少子高齢化が進む現代の日本において、リタイア後の資金を効率的に貯めておくために資産形成の重要度は高いと言えます。不動産を取得することもその資産形成の手段のひとつですが、アパート経営による資産形成には他の不動産にはないメリットがあります。
ただし、投資規模の大きいアパート経営はリターンが大きくなる半面、リスクも大きくなりやすいデメリットがあります。アパート経営ならではのリスクに注意した投資判断が重要です。
そこで今回のコラムでは、アパート経営で資産形成をするメリットとデメリット、さらに注意点についても紹介します。
目次
- アパート経営で資産形成をするメリット
1-1.不労所得で資産が形成できる
1-2.不動産投資ローンの活用でレバレッジ効果も得られる
1-3.株式などの金融投資と比較してアパート経営のリスクは低い
1-4.資産として子や孫に残す場合には相続税が安い - アパート経営で資産形成をするデメリット
2-1.始めるのに多額の資金が必要で、固定資産税などもかかる
2-2.老朽化によって資産価値は目減りする
2-3.災害によって資産を失うこともある - アパート経営で資産形成をする際の注意点
3-1.資産価値を維持するために収益力を強化する
3-2.管理会社選びを適切に行う
3-3.資産価値の下がりにくい物件を選ぶ - まとめ
1 アパート経営で資産形成をするメリット
アパートの経営には、資産の形成においてどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
1-1 不労所得で資産が形成できる
アパート経営とはアパートの部屋を入居者に貸して、家賃という形で収入を得るビジネスモデルです。そのため定年退職後などで働いていない状況でも、収入があるため資産を形成することができます。
また、本業を持ちつつアパート経営をする場合は、本業で生活費をまかなうことができるため家賃収入をそのまま貯蓄することもできます。貯めた資金で次のアパートを購入すれば新たな資産を形成することができ、別の投資に挑戦することもできます。
1-2 不動産投資ローンの活用でレバレッジ効果も得られる
不動産投資には不動産投資ローンを活用したレバレッジ効果が期待できます。
例えば、自己資金が500万円でも、金融機関から2500万円の融資が得られれば3000万円のアパートが購入できます。また、アパートのような賃貸不動産の場合は、ローンの返済額を家賃収入でまかなえることができます。
つまり、家賃収入でローンの返済を継続的に行い、徐々に購入したアパートを純資産へと変換しながら資産を形成することができるということなのです。さらに利益が上積みできれば、自己資金として用意した500万円を回収することも可能です。
1-3 株式などの金融投資と比較してアパート経営のリスクは低い
株式や暗号資産(仮想通貨)のような金融投資商品には日々価格が変動するリスクがありますが、アパートのような実物資産の価格変動は比較的緩やかな特徴があります。毎日チャートをチェックするような手間がない点は、アパート経営のメリットと言えるでしょう。
1-4 相続税評価額が実勢価格よりも低くなりやすい
アパートとして資産を形成した場合、子どもや孫などに受け継いでいく際にもメリットがあります。それは現金や預金で残したのに比べて、土地や建物で残した方が相続税評価額が実勢価格(実際に売却した時の価格)よりも低く評価されやすいためです。
相続税の評価額については下記の表にまとめました。
都市 | 物件価格 |
---|---|
預金や現金 | 相続が起きた日時点の換金価値 |
賃貸用の建物 | 建物の固定資産税評価額 × (1-借家権割合(通常30%)×賃貸割合) |
貸家建付地 | 更地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
※国税庁「相続財産や贈与財産の評価」
現金や預金を相続する場合は相続税評価額が100%です。それに対して、建物や土地の評価額の基準となる固定資産税評価額は時価の約7割に評価される傾向があります。現金資産をアパートで持っておくことで、相続税評価額と実勢価格の差を活用した相続税対策が検討できます。
2 アパート経営で資産形成をするデメリット
特に木造のアパートの場合は、資産としての価値が目減りしやすく、災害のリスクも高いと言えます。ここではアパート経営で資産を形成する際のデメリットを見てみましょう。
2-1 始めるのに多額の資金が必要で、固定資産税などもかかる
アパート経営を始めるには、数千万円から数億円の大きな初期費用が必要となります。レバレッジをかけられるという点はメリットですが、逆に自分の資産以上に資金を投じることができてしまうため、アパート経営がうまくいかなかったときに大きな損失につながる可能性があります。
また、仮にアパートの入居者が0名でも、修繕費や固定資産税などのランニングコストはかかり続けるため、入居が見込める立地や建物かどうかをしっかりと見極める必要があります。
2-2 老朽化によって資産価値は目減りする
アパート経営にとっては避けられないことですが、建物が老朽化するため資産としての価値は購入時から徐々に下がっていきます。特に木造の場合は、法定耐用年数は22年とコンクリート造の半分以下になっており、建物としての資産価値は下落しやすいと言えます。
資産価値が下がらないような方法を考えて取り組んでいくことも、アパート経営の重要なポイントとなります。日頃の清掃を適切に行うことに加え、修繕など、必要な時期のメンテナンスも欠かせません。さらに外観や敷地内のすべてがアパート経営の対象になるため、修繕やリフォームをどのタイミングで行うか費用と収入のバランスをとりながら考えていくことが大切です。
2-3 災害によって資産を失うこともある
アパート経営を行うデメリットのひとつに自然災害による損失が挙げられます。大雨、台風、地震、火事、洪水といった災害によって被害を受けるだけではなく、物件そのものを失うこともあるのです。特に木造の一棟アパートの場合はRC・SRCのワンルームマンションなどに比べて被害を受けやすく、災害リスクは高いと言えます。
ほとんどの物件では火災保険に加入しますが、火事などで焼失したり、洪水で水浸しになった場合などは建て直すまでの期間は家賃収入を手にすることはできません。また古い建物の場合、保険金がおりてもそれだけでアパートを建て直すのが難しい場合もあります。この点も注意しましょう。
こうした背景もあり、洪水や地震などの災害が多い地域では、買い手がつきづらいことから地価が上がりにくく、資産としての価値も下がりやすい傾向があります。アパート購入前にはハザードマップを確認するなど、災害リスクにも注意しておきましょう。
3 アパート経営で資産形成をする際の注意点
アパートを持つことですでに資産を手に入れることになりますが、そこからさらに資産価値を下げないためにはいくつかポイントがあります。下記を参考にしてください。
3-1 資産価値を維持するために収益力を強化する
住居用の不動産とは違い、賃貸用物件の場合は収益力も資産価値に含まれます。つまり入居者が集まりやすく家賃収入が多い物件であることで、資産価値が下がりにくくなるのです。そのためには適切な時期にメンテナンスや修繕を行うほか、周辺の競合物件との兼ね合いも考えて空室対策を行う必要があります。
例えば、壁紙クロスやフローリングなどの張り替え、給湯器やエアコン、シャワートイレといった設備の新規導入・更新などによって物件としての機能を維持および向上させるようにしましょう。こうして賃貸物件としての資産価値を下げないように対策することは、入居者確保につながる重要なポイントとなります。
3-2 管理会社選びを適切に行う
アパートの管理を管理会社に委託するときは、慎重な管理会社選びが必要です。管理会社選びを間違えると、資産価値が想定以上に下落することもあるため、管理会社を選ぶ際には下記のようなポイントに注意してみましょう。
- 物件にすぐに駆け付けられる場所にあるか
- 複数の空室対策を持っているか
- 社内で情報が共有されているか
- 入居者からの要望に対する対応は万全か
- 他社との差別化をどう図っているか
- コンプライアンスを遵守しているか、など
アパート管理は管理会社に任せっきりのケースも少なくありませんが、オーナーの経営方針によって管理会社の管理に取り組む姿勢も変わってきます。管理会社からアドバイスをもらうなど積極的にコミュニケーションを行い、アパート経営を一緒に進めて行くパートナーとして接することも、アパートの資産価値を下げないコツと言えます。
3-3 資産価値の下がりにくい物件を選ぶ
アパートは経年劣化によって家賃設定も下がっていくものですが、一度下げてしまうと元に戻すことはなかなかできません。そのため、家賃下落リスクが低く、価値が下がらないような物件を選ぶことも大切です。家賃下落リスクを避けるためには、下記の4点を参考にしてみましょう。
- 人気のあるエリア(賃貸ニーズが多い)
- 住み心地の良い間取り
- 機能性の高い設備・仕様
- 満足度の高い管理体制、など
長期的な投資期間を必要とするアパート経営において、空室率が下落しにくいアパートを選ぶことはとても大切なポイントです。将来の資産形成という目的でアパート経営を検討するのであれば、目先の収益性だけでなく将来の空室を見込んだ長期的な視点で収支シミュレーションを行いましょう。
まとめ
アパート経営は部屋数も多く、ワンルームマンションや一戸建て投資に比べると表面利回りの高い不動産投資の方法です。ただし、投資規模が大きい反面、リスクも高くなるデメリットがあります。
構造上、法定耐用年数が短くなりやすいアパート経営では建物部のメンテナンスを適切に行うことで、資産価値の下落を防ぐことが大切です。アパート購入前には、本記事で紹介したデメリット・リスクにも注意し、長期的な視点での物件選びを検討してみましょう。
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倉岡 明広
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