ブロックチェーンを基盤とするNFTが登場してから、NFTを購入してコレクションするだけでなく、目的達成のための「手段」として注目され、使われるようにもなってきました。その一つに、寄付や応援を集めるための手段としてNFTが使われるケースもあります。BIPROGY(旧社名:日本ユニシス)は、消費者がNFTの購入を通じて、生産者や企業に寄付できるプラットフォーム「D-Farm Village」の概念実証(PoC)を開始すると発表しました。
ここではNFTで生産者を応援する「D-Farm Village」の特徴から、ブロックチェーンを活用した地方創生や支援プロジェクトについて詳しく解説します。
目次
- 消費者が食産業に応援できるプラットフォーム「D-Farm Village」とは
1-1.同プロジェクトの背景
1-2. D-Farm Villageの特徴
1-3.今後の取り組み - 支援・寄付や地方創生に活用されるブロックチェーン
2-1.セブン銀行、環境貢献活動への募金でNFTがもらえるキャンペーン実施
2-2.地方創生のための「CryptoNinja Partners」と「あるやうむ」とのコラボ返礼品
2-3.日本の空き家問題への挑戦とエコビレッジを創造するAkiya DAOとは
2-4.FiNANCiEのトークンを駆使した新しい地域復興の応援 - まとめ
①消費者が食産業に応援できるプラットフォーム「D-Farm Village」とは
BIPROGYは2023年7月27日、消費者がNFTの購入を通じて、サステナブルな食産業に取り組む生産者や企業に支援することを目的とした、NFTプラットフォーム「D-Farm Village」の概念実証(PoC)を開始すると発表しました。
また、同プロジェクトはその貢献内容や活動状況をプラットフォーム上で可視化することで、バーチャルとリアルを融合させながら生産者・企業と消費者(応援者)のつながりを創出します。そして新たなブランド体験価値の提供を目指していきます。
1-1.同プロジェクトの背景
世界的な人口増加や経済発展により、農林水産省の調査結果では2050年には世界の食料需要量は、2010年比1.7倍が必要となり、人・土地・水の資源や生産強化による環境負荷と汚染が問題視されています。また世界中で脱炭素の取組みや、生産だけではなく輸送や消費に関しても、経済価値だけではなく環境価値が重要視されるようになり、各国で輸入輸出に関する戦略が変化し地産地消が進行すると指摘しています。またフードテックやバリューチェーンGHGの数値化など「生産/輸送/加工/消費」の資源循環の仕組みづくりの重要度が上がっているとしています。
日本においは、農林水産省における食料・農業・農村政策審議会の中間報告(令和5年5月29日)において、SDG’sなど「環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換」が、今後20年間の変化を見据えた基本理念の見直しとして掲げられました。
しかし国内のサステナブルな生産活動の普及が進んでいないと述べられています。その要因は、環境や生物に配慮した生産活動は大量生産が困難で、販売や流通網が整備されていないなどの理由により、利益が確保しづらいという課題があるとのことです。こうした社会課題を解決するため、BIPROGYではデジタル技術を活用し、環境や生物に配慮したサステナブルな食産業の普及・拡大を目指した概念実証を開始することになりました。
1-2. D-Farm Villageの特徴
「環境と生物にやさしい、サステナブルな食産業の拡大」を目的とし、食産業に特化したNFTプラットフォーム「 D-Farm Village」は、消費者が商品を購入するのではなく、NFTを購入することでサステナブルな生産に貢献する新たなサービスです。またD-Farm Villageは、リアルとバーチャルの融合を図りながら、生産者と応援者が双方向の繋がりを実現するとしています。
- 環境に配慮した生産活動やビジョンに共感した生産者のNFTを購入することで応援できます
- 購入したNFTや環境貢献ポイントでアイテムを入手し、オリジナルファームを作れます
- 生産者から実際の農場や生産品の情報をメッセージでお届けし、コミュニケーションを演出します
- 生産者は、販売するNFTに応じて生産品や収穫などの体験を応援者にお返しします
1-3.今後の取り組み
同プロジェクトによると、貢献NFTを購入・応援することでサステナブルな取り組みにどう貢献しているかを可視化し、応援者の行動を促す仕組みづくりを行っていくとのことです。
- 貢献の数値化:CO2排出量、ESGスコア、アニマルウェルフェア(*3)認証など
- 貢献の透明性:生産者情報の開示、使用用途の報告、現場の声や様子の共有
- 貢献のメリット:NFT購入者へのお礼の品開発(商品や体験)、地域通貨など連携
上記に加えて、CREA FARM(静岡県)や農園貞太郎(山形県)をはじめ、サステナブルな生産活動に取り組む生産者や企業・団体の参画を広げ、今年度内の事業化を目指す予定です。また、NFTの特性を生かした共創パートナーとなる生産者や企業・団体とともに、サステナブルでエシカルな食産業の普及・拡大を推進していくとしています。
②支援・寄付や地方創生に活用されるブロックチェーン
ブロックチェーンの誕生と共に仮想通貨が登場し、その後NFTが注目され、仮想通貨による寄付やNFTによる支援などのプロジェクトが、国内でも立ち上がっています。それらのプロジェクトや企業をいくつかご紹介します。
2-1.セブン銀行、環境貢献活動への募金でNFTがもらえるキャンペーン実施
株式会社セブン銀行は7月18日、全国26,000台以上のセブン銀行ATMにて一般財団法人 セブン‐イレブン記念財団(NFT表記があるもの)に募金すると、NFTをノベルティとして付与する「セブン銀行ATMでNFT募金キャンペーン」を開始しました。
NFTには、株式会社クリエイターズネクストCEOであり現代美術家の窪田 望 氏が制作した、環境貢献活動をコンセプトとした4種類のNFTが紐付けされランダムに配布されます。配布されるNFTは、譲渡不可能なトークン「SBT」となっており、社会貢献活動に参加した証明書として機能します。また本キャンペーンで集まった寄付金は、セブン‐イレブン記念財団を通じて環境をテーマとした社会貢献活動に充てられます。
デジタル作品を手掛けた窪田氏は、「セブンの森」が開催した琵琶湖の清掃体験だったそうです。普段使っているものが湖を汚している現実に違和感を覚え、日常を少し変えるだけで、湖、海、森、都市までも美しく作るための担い手になれる、という気づきが「世界とつながる」という今回のデジタル作品誕生のキッカケだと語ります。
2-2.地方創生のための「CryptoNinja Partners」と「あるやうむ」とのコラボ返礼品
「NFTによる地方創生」を推進する株式会社あるやうむと、国内最大級のNFTプロジェクトCryptoNinja Partners(以下、「CNP」)が、コラボした返礼品企画「ふるさとCNP」は、すでに複数のふるさと納税NFTを返礼品として制作しています。
和歌山県白浜町では5月下旬より「白浜町ふるさとCNP2023」がスタートしました。一点物のNFTが222種類、寄付金額30,000円/種類で用意されています。これらはあるやうむが運営する独自のポータルサイト「ふるさと納税NFT」で確認・取得が可能となります。さらにこのプロジェクトでは、暗号資産を必要とせず、日本円での寄付によりNFTやCNPを気軽に体験でき、同時に白浜町の魅力を感じる仕組みが設けられています。なお、今回の取り組みは、KDDI株式会社との業務提携後、初の実施プロジェクトとなります。
本NFTは、パーツや背景、キャラクターなどそれぞれ異なる組み合わせで、合計222種類となっています。特産品である梅干しや真鯛、川添茶をモチーフにし、背景には白良浜、三段壁、円月島をデザインしたNFTアートが作成されます。
メインキャラクターにはCNPの人気キャラクター「リーリー」が採用され、白浜町を訪れることでNFTアートの絵柄が変化する仕掛け(いわゆるレベルアップ)も実装予定です。
さらに、CNPとふるさとCNP保有者対象の特典として、白浜温泉「崎の湯」の貸切一番風呂に入る機会が提供されます。そして、CryptoNinjaのコミュニティ「NinjaDAO」のCNP保有者だけが参加できるdiscordチャンネルを1ヶ月体験する権利も与えられます。
2-3.日本の空き家問題への挑戦とエコビレッジを創造するAkiya DAOとは
「Akiya DAO」は日本で古民家を購入・改装し、建築家、クリエイターの拠点にすることを目的としたエコビレッジのプロジェクトです。なお、エコビレッジとは住民がお互いに支え合い、持続可能性を目標としたまちづくりや社会づくりのコンセプト、またそのコミュニティのことです。
現在、日本は急速な高齢化と若者の都市部への集中により、全国的な空き家問題が深刻化しています。住宅・土地統計調査(総務省)によると、空き家の総数は、この20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しており国土交通省によると、2030年には全住宅の3分の1が空き家になると推定されています。
このような問題を解決するために、空き家を購入し、リノベーションする新たな取り組みがスタートしました。言い換えると空き家を活用した地方創生プロジェクトとも言えます。なお、エコビレッジとは住民がお互いに支え合い、持続可能性を目標としたまちづくりや社会づくりのコンセプト、またそのコミュニティのことです。
事業モデルとして、家を購入し住むための会員証をNFTにするモデルが考えられています。家の改装資金や新たな住宅購入資金の調達方法として、まずAkiya DAOが一軒目の購入に投資を行い、NFTの会員証を発行します。その価値が上昇するにつれて取引が活発化し、需要が増えるにつれてNFTの価格も上昇します。供給面では、家の規模を拡大したり新たな家を購入したりすることが可能で、これにより供給と需要のバランスが保たれます。
このビジネスモデルの魅力は、投機目的でNFTを購入し売却する人々が増えても、供給が増えることで価格が下がり、NFTが供給を調整する役割を果たすため、価格の乱高下が抑制される点にあります。この仕組みを通じて、金銭的なインセンティブだけでなく、共同運営をスムーズに進めることが期待されています。
2-4.FiNANCiEのトークンを駆使した新しい地域復興の応援
ブロックチェーン技術を利⽤したトークン発行型のクラウドファンディングサービス「FiNANCiE」を提供する株式会社フィナンシェは、地球と人のウェルビーイングを考え実践する、アースデイアクション沖縄実行委員会による「アースデイアクション沖縄」の始動と、トークンの新規発行・販売を4月21日から開始しました。
このプロジェクトは、「Web3」をキーワードに、沖縄県を先駆けとして、全国各地の都道府県を連携していく挑戦です。「アースデイアクション」はそのような一人ひとりの行動を支援するために、2022年秋に設立された団体です。「アースデイアクション」の考え方を基に、地球と人の幸福を追求する活動を支援するプラットフォームが、「FiNANCiE」で展開されています。
このプロジェクトの第一弾として名乗りを上げたのが、南城市と八重瀬町を含む「南沖縄エリア」です。サスティナブルな地域作りの一環として、地域の住民と自治体が連携し、FiNANCiEのコミュニティと共に、地元の漁師(海人/うみんちゅ)に新たな雇用機会を提供する「フラッグシップ艇事業」の立ち上げに取り組んでいます。
初めての取り組みとして、南城市と八重瀬町を中心に以下の二つの活動を推進するため、「アースデイアクション沖縄トークン」の発行を予定しています。このトークンは共創型コミュニティ、いわゆるDAOに参加することで、二つの目標達成に向けたコンテンツ開発や特典提供、そしてコミュニティとの交流を通じて、持続可能で地球に優しい地域づくりと、関係人口の増加に楽しく寄与するためのものです。またトークンを購入して頂いた支援金は、「漁船を活用した滞在型アウトドアツーリズム」というAT開発の中心的な部分の事業資金として活用されます。
③まとめ
支援や寄付、地域貢献やプロジェクト応援はユーザーに可視化されることで、確実に応援が届いていることを知り、課題を他人事ではなく自分ごととして捉えやすくもなります。またブロックチェーンを基盤としているNFTを使っての支援や寄付、ふるさと納税などは、返礼としてNFTが送られているというケースがあります。支援や寄付をした証がNFTというデジタルデータとなってウォレットに残るので、第三者からも応援をした証明を開示することができます。
また企業側はユーザーの応援や購入が、サステナブルな取り組みにどのように貢献しているのかを、確認しやすくなるという特長もあります。今後は、Web3技術を使った社会貢献システムが増えてくる可能性があり、BIPROGYの今後の取り組みにも注目です。
立花 佑
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