投資対象として注目高まるデータセンター。CBREが市場と可能性を分析

事業用不動産サービス大手のシービーアールイー株式会社(CBRE)は5月15日、レポート「データセンター流動化の黎明」を発表した。日本で投資事例が増えるデータセンター(DC)について、「投資妙味が増すDC」として、投資家に注目される理由をはじめ、市場の概況、運用面における特徴、投資対象としての可能性を分析している。

金利の先高観が強まる中、DCは需要が景気変動の影響を受けにくく、長期の安定したキャッシュフローが見込める投資対象として注目され始めた。主要アセットタイプに比べ利回りが高く、高めの収益成長が見込まれるためだ。一方、収益安定化に時間を要する、Capexが高額でリスクコントロールが難しい、テナント入れ替えの難度が高いなど、留意すべき点もある。

日本におけるDCの投資事例は徐々に増えており、需要拡大を見越し、首都圏や近畿圏ではDCの開発計画は目白押しの一方、開発用地や電力の確保が難しくなっている。このため、北海道や九州など地方都市でも開発案件が増えてきている。

特に、首都圏のDCの需給は逼迫している。今後3年間の供給量は過去3年間の実績を上回るものの、需給の緩みは限定的と予想。強い需要を背景に電力・建設コスト上昇分が転嫁できるとみられるため、データセンターの利用価格はゆるやかな上昇が予測される。

DCへの投資は、主に直接投資、共同出資、M&Aの3つのアプローチがある。直接投資は土地・建物、設備など投資範囲に応じて運用形態が分かれ、それぞれリスクとリターンが異なる。共同投資やM&Aは、投資家とデータセンター事業者が互いの強みを活かせることや、早期にデータセンター事業へ参入できるメリットなどから、事例が増加中という。

米国やシンガポールではDC特化型の上場REITも見られているが、日本ではまだ存在していない。日本のREITの場合、ポートフォリオの総額に占める不動産等への投資額の割合が50%以上(上場REITは70%以上)としなければならない投資法人法上の制約があるため、設備の構成比が大きいDSに特化したJ-REITの組成は難しい。このため、DSはいくつかの銘柄で一部組み入られているにとどまっていいる。一方で、土地・建物のみを所有するシェルコア型は、REITでも取得のハードルが下がるため、投資するケースが増えている。

同社は「今後、外部成長を図るためにDCをポートフォリオへ組み入れるREITは増えてくる可能性がある。REITによる取得が増えれば、DCの収支や利回りなどのトラックレコードも積み上がる。こうした投資判断の材料が増えることで、DCの取引がさらに活発化することが期待される」としている。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」