不動産売却、契約締結から物件の引き渡しまでの流れは?ペナルティを避ける注意点も

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不動産の売却は多額の費用がやり取りされるため、慎重かつ的確に行いたいものです。しかし契約ごとで分からないことも多いため、不安に思っている人も多いでしょう。

そこで今回のコラムでは、不動産売却の流れの中でも売買契約の締結から物件の引き渡しまでに焦点を当てて詳細に解説します。ペナルティを受けないための注意点も紹介します。

目次

  1. 不動産売買契約とは
  2. 不動産売買契約の必要書類と流れ
    2-1 不動産売買契約締結に必要な書類
    2-2 不動産売買契約を締結する当日の流れ
  3. 物件の引き渡しの前に行うこと
  4. 物件の引き渡し時に行うこと
    4-1 物件の引き渡しの流れ
    4-2 物件の引き渡し後にすること
  5. ペナルティを避けるための注意点
    5-1 解約による違約金
    5-2 収入印紙不足による過怠税
  6. まとめ

1 不動産売買契約とは

不動産売買契約とは、契約書に記載されている金額で、売主が買主に該当不動産を売却することを約束する契約です。

不動産の仲介を行う不動産会社が契約書を作成し、それに署名・押印することで契約が成約することになります。契約書には主に下記のことが記載されています。

  • 該当不動産の住所や規模
  • 売主と買主の氏名・住所
  • 物件代金
  • 手付金の金額や、支払いの時期および手段
  • 契約違反に当たる行為
  • 契約不適合責任
  • 特約事項

この不動産売買契約締結は、売主と売主側の不動産仲介会社、買主と買主側の不動産仲介会社の4者が揃って行います。なお、売主と買主の仲介会社が同じであるケースもあります。

2 不動産売買契約に必要な書類と当日の流れ

不動産の売却に売主と買主が合意したら、次に行うことが不動産売買契約の締結です。ここでは不動産売買契約の必要書類と流れについて詳しく解説します。

2-1 不動産売買契約締結に必要な書類

不動産売買契約の締結に向けて、売主が用意するのは下記の5点です。

身分証明書

不動産の所有者と同一人物であることを証明する書類です。顔写真のある免許証やパスポート、マイナンバーカードなどを用意します。

実印・認印

契約書に押印するための印鑑です。

印鑑登録証明書

押印する印鑑を証明する書類です。役所に印鑑をあらかじめ登録しておき、有効期間内の証明書を用意します。

登記識別情報通知

法務局に登録している不動産情報が記載された書類で、法務局で申請して発行してもらいます。かつての登記済権利証です。

収入印紙

契約の成立を証明するために、契約書に収入印紙を貼ることが「印紙税法基本通達第12条」で決められています。そのため物件代金に合わせた金額の収入印紙を用意します。

このほか、引き渡しの時期によって固定資産税などの税金を売主と買主との間で精算する必要もあります。その場合は、固定資産納付書または固定資産税評価証明書を準備しておきます。

2-2 不動産売買契約を締結する当日の流れ

当日は4者(もしくは3者)が揃い、挨拶が終わったら主に下記の流れで行います。

  1. 提出書類の確認
  2. 身分証明書による本人確認
  3. 重要事項説明書の読み合わせ
  4. 不動産売買契約書の内容確認後に署名・押印
  5. 手付金の授受
  6. 不動産売買契約書の受け渡し

まず、用意してきた書類を提出し、不備がないか不動産仲介会社に確認してもらいます。その後、身分証明書を提出することにより、不動産の所有者と売主が同一であることを証明します。異なる場合は、代理人が選定され、さらに委任状が必要になります。

重要事項説明書とは売買契約をするに当たって重要な事項が記載されている書面のことです。宅地建物取引士の資格を所有している不動産会社の担当者が主導して行います。

不動産売買契約書の内容を確認した後で、売主と買主がともに署名・押印することで契約が成立します。

契約書への捺印が終わると、買主から売主に契約書に記載された金額の手付金が渡されます。金額は物件代金の2割を目安に、契約前に双方で決めておきます。買主から手付金が渡されると、売主からは受領書を渡します。

不動産売買契約書を受け取ると、引き渡しのために準備を行います。通常は1〜2カ月後に引き渡しが行われます。

3 物件の引き渡しの前に行うこと

不動産売買契約を締結した後は物件の引き渡しになりますが、引き渡し前には主に下記の3つの準備が必要です。

  • 公共料金の精算
  • 引っ越し(居住用住宅の場合)
  • 賃貸借契約書の引き継ぎ(収益物件の場合)
  • 抵当権抹消の手続き(ローンが残っている場合)

居住用の建物を売却した場合、電気やガス、水道などの使用を引き渡し日で停止するように手続きしておきます。

戸建てやマンションなどの自宅を売却した場合、引っ越しを行います。引き渡し日までにすべての荷物を搬出する必要があります。売買契約にハウスクリーニングが含まれるケースを除いては、現状渡しが原則となるため過度な清掃は必要ありません。

一方、収益物件を売却した場合、賃貸中の物件に関しては入居時に締結した賃貸借契約書の引き継ぎを行います。賃貸借契約書はオーナーが保管している場合と、管理会社が管理している場合があります。

また、ローンが残っている物件には借入を行った金融機関の抵当権が設定されています。引き渡し時には決済によってローンの一括返済を行い抵当権を抹消する必要があるため、事前に金融機関へ手続きの依頼を行う必要があります。

抵当権抹消手続き、依頼の流れ

  • 金融機関に不動産を売却する旨を伝える
  • 売却が決定し、引き渡し日が決まったら、その旨を金融機関に伝える(ローン完済および抵当権抹消の準備のため、通常は2週間程度前までに連絡する必要がある)
  • 金利などの計算が終了すると、最終的な支払額などが金融機関から伝えられる

4 物件の引き渡し時に行うこと

物件の引き渡しは、売買契約の締結と同様に売主と売主側の不動産会社、買主と買主側の不動産会社の4者が揃って行います。物件代金が買主側から支払われますが、通常は通帳上のやりとりになりますので、買主側が利用するローンを扱う金融機関が会場になります。

4-1 物件の引き渡しの流れ

引き渡しの当日は、主に決済と鍵の受け渡しが行われます。

決済では、物件代金のうち手付金以外の金額の支払いを行います。通常は残額が、買主がローンを利用する金融機関から売主の指定口座に振り込まれる形になります。

着金確認後に鍵の受け渡しが行われ、引き渡しが完了します。

4-2 物件の引き渡し後に行うこと

引き渡しが終わった後には、売主として下記の手続きを行います。

仲介手数料の支払い

不動産売買契約が締結されると、不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。仲介手数料は「宅地建物取引業法第四十六条第一項」によって法定限度額が決められており、下記のようになっています。

  • 売買価格(税抜き)が200万円までの部分:上限5.5%(税込)
  • 売買価格(税抜き)が200万円~400万円までの部分:上限4.4%(税込)
  • 売買価格(税抜き)が400万円~の部分:上限3.3%(税込)

なお、下記に記載した速算法を用いるのが通例です。

仲介手数料=売買価格×3%+6万円

通常は、不動産会社があらかじめ請求書を発行して提出します。決済後にそのまま支払うケースや、後日振り込むケースなど不動産会社によって異なりますので、事前に確認しましょう。

ローンの完済手続き

売却した物件をローンで返済していた場合、売却して得た資金でローンを完済することになります。この場合、次のような流れで手続きを行います。

  1. 引き渡しが行われると、金融機関に出向いてローン完済の手続きを行う
  2. ローン完済手続きが終わると抵当権抹消に関する「抹消書類」が渡される
  3. 司法書士に依頼するケースもあるが、自分で法務局に出向いて抵当権を抹消することもできる

この抵当権抹消手続きが完了すると、所有していた不動産に関する売却手続きはすべて終了となります。

5 不動産売買契約のペナルティを避けるための注意点

不動産売買契約は法律に則った正式なものです。そのため、過ちがあると違約金などのペナルティが課せられることになりますので、注意点を紹介します。今回は「解約による違約金」と「収入印紙不足による過怠税」の代表的な2つのペナルティです。

5-1 解約による違約金

不動産売買は契約の上で行いますので、自己都合で破棄すると、相手方に迷惑がかかってしまいます。そのため、あらかじめ契約解除に関する事項も決めておきます。

通常は、損害賠償という扱いで違約金を設定し、不動産売買契約書に記載しておきます。違約金は物件代金の10〜20%が目安となります。

ただし、不動産売買に関しては、契約後の一定期間内であれば契約を解除できる手付解除と呼ばれる期間を設けることがあります。例えば、1カ月の手付解除期間を設けていれば、その期間内であれば契約を解除できるというものです。手付解除には下記のようなペナルティが設けられていることがあります。

  • 手付金を返還する
  • 手付金と同額を買主に支払う(手付倍返し)

違約金の支払いや手付解除によって契約を解約することはできますが、手付解除を行うことで仲介会社からの信用にも影響を与えますので、できるだけ契約後の解約とならないよう契約前に慎重に確認しましょう。

ペナルティを避ける方法としては、特約を設定する方法もあります。例えば、ローンの利用ができなかった場合に解約できる「ローン特約」などです。売買交渉の前に、特約について不動産会社に説明してもらうといいでしょう。

5-2 収入印紙不足による過怠税

前述したように、不動産の売買における契約書は、その成立を証明するために税金を支払いますが、それは収入印紙を貼付することで行います。しかし、収入印紙の金額は契約金額によって異なることに注意が必要です。

印紙税額は現在、軽減税率が適用されており、契約書の作成日時が2022年3月31日までは下記の表の税額になっています。

記載された契約金額 印紙税額(1通または1冊につき)
100万円〜500万円以下 1,000円
500万円〜1,000万円以下 5,000円
1,000万円〜5,000万円以下 10,000円
5,000万円〜1億円以下 30,000円

※引用:国税庁「印紙税の手引き

この収入印紙は税金と同様の扱いになりますので、貼らなかった際には過怠税というペナルティを受けることになります。

契約書は他人に見せるものではないため、収入印紙を貼付しなくてもバレないと思う人もいるかも知れませんが、税務調査を受けた際に収入印紙が貼られていない契約書が発見される場合もあります。この際に過怠税が課せられ、過怠税は本来収める収入印紙税の1.1倍の金額となります。

また、収入印紙には消印を押すことも印紙税法で定められています。消印を忘れていたり、本来の方法で行っていない場合は、収入印紙の額面金額に相当する金額を過怠税として収めることになります。

不動産売買契約は仲介する不動産会社が取り仕切ることになりますが、契約するのは売主と買主です。ルールを守り、正しく契約するように心がけておきましょう。

【関連記事】不動産売買の契約書、印紙税を減額する方法は?消費税の区分記載を解説

まとめ

不動産の売却は売買契約の締結で完了ではありません。買主に引き渡し、その後の手続きもしっかり終えることが必要です。

今回、紹介したようにその間に売主としてすることが少なからずあります。スムーズに確実に進めるためにも、ぜひ参考にしてください。

また契約後のペナルティを受けないために注意しておきたいポイントは、契約の解除と収入印紙の扱いです。後のトラブルに繋がらないよう、適切に対処していきましょう。

【関連記事】不動産売却でかかる諸費用の相場や税金は?できるだけ安くするコツも

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。