2020年の不動産投資の見通しは?2019年の不動産投資市場の振り返りと今後の予測

2019年も、不動産投資市場において大きなニュースがいくつもありました。2020年に不動産投資を検討している方や売却タイミングを見極めている方に向けて2019年の主な動きと今後の動向をまとめてみましたので、一緒に振り返っていきましょう。

  1. 不動産投資市場の2019年の動向
    1-1.2019年の首都圏の新築マンション平均価格は6,000万円前後で推移
    1-2.2019年10月時点の東京23区の中古マンション価格は前年比1.6%上昇
    1-3.2019年10月時点の東京都のマンション賃料は前年比5.3%上昇
    1-4.一棟投資にとって2019年は苦難の年に
    1-5.2019年の「貸家」の着工件数は前年比13.3%の大幅マイナス
    1-6.不動産投資家の意識は「1年前と比べて、融資審査が厳しくなった」
    1-7.国内の2019年第3四半期の事業用不動産投資額は2期連続増
  2. 不動産投資クラウドファンディングの2019年の動向
  3. Jリートの2019年の動向
  4. 海外不動産の2019年の動向
  5. 株式市場の2019年の動向
  6. 2020年の不動産投資市場の見通しまとめ

不動産投資市場の2019年の動向

まずは不動産投資市場の動向やアパートローンなどの動向について振り返っていきたいと思います。

2019年の首都圏の新築マンション価格は6,000万円前後、契約率は大幅低下

不動産経済研究所の調査(※)によると、2019年1月~10月までの首都圏の新築マンションの価格は5,600万円台~6,500万円を行き来しており、10月時点で5,992万円(前年同月比+0.97%)と高水準を維持しています。

ただ、気になるのが契約率です。新築マンションの契約率は70%を上回れば好調と言われますが、2019年8月75.4%から9月に56.8%、10月に42.6%まで大きく下落してきています。背景として、高水準の価格帯が続く中で、消費増税が重しになったことなどが考えられます。今後、契約率が回復してくるかどうかで、このまま価格を維持できるか下落となるかの方向性が決まってくるでしょう。

※出典:不動産経済研究所「≪首都圏のマンション市場動向≫-2019年10月度-

2019年10月時点の東京23区の中古マンション価格は前年比1.6%上昇

一方、東京23区内の中古マンション価格については、2019年10月時点の価格は3,682万円(平均築年数25.3年)で前年同月比1.6%増(※)となっています。

※出典:東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移

23区内の中古マンション価格が上昇を続けている背景として、23区の賃貸需要が引き続き高く見込まれていることに加え、都内の新築マンションの価格が高止まりしており中古マンション購入を選択肢に入れる検討者が増えていることや、一棟投資の融資で引き締め姿勢が鮮明になってきたため、中古マンションの物色が進んでいることなどが考えられます。

2019年10月時点の東京都のマンション賃料は前年比5.3%上昇

2019年10月時点の東京都のマンション賃料は前年同月比5.3%の上昇となっています。2018年10月も前年同月比6.9%の上昇であったことを考えると、賃料は上昇トレンドにあると言えるでしょう。

※出典:東京カンテイ「 2019年11月14日 三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移(東京カンテイ)

一棟投資にとって2019年は苦難の年に

一棟投資の分野では、2018年からの不正融資の問題が2019年に入っても取り沙汰されており、スルガ銀行の不適切融資に該当する額が1兆円を超えていたという報道や、2019年6月にTATERUの業務停止命令などが発表されたことなどに加え、2019年2月にレオパレスの違法建築問題が大きく取り上げられるなど、一棟投資の業界全体の信頼性低下につながるニュースが続きました。

また、上記を背景として一棟投資に対する金融機関側の引き締めも多く、一棟投資の会社からは「2018年以上に融資審査が通りづらい状況になってきた」「融資の審査期間が長期化している」「区分マンション販売への路線変更を検討している」という声も上がっています。

2019年の「貸家」の着工件数は前年比13.3%の大幅マイナス

また、国土交通省が発表している「住宅着工統計」において、投資用不動産を表す「貸家」の2019年1月~10月までの着工件数は、前年比13.4%の大幅減少となっています。

直近10年で「貸家」の着工件数が最も多かった月は2017年3月の44.1万戸で、リーマンショック後の2009年頃は月28万戸前後、それに対して2019年10月時点は32.0万戸ですので、「貸家」の着工は冬の時代に入りつつあると考えて良いでしょう。

不動産投資家の意識は「1年前と比べて、融資審査が厳しくなった」

一方、不動産投資家側の意識についても見ていきましょう。不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」を運営する健美家株式会社がサイト会員に実施した「不動産投資に関する意識調査:第12回」において、融資の環境は1年前と比べて「厳しくなった」と回答した人が約6割を超え、厳しくなったと感じた人の約6割が「自己資金の割合が増加」と回答。融資環境が厳しくなったことにより、購入できない人も増加してきています。

また、同調査では1年後の投資用不動産の価格について「下降している」という回答が54.9%の過半数となりました。理由の上位が「融資の引き締めが続く」「景気が悪化している」ということで、投資家の慎重な姿勢がうかがえます。

国内の2019年第3四半期の事業用不動産投資額は2期連続増

不動産サービス大手のCBREが2019年11月14日に発表した2019年第3四半期の投資市場動向では、日本における事業用不動産の投資額は増加となっています。対象は10億円以上の取引で、土地取引およびJ-REIT(不動産投資信託)のIPO時の取得物件を除いた投資額は前年同期比14%増の7720億円となり、2期連続で前年同期を上回った。

投資主体別で最も大きかったのはJ-REIT(42%)ですが、投資額は前年同期からほぼ横ばい。投資額が最も増加したのはJ-REIT以外の国内投資家で、前年同期比80%増となっています。一方で、海外投資家は同25%減少しています。

国内の機関投資家は、米中の貿易摩擦やEU離脱問題を念頭に新規投資には慎重な姿勢を維持しながらも「良い物件があれば買いたい」と考えており、投資意欲自体は旺盛となっています。

不動産投資クラウドファンディングの2019年の動向

融資の引き締めなどで一棟投資などが少なくなる中、2019年も勢いが続いたのが不動産投資型クラウドファンディングの分野です。

不動産投資型クラウドファンディングの案件は、4%~5%と利回りはあまり高くない案件も多いのですが、1万円から不動産投資ができることや投資手続きが簡単なこと、物件やエリアなどに関する詳細な情報開示や優先劣後スキーム(運用終了時のキャピタルロスなどを一定割合までクラウドファンディング会社が負担)などによるリスクを軽減する仕組みが充実していることなどに加え、案件数がまだまだ少ないことも相まって、投資家からの人気は非常に高い状況です。

昨年末にサービスを開始したCREALは累計調達額で30億円を突破しており、これまでに公開したすべての募集案件が満額で成立しています(2019年12月時点)。また、プロパティエージェントやインテリックスなど東証1部上場の不動産投資会社なども2019年にサービスを開始しています。

2019年後半の不動産投資型クラウドファンディング案件の特徴としては、都心の築浅一棟マンションなど大型案件にもクラウドファンディングで投資ができるようになってきたという点です。物件価格が数億円の一棟マンションは、個人投資家にとっては金額やリスクの面で手が届かず、機関投資家にとっては規模が小さく投資することが難しい、今まではプレイヤーが非常に少なかった案件でした。そういった高額の物件に対して、CREALなどのクラウドファンディングサービスがその仕組みを活用しすることで個人投資家にも一棟投資の投資機会を提供し始めています。

また、CREALではまちづくりや地方創生、ヘルスケア・教育などに貢献する「ESG不動産投資」の案件にも力を入れており、「第9号駒込保育所ファンド」(4.5億円)、「第16号千倉ホテルファンド」(約2.3億円)、「第24号沖縄専門学校ファンド」(約8.3億円)などを募集しました。グローバルな株式投資市場などでは主流になりつつある「ESG投資」ですが、不動産投資の分野でも投資機会が生まれ始めているというのは、2020年も注目したいポイントの一つです。

Jリートの2019年の動向

Jリート指数は、年初の1月4日始値1,750.87から、12月12日終値時点で2,157.66(年初から23.2%上昇)、現在の予想分配金利回りは3.55%となっており、年初から大きく上昇しました。背景として、東京の賃貸需要が高いことに加えて、大阪・関西万博の開催決定や、カジノを含むIR(統合型リゾート)などの開業予定などが後押しをしたと観測されています。

Jリートのなかで4割以上の資産規模を占めるオフィスのマーケット環境についても詳しく見てみると、オフィス仲介大手の三鬼商事の発表数値によれば、2019年の東京ビジネス地区の平均空室率は1月時点の1.82%から11月時点で1.56%まで低下してきており、東京における高いオフィス需要が今も続いていることが伺えます。

海外不動産投資の2019年の動向

2019年に海外不動産で最も注目されたのは、2021年以降に海外の中古不動産を活用した節税スキームが使えなくなる、というニュースです。

これまで日本の税制では耐用年数(たとえば、木造で22年)を過ぎた建物は4年で減価償却でき、また不動産賃貸事業で赤字が出た場合に給与所得と通算できるという仕組みになっていました。

日本では、不動産価格における土地と建物の価格比率は、建物のほうが小さくなるケースが多いため、上記の節税効果も小さくなりますが、海外では建物のほうが比率が高いという国(アメリカなど)があり、また日本より中古不動産の流通が活発で、耐用年数を超えた物件も価格が落ちないケースも少なくありません。そこで「海外で耐用年数を超えた木造物件を購入し、減価償却を終えてから購入価格に近い価格で売却する」といった形で不動産の所有期間中に減価償却による赤字を出して所得税の節税を行うスキームが年収2,000万円を超えるような高所得者を中心に行われていました。

2020年度の税制改正により、海外の中古不動産の減価償却で生じた赤字を損益通算できなくなるという可能性が高く、業界関係者もその後の詳細を注視している状況です。

株式市場の2019年の動向

日経平均株価は2019年1月4日時点の終値19,561円96銭から、2019年12月12日時点の終値で23,424円81銭まで回復し、高値圏となってきています。

上昇の背景に、米中貿易協議の部分合意やNYダウの上昇などがあると考えられますが、2020年以降について機関投資家サイドからは世界経済は長期停滞に向かうとの予測や5年以内に金融危機が起こるリスクなどを懸念する声もあります。株価下落は、不動産市場にとってはマイナス要因となるため、今後の動向には注意が必要です。

2020年の不動産投資市場の見通しまとめ

2020年の新築マンション価格は、契約率が低水準であることから下落に向かう可能性が高く、中古マンションについてもオリンピック終了などを横目に短期的には売却などが出てくると考えられるため、価格が横ばいか下落となる可能性があります。ただ、都心は2045年頃まで人口が現在以上の水準を維持できる可能性が高いため、2020年に価格が下落をしたとしても中期的には回復してくる可能性があります。

アパートローンは2019年に引き続き、2020年以降も引き締めの傾向が続くと想定されるため、融資環境の厳しさを背景にアパート価格は下落に向かっていくと考えられます。これからアパート投資やマンション1棟投資を検討されている方は、自己資金の用意や自身の属性の改善、融資ノウハウなどに関する情報収集などに取り組んでおくことが大切です。なお、マイナス金利については現在の国内・海外の経済情勢などを鑑みると2020年以降も数年間は続く可能性が高いと考えられます。

一方、不動産投資型クラウドファンディングなどの小口投資の分野は、事業者の新規参入も含めて2020年も拡大が続くと予測されます。ESG不動産投資の案件や一棟案件なども増えてくると想定されるため、投資家にとっては新たな投資機会が生み出されていく年となるのではないでしょうか。ただし、不動産投資型クラウドファンディングのサービスの中には、不動産投資会社が営業リストを確保するために募集を行っているケースもあるため、事業者の見極めは必要となります。

Jリートについては、足元のオフィスマーケット状況や事業用不動産への投資は好調ではありますが、今年はJリート指数が+23.2%と非常に大きな上昇となりリーマンショック前の価格にも近づいてきていますので、株式市場の動向などにも注意をしながら下落のリスクも想定して投資を進めていく必要があります。

海外不動産の投資については、2020年度の税制改正内容が最も注目されるところですが、その他にも市場全体がリスクオフになった場合に円高に傾く為替リスクなどにも注意が必要です。

2020年はオリンピックがいよいよ開催され、不動産市場にとっても節目になる可能性が高い年ですので、不動産投資家の動向や海外の投資家の動向などにも注意を配りながら、投資を進めていきましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」