CBRE、特別レポート「製造業の集積と物流施設需要」発表。台湾TSMCの日本工場建設に注目

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地政学リスクの高まりやパンデミックをきっかけとしたサプライチェーンの混乱で、世界規模で生産・物流体制の見直す動きが強まっている。シービーアールイー株式会社(CBRE)が3月30日公表した特別レポート「製造業の集積と物流施設需要」で、半導体受託製造会社大手の台湾積体電路製造(TSMC)にフォーカス。同社がソニーグループ、株式会社デンソーと共同出資するJapan Advanced Semiconductor Manufacturing (JASM) が熊本県菊陽町に新工場を建設中で、2024年までに車載用や画像センサー向けなどのロジック半導体の生産を開始する予定。レポートは、TSMCの熊本進出の事例から、工場新設で期待される経済波及効果と物流施設の需要について考察している。

レポートによると、福岡圏では大型マルチテナント型物流施設(LMT)の賃貸ニーズがここ数年で急速に増えている。22年の新規需要は9万坪と過去最大だった18年(4万坪)の2.2倍となり、稼働床面積は1年で34%増加した。需要増の背景には、倉庫の老朽化が進む中、効率的な運営ができる新しいタイプの倉庫(=物流センター)が求められていたことに加え、長距離輸送を避ける目的で九州に拠点を構える物流企業が増えたことなどが挙げられる。さらに、製造業系荷物の保管倉庫を増やす動きが加わった影響が明らかに認められ、CBREは「これらが製造業系の需要と合致すれば、福岡圏の物流マーケットは一層拡大する」と予想している。

JASMは菊陽町に新工場の建物を23年に竣工、24年までに車載用や画像センサー向けなどのロジック半導体の生産を開始する予定。TSMCは日本での第2弾の工場建設も検討しているという。CBREはTSMCの熊本進出を「大規模な工場新設が産業の集積を促し、それによって多くの人が集まりインフラ整備が進むという製造業による地域活性化の代表的な事例」と紹介した。

加えて、昨今のサプライチェーンの問題を受け、多くの日本企業は在庫の抑制から、不測の事態に備えた水準とする方向に移り始めた。そのため、工場新設で部品や完成品の保管需要が発生することが想定される。工場が稼働する前段階でも工場建設やインフラ整備にかかる資材などの保管需要が見込まれ、TSMCのケースでは熊本から福岡にかけてそのような需要がすでに顕在化している。そして将来は、工場周辺に人口が集積することによる消費財の保管需要の増加も見込まれる。

23年2月、半導体製造のラピダス株式会社が北海道千歳市に新工場を建設することを表明。同社は最先端半導体の試作品生産を25年に、量産を20年代後半に開始することを目指している。CBREは「北海道は半導体産業が盛んな地域ではないが、政府が支援するラピダスの工場建設が進めば新たな産業集積も見込まれる」と予測。サプライチェーンの問題と近年の円安の影響で生産の国内回帰が進むともいわれ、同社は「他の産業や地域でも産業再活性化が進み、新たな物流施設需要を生む」と、これらの課題が物流施設需要の追い風になると見る。

さらに、「物流施設の需要は、これまで大都市圏の消費財の荷動きを中心に語られることが多かった。これからは、製造業がEC化と並んで日本の先進的物流施設需要をけん引する潮流となる」と期待を込めた。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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