは現金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことで、不動産投資では、得られる収入から支出を引いて手元に残る資金(もしくは流出する資金)がいくらなのかを見ることになります。
キャッシュフローがプラスであれば不動産をより健全に運用できることが考えられますので、不動産投資においてはキャッシュフローをより多くのプラスにできるような運用の仕方が求められます。より多くキャッシュを得るためには、どのように運用をすれば良いのでしょうか。
この記事ではキャッシュフローが不動産投資においてどれくらい重要なのかといったことや、キャッシュフローのプラスを大きくするための運用方法についてご紹介します。
目次
- 不動産投資でキャッシュフローが重要な理由
1-1.手元の現金が少ないと不動産運用が行き詰まることも
1-2.1-2.キャッシュフローがプラスなら生活資金や給与収入などを使わずに済む
1-3.キャッシュフローのプラスが大きい物件は売却の際に有利になる - 不動産投資における黒字キャッシュフローの有効活用
2-1.空室になった際のローンの返済などに使う
2-2.金利が上昇した際のリスク対応に使用する
2-3.設備が壊れた際の修理費用に使う
2-4.固定資産税などの税金を支払う - 不動産投資でのキャッシュフローの計算方法
- キャッシュフローのプラスをより大きくするための運用の仕方
4-1.頭金をより多く入れる
4-2.できるだけ低い金利でローンを組む
4-3.新築より中古の方がキャッシュフローをプラスにしやすい
4-4.中古の場合短いローンしか組めない可能性がある
4-5.借り換えや繰上返済をする
4-6.家賃を下げない努力をする
4-7.入居率の高い管理会社に管理を委託する - まとめ
1.不動産投資でキャッシュフローが重要な理由
キャッシュフローはどのような理由で重要なのでしょうか。以下では、キャッシュフローの重要性について3つのポイントから見てみましょう。
1-1.手元の現金が少ないと不動産運用が行き詰まることも
不動産投資を進める上では現金がとても重要です。例えば、毎月のローンの返済額が家賃収入より多かったとします。その場合、家賃収入だけでは毎月のローンの返済額が不足してしまいますので、オーナーは自己資金を毎月つぎ込まなければいけません。
そうなると当然、毎月現金は減るだけでストックされることはありません。このような状況ではやがてオーナーの資金が底をつき、ローンが返済できなくなる可能性があります。
また、毎月の家賃収入が黒字であっても、手元の現金がぎりぎりの状態で運用をしていると、入居者からの家賃支払いの遅延や設備の修繕費用、税金の支払いなどのタイミングによっては、運用が行き詰まることもあります。
そのため、効率よく運用を続けて投資を成功させるには、キャッシュフローをプラスにして毎月少しでも積み上げていくようにすることが大切です。現金があれば、大きくは儲からなくても運用を継続することができます。このように、手元に実際に現金がある、ということが、運用を続ける上でとても重要なことだということを認識しておくようにしましょう。
1-2.キャッシュフローがプラスなら生活資金や給与収入などを使わずに済む
キャッシュフローのプラスは多くストックできるに越したことはありませんが、ただストックしておけば良いというものではありません。空室になった際のローンの支払いや設備が壊れた時の修理代、その他の経費に使うものになりますので、運用上重要な役割を果たすものだと言えます。
修理代などの費用が足りないからという理由で、オーナーが自分の貯金から費用を支払うことがありますが、運用が始まったらできるだけプライベートのお金は使わないことが大切です。
不動産投資は事業経営になりますので、効率よく運用するには事業収支の中で資金をやりくりをするのが、本来の形だと言えます。自己資金を使わないようにするためにも、できるだけキャッシュフローのプラスを大きくできる運用を心掛けるようにしましょう。
1-3.キャッシュフローのプラスが大きい物件は売却の際に有利になる
キャッシュフローを多く得るためには、収入源である家賃を高いまま保つことが大切です。キャッシュフローを意識することで、自然と家賃を下げない努力をすることになりますので、その結果家賃収入が下落しにくくなる可能性があります。
家賃収入は物件価格を査定する際の試算にも使われますが、家賃収入が高いほど価格は高くなる傾向にあります。またキャッシュフローが多く得られる物件は安定収入が見込めますので、査定価格が高くなり、売却に有利になる可能性があります。
2.不動産投資におけるストックしたキャッシュの有効活用
毎月の運用の中でキャッシュフローがプラスになる場合も、ストックして終わりではありません。設備の修理代などの運用上の経費は、ストックされたキャッシュで補っていくことができます。他にはどのようなことができるのでしょうか。具体的に見てみましょう。
2-1.空室になった際のローンの返済などに使う
空室になった場合、その間は家賃収入がありませんので、オーナーはローンの返済や管理費の支払いを、家賃以外のお金で行わなければいけません。その場合、オーナーはまずストックされたキャッシュから支払いをする形になります。
空室が長期化すると持ち出し額は数十万円にもなりますので、支払いをしてもお金がなくならないように、キャッシュをより多くストックしておくことが重要になってきます。
2-2.金利が上昇した際のリスク対応に使用する
金利が上昇した場合、一般的に上昇直後にはローン返済金のうち金利部分の割合が上がり、元金が減らされる形になります。また、5年後には返済額そのものが金利上昇に合わせて増やされます。そのため、上げ幅によっては運用に大きな影響があることが考えられます。
そういった場合は、ローンの借り換えをしたり繰上返済をしたりといった、金利上昇に対する対策が求められます。借り換えをしたり繰上返済をしたりするには手数料の支払いにお金がかかりますので、空室になった場合と同じようにストックされたキャッシュから支払いを行う形となります。
2-3.設備が壊れた際の修理費用に使う
設備が壊れた際も、空室になった際や金利上昇した際と同じように蓄積されたキャッシュフローから修理代を支払います。設備の交換にはまとまったお金が必要ですので、手元に現金を貯めておくことは欠かせません。
ケースによっては火災保険で補償が受けられる場合もありますが、補償金の支払いは遅くなりがちなので同様に毎月のキャッシュフローのプラスをストックしていくことが重要になります。
運用に関わる支出は不動産投資を行う上での経費になりますので、基本的にはオーナー個人の貯金から支払いはしないようにするのが正常な運用になります。
2-4.固定資産税などの税金を支払う
固定資産税などの税金も不動産を運用する上での経費になります。そのため、個人のお金ではなく不動産投資で得られたキャッシュから支払う形になります。税金の支払いは忘れた頃にやってきますので、キャッシュをストックしておくことが重要と言えます。
3.不動産投資でのキャッシュフローの計算方法
次にキャッシュフローの計算方法について見てみましょう。
キャッシュ・イン・フロー(資金の流入)の源泉は家賃収入になります。家賃収入などの現金収入から経費などの現金の支払い(キャッシュ・アウト・フロー)を引いて手元に残る資金を見ることになります。このキャッシュフローを見る式は以下のようになります。
1ヵ月の収支=収入(家賃+その他の収入)-支出(ローン返済額+その他の支出)
なお、キャッシュフローは現金の流れを表すものなので、収益から経費を引いたもの(利益)とは異なる点に注意が必要です。利益から逆算する場合は以下のような計算式になります。
1ヵ月の利益=売上-経費+減価償却費-ローン元金の返済額
4.キャッシュフローのプラスをより大きくするための運用の仕方
では、どのように運用すればキャッシュフローのプラスをより多くできるのでしょうか。以下ではそのポイントについて見てみましょう。
4-1.頭金をより多く入れる
頭金を少しでも多く入れることで、借入額が低くなり毎月のローン返済額が少なくなります。そうなると家賃収入との差がその分大きくなり、キャッシュフローが改善されます。頭金の額でどれくらい毎月のキャッシュの額が違うのかを、実際に売りに出ているマンションの事例をもとに試算してみましょう。
物件価格 | 2,500万円 |
利回り | 4.75% |
満室時の年収 | 118.75万円 |
想定月収 | 9.89万円 |
住所 | 東京都新宿区百人町 |
交通 | JR総武線 大久保駅 徒歩3分 |
*不動産情報サイト「ライフルホームズより(2019年9月27日調査)
こちらの物件をフルローンで組んだ場合と、100万円頭金を入れて残りの額でローンを組んだ場合の返済額を比較してみます。(金利2%、返済期間35年)
ローン価格 | 月々の返済額 |
---|---|
2,500万円 | 8万2,815円 |
2,400万円 | 7万9,503円 |
実際にはその他の支払いも生じますので、この通りの金額が残るわけではありませんが、頭金を入れることで毎月3千円以上、年間では4万円弱のキャッシュフローが増えることが確認できます。
4-2.できるだけ低い金利でローンを組む
仮に上記の物件で頭金を100万円入れ、金利2%と1.4%で融資を受けた場合、月々の返済額と年間に蓄積できるキャッシュがいくら違ってくるかも見てみましょう。
ローン価格 | 金利 | 月々の返済額 |
---|---|---|
2,400万円 | 2% | 7万9,503円 |
2,400万円 | 1.4% | 7万2,314円 |
金利が0.6ポイント低くなることで、毎月のキャッシュアウトが7千円以上、年間では8.5万円以上が違ってくることがわかります。
このように、頭金を入れてより低い金利でローンを組むことができれば、毎月のキャッシュアウトを減らしてキャッシュフローのプラスを大きくすることができることがわかります。
4-3.新築より中古の方がキャッシュフローをプラスにしやすい
新築は中古と比較して物件の価格帯が高いために、家賃収入が高くても収支が悪くなりがちで、手元に残る資金が少なくなる可能性があります。そのため、キャッシュフローのプラスを大きくするには新築より中古を選んだ方が効率は良いと言えます。
しかし、新築でも繰上返済やローンの借り換えをすることで毎月の収支は改善できますので、新築マンションで投資をしたいという方は購入後のキャッシュアウトをどうコントロールしていくかを検討して購入することが大切です。
4-4.中古の場合短いローンしか組めない可能性がある
新築より中古の方がキャッシュフローのプラスを大きくしやすいとは言いましたが、必ずしもその通りになるわけではありません。中古物件のローンの返済期間は、新築のように最長期間では組めない可能性があるためです。中古の場合、ローンが組める期間は一般的に法定耐用年数から築年数を引いた期間が目安になります。
中古物件のローン期間=法定耐用年数-築年数
RC造のマンションの法定耐用年数は47年ですので、築17年を超えると30年ローンを組める可能性が低くなっていきます。
仮に返済期間が20年と30年の場合では月々の支払額はいくら違うのでしょうか。上記の物件を事例に試算してみましょう。2,500万円で30年ローンを組んだ場合と20年の場合で比較してみます。(金利2%)
期間 | 月々の返済額 |
---|---|
20年 | 12万6,470円 |
30年 | 9万2,404円 |
この場合は月々の返済額が3万円以上も違ってきます。このようにローン期間の違いは、月々の返済額にすると大きな違いになりますので、期間には十分注意してローンを組むことが大切です。
4-5.借り換えや繰上返済をする
実際に物件を購入してローンを組んだ後でも、借り換えや繰上返済をすることで返済額を調整することができます。金利の低いローンに借り換えをした場合は、毎月の返済額を少なくすることができます。また繰上返済をした場合も月々の返済額を減らすことができます。
ただ、借り換えの場合は新しくローンを組むことになりますので、審査の結果借り換えができないという可能性もあります。あらかじめ金融機関とよく相談をすることが必要です。
4-6.家賃を下げない努力をする
返済額を低くすると同時に家賃を下げないことも重要です。空室になり、なるべく早く賃借人を付けようとする際に、むやみに家賃を下げてしまうことがあります。しかし壁紙を変えたり、設備を最新のものに変えたりすることで賃借人が付くこともありますので、安易に家賃を下げず、同じ家賃で賃借人が付くように努力することが大切です。
4-7.入居率の高い管理会社に管理を委託する
キャッシュフローを確保する際の大敵である空室への対策の一つの方法として、入居率実績の高い不動産投資会社から物件を購入したり、管理物件の入居率が高い管理会社に管理業務を委託する方法があります。プロパティエージェントやリズムといった不動産投資会社のように入居率が99%を超える会社もありますので、そのような会社から物件を購入したり管理を委託したりするのもキャッシュフローを増やすことにつながるといえるでしょう。
まとめ
不動産投資で重要なキャッシュフローについて、キャッシュの役立て方とキャッシュフローのプラスをより大きくするためのポイントについてご紹介しました。
キャッシュが多くストックできれば、運用に余裕ができる上に、リスク対応もしやすくなります。また家賃収入を下げない努力をすることで、売却の際の価格査定にも有利に働きます。
しかし、築年数が浅かったり人気のエリアにあったりなどで価格が高い物件だと利回りが低いため、毎月の収支が悪くなりがちです。そのため、頭金を多く入れたり繰上返済をしたりすることを念頭に入れて、キャッシュアウトのほうを軽減することが大切です。
この記事を参考に、不動産投資のキャッシュフローのプラスを大きくして、いざという時にも乗り切れるようにキャッシュをストックしていくことを心がけながら検討を進めてみて下さい。
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