デジタル通貨「DCJPY」を電力P2Pプラットフォームでバスの運賃決済に利用する実証実験!

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環境価値とデジタル通貨が交わる未来への扉が、新たな可能性を広げつつあります。株式会社ディーカレットDCPが主催する「デジタル通貨フォーラム」が、関西電力株式会社を中心に編成された電力取引分科会サブグループAによって推進されるプロジェクトでは、環境保護とデジタル革命が融合した実験が進行中です。

バスの乗車運賃決済において、環境価値がデジタル通貨DCJPYを通じて交換され、ブロックチェーンに刻まれる実証実験となっています。ここではバス運賃の決済に環境価値を付加したDCJPYを利用する実証実験とP2P電力取引や実例について詳しく解説します。

目次

  1. デジタル通貨「DCJPY」をバス運賃に利用する実証実験の概要
    1-1.実証実験の背景と概要
  2. 公共交通とデジタル通貨の融合:「DCJPY」でバス運賃を支払う未来
  3. 次世代のプラットフォーム、P2P電力取引とは
    3-1.P2P(ピア・ツー・ピア)とは
    3-2.P2P電力取引にする利点
  4. ブロックチェーンとは?
  5. ブロックチェーンを活用したP2P電力取引の事例
    5-1.自律的電力需給システムの実証実験
    5-2.電力および環境価値のP2P取引事業成立要因を検証する実証事業
    5-3.取引ニーズに応じてP2P電力取引を最適化
  6. まとめ

①デジタル通貨「DCJPY」をバス運賃に利用する実証実験の概要

株式会社ディーカレットDCPが事務局を務める「デジタル通貨フォーラム」の電力取引分科会 サブグループAでは、公道を実走するバスの乗車運賃の決済に、電力Peer to Peer(P2P)プラットフォームでの環境価値の取引経過が記録されたデジタル通貨DCJPYを利用した実証実験が行われます。

1-1.実証実験の背景と概要

1.背景・目的
デジタル通貨フォーラム電力取引分科会では、「電力・環境ビジネスへのデジタル通貨適用とその評価」を軸に、電力売買に伴う決済にデジタル通貨を活用することにより、グリーン電力の利用証明や再生可能エネルギーを活用した新たなサービスなどの検討を行っています。この取り組みの一環として、電力取引分科会サブグループAでは、2022年にはデジタル通貨DCJPYによる模擬電力・環境価値取引の精算に加え、電力売買で受け取った模擬デジタル通貨を、小売店舗での決済を行う実証実験が行われました。

引続き行う今回の実証実験の目的は、バスの乗車運賃の決済に環境価値の取引経過が記録されたデジタル通貨DCJPYを使うことにより、ユーザーが保有する環境価値が公共交通機関(バス会社)に移転されることを実証するとのことです。また環境価値がバス利用の対価になりうることを明確にすることです。これにより、ブロックチェーン技術を利用した、デジタル通貨の活用領域の拡大と、環境価値の二次流通に向けた今後の可能性を検証していくとのことです。

*環境価値:再エネ電力取引に基づいて発生する「再エネ証明書(非化石証書)」のような環境への配慮を証明するものと定義

2. 実施日:2023年3月9日(木) <予備日:3月13日(月)>

3.実施内容

  • デジタル通貨DCJPYに環境価値を付加し、環境価値の二次流通の検証
  • 流通した環境価値を用いてバス乗車の実証

※デジタル通貨DCJPYの銀行発行は行わず、模擬発行で対応

4.実験走行ルート:大阪府茨木市内の公道を走行します。
使用するバスは、本実証実験のために運行するもので、実験に参加するモニターが乗降します。(一般の利用者は乗車できません)

5. 実証実験に参加する企業(電力取引分科会 サブグループA)
関西電力株式会社(幹事)/株式会社インターネットイニシアティブ/中部電力株式会社/
阪急阪神ホールディングス株式会社/株式会社ローソン/株式会社ディーカレットDCP(事務局)

6. 協力企業
阪急バス株式会社(本社 : 大阪府豊中市)
阪急阪神ホールディングス株式会社のグループ会社です。本実証実験において、バス車両とその運行、デジタル通貨DCJPYまたは環境価値による運賃の支払いを行う環境を提供します。

②公共交通とデジタル通貨の融合:「DCJPY」でバス運賃を支払う未来

デジタル通貨「DCJPY」を用いてバスの乗車運賃の決済を可能にした場合、これは環境価値とデジタル通貨の融合を通じて、未来の持続可能な都市交通のモデルにもなりえます。

実証実験の核心は、再エネルギーに基づく「環境価値」をデジタル通貨「DCJPY」に結びつけることです。この「環境価値」は、再エネルギーの利用証明書として機能し、環境への配慮を証明する役割を果たします。バスの乗車運賃決済において、「DCJPY」はこの環境価値を持つ通貨として活用され、ユーザーの環境への貢献がバス利用の対価に反映される仕組みが構築されます。

またこの実験によって、ブロックチェーン技術とデジタル通貨の可能性が広がります。再生可能エネルギーを促進する一翼を担う「環境価値」が、日常の公共交通システムに組み込まれ、個人の行動が地球環境への配慮につながる取り組みといえるでしょう。

③次世代のプラットフォーム、P2P電力取引とは

今回の実証実験では、公道を実走するバスの乗車運賃の決済に、電力Peer to Peer(P2P)プラットフォームが使われました。P2P電力取引とはブロックチェーン技術を電力販売の取引に応用した次世代のプラットフォームビジネスです。電力事業者と需要者をP2Pという仕組みを用いて結びつけ、電力取引を行うことを可能にしました。個人間でも電力取引を可能にするP2P電力取引は次世代プラットフォームビジネスとも言われています。

3-1.P2P(ピア・ツー・ピア)とは

P2Pとは「Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)」の略称であり、以前からある仕組みですが、ブロックチェーンの登場と共に世間により広く浸透された言葉でもあります。仮想通貨にも使用されているブロックチェーンは、中央管理者や取引履歴を一元管理するデータサーバがありません。そのため、ノードと呼ばれる複数のコンピュータ(サーバ)が、信頼において直接データを共有するネットワークのことを、P2Pと呼ばれています。また「Peer」には、「情報の共有を対等な立場で行う端末」という意味があります。

3-2.P2P電力取引にする利点

P2Pを使った電力取引は、個人同士という通信方法を売電に応用することで、これまでは業者を介して取引されていた電力売買が個人でも行うことが可能になります。ブロックチェーンを使うことで、仲介業者を使わずに、発電す事業者(個人)と需要者を直接結びつけ、電力の取引が成立することができるので、需要者は再生可能エネルギーの電力を購入しやすくなりました。

またこれまでは大手の電力会社が発電した電力を需要側に一方的に供給するのが一般的でした。そのため需要側に’応じた電力の供給が難しいという側面があります。ここ最近では、電力自由化により小売り電力会社から電力を購入する選択も可能になりましたが、世界情勢の影響により電力の安定供給が難しくなる業者も出てきています。また電力取引は基本的に契約している業者になり、取引内容を個別に最適化することはできず、柔軟性も欠如しています。

P2P電力取引なら、余剰電力をもつ家庭や事業者と需要者間とのマッチングが最適化され、直接、自由に売買を行うことができるようになると言われています。電力の適正な価格の調節は、ブロックチェーンのスマートコントラクトによってアルゴリズムを構築されて、P2P電力取引プラットフォームによって運用が可能となります。

④ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンとは何かを一言で解説するのは、とても難しいテーマです。例えば、一番最初にブロックチェーンを使ったのはビットコインです。ビットコインの開発目的は、国や銀行など第三者を介すことなく国境を越えて他の人に安価な手数料で簡単に送金することでした。

ビットコインに使用されるブロックチェーンには、中央管理者や取引履歴を一元管理するデータサーバがありません。その仕組みは、ノードと呼ばれる複数のコンピュータ(サーバ)がピアツーピア(P2P)ネットワークによって繋がっています。

各ノードは台帳を共有し、取引履歴を分散的に管理しています。そして各ノードは、共有する台帳の取引履歴に不正がないよう互いに監視し合うことで、悪意ある者からのデータの破壊や改ざんを防ぎます。各ノードが同じ台帳を保有し稼働しているため、ハードウェア障害によって停止する可能性が極めて低いとも言えます。

これが基本的なブロックチェーンについてですが、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。

⑤ブロックチェーンを活用したP2P電力取引の事例

5-1.自律的電力需給システムの実証実験

トヨタ自動車株式会社 未来創生センター(以下、トヨタ)は、国立大学法人東京大学(以下、東京大学)、TRENDE株式会社(以下、TRENDE)と共同で、ブロックチェーンを活用し電力網につながる住宅や事業所、電動車間での電力取引を自律的に可能とする、P2P電力取引システムの実証実験を、2019年6月17日から2020年8月31日まで、トヨタの東富士研究所と周辺エリアで実施しました。

その結果、当取引システムは「再生可能エネルギー(再エネ)の効率的な利用を実現する自律的な電力需給システム」であり、かつ、「電力料金削減」に有効であり、実証実験に参加した一般家庭(含、電動車)の電気料金を、約9%低減できることが確認されました。また再エネ利用の観点でも、電動車の走行利用電力の43%を再エネとし、CO2排出量を38%削減することができたと報告されました。

5-2.電力および環境価値のP2P取引事業成立要因を検証する実証事業

2020年12月、KDDIグループのエナリスとauフィナンシャルホールディングス、auペイメントはディーカレットとともに、小売電気事業者(以下、新電力)が広く利用できるP2P電力取引プラットフォームの社会実装を目指し、電力および環境価値のP2P取引事業成立要因を検証する実証事業を共同で開始しました。

今回の実証事業は、エナリスが東京都に採択された事業の一環として実施しているものです。エナリスの「ブロックチェーン上で電力取引を管理するプラットフォーム」でトラッキングされた電力取引結果に基づき、ディーカレットの「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」で環境価値トークンの発行、管理を行います。これにより将来的なP2P電力取引スキームにおけるトークン活用実用化に向けた課題の洗い出しを行います。

エナリス、auフィナンシャルホールディングス、auペイメントおよびディーカレットは、本実証事業を通して、「スマート東京」の実現に貢献するとともに、ブロックチェーンやスマートコントラクト等のテクノロジーを通じて電力業界のデジタル通貨活用を進めていくとしています。

5-3.取引ニーズに応じてP2P電力取引を最適化

東京工業大学 科学技術創成研究院 先進エネルギーソリューション研究センターの小田拓也特任教授、情報理工学院 数理・計算科学系の田中圭介教授、同学院 情報工学系のデファゴ・クサヴィエ教授、環境・社会理工学院 イノベーション科学系の梶川裕矢教授らの研究グループは三菱電機と共同で、P2P電力取引を最適化する独自のブロックチェーン技術を開発しました。余剰電力の融通量を最大化する取引など、需要家の取引ニーズに柔軟に対応可能な取引環境を提供し、余剰電力の有効活用に貢献します。

今回の開発では、電力の売り手(需要家)と電力の買い手(需要家)を最適な組み合わせで探索するブロックチェーンにより、柔軟な電力取引を実現しました。また計算量の少ないブロックチェーンの開発により、需要家の取引端末などの小型計算機でもP2P電力取引が可能です。

特長
・余剰電力を最大限に活用したい時は需要家(電力の売り手)の余剰電力の融通量を最大化
・需要家の利益を優先させたい時は需要家全体の利益を最大化するなどの売買注文の最適な組み合わせを探索することで、さまざまな取引ニーズに柔軟に対応できるP2P電力取引を実現

⑥まとめ

地球温暖化対策として、再生可能エネルギーの活用が注目されており、家庭でもソーラーパネルを設置して発電を行うことが一般的になりつつあります。発電した電気は電気事業者が固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT制度)」が施行されていましたが、2019年11月から順次満了を迎えています。そのため満了を迎えた需要家は、納得のいく価格で余剰電力を買い取る小売電気事業者を探し、新たに売買契約を結ぶ必要があります。

このような状況の中、需要家同士が余剰電力を最適な価格で、直接取引することができるP2P電力取引は、新たな電力取引プラットフォームとして注目されています。

そしてバス運賃の決済に環境価値を付加したDCJPYを利用する実証実験では、電力P2Pプラットフォームで取引経過を記録し、ユーザーが保有する環境価値が公共交通機関(バス会社)に移転されることを実証します。P2Pによる電力取引の柔軟性向上だけでなく、デジタル通貨の活用領域の拡大も期待されています。今後のP2P電力取引の分野に注目していきたいと思います。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。