2020年にコロナウイルス感染症拡大によってテレワークが普及したことをきっかけとして、居住ニーズに変化が起きています。特に2020年の下半期には、東京からの転出者が増えたと大々的に報道されていました。
実際に東京都の人口はどう推移しているのか、物件価格にどのような影響が出ているのかなど、データを用いて解説します。
目次
- 東京都における2020年の転出入者と物件価格の推移について
1-1.2020年の転出入者総数
1-2.東京都からの転出先について
1-3.東京23区の物件価格推移について - 神奈川県の人口および物件価格推移について
2-1.神奈川県の月次人口推移
2-2.神奈川県の世帯数推移
2-3.横浜市および川崎市の物件価格推移 - まとめ
1.東京都における2020年の転出入者と物件価格の推移について
東京都では人口の一極集中が進んでいたため、人口の転出が増加していたことは大きなニュースとして報道されました。実際の転出入者数はどのように推移していたのか、データから検証します。
1-1.2020年の転出入者総数
総務省統計局の統計によると、2020年における東京都の転出入者総数は以下表の通りです。
他都道府県からの転入者数 | 他都道府県への転出者数 | 転入超過数 |
---|---|---|
432,930人 | 401,805人 | 31,125人 |
※参照:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」
人口の転出が大きく報道されたため、2020年における東京都では転出者の方が多い印象がありますが、2020年の通年で見ると転入者の方が上回っていることがわかります。
なお、都道府県別に東京都への転入者を見ると、東京都への転出者が多いのは愛知県・大阪府・兵庫県などです。近畿地方や中部地方の大都市から東京都へ人口が移動している様子が伺えます。
また、神奈川県・千葉県・埼玉県では東京都への転出者数が大幅に減っており、首都圏では特に東京都への人口流入数が減っています。なお、2019年と比較すると、どの都道府県でも2020年の東京都への転出者数は減っています。東京都への一極集中傾向は弱まっている状況です。
1-2.東京都からの転出先について
通年で見れば東京都の人口は転入超過でしたが、転出者が増えたことは事実です。2019年と比較して、2020年における東京都からの転出者が特に増えた都道府県は以下グラフのようになっています。
神奈川県・千葉県・埼玉県の首都圏では東京都からの転入者が増えていますが、神奈川県では特にその傾向が顕著です。2020年に東京都から神奈川県に移動した人口は、2019年と比較して5,000人以上増えました。
神奈川県から東京都への転入者が減った一方で、東京都から神奈川県への転出者は非常に増えているため、コロナによる人口移動の影響が大きかったのは神奈川県と言えます。
1-3.東京23区の物件価格推移について
2020年下半期は特に転出者数が多かった東京都ですが、投資用物件にはどのような影響が出ているのか、投資用物件の価格推移を検証します。東京23区における築10年未満の区分マンション価格推移は以下グラフの通りです。
※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家「四半期レポート2021年1月~3月期」
東京23区の築浅区分マンションは、第3四半期まで値上がりを続けていましたが、第4四半期に入って少し値下がりしました。東京23区で転出超過が始まったのは2020年7月以降です。
築浅の区分マンションに関しては、少なからず転出者が増加した影響もあったものと考えられます。また、東京23区における一棟築浅アパートの価格推移は以下グラフの通りです。
※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家「四半期レポート2021年1月~3月期」
築浅の一棟アパートに関しては、区分マンションとは反対に2020年第3四半期まで値下がりを続けました。年末にかけて価格を持ち直し、2021年第1四半期には2020年第1四半期とほぼ同じ水準まで上がっています。
一棟アパートに関しては、転出者の増加に伴って価格が下がった一方で、第3四半期で底を打った状況です。
2.神奈川県の人口および物件価格推移について
東京都の転出者増加に影響を受けたと考えられる神奈川県について、人口および世帯数推移を検証します。
2-1.神奈川県の月次人口推移
神奈川県における2020年1月以降の人口推移は以下グラフの通りです。
※参照:神奈川県庁「神奈川県人口統計調査」
神奈川県では、2020年5月に大きく人口が増えており、その後第3四半期にかけて人口が少し減少しました。3月・4月ではなく5月に大きく人口が増えたのは、4月に緊急事態宣言が発令されていた影響もあったものと考えられます。
なお、神奈川県内で市別の人口推移を確認すると、2020年5月に最も大きく人口が増えたのは川崎市です。川崎市では、2020年4月と2020年9月の人口を比較すると、9月までにかけて約4,100人増えています。川崎市の中でも特に人口が増えているのは中原区や高津区などです。
2-2.神奈川県の世帯数推移
住宅需要の大きさを検証するためには、人口とともに世帯数推移を検証するのも有効です。神奈川県における2020年の世帯数推移は以下グラフのようになっています。
※参照:神奈川県庁「神奈川県人口統計調査」
神奈川県の世帯数は、3月まで横ばいでしたが4月から5月にかけて大幅に増えました。人口は6月以降減少していますが、世帯数は6月以降も増加を続けています。人口推移と世帯数推移とを照合すると、神奈川県では少人数の世帯が増えていると言えるでしょう。
なお、2020年9月時点では、神奈川県の1世帯あたり人口は約2.19人となっています。単身者向けのワンルーム物件よりはDINKS世帯を意識した間取りの物件も、今後の世帯数推移によって選択肢の一つとして検討しやすくなると言えるでしょう。
2-3.横浜市および川崎市の物件価格推移
横浜市および川崎市における築10年未満の区分マンション価格は以下のように推移しています。
※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家「四半期レポート2021年1月~3月期」
横浜市では2020年第4四半期に価格が下がったものの、川崎市では比較的価格が横ばいとなっています。また、2020年第4四半期時点では横浜市よりも川崎市の方が、物件価格が高くなりました。
※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家「四半期レポート2021年1月~3月期」
築浅アパートの価格推移を見ると、川崎市では2020年後半にかけて少し価格が下がっています。一方、横浜市では2020年後半に価格が上がりました。
まとめ
東京都では2020年下半期に神奈川県などへ人口が流出しました。しかし、2020年の通年で見ると東京都の人口は増加しています。
なお、東京都における築浅の区分マンションおよび一棟アパートの価格推移を見ると、いずれも大幅な変動と言えるほどの値動きではなく、横ばいとも言える状況です。
神奈川県の人口推移を見ると、県全体では2020年5月に人口が増加した一方で、その後は少しずつ減少しています。しかし世帯数は春以降増加中であり、単身者世帯もしくはDINKS世帯などが増加していると考えられます。
神奈川県の物件価格推移を見ると、横浜市と川崎市との比較では、人口増加率が高い川崎市の方が2020年第4四半期時点で高価格です。
これらのデータを検証してみると、テレワークの普及が東京の人口減少の要因とはなっていないものの、少なからず人口推移や不動産需要のトレンドに影響を与えている可能性はあると考えられます。今後もこれらの状況に注視しつつ、慎重に投資判断をしていくことが重要と言えるでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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