CBRE「2024年問題と先進的物流施設の需要」公表。サステナブル物流の実現に向けて効率化ニーズ高まる

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事業用不動産サービスのシービーアールイー株式会社(CBRE)は5月30日、「『2024年問題』と先進的物流施設の需要」と題したレポートを発表した。2024年問題は、トラックドライバーの時間外労働に関する規制が24年4月から厳格化されることで物流業界が直面する様々な問題を指す。レポートでは、同問題を背景とした物流の効率化ニーズと、それに伴う先進的物流施設の潜在的な需要について考察。「ドライバーの労働時間を短縮しつつ輸送量を維持するためには物流の効率化が不可避。物流効率化に伴い、先進的物流施設が果たす役割は拡大する」としている。

18年に施行された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方関連法)」における労働基準法の改正に基づき、24年4月1日からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間(月平均80時間)に制限される。また、22年12月に改正された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」を受け、24年4月からはトラックドライバーの年間の拘束時間が原則3300時間以内、連続運転時間が4時間以内となる。

懸念されているのは、トラックドライバーの労働時間の制限が厳格化されることで、国内のトラック輸送能力が大幅に低下し、企業活動や消費者の生活に影響が出ることだ。22年9月に経済産業省、国土交通省、農林水産省が発足させた「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の中間報告では、何らかの対策が講じられなければ、トラック輸送需要に対して輸送能力が4.0億トン(14.2%)不足し、30年には不足が9.4億トン(34.1%)に拡大すると試算されている。

政府は「2024年問題」への対策を本格化させる姿勢を示している。関係閣僚会議を3月31日に開催、6月上旬をめどに対策パッケージをまとめ、必要に応じて法改正も視野に入れるとした。それに先立つ22年9月には経産省、国交省、農水省の3省が「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を設置、今年2月に物流業界の課題と政策の方向性に関する中間取りまとめを行っている。政策の方向性の3つの柱として「荷主企業や消費者の意識改革」、「物流プロセスの課題の解決」と並んで「物流の標準化・効率化の推進」が挙げられている。最終報告は5~6月に示される予定。

企業側でも、大手の物流会社を中心に物流効率化の取り組みは始まっている。CBREが物流会社や荷主企業を対象に実施した「物流施設利用に関するアンケート調査」では、「他の運送会社との提携」や「共同配送」といった他社との協業、すなわち積載率を上げることで効率化を図る企業が多数を占めた。

現状の輸送オペレーションをできる限り変えずに済む点で「ドライバーの増員」を選択した回答者も多かったが、一方で「中継拠点の新設、増設」(29%)、「各地の保管量を増強」(9%)など倉庫の使用面積を増やす施策のほか、「自動運転やダブル連結トラックの活用」(14%)などのように大型物流施設の利用が不可欠となる施策も一定数を占めている。

ただし、同調査の2024年問題への対応の実施状況を聞いた別の設問では、「対策を実施済み」との回答が10%だったのに対し、「対策が十分でない」「まだ実施していない」「これから検討する」の回答は全体の80%を占め、2024年4月の労働規制施行まで1年を切った段階でも、企業側の対策がなかなか進んでいない様子がうかがえる。

また、首都圏以外の地域では、先進的物流施設が相対的に不足していた。同社は、「物流会社は一時的には人員増や協業で乗り切ることはできるかもしれないが、そもそも人手が不足する状況にあって、長期的な観点から物流の効率化施策を進めることは避けられない」と見る。

その上で「物流効率化はトラックドライバーの働き方改革に資すると同時に、企業の利益率の改善や脱炭素への貢献といった、多くのポジティブな副産物をももたらす。物流効率化の効果を最大限に発揮するには、先進的物流施設の利用が有効」と先進的物流施設が果たす役割に期待を示した。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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