これから空き家再生投資を始めようと検討している方で気になるのは、始める方法や手順では無いでしょうか。国土交通省「空き家等の現状について」によると、空き家の総数は、20年で2倍近く増加しているとの報告があげられています。
当コラムではDIY投資家として賃貸化経験を経た筆者が、空き家を活用するビジネスを始める手順や物件の選びの方法を解説していきます。これから空き家再生投資を始めようと検討している方に参考としてお役立て頂ければ幸いです。
目次
- 空き家再生投資を始める手順
1-1.空き家再生投資の仕組みを学び、基本知識を身に着ける
1-2.投資エリアの家賃相場と物件価格の把握
1-3.投資物件探し・買付・契約
1-4.必要に応じて物件の修繕
1-5.入居者・利用者の募集 - 空き家再生投資の物件の選び方・探し方
2-1.需要のある立地か確認
2-2.地方の場合は駐車場が必須
2-3.雨漏り・傾き・構造部の腐食を確認
2-4.水回りの腐食具合をチェック
2-5.上下水の仕様を確認 - 空き家再生投資の体験談
3-1.関東地方の築古戸建て物件
3-2.中国地方の空き家物件 - まとめ
1.空き家再生投資を始める手順
1-1.空き家再生投資の仕組みを学び、基本知識を身に着ける
これから空き家再生投資を志す初心者の方であれば、まずは空き家再生投資の基本知識を習得しておきましょう。空き家再生投資は、基本的に買い手のつきにくい空き家を安く仕入れてリフォームなどの改修を行い、賃貸物件や宿泊施設として貸し付けたり、売却によって利益を得るビジネスモデルとなっています。
空き家再生投資の収益ポイントは様々ですが、「空き家になっている要因」を取り除き、物件として利活用できる状態にするといった部分では共通しています。物件の隠れた需要を見抜き、出来るだけ低コストで修繕をおこなうことが空き家再生投資で重要なポイントとなってきます。
出来るだけ安く修繕を行う方法として、自身で物件の工事を行うDIYがあります。DIYの方法や手順についてこれから学ぶ方であれば、まずは空き家再生投資のコミュニティや、先輩大家の方の元で実際にDIYによる修繕の実践経験を積んでみると良いでしょう。この理由としては、実際の空き家ビジネスの現場に携わることで、無料でDIY経験を積みながら、空き家再生投資の経営力が身に付くためです。
特に、内装塗装や和室の洋室化といった工事をDIYで行えると、初心者でも挑戦しやすく人件費の大幅なコストカットを見込めます。空き家再生投資において利回りの数値を大きく改善できる可能性があります。
加えて、先輩大家の方の信頼を獲得できれば、道具の貸し借りなどの協力や、非公開物件の情報、工事を手伝ってくれる人や他の投資家の方などの紹介も期待できます。コミュニティやSNSでDIY会に参加しやすいエリアでは、積極的に手伝いを申し出てみると良いでしょう。
ただし、インターネット・SNSを介した交流では、募集をかけている人の信頼性を十分に確かめることが大切です。怪しい業者が介在している場合には、空き家再生投資と称して異なるビジネスの勧誘に会うなどのトラブルに巻き込まれる可能性もあります。参加を検討する際は、過去の発信内容や実際の現場の様子が分かる画像などから、信頼できるかどうかしっかりと確かめておきましょう。
1-2.投資エリアの家賃相場と物件価格の把握
空き家再生投資では、投資エリアにおける家賃相場や宿泊費といった収益の見込み、物件価格の相場などの調査を行い、しっかりと把握することが大切です。投資した金額を早めに回収できなければ、空き家の活用に成功したとしてもキャッシュフローが悪く、経営に必要な運転資金が足りなくなる可能性があります。
見込み収益や仕入れ物件の価格は、エリアの特性によっても大きく異なります。例えば、立地によって積雪の差が激しい地方では、冬季に雪が積もりやすいエリアと積もりにくいエリアで家賃相場が大きく異なるケースがあります。
その他には、駅周辺の開発や周囲の大型ショッピングモールの建設といった情報があれば、空き家を売却する際の出口戦略にも良い影響を及ぼす可能性があるでしょう。そのため、空き家再生投資を実施する前には、家賃や物件の相場・今後の人口推移・エリアの将来性といったリサーチを実施することが重要です。
一方で、長年空き家として放置された住宅は、運営中に物件の不具合が生じるリスクを抱えています。想定外の修繕費に備えて、余裕を持った運営が空き家再生投資での失敗を防ぐコツです。
例外として、空き家の持ち主と直接交渉・了承を得た上で、修繕を実施して入居者を募る「空き家転貸ビジネス」と呼ばれる手法もあります。物件購入と異なり低リスクで賃貸収入を見込めるため、周囲に空き家を保有する知人や親族が居る場合には協力の申し出を検討してみると良いでしょう。
1-3.投資物件探し・買付・契約
相場を把握した後に検討したいのは、適正な価格・状態の空き家物件探しです。不動産は、物件の内覧・買付・契約・決済の4段階を経て購入を実施します。
より安価な物件を購入するには、未公開物件の情報を得ている方からの紹介などがありますが、これから空き家再生投資を志している方々は、周囲に該当する知人が居ない方が大多数でしょう。
初心者の方がこれから物件を探す方法は、まずは不動産のポータルサイトや、地域に根付いた不動産会社が運営しているホームページのチェックなどから始めることが主になります。実際に筆者が物件を購入した際には、不動産ポータルサイトでの情報収集により購入に至りました。
ただし、インターネット上に公開されている物件は誰でも情報を得られるため競争率も高く、低価格で状態の良い物件がネットに掲載されるのは地方でも年に数回程度といった印象です。実際に筆者が仲介業者に聞いた話では、「最近では、書籍やインフルエンサーの影響により、掲載物件は常識から外れた大幅な値引き希望が殺到している」とのことです。
このような物件の供給よりも需要の方が大きい市況では、買付をする際も十分に注意して行う必要があるでしょう。例えば、低価格の物件はあえて指値を入れずに現金一括で物件を購入するといった工夫を行い、競合の投資家の方より早いスピードで物件を取得するといった方法があります。
その他、物件の間取り・立地によっては賃貸住宅だけではなく、民泊やシェアハウスといった空き家ビジネスも有力な候補になります。競合が強く需要の多い物件は買付も難しくなるため、他の投資家が気づいていない物件の魅力を目利きしていくことも大切なポイントと言えるでしょう。
購入して良い物件かどうか判断がつかない場合は、物件の内覧時の情報収集が不足しているケースがあります。DIYで修繕できるのか、外注費用の目安はどれくらいかを想定しながら、数多くの物件に足を運び、判断ができるよう経験を積むと良いでしょう。
1-4.必要に応じて物件の修繕
空き家物件の購入後は、必要に応じて修繕を実施します。空き家再生投資では膨大な修繕箇所が発生するケースも多いため、どこまで・どれくらいの期間で修繕し、どれくらいの収益を見込めるかの計算もリスクを減らすポイントです。
内容によっては、修繕の外注化を検討してみると良いでしょう。例えば、比較的コストが低く依頼できるクロスの張り替えや、施主支給での設備導入といった選択肢があげられます。
木材の加工が伴う大工仕事は電動工具が高いため、ホームセンターでのレンタルサービス利用を必要に応じて検討してみるのも良い選択肢です。加えて、火災保険の加入やガス会社の選定も必要なので、必要に応じて複数業者と比較検討を実施してみると良いでしょう。
【関連記事】DIY不動産投資に必要な知識や道具・工具は?投資家の実体験から解説
1-5.入居者・利用者の募集
適切な空き家の修繕を完了し、入居者・利用者の募集を募ります。
賃貸であれば入居者を募集する主な選択肢は、自身で入居者を探す方法と不動産仲介業者に依頼する方法の2種類があります。不動産仲介に依頼する場合は、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介といった3種類の媒介契約の方法があります。
それぞれの契約方法の特徴は、以下の通りです。
- 一般媒介契約:複数の仲介業屋に入居者募集を依頼できる契約
- 専任媒介契約:依頼は1社の不動産会社のみで、自分で見つけた入居者と直接契約が可能
- 専属専任媒介契約:依頼は1社の不動産会社のみで、自分で見つけた入居者でも直接契約ができない
一般媒介はどこの不動産会社に依頼をしているか通知する明示型と、通知を行わない非明示型の2種類があります。契約期間は、基本的にそれぞれ3ヶ月以内に設定されています。
筆者が初めて築古物件を賃貸化した際には、購入物件の不動産仲介業者から賃貸を専門とした仲介業者を紹介していただけました。少しでも早く入居者を募りたいと考え専属専任で入居者募集を実施した結果、修繕後2ヶ月以内で入居者が見つかりました。2024年6月時点では、この入居者の方に自主管理で2年間近く入居していただいています。
なお、上記の筆者の例では専属専任媒介契約を結んでいますが、物件の賃貸需要によって媒介契約の方法は変更されると良いでしょう。例えば、好立地の戸建てであったり、周辺相場よりも安い賃料設定が可能なのであれば、一般媒介での募集も有力な選択肢となります。
入居者募集の際には管理会社・保証会社へ依頼するかどうかの判断も、オーナーに委ねられています。管理会社はクレーム対応や清掃といった管理業務を代行でき、毎月家賃5%程度の管理費の支払いが必要です。注意点として、管理会社によっては、シェアハウスや築年数が経過した戸建住宅はNGとしている業者も存在します。
一方、ある程度のビジネスの拡大を行っていくのであれば、いずれかのタイミングで管理会社の協力が必要になります。自身が運用したい空き家再生投資の方針、また事業規模に合わせて、管理の代行有無を検討してみると良いでしょう。
また民泊を開業するためには簡易宿泊業の許可を保健所から取得する必要がありますが、都道府県ごとによって内容や条例が異なります。民泊として空き家再生投資を検討している際には、各概要を入念に確認しましょう。
2.空き家再生投資の物件の選び方・探し方
2-1.需要のある立地か確認
空き家再生投資の物件選びでは、運営するサービスの需要がある立地かどうか確認を済ませておきましょう。例えば、賃貸予定であれば競合となる付近の賃貸情報、民泊であれば予約状況を一定期間リサーチするとおおよその需要を判断できます。
それぞれ繁忙期・閑散期が存在するため、可能であれば1年を通してリサーチし続けてみましょう。賃貸物件として空き家ビジネスを始める予定であれば、大手不動産ポータルサイトが提供している、地図と色彩で大まかな需要を把握できる賃貸需要ヒートマップの活用も検討してみると良いでしょう。
2-2.地方の場合は駐車場が必須
車の利用を前提とした地方エリアでは、賃貸の場合は駐車場の確保が必須項目です。地方住まいの方は1人1台の車を保有する傾向にあるため、駐車場は1台ではなく数台以上のスペースを確保できるかどうかも考慮しましょう。
周囲に月契約の駐車場もない場合には、徒歩圏内にスーパーや駅があるケースを除き、入居者の募集段階で苦戦を強いられる可能性があります。賃貸化を目指した地方での空き家ビジネスの開始を検討している際には、購入物件の駐車場環境を考慮した上で購入を検討すると良いでしょう。
2-3.雨漏り・傾き・構造部の腐食を確認
空き家再生投資を実施する際には、雨漏り・傾き・構造部の腐食状況も確認を済ませておきたい項目でしょう。理由としては各項目は全て高額な修繕費が伴い、場合によっては程度の良い物件価格を大きく上回る修繕費が発生する恐れがあるためです。
例えば、屋根の下地を修復し屋根材を取り替える葺き替え工事を専門業者へ依頼する場合、数百万円以上の修理費用が発生します。傾き修理や住宅構造部が激しく傷んだ物件の修理も同様の費用が伴う恐れも想定されるでしょう。
予想される修理費用に対してどれくらいの期間で投資金額を回収できるか、大凡の目安を計算した上での物件購入も空き家再生投資での失敗を防ぐためのポイントです。
【関連記事】傾きや雨漏りがある不動産に投資しても大丈夫?空き家再生の投資家が解説
2-4.水回りの腐食具合をチェック
可能であれば、水回りの不具合も確認しておきたい項目の1つです。理由としては配管の水漏れは原因箇所を特定する難易度が非常に高い修理工事のためです。
原因想定箇所を全て掘り起こすといった大掛かりな作業が伴う事例も多く、業者に依頼した場合想定以上の修理費用が発生する恐れがあります。地方の空き家は敷地面積も広い物件も多く、掘り起こす範囲が広いほど人件費も高くつく傾向にあります。
安価に販売されている空き家は現状渡し・契約不適合責任免除といった特約が設けられているのが一般的です。安価な物件を購入する際には、配管状況を確認できないリスクを承知の上で購入の決断を迫られる可能性も視野に入れておきましょう。
2-5.上下水の仕様を確認
上下水の仕様も確認しておきたい項目です。上水は「浄水・井戸水」、下水は「汲み取り式・浄化槽・下水」といった複数の種類が存在します。築年数の経過した物件ほど、井戸水や汲み取りといった旧式の仕様が導入されているケースが多い傾向にあります。
井戸水は水道費が無料というメリットがある反面、ポンプの故障や水質検査、赤水トラブルといったデメリットが多い給水仕様です。空き家は放置期間が長期に及んでいる可能性が高いため、井戸水の物件はポンプに不具合が生じている場合には高額な修理費用が発生する可能性を考慮した上で活用を検討してみると良いでしょう。
下水は汲み取り式の場合、便槽タンクの排泄物を汲み取る費用や悪臭が漂うといった弱点を抱えています。浄化槽も空き家として放置された物件の場合、何かしらの不具合が生じている可能性も想定されるでしょう。
空き家として放置されている物件は上下水の仕様に難を抱えている事例が多いため、それぞれの弱点と予想される修繕費を考慮した上でビジネスに活用する物件を選ぶ必要があります。
3.空き家再生投資の体験談
ここからは実際に筆者が空き家再生投資を始めた体験談をご紹介します。
3-1.関東地方の築古戸建て物件
筆者が初めて空き家再生投資を実施したのは関東地方の築古戸建で、不動産ポータルサイトで250万円で購入し50万円程度の修繕費で賃貸化した物件です。空き家としては比較的状態や立地条件も良く、購入前も賃貸として使われていた物件なので修繕も簡易的なもので済みました。
初期投資として、どうしても多くの出費が伴う電動工具は、知人に借りたりホームセンターのレンタルやカットサービスを駆使したりするなど、コストカットに注力して修繕しています。物件自体も大掛かりな項目はなかったので、知り合い達と協力の元で工事期間は4ヶ月ほどと短期間で工事を終えました。
また施工の途中で先輩大家さんのアドバイスにより、客付時に決定権を持ちやすい女性の方が気に入る水回りを設計し、高めの家賃設計による戦略が推奨されるとのことで、大幅に戦略を変更しています。DIY期間と費用を見直し家賃6万円以上に設計することで、DIY費用を含めた表利回りを24%に上げる路線へと切り替えました。
そのため1階部分の狭い間取りや化粧ベニアを全て解体し、システムキッチンやベニアの張り替えを導入することで吹き抜け風の幅広いダイニングへ改装致しました。
室内写真
【関連記事】築古物件のDIY投資を始める方法・手順は?投資家の体験談を紹介
3-2.中国地方の空き家物件
2件目の物件は当コラムの執筆時点と同時期である2024年6月に決済を終え、現在も修繕に取り組んでいます。地元の中国地方で不動産ポータルサイトに掲載されていたのを発見し購入に至りました。価格は78万円で、1件目と比較すると比較的安価に購入できました。
不動産仲介業者の方によると、長年空き家として放置されていた住宅だったそうです。1件目の物件と比較するとシロアリにより床が崩落したり、越境した木の枝に長年叩かれ屋根の一部が破損し雨漏りしたりしているなど、物件の状態はとても空き家らしい劣化が進んでいました。
一方で、入居者を見込める非常に良い立地で、尚且つ軽自動車が2〜3台駐められる駐車場の土地付きといった購入価格以上のバリューを秘めている可能性がある点や、増築の履歴があり高額な修理コストが伴う風呂やトイレは比較的良い状態にリフォームされているなど、良いポイントが数多かったので購入を決断しました。
1件目の物件と比較すると修繕が求められる箇所も多く、知人の協力も得られない環境での挑戦となりました。またレンタルサービスが周囲に無いため、メルカリやジモティを駆使して価格をおさえて必要な機材を中古品で揃えるなど、可能な範囲で出費をおさえて、空き家再生投資に取り組んでいます。
またゴミの廃棄処理場の機能が高い都市圏と異なり、郊外エリアではゴミの分別がかなり厳しい傾向にあります。このような地域ごとの違いを実感できたのも、関東地方と中国地方の二拠点で空き家再生投資を実施した上で得られた知見でした。
室内写真
まとめ
今後日本国内で増加が予想される空き家を活用したビジネスは、物件の購入価格に見合った立地と状態であるかどうかの判断が事業主に求められます。一定の条件を満たし低価格で仕入れができた物件は、適切な運営を実施すると高い利回りを見込めるでしょう。
一方で、リターンに見合わない高額な修理工事が発生した場合には、投資金額の回収が長期化する恐れもあります。今後空き家を活用したビジネスを検討している方は物件購入の判断材料を揃えて、空き家の活用を検討してみると良いでしょう。
HIROTSUGU
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