アパート経営を始める前に、建てる土地の地盤調査を忘れずに実施しましょう。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」や建築基準法により、住宅事業者にとって地盤調査は実質的に欠かせないものとなりました。
また、住民の安全を守り、資産価値を維持するためにも、地盤調査は重要です。今回は地盤調査の仕組みや必要性、そして地盤保証付きの不動産会社を紹介します。これからアパートの新築・購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- アパートの地盤調査とは?
1-1.地盤調査の基本
1-2.地盤調査にかかる費用と時間
1-3.住宅事業者にとって地盤調査は欠かせない - アパート経営における地盤調査はいつ実施する?
2-1.新築時
2-2.大規模なリフォーム
2-3.自然災害後 - 地盤調査のプロセス
- 地盤調査報告書の見方
- 地盤保証付きのアパート経営ができる不動産会社
5-1 シノケンプロデュース
5-2 アイケンジャパン - まとめ
1 アパートの地盤調査とは?
地盤調査とは、アパートなどを建てる地盤の強度や状況、亀裂・傾斜の有無などを調べるプロセスです。問題のある地盤にアパートを建てると、将来地盤沈下や液状化などの被害を受けたり、建物の劣化が早まったりする恐れがあります。地盤調査を通じて、安全性を確認したうえで、アパートの建設に進みましょう。
1-1 地盤調査の基本
地盤調査とは、建物を建てる前に地盤の状態を確認するプロセスです。地盤に問題がなければそのまま建物の建設に入ります。地盤に問題がある場合には、地盤改良工事を実施して、問題のない状態に回復させてから建物を建てます。
地盤調査では、主に次のようなポイントに着目して評価します。
- 用途指定の履歴
- 市街地/埋め立て地など地形の状況
- 周辺道路における陥没や亀裂の有無
- 周辺にある建物の傾斜や基礎などの亀裂
- 敷地の表層土の土質・強度や排水状況
地盤が悪いまま建物を建てると、液状化や建物の傾き、劣化の加速など、建物に大きなダメージを与えるリスクがあります。
アパートの場合は、将来人が住めないものになったり、劣化の進行により修繕費用が高くついたりする恐れがあります。水はけが悪いと、豪雨の際の被害が大きくなる可能性も否定できません。堅実なアパート経営に向けて、地盤調査は欠かせないプロセスです。
1-2 地盤調査にかかる費用と時間
地盤調査は、SWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)は5万円程度、ボーリング調査は25〜30万円程度の費用がかかります。SWS試験はロッド(鉄の棒)を地面に突き刺し、その沈み方から地盤の堅さを判断する方法です。
ボーリング調査では、穴を掘って地盤の状況を分析します。また、万が一地盤に問題があり、改良工事をおこなうときには、50万円~100万円程度を目安に費用がかかります。これらの費用は、基本的に土地の広さに比例して高額化します。
また、調査速報が出るまでの日数は、SWS試験で半日~数日、ボーリング調査は1日~数日です。速報の段階で、基本的には追加工事の要否が明らかになります。
1-3 住宅事業者にとって地盤調査は欠かせない
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」や建築基準法の改正を経て、現在では、地盤調査は住宅事業者にとって実質的に欠かせないプロセスとなりました。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」のなかで、「住宅瑕疵担保責任」というものが整理されました。これは、建築した住宅に新築10年以内に瑕疵が見つかった時に、住宅事業者が補修・損害賠償を負うものです。
地盤調査をせずに、10年以内に瑕疵が見つかった場合、住宅事業者は適切な対処をしたとはみなされず、これらの責任を負わなければならない可能性が高いのです。
したがって、これからアパートを新築する場合には、正当な業者であれば地盤調査が必要となる可能性が高いといえます。建てられたのが2000年以前の中古物件の場合は、地盤調査が行われていない場合が想定されますが、できるだけ地盤調査実施済の物件を購入するのが得策といえるでしょう。
※参考:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律」
2 アパート経営における地盤調査はいつ実施する?
アパート経営では、次のタイミングにて地盤調査を実施します。
- 新築時
- 大規模なリフォーム
- 自然災害後
それぞれの実施タイミングについて、詳しく紹介します。
2-1 新築時
新たにアパートを建てるときには、地盤調査を経たうえで建てるのが望ましいといえます。現在においては、住宅事業者にとって実質的に地盤調査は欠かせないものとなっているため、基本的には実施する前提で考えておいた方がよいでしょう。
地盤調査によって、土地の安全性が確認されるのはよいことですが、調査費用をアパートオーナーが負担するケースも多いので、施工費用の増大要因となる点には注意が必要です。
なお、土地の取得時に売主側から直近の地盤調査結果を共有される場合もあります。土地購入時の参考情報としては有効ですが、当時の調査がずさんだったり、時間経過により土地の状況が変わっている可能性もゼロではありません。
基本的には、過去の調査実施有無にかかわらず、新築前に調査を実施するのが望ましいといえます。
2-2 大規模なリフォーム
大規模なリフォームを実施するときには、念のため地盤調査を実施しておくのが得策です。アパートが建てられたのが2000年より以前の場合、過去には地盤調査が実施されていない可能性があります。また、実施されていたとしても、経年により土地の状況が変わっているケースもあるでしょう。
さらに、リフォームにより建物のサイズや重さ、重心などが変化すれば、土地に与える負荷が変わるため、地盤の問題が深刻化することも考えられます。将来の建物の安全性を確認するためにも、大規模リフォーム時には、地盤調査を行っておくのが望ましいといえます。
2-3 自然災害後
豪雨や大地震、洪水、土砂崩れなどの自然災害が、敷地もしくはその周辺で起こった時には、改めて地盤調査をするのが得策です。こうした自然災害は、ときに土地の性質を変化させる可能性があります。
実際に東日本大震災のときには、東京湾の沿岸部で大規模な液状化現象が発生しました。もともとは問題のなかった地盤が、自然災害により変質するリスクもあるため、災害が起きたときには、念のためあらためて地盤調査を行いましょう。
3 地盤調査のプロセス
地盤調査のプロセスは、主に次の要領で進みます。
- 依頼
- 現地調査
- 工事内容・見積もりの確認
- 地盤調査
- 調査報告・改良工事
地盤調査の依頼自体は、基本的には不動産会社やアパート販売事業者・施工業者が行います。新築時以外に自主的に実施する場合には、オーナー自ら依頼することもできます。その際には、周辺地図や平面図、建築予定の建物の特徴などの資料提出が必要です。
本格的な調査の前に、下見も兼ねた現地調査を行います。外から見える土地の状況の確認や作業環境の確認などが主な目的です。現地調査を基に見積もりと作業内容を説明します。異論がなければ正式に契約して、調査してもらいます。調査の所要時間は先に紹介した通りで、調査方法や調査範囲によって異なります。
地盤調査完了後には「地盤調査報告書」を受領し、調査は完了です。地盤に問題がある場合には、土地の改良工事を検討しましょう。
4 地盤調査報告書の見方
地盤調査には多くの専門用語が並んでいます。不動産会社や施工業者を通じて評価内容がシェアされる場合もありますが、事前知識なしでは読み解くのが難しいでしょう。
SWS試験の場合の各項目の意味と目安は、次のとおりです。
貫入深さ | ロッドが刺さった深さ。0.25m(25cm)単位で区切る。 |
荷重(Wsw) | ロッドを貫入するためにかけた荷重。 0.25(KN)であれば25kgの荷重を意味する。 5、15、25、50、75、100kgと段階的に荷重をかけ、75kg以下の層が多いと軟らかい地盤と評価される。 |
半回転数(Na) | ハンドル半回転を1回とカウント。ロッドが過重だけで沈まないときに、25cm沈めるために必要な回転数を計測。 浅い部分で「0」の場合は、特に軟弱な地盤の可能性がある。 |
1mあたりの半回数(Nsw) | 1m沈めるのに要した半回転数。 |
貫入状態 | ロッド貫入の様子を表現。 「ストン・スルスル・ジンワリ・ユックリ・打撃・打撃不能」などと記載。 「ストン」が多いとその地盤は弱いことを意味する。 |
換算N値 | 数値が大きいほど地盤が強いことを意味する |
許容支持力 | 1㎡あたり何トンの荷重に耐えられるかを表す。 |
5 地盤保証付きのアパート経営ができる不動産会社
これからアパート経営を検討される場合は、地盤保証付きの不動産会社からアパートを購入し、管理も任せる方法を検討されてみると良いでしょう。地盤保証付きの不動産会社では地盤調査も事前に行っているため、事故のリスクを大幅に下げることができます。ここでは地盤保証付きの不動産会社を2社ご紹介します。
5-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)による「年間アパート開発棟数部門」で、9年連続No.1の実績があるアパート会社です。これまで7,000名を超える全国のオーナーと契約し、自社施工で7,000棟以上のアパートを供給しています。
提案する物件の土地に対して必ず地盤調査を実施しており、20年間の保証も設定しています。詳細を確認しましょう。
地盤保証
シノケンプロデュースでは、耐震性や耐久性、防音性などの基本性能に優れたアパートを供給しています。
耐震性や耐久性を高めるために、アパートを建てる前に第三者の地盤調査会社による地盤調査を受けていることも特徴です。調査結果に応じて、地盤の性質に合った対策工事も実施しています。
また、引き渡し後20年間の保証期間も設けており、リスク対策をしっかり行ったアパート経営ができるようにサポートしています。
5-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトとして掲げているアパート会社です。「入居者に選ばれるかどうか」を徹底的に追求し、これまで全国各地に1,000棟を超える「グランティック」シリーズなどのアパートを供給しています。
オーナーに安定的なアパート経営をしてもらえるよう初回満室保証、住宅瑕疵担保責任保険などの安心保証システムを用意しており、その一つが「宅地地盤保証」です。詳しく見てみましょう。
宅地地盤保証
アイケンジャパンでは、アパートを建てる前に地盤調査を実施し、長期間のアパート経営に耐えられる地盤かどうか確認して物件を提供しています。調査の結果次第では、地盤改良や杭工事などを行って地盤の強化を図っています。
安心してアパート経営ができるように、地盤に対する保証も用意しています。万が一、建物の引き渡しの翌日から20年以内に不同沈下が発生した場合、同社が建物の被害と地盤の修復工事を行う内容になっています。
6 まとめ
アパートを建てる際には、必ず地盤調査を実施して、土地に問題がないことを確認したうえで、建設を進めてもらいましょう。地盤調査の結果が思わしくなければ、土地改良工事を視野に入れておく必要があります。もし、自分で土地を選ぶのであれば、売主が地盤調査済の土地を選ぶと、追加の土地改良コストを負担するリスクが軽減するため安心です。
また、大手の不動産会社の中には、地盤保証付きのアパートを販売する先もあります。建設済みの新築アパートを購入するときには、こうした不動産会社に相談するのも、ひとつの方法です。
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伊藤 圭佑

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