不動産投資では、不動産投資ローンを受けて資産形成を目指すのが基本になります。その不動産投資ローンの審査では収益不動産の資産性以外に、融資を受ける個人の属性も審査対象となります。
不動産投資家の属性審査では、年収や年齢だけでなく、勤務先の情報も考慮されて評価がされることになります。属性審査の観点から、不動産投資ローンの審査で評価されやすい職業にはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、不動産投資ローンの審査基準における属性審査の位置付けと、内容についてポイントを説明し、不動産投資ローンを組むのに有利な職業とはどのような職業であるといえるのかについて解説します。
目次
- 不動産投資ローンの審査基準と属性審査
- 不動産投資ローンの属性審査の項目
2-1.年収
2-2.金融資産(自己資金)
2-3.残債・返済状況・返済負担
2-4.家計余力・家族構成
2-5.勤務先情報
2-6.年齢、その他 - 不動産投資ローンの審査面から不動産投資に向いている職業
- まとめ
1.不動産投資ローンの審査基準と属性審査
不動産投資では、不動産投資ローンを組んで収益物件を購入し、主にその家賃収入による収益でローンを返済しながら徐々に純資産を積み上げていく投資戦略が基本となります。
不動産投資ローンの属性審査によって、融資額や融資年数、金利などの条件が設定されるため、良い条件で融資を受けやすい職業であれば不動産投資に向いている職業といえるでしょう。
不動産投資ローンは、居住用の不動産に用いる住宅ローンと異なり、不動産賃貸業に対する事業性ローンという側面が強く、融資審査では収益不動産の資産性も重視されます。不動産の資産性とは、その物件の収益性と担保性です。
- 収益性:返済原資に充当する家賃収入がどれぐらい得られるか
- 担保性:返済が滞った場合、売却による元本の回収は可能か
上記の物件評価に加えて、実際の審査においては本人の給与収入や金融資産なども考慮して審査されています。このような不動産投資ローンの審査における属性考慮の傾向は住宅ローンの審査と似ていますが、物件の収益性も重要な指標となる点が大きな特徴です。
属性評価における審査項目は、年収や金融資産の金額、残債の金額・返済負担率など多岐にわたります。事項より詳しくみて行きましょう。
2.不動産投資ローンの属性審査の項目
不動産投資ローンの審査における属性の審査要素は、主に次のような項目になります。金融機関によっては、各項目における評点を決めて、その合計値を審査基準とする方法を採用していることもあります。
2-1.年収
年収は、不動産投資ローンの返済原資となる重要な審査項目といえます。給与収入のみならず、既に不動産投資をおこなって収益を上げていればその収入や、それ以外のすべての収入が考慮されます。
借入額が年収の8倍程度を超えると徐々に融資条件が厳しくなる傾向があり、一定の年収を得ているかどうかを確認するため、通常過去3~5年間の年収が審査対象となります。配偶者など、同一世帯の家族構成員の年収も加味されることがあります。
2-2.金融資産(自己資金)
金融資産も重要な属性の審査項目です。金融資産は返済が滞った場合の元本回収可能性という側面と、突発的な修繕や空室に耐えられる資金力があるかどうかという観点で行われます。
その他、借入額が金融資産と不動産の評価額に対して適切であるか、債務超過でないかどうか、という点も重視されるといえます。年収と同じく、同一世帯の家族構成員の金融資産や、これまでの貯蓄を形成するまでの資産推移のスピードなども加味されることがあります。
2-3.残債・返済状況・返済負担
借り入れる不動産投資ローンを含め、その他の借入金の残高がどれぐらいあるか、についても審査項目となります。上述のように、借入金額は年収の8~12倍程度を目安に上限があるからです。
過去の返済状況も、延滞したことがないかどうかが審査対象となります。返済負担に余裕があるかどうかの観点から、総収入に占めるローン返済額の比率も審査項目となります。家賃収入の空室リスクやローンの金利上昇リスクを加味し、30~45%程度が一つの目安となります。
2-4.家計余力・家族構成
家計余力を計るという観点から、自宅が持ち家か賃貸かという点や、家族構成も審査対象となります。世帯単位での収入が考慮される反面、扶養家族が多いと支出が多くなることが懸念点として捉えられるケースもあります。
2-5.勤務先情報
勤務先については、勤務先企業の業界や規模、勤めている業種や勤続年数、雇用形態などが、収入の一定性を計る際の材料として審査対象になります。
例えば、決算情報などから会社の経営状況が把握しやすい上場企業のサラリーマンの方や、身分保障制度により原則として解雇のない公務員の方、平均給与の高い一部士業の方などは収入の一定性が高いと評価されます。
また、勤続年数は長いほど評価が高くなり、転職回数が多かったり、転職したばかりで勤続年数が短いと失業リスクが高いとされ評価は低くなる傾向があります。
その他、インセンティブやボーナスの割合が大きい営業職の方や、会社の業績に左右されやすい中小企業のオーナーの方、個人事業主の方などは収入の一定性が低いと判断され、高い年収を得ていても同程度の給与所得のあるサラリーマンの方と比較して評価を得にくい傾向があります。
2-6.年齢、その他
サラリーマンの方が定年退職になると給与収入が減ることが考えられるため、年齢についても審査対象になります。定年間近の年齢になると、融資審査にはマイナス評価となりやすく、借入時の年齢のみならず完済時年齢までが考慮されます。
金融資産の状況や年収、職業などの状況にもよりますが、おおよそ完済時年齢は、80歳未満で融資期間を設定されることが多いでしょう。その他、働き続けることができるかどうか、という観点から、健康状態なども審査の対象となります。
3.不動産投資ローンの審査面から不動産投資に向いている職業
ここまで、不動産投資ローンの属性審査について、審査対象となる項目と審査基準をみてきました。これらを参考にして、融資を受けやすい職業について考えていきましょう。
融資を受けやすい職業
- 公務員
- 上場企業のサラリーマン
- 医師
- 一部士業
公務員、上場企業のサラリーマン、医師、一部士業など、失業リスクが低く、高い収入を得やすい職業は、属性審査において高く評価され、融資を受けやすいといえます。
サラリーマンでは、雇用形態が非常に重要です。正社員の方が雇用期間の定めのある派遣社員やアルバイトよりも年収の一定性が高いと評価され、融資を受けやすくなります。
また前述したように、サラリーマンの場合は勤務先企業の規模や業種によって、金融機関からの評価が異なることもあります。中小企業より大企業の方が融資を受けやすくなる傾向があり、必ずしも年収が高い方が融資を得やすいとは限りません。
その他、インセンティブの割合が大きい営業職などでは、その年ごとの収入に大きな差が出てしまうこともあるでしょう。そのような場合、3~5年の年収の推移を確認され、低い年収を基に審査が行われることもあります。
業界については、飲食業など、個別企業によって業績の差が大きい業界の場合、融資審査に影響が生じることがあります。建設業、警備業など、生命の危険を伴う業種である場合にも、融資審査においてマイナス評価を得てしまう可能性があります。
年収も属性審査の重要な審査項目であり、年収が高い職業も融資を受けやすいといえます。
ただし、個人事業主や一人会社の経営者などの自営業の場合、サラリーマンよりも収入変動リスクが高いと評価され、融資を受けにくいことがあります。年収の一定性を証明したり、金融資産が順調に積みあがっている推移を説明したりなどの対策を取ってみましょう。
まとめ
不動産投資に向いているのは、不動産投資ローンを受けやすい職業といえます。不動産投資ローンの審査では、家賃収入からローン返済ができない場合の返済原資という観点から、属性も重要な審査項目となります。
サラリーマンの場合、規模や業種によって評価が異なるといえるでしょう。年収が高い職業も融資を受けやすい傾向がありますが、自営業の方やインセンティブによって年収が一定でに方はリスクが高いと評価され、属性審査ではマイナスの評価を得てしまうこともあります。
本記事で解説した属性について重視されるポイントを参考にして、キャリアアップなどで職業年収を上げたり、貯蓄を増やしたり、あるいは借入を整理したりなどの対策を検討されてみるとよいでしょう。
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