緊急事態宣言でリモートワークや商業施設の休業が続くが、都市部から人流が離れているわけではない。事業用不動産総合サービスのCBREが5月6日発表した最新の国内主要店舗(路面店舗)の市場動向に関するレポート「リテールマーケットビュー 2021年第1四半期」では、繁華街(ハイストリート)の空室は増加傾向だが、ラグジュアリーと呼ばれる高級ブランドの出店ニーズは堅調という傾向が示された。
まず、2021年3月の全国百貨店売上高は対前年同月比21.8%増で、18カ月ぶりのプラスとなった。もちろん前年の新型コロナウイルス感染拡大に伴う営業自粛の反動という要因が大きいが、商品別では、高級時計やラグジュアリーブランドなどの高額品が同41.6%増だったことは、消費者の購買意欲が低下していないことを示す。加えて、巣ごもり需要関連の商品も好調だった。
東京・銀座のハイストリート賃料は、リテーラーの出店ニーズが弱含んだエリアがみられたことから、対前期比1.6%減の24.3万円。一方、希少な一等地への出店には前向きなラグジュアリーブランドが複数あった。同社によると、ハイストリートの中でも好立地となる物件では、ラグジュアリーブランドを含む10社近いリテーラーが申込みを入れた事例があった。中には、既に銀座エリアに路面店舗があるリテーラーが、好調な業績を背景に2店舗目として出店を検討している事例が含まれている。別の募集物件でも、相場水準の募集賃料に対して複数のリテーラーが満額で申込みを入れた事例があった。
しかし、ハイストリートの募集空室は増えつつあり、業績不振などによる既存テナントの閉店、ないしは解約不可期間のため後継テナントを探している事例が複数ある。中には、後継テナントの決定前に一時休業に入ることを検討しているテナントもみられている。こうした状況下、東京プライム賃料は、22期連続横ばいの40万円(月/坪)となった。
大阪・心斎橋でも御堂筋で複数のラグジュアリーブランドの出店ニーズが見られたことから、心斎橋ハイストリート賃料は対前期比横ばいの14.1万円、プライム賃料は3期連続横ばいの25万円(月/坪)となった。名古屋・栄でも高級時計ブランドの出店ニーズがみられており、繁華街の賃料は対前期比横ばいの7.1万円、プライム賃料は2期連続横ばいの10万円(月/坪)となった。
このうち、銀座ハイストリート賃料の下落について、同社は半年前の予測の範囲内に収まっているとしながら、今後の予測としては、賃料が上昇に転じる時期を従前の22年Q1から同年Q3に先送りした。主な理由として、2021年1月の緊急事態宣言、4月のまん延防止等重点措置が適用されたこと、緊急事態宣言の延期個人消費が弱含みになっていること、新型コロナウイルスのワクチン接種が当初の予定通りに進んでいないことなどを挙げている。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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