アパート経営で注意したい退去費用のトラブルを回避するコツは?事例や対策も

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アパート経営を行う上では必ず発生する入居者の退去ですが、退去における修繕費の負担はトラブルへと発展しやすいタイミングです。

当コラムではアパート経営で注意したい、退去費用のトラブル例や回避するためのコツについて紹介していきます。

目次

  1. アパート経営者が把握しておきたい原状回復のガイドライン
  2. アパートの入居者が退去した際に生じる費用
  3. アパート経営で発生しやすい退去費用のトラブル事例
    3-1.高額すぎる退去費用の請求によるトラブル
    3-2.返還される敷金によるトラブル
    3-3.ハウスクリーニングや入居前鍵交換費用の拒否といったトラブル
  4. アパート経営で退去費用のトラブルを防ぐための対策
    4-1.契約時に重要事項説明書に明記し合意を得る
    4-2.信頼できる管理会社に委託する
    4-3.入居後の部屋を借主に確認・書面報告
  5. まとめ

1.アパート経営者が把握しておきたい原状回復のガイドライン

賃貸住宅では未然にトラブルを防ぐために国道交通省の定める「原状回復のガイドライン」に基づき、原状回復にともなう定義を設けています。

原状回復費用とは、退去の際に入居前の状態に戻すための費用です。元に戻すための費用は「原状回復のガイドライン」で定められた内容に従い、借主と家主それぞれの負担額を決定します。

一例として、通常消耗や経年劣化は家主の負担となり、借主に原状回復費用を請求することができません。通常消耗・経年劣化による消耗の例としては、以下のような項目があげられます。

  • フローリングや畳などの日焼け
  • 冷蔵庫などの裏の電気や毛
  • 画鋲を使用した小さな穴
  • 家具の重みによる傷や凹み

(※参照:国土交通省「原状回復のガイドライン」)

ただし、故意による損傷などは借主の負担義務となり、原状回復費用の負担が求められます。

故意による損傷の一例としては、以下の通りです。

  • 壁の傷、損傷
  • 結露による腐食
  • タバコによる天井のヤニ
  • ペットによる汚れ、匂い
  • 水漏れによる壁・床の腐食
  • 障子や網戸の破損

例えば家具の倒壊や喧嘩による壁の損傷が発生した際には、修繕費は借主の負担として原状回復費用を請求することができます。またハウスクリーニングの費用負担も、借主の負担として契約書内容に明記することが多い項目の1つです。

ただし原状回復のガイドラインはあくまでトラブルを防ぐためのガイドラインのため、著しく貸主に優位性がある場合を除いて、契約書の内容が効力を持つことになります。契約書の記載・及び契約時に重要事項での入念な説明が、原状回復費用に伴うトラブルを防ぐための予防策です。

【関連記事】マンション投資の原状回復費の相場や目安は?トラブル回避の対策も

2.アパートの入居者が退去した際に生じる費用

アパートで入居者が退去した際に生じる費用の一例は、主に以下のような内容が中心となります。

  • クロスの張り替え:1㎡/1,000円〜1,500円
  • フローリング・床材の張り替え:1㎡/10,000〜30,000円
  • 浴槽交換:500,000〜800,000円
  • エアコン交換:50,000円〜150,000円
  • サッシの交換:30,000円〜50,000円

国道交通省の定める原状回復のガイドラインに沿い、自然消耗による劣化の場合には家主が負担する項目となります。ただし借主の不注意によるクロスの汚れといった、入居者による過失の原状回復費用は借主の負担です。

また退去時には次の入居者が決まりやすいように室内設備をグレードアップする機会となるため、新たな設備の導入も検討することになるでしょう。入居者募集の広告費・仲介手数料といった費用も発生するため、アパート経営では退去に伴い発生する費用には注意が必要です。

仲介手数料の目安は借主と貸主の2人から、それぞれ家賃分の0,5ヶ月分が目安となります。そのため頻繁に入居と退去が繰り返された場合には想定利回りを下げてしまう要因に繋がる点にも注意しましょう。

3.アパート経営で発生しやすい退去費用のトラブル事例

3-1.高額すぎる退去費用の請求によるトラブル

アパート経営で発生しやすい退去時のトラブルは、高額すぎる退去費用の請求です。悪質な管理会社の場合には、相場より高額な修繕業者への発注が行われているケースがあります。

悪質な管理会社は業者への紹介によるバックマージンが収入源の1つとなっていることがあります。この場合は相場より修繕費用が高額になり、入居者から敷金返還請求が行われたりなどのトラブルが発生することがあります。

なお、タバコのヤニやペットによる臭気など、入居者の故意による損傷として認められる項目に関しては、原状回復のガイドラインに基づき正当な請求を行うことができます。

一方でクロスやフローリング交換といった修繕費用は、修繕面積が大きくなるほど高額な請求となるためトラブルに繋がりやすい項目として注意が必要です。

3-2.返還される敷金によるトラブル

敷金が入居者が想定していたより返還されずトラブルに発展するケースもあります。敷金は物件の原状回復を行う際に当てる費用として、入居前に管理会社や家主が一時的に預かる資金となります。

一方で借主の想定を超えて敷金を上回る原状回復費用が発生した場合には、修繕費用に当てるため返還することができません。敷金を返還できるのは借主が負担する原状回復が発生していない場合や、入居時に支払った敷金以下の修繕費しか発生していない場合です。

原状回復費用が事前に支払った敷金を上回る場合には、事前に支払った敷金を費用に充てるために返還が行えません。原状回復に伴う費用や契約書の内容で入居者が納得していない場合には、敷金に伴うトラブルが発生する可能性があります。

3-3.ハウスクリーニングや入居前鍵交換費用の拒否といったトラブル

アパート経営ではハウスクリーニングや入居前鍵交換費用といった費用の負担拒否といったトラブル例があります。退去後に必要なハウスクリーニングに伴う掃除項目の一例は、主に以下の通りです。

  • 水回りの清掃
  • 窓やサッシの掃除
  • レンジフード・シンクの清掃
  • トイレクリーニング
  • 部屋の全体清掃
  • エアコン掃除

1R、1Lという間取りであれば費用相場は20,000〜50,000円ほどで、目安の金額は賃料の半分以下が目安となります。入居者が綺麗に利用し退去時にも清掃を行なっていたとしても、換気扇やエアコンといった清掃が難しい範囲までは清掃を行えていないケースもあるでしょう。

一方で高額なハウスクリーニング費用に入居者が納得できない場合には、費用負担の拒否など思わぬトラブルに繋がる恐れがあります。

また入居前鍵交換費用も原状回復のガイドラインでは家主の支払いを推奨していますが、契約条件は自由に決めることが可能です。入居前鍵交換費用を賃貸契約書の重要事項説明項目に記載することで、借主負担として定めることもできます。

契約書の重要事項説明項目にハウスクリーニングと鍵交換費用に関する記述を行った上で、入居者に説明後に納得してもらうことがトラブルを防ぐためのポイントです。

4.アパート経営で退去費用のトラブルを防ぐための対策

4-1.契約時に重要事項説明書に明記し合意を得る

国土交通省が定めている原状回復のガイドラインは法的な強制力はないため、賃貸契約書の記載内容が法的な効力を持つことになります。賃貸契約書に特約としてハウスクリーニングや鍵交換費用といった記述を行い、納得してもらった上で契約した場合には契約内容が優先されます。

ハウスクリーニングや入居前鍵交換の負担といった項目を賃貸契約書の重要事項説明書での記載・説明を行い十分納得をしてもらった上で契約を進めるといった対策がトラブルを未然に防ぐためのコツです。

ただし、契約内容が明らかな不平等な内容であれば、消費者契約法により無効となる可能性がある点に注意しましょう。

4-2.信頼できる管理会社に委託する

アパート経営の管理を管理会社に任せている場合には、信頼できる業者へ委託を行うのも未然にトラブルを防ぐための注意点です。依頼している管理会社が悪質な場合には、相場価格以上の高額な原状回復費用を請求しトラブルに発展する恐れがあります。

退去の立ち会い時に高圧な態度を取り、圧迫感を与えて借主からサインをもらう管理業者もいます。立ち会い時の確認が適切に行えていない場合など、管理会社の信頼が置けない場合には管理会社の切り替えを検討するのも選択肢の1つとなります。

【関連記事】アパート経営で重要な管理会社の選び方は?7つのポイント解説

4-3.入居後の部屋を借主に確認・書面報告

アパートでの退去に伴うトラブル対策例の1つが、入居後の部屋を借主に確認してもらい書面報告を行うといった対策です。入居後の部屋の状態を借主に確認してもらい、傷や汚れに問題がないことを証明する同意書の準備を行います。

後に「元々汚れがあった、傷があった」など、入居者が嘘の主張で修繕費を払わない対策として証拠となります。また退去前に元々あった傷かどうかなどエビデンス(証拠)の提示として、入居前の部屋の状態を撮影し記録するといった対策もアパート経営で退去時にトラブルを防ぐためのポイントでしょう。

まとめ

入居者の退去時の対応は、アパート経営のトラブルが発生しやすいタイミングの1つです。また、悪質な管理会社では相場よりも高額な修繕費を請求したり、高圧的な態度で入居者へ立ち合いのサインを迫るケースもあるため、管理会社の選定も重要なポイントになります。

今回は、アパート経営で注意したい退去費用のトラブル事例や、回避するコツについてご紹介しました。それぞれポイントを押さえて、事前にアパート運営で退去時に発生しがちなトラブル対策の実施を行っていきましょう。

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HIROTSUGU

過去に屋根工事・防水塗装・リフォーム業へ携わった現場経験を元に、20代で中古戸建物件を購入し初期費用を安価に済ませるDIYで不動産賃貸業を開始。不動産投資の他に暗号資産や投資信託、FXなど多彩な資産運用経験を元にフリーライターとして執筆活動を行なっています。