プロが教えるマンション1棟投資をする人が知っておくべき7つのリスク

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不動産投資で1棟買いというと、「価格が高いため、リスクが大きい」というイメージがあるのではないでしょうか。区分投資マンションであれば2,000万円前後で売買されていますが、1棟マンションになると1億円を超える物件もありますので、失敗すると大きな借金だけが残るリスクもあります。

しかし、1棟マンションでもリスクを把握してきちんと対策できれば、区分投資マンションよりメリットが大きくなります。今回は大手の不動産会社で不動産投資物件を数百件売買されてきた青山和也さんに、プロからの視点でマンション1棟投資のリスクと対策について解説していただきたいと思います。

  1. 1棟マンション投資のリスク
    1-1.1棟マンションの空室リスク   
    1-2.購入直後の改修リスク
    1-3.1棟マンションの災害リスク
    1-4.住人のトラブルリスク
    1-5.1棟マンションの金利上昇リスク
    1-6.修繕費用、維持管理費リスク
    1-7.1棟マンションの流動性リスク
  2. 1棟マンションのリスク別対策方法
    2-1.空室リスクは対策の仕方によりメリットになる
    2-2.ホームインスペクションで購入直後の改修を回避する
    2-3.これから都市型水害対策は必須
    2-4.オーナーチェンジ物件の場合はレントロールを活用する
    2-5.大手の不動産会社と付き合うことで金利上昇に備える
    2-6.修繕費用などは余裕を持った資金計画が必要
    2-7.流動性リスクに備え早めに出口戦略を立てる
  3. まとめ

1.1棟マンション投資のリスク

西宮光夏
青山さん、今回も解説をお願いします。今回はマンションの1棟買いを検討している人が知っておくべきリスクについて解説をしていただきたいと思います。
不動産投資のプロ
青山さん
こちらこそ、よろしくお願いします。
西宮光夏
1棟マンションと言うと、高額ですから、万が一失敗した場合に破産しなければならないのではないか、と考える人もいらっしゃるのではないでしょうか?
不動産投資のプロ
青山さん
確かに「バブル景気」の時期の後期に購入された人で、売るタイミングを逃したために、かなり低い価格で売却してマイナスになった人もいます。しかし、それは1棟だからという理由ではありません。高値を掴まずに慎重に取引をすれば、1棟マンションでも安心して投資できます。まずはどのようなリスクがあるのかを知ったうえで、それぞれのリスク対策ついて解説したいと思います。

区分投資マンションと比較してかなり価格が高くなる1棟マンションです。まずはどのようなリスクがあるのかおさらいをしてみましょう。まずはリスクを一通り解説し、その後それぞれのリスクの対策方法について触れてみたいと思います。

1-1.1棟マンションの空室リスク

1棟マンションは部屋数が多いですので、同時に複数の部屋が空室になると収支に大きく影響してきます。例えば家賃7万円の部屋が3室空室になるだけで21万円も収支が悪くなります。家賃収入の多くを返済に充当している場合、減った分は貯蓄から持ち出しをして返済に充てなければなりません。

複数の空室が発生しないような立地で物件を探すことや収支が黒字の際のキャッシュフローを計画的に活用することが対策になります。

1-2.購入直後の改修リスク

中古物件の場合は購入前には気付かなかった損壊や瑕疵が存在する可能性があり、購入してすぐ改修費用がかかることがあるので注意が必要です。区分所有物件であれば安価な費用で済みますが、1棟になると高額になります。

100万円以上かかることもありますので、購入早々大きな支出となり、取り戻すのにかなりの時間がかかってしまいます。改修履歴をきちんと確認するとともに、ホームインスペクションを有効活用することが重要になってきます。

1-3.1棟マンションの災害リスク

近年、集中豪雨などの災害が多くの被害をもたらしています。集中豪雨による災害は郊外で起きているイメージがあり、都市部ではあまり関係ないように思えますが、実はとても大きな被害を及ぼすリスクをはらんでいます。

集中豪雨が山間部で起きた場合、土石流が発生したり山が倒壊したりしますが、都市部で起きた場合、都市型水害という災害をもたらす可能性があります。

都市部は地面がアスファルトやコンクリートで覆われているため、水を吸収することができません。そのため、雨水は雨水管や下水管を通る仕組みになっています。しかし、処理できる水量に限界があるため、一定量を超えると雨水は洪水となって都市部に流れ出すことになります。

このように都市型水害では街にあふれた水で地下鉄や地下街が被害にあったり、停電になったりするなどの大きな被害をもたらすことが予想されています。

もし、マンションの地下部に配電措置がある場合は、水につかり停電になり、多くの人が暗い部屋で過ごさなければならないことが考えられます。物件を購入する前にハザードマップの確認は必ずするようにしましょう。また、マンション内で災害に備えた訓練や、備蓄を準備することが大切です。

西宮光夏
ここ数年、毎年のように集中豪雨の被害がニュースになるようになりました。山間部での被害ばかりでしたので、都市部のマンションは関係ないと思っていましたが、そうではないのですね。
不動産投資のプロ
青山さん
そうですね。特に真夏に停電した場合は冷房がきかない部屋に孤立することになりますから、命にも関係するような非常に危険な状態になります。日頃から災害対策は十分にしておくことが必要です。被害が起きたらどこに行けば良いかなど、1棟マンションのオーナーとしてはそのような情報を日頃から住人に提供することも大事な仕事になってきます。また、被害にあった際も住人に避難を促すことも必要になってきますので、しっかりシミュレーションしておくことが大切です。では、引き続きリスクについて解説します。

1-4.住人のトラブルリスク

1棟マンションをオーナーチェンジという形で購入する場合は住人がいますので、住人によるトラブル対策が必要になるケースがあります。

例えば住人に家賃を滞納している人がいる場合、収支に影響してきます。また、住人とトラブルを起こす人がいた場合、他の部屋が空室の原因にもなります。どのような人がいるのかなど購入前に必ず確認して対策をすることが大切です。不動産会社に聞いたり、レントロールを確認したりするなどして、事前に賃貸状態を把握しておきましょう。

1-5.1棟マンションの金利上昇リスク

1棟マンションの場合、価格が大きくなるため、少しの金利上昇でも収支に大きく影響してきます。以下の表は5,000万円から2億円まで5,000万円単位の価格帯の違いの0.5%刻みの返済額を表したものです。期間は30年に設定した場合です。

物件価格 金利2%の場合 金利2.5%の場合 金利3.0%の場合
5,000万円 18万4,809円 19万7,560円 21万802円
1億円 36万9,619円 39万5,120円 42万1,604円
1億5,000万円 55万4,429円 59万2,681円 63万2,406円
2億円 73万9,238円 79万241円 84万3,208円

*期間30年で試算

5,000万円の融資を受けている場合、0.5%金利が上がると約1万円返済額が上がることがわかります。2億円の物件になると金利0.5%上昇に対し返済額は約6万円上がります。6万円くらいになると、一部屋分の家賃くらいの金額ですので、金利上昇には日頃から注意しておくことが大切です。

1-6.修繕費用、維持管理費リスク

1棟マンションの規模になると、一度の修繕でも大きな費用になることが考えられます。大規模修繕になると数百万円から1千万を超えることもありますので、修繕費用の資金管理は計画的に行うことが大切です。

また、区分投資マンションでは管理していない、エレベーターや共有部分の維持管理費が発生します。屋内消火栓などの非常用設備は定期的に法定点検や整備が必要ですので、計画的に行うようにしましょう。

1-7.1棟マンションの流動性リスク

1棟マンションは区分投資マンションと比較して流動性が低い特徴があります。価格帯が高くなるために、初めて不動産投資をする人などが購入を控える傾向にあるからです。また、購入を考えていても高額なためにローンが通らないという人もいます。

そのため売却をしたくてもしばらく売れないということが考えられます。1棟マンションの出口戦略は時間的な余裕を持って行うようにしましょう。

西宮光夏
1棟マンションのリスクについて解説いただきました。1棟マンションには区分投資マンションにはないリスクがあることがわかりました。金額が大きいですから、どれも慎重に対応しなければいけないと思います。では、次にそれぞれのリスクヘッジの方法について解説いただけますか。
不動産投資のプロ
青山さん
わかりました、ではリスク一つ一つのヘッジ方法について解説いたします。

2.1棟マンションのリスク別対策方法

1では1棟マンションのリスクについて解説しました。次にリスク別の対策方法について解説いたします。

2-1.空室リスクは対策の仕方によりメリットになる

1棟マンションの空室リスク対策にはまず、立地の良い物件を探すことです。これは空室になる部屋を複数作らないための対策になります。グラフ1は全国の1棟マンションと区分マンションの平均価格と平均利回りを表したものです。

表2は表1の数値から年間家賃収入を試算し、さらに購入価格を金利2%、ローン期間30年で融資を受けた場合の毎月の返済額と月々の手残り額を試算したものです。

表1

物件種類 1棟マンション 区分投資マンション
平均価格 1億5,607万円 1,394万円
平均利回り 0.0805 0.0775

健美屋調査2018年7月~9月資料から引用

表2

1棟マンション 区分投資マンション
年間家賃収入 1,256万3,635円 108万350円
月々の家賃収入 104万6,970円 9万29円
月々の返済額 57万6,865円 5万1,524円
月々の手残り額 47万105円 3万8,505円

*上記資料より試算
*小数点以下切り捨て。物件価格は上記資料の価格、金利2%、ローン期間30年、
*物件の家賃収入は上記表から試算(物件価格×利回り)

1棟マンションの月々の手残り額を区分投資マンションの月々の平均家賃収入で割ると、

47万105円÷9万29円=5.2(小数点第2以下切り捨て)

となり、5室まで空室になっても収支はマイナスにならないことがわかります。

この場合一時的に5室が空室になったとしても、すぐに賃借人が付くような立地で物件を探すことがリスクを最小限に抑えるコツになります。月々の手残り額が大きいですので、一時的なマイナスでも持ちこたえることができますが、長期的に空室にならない立地と物件を探すようにしましょう。

ただ、試算からわかるように、1棟マンションは満室の場合、手残りが多く、非常に利回りの良い投資商品になります。複数空室になると大きなリスクになりますが、立地を見極め、キャッシュフローを有効活用することでメリットに転換することができます。

2-2.ホームインスペクションで購入直後の改修を回避する

予期しない購入後すぐの改修トラブルを防ぐためにはホームインスペクションを有効活用しましょう。ホームインスペクションとは住宅診断士が建物に損壊や瑕疵がないかを調査し売り主と買い主に報告することです。2018年4月から不動産の売買時にホームインスペクションを行うことが義務化されました。

ホームインスペクションでは損壊していても気が付きにくい給排水管の状態や、屋根裏まで調査し結果を報告してくれます。調査結果が来たら全て目を通し不明点は質問をして解決するようにしましょう。調査士は買い手と売り手のどちらかが有利になるような発言は禁止されていますので、物件の本当の状態を知ることができるはずです。

中古物件の場合、目に見えない劣化が存在していたり、瑕疵担保責任期間が数ヵ月しかなかったりして、購入者に不利になるような点がいくつもありました。

今回ホームインスペクションが義務化されたことで、購入前に劣化の状態などを知ることができるため、そういった不安も解消できるのではないでしょうか。購入直後の改修を防止する対策として、ホームインスペクションを有効活用しましょう。

2-3.これから都市型水害対策は必須

都市型水害は一度起きると、交通網が遮断されたり、停電になったりすることがわかりました。都市型水害のリスクを最小限に抑えるために、購入前にハザードマップは必ず確認するようにしましょう。ハザードマップを確認して、洪水の被害がなさそうなエリアを選ぶことも検討した方が良いでしょう。

できれば地下部に配電装置がない物件を選んだり、自家発電できるようなマンションを検討したりすることも対策の一つです。ハザードマップは国土交通省のホームページで確認することができます。

国土交通省のハザードマップページ
*国土交通省のハザードマップページの画像

マンション内で被害の際に集合できる場所を提供したり、近隣の避難場所を日ごろから示唆したりしておくことも重要な対策になります。災害時に住人が困らないように十分に対策しましょう。

2-4.オーナーチェンジ物件の場合はレントロールを活用する

オーナーチェンジ物件の場合はすでに住人がいますので、どのような属性の人がいるのか、あるいは家賃滞納がないかなどをレントロールで確認するようにしましょう。

レントロールとは賃貸の状態をまとめた書類のことです。レントロールには各部屋の家賃や敷金の預かり状況、家賃の入金状況、住人の属性などが記載してあります。

滞納状態や属性のチェックは必ずしましょう。また各部屋の家賃のチェックもしておきましょう。同じタイプの部屋なのに賃料が違う場合は注意が必要です。家賃が下落している可能性があり、高い方の家賃も退去後の次の募集では安くなる可能性があるからです。その場合、収支が変わってきますので、事前にチェックしてシミュレーションするようにしましょう。

2-5.大手の不動産会社と付き合うことで金利上昇に備える

対策としては、まずは金利の低い金融機関から融資を受ける努力をしましょう。また大手の不動産会社から購入することが金利上昇リスク対策につながります。大手の不動産会社の場合、提携している金融機関が豊富にあり、優遇措置などを使うと低い金利で融資を受けられることがあるからです。

また、そういった大手の不動産会社であれば金利が上昇した際に低い金利の金融機関に借り換えをサポートしてくれるなどのメリットもあります。金利上昇のリスク対策は不動産会社の協力を得ることが重要な手段になります。

2-6.修繕費用などは余裕を持った資金計画が必要

大規模な修繕費用や設備の改修費用は余裕を持って計画するようにしましょう。突発的な出費は避けられませんので、そのような事態になっても安定して運用ができるように、資金には十分余裕を持って行うことが大切です。

2-7.流動性リスクに備え早めに出口戦略を立てる

1棟マンションを売却する際は時間がかかることがありますので、早めに手を打つことが重要になってきます。また日頃の管理状態が売却価格に影響してきますので、きちんと管理しておくことも出口戦略を考える上では大切です。

慌てて売却をすると、想定以下の価格で売却せざるを得ない可能性も出てきます。出口戦略は、時間的に余裕を持って行うようにしましょう。

西宮光夏
1棟マンションのリスクとリスクヘッジの方法について解説いただきました。1棟マンションの場合は金額が大きくなりますから不安はありますが、リスクを整理して対策をすれば、リスクヘッジできることがわかりました。
不動産投資のプロ
青山さん
そうですね、みなさん1棟というと失敗すると損害が大きいと考えがちですが、きちんとリスクヘッジすれば、区分投資マンションよりメリットがある投資だということがわかると思います。資産形成という面から考えると、利回りが高く、他の投資商品よりも安定して収入が見込める商品だと思います。不安をひとつひとつ解消してぜひ取り組んでもらえばと思います。
西宮光夏
1棟マンションを検討する際は今回の解説をもとにしっかりリスクヘッジしていただければと思います。青山さん本日は忙しい中、解説いただきありがとうございました。
不動産投資のプロ
青山さん
こちらこそありがとうございました。

まとめ

区分投資マンションの投資はしても、1棟マンションには投資はちょっと・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは、価格が高いという理由で、ただ漠然と不安を感じているだけではないでしょうか。ひとつひとつ具体的にリスクを掘り下げてみれば、リスクヘッジはそれほど難しくないことがわかります。

逆に100歳時代と言われる近年、定年後の生活が不安な時代になっています。そのような時代に、老後の資産形成としては毎月の手残り額が多く、利回りも高いため他の投資商品より効率的な資産形成だと言えます。これから1棟マンションを検討される方はぜひ今回の解説を参考にして取り組んでいただければと思います。

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西宮光夏

不動産会社での勤務や、所有している不動産運用の経験をもとにHEDGE GUIDEでは不動産関連記事を執筆しています。現在は主にふるさと納税の記事を担当しています。ふるさと納税記事では、地域の人たちが心を込めて提供する返礼品の素晴らしさを、少しでも多くの人にお伝えできればと思っています。