依然として人気が高い国内への不動産投資ですが、不動産価格上昇による利回りの低下や供給過剰による競争の激化、東京オリンピック需要による建築費の高騰やオリンピック以降に予想されている景気後退など、追い風ばかりとは言えない状況となっています。このような背景から海外不動産に目を向ける不動産投資家が増えてきています。
今回は、海外不動産投資の中でも特におすすめのマレーシアとカンボジアについてご紹介したいと思います。海外不動産に興味はあるものの「具体的にどのような国に投資したらいいのかわからない」「海外不動産を選ぶ具体的なメリット・デメリットがわからない」といった方にも向けて情報をまとめましたので、ぜひ投資の際の参考にしてみてください。
- マレーシアの不動産投資
- マレーシアの不動産利回り
- マレーシアの為替リスクと税制
- マレーシアの人口動態と経済成長
- 外国人がマレーシアに不動産投資をする場合の法規制
- カンボジアの不動産投資
- カンボジアの不動産利回り
- カンボジアの為替リスクと税制
- カンボジアの人口動態と経済成長
- 外国人がカンボジアに不動産投資をする場合の法規制
- まとめ
1 マレーシアの不動産投資
マレーシアは、東南アジアの国々の中でもシンガポールに次いで交通・生活インフラの整備が整っていると言われています。おすすめするマレーシアの不動産投資のポイントやリスクを「利回り」「為替リスク・税制」「人口動態・GDP」の観点から見ていきましょう。
1-1 マレーシアの不動産利回り
マレーシアの不動産利回りは、Global Property Guideの調査によると3.7%と言われています。同調査での日本の不動産利回りは2.7%とされており、2018年5月時点での国内不動産のREIT利回りと同程度といえます。
利回りだけで日本とマレーシアを比較すると、国内不動産のほうに下記のような点で軍配が上がります。
- 法制度が整備されている
- 情報が豊富で手に入りやすい
- 税制もわかりやすい
- 為替リスクが存在しない
しかし、インフレを考慮すると事情は変わります。
マレーシアは、40年以上の間インフレが続いており、過去5年のインフレ率(物価上昇率)は平均2.858%となっています。家賃はインフレにともなって上昇しますし、将来的に売却するときには大きな売却益が期待できます。上昇する家賃を受け取りながら将来の大きな売却益を期待するというような投資手法に適しているといえます。
1-2 為替リスクと税制
しかし、キャピタルゲインを狙う場合は為替リスクを考慮する必要があります。インフレが起きるとその国の通貨価値は一般に下落します。将来マレーシアに移住するのであれば、リンギットのまま持ち続けていれば通貨価値の下落の影響を受けることはありませんので、為替リスクはデメリットとはなりません。
一方、あくまで将来にわたり日本国内に居住して、日本円を利用して生活しようとしている場合、インフレによる家賃・売却益の値上がりと、為替レートによる差損のどちらが大きくなるのか、慎重な検討が必要です。
さらに、不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax:RPGT)も考慮しなければなりません。マレーシアでは、外国人が購入した不動産を5年以内に売却して利益を得た場合、売却益に対して30%の不動産譲渡益税が課税されますが、リンギット建てで課税されます。したがって、何らかの理由で5年以内に売却し、そのときにインフレ・円高だった場合、円建てで見ると売却損が発生するリスクがあります。
1-3 マレーシアの人口動態と経済成長
マレーシアの人口の特徴としては若者が多く、今後も数十年にわたって人口増加が続くとみられています。現在の人口は3200万人ですが、2050年には4300万人にまで増加すると予想されており、不動産需要が増加するポジティブな要因と見られています。
一方で、すでに住宅が過剰供給状態といえる現状についても考慮しなければなりません。特に首都クアラルンプールや大規模都市開発が進むジョホール州イスカンダル地区などの人気エリアでは、コンドミニアムの建設ラッシュが続きましたが、完成後売れ残っている住宅は前年同月比40%増となる約2万戸となります(マレーシア国家不動産情報センターより)。また、建設途中の物件で売り出されたものの売れ残っている個数は前年同月比6.5%増となる6万8245戸となりました(いずれも昨年11月時点)。
人気エリアの物件を購入すれば必ず入居されるという保証はどこにもありません。大規模な都市開発計画があるからといって安易に飛びつかず慎重に判断することが求められます。
マレーシアのGDP
マレーシアの一人あたりの名目GDPは9,812ドルと、ASEAN10カ国中3番目となります。また成長率もアジア通貨危機やリーマン・ショックなどの特別な事情がある年を除き、1990年から5%以上を維持しているなど、安定した経済成長をつづけています。
失業率も3%前後と極めて低い水準で、ほぼ完全雇用の状態を維持しています。マレーシアは現在2020年までの先進国入りを目指し、国際競争力強化に向けた規制緩和・自由化政策を積極的に進めており、今後も安定した成長を維持するだろうと見られています。
1-4 外国人がマレーシアに不動産投資をする場合の法規制
マレーシアにはMM2Hという長期滞在ビザの制度があります。比較的容易に取得できることもあり、日本人のロングステイ滞在先として12年連続でトップを維持しています。外国人がマレーシアに不動産投資をする場合、このMM2Hを保有しているかどうかによって適用される制度が変わることがあります。本格的にマレーシアでの不動産投資業に参入するならMM2Hを取得しておくと便利でしょう。
また、州により規制が異なりますが、外国人は原則として100万リンギット(約2750万円)以上の物件しか購入できないという最低購入価格制度があります。また、次のような場合で最低購入価格が異なります。
所有権の種類の違い | 物件全体の所有権なのか、分譲された一室だけの所有権(土地なし)なのか、それとも土地付き戸建物件なのかによって最低購入価格が異なる |
MM2Hを保有しているかどうかの違い | 州によるが、MM2Hを保有していると最低購入価格の制度が適用されなかったり、軽減されたりする |
2 カンボジアの不動産投資
カンボジアは1970年代から長期にわたる大きな内戦が続いたこともあり「危険な紛争国」という印象を持つ方もいます。現地で働く日本人商社マンからは「多くの地雷が埋まっている」というイメージでも恐れられていました。
しかし、91年に内戦が終結すると同時に、政府が積極的な外資誘致をおこない高付加価値産業への構造転換を推進したことで、年平均7%台の経済成長を続けています。
2-1 カンボジアの不動産利回り
カンボジアの不動産利回りは、日本やマレーシアよりも高い5.3%となります(Global Property Guideより)。これは、アメリカのジャンク債ETFと同程度、つまり投資には適さないような会社の社債に対して投資する金融商品と同じ水準であり、極めて高い利回りといえます。
2-2 カンボジアの為替リスクと税制
カンボジアにはリエル(KHR)という独自通貨がありますが、主要通貨としてはアメリカドルが流通しているため、為替リスクが少ないという特徴があります。当然アメリカドルと日本円との交換レートも変動しますが、アジア諸国の通貨のような大きな変動が起こる可能性は少ないといえるでしょう。
また、カンボジアの定期預金の利率は1年で6%前後と高いことから、カンボジアの不動産投資で得た家賃を家賃振り込み先の銀行で定期預金にし、再度運用するといった機動的な投資を狙うことも可能です。
2-3 カンボジアの人口動態と経済成長
カンボジアの人口分布の特徴として、15歳未満の男女が約500万人と総人口の3分の1を占めます。15-64歳の生産年齢人口も2045年には全体の4分の3を占めると予測されています。
現在の総人口は1,576万人(2016年)ですが、2040年には2,000万人を超え、労働力人口は2070年まで増加すると予想されています(三菱UFJリサーチ&コンサルティングより)。また総人口も2080年まで増加する見込みであることから、不動産投資需要のポジティブな要因と見ることができます。
しかし、外国人からの不動産投資が過熱した結果、住宅の過剰供給が懸念されています。首都プノンペンでコンドミニアム(分譲住宅)市場が転機を迎えている。米不動産大手のCBRECによると、2018年の供給量は前年比2.5倍となる約2万2000戸に拡大するなど供給過剰状態にあり、不動産価格の下落が予測されています(nna asiaより)。今後はただ不動産を購入しても成功することは難しいため、今後大きく伸びるエリアや求められる物件のニーズを慎重に見極めていく必要があります。
カンボジアのGDP
カンボジアの一人あたりの名目GDPは1,389ドルと、ASEAN10カ国のうち下から2番目となります。成長率は年平均7%で増加しているものの、一般市民の所得では投資用不動産となる住宅に居住できるだけの年収を確保するのは難しいといえます。
また失業率は0.2%(国際労働機関より)と低いですが、同機関が発表した同報告書によると、カンボジアの国民の大部分は、雇用されているとは言え労働の質が低く、路上の物販などの単純作業に従事しています。彼らは常に他の仕事を探しているため、カンボジアの国民のほとんどは常に失業状態であるとも言えると記載されています。
2-3 外国人がカンボジアに不動産投資をする場合の法規制
カンボジアでは、憲法上の理由から外国人・外国企業がカンボジアの土地を所有することができません。アパートやコンドミニアムなどの集合住宅の地上階・地下についても同様です。
なお、アパートやコンドミニアムなどの集合住宅の2階以上の部分については外国人・外国企業でも所有できますが、その場合でも当該建物の総占有面積の70%を超えることはできません。
その規制を回避するために多く用いられているのが、カンボジア人・カンボジア企業と合弁会社を設立し、その合弁会社が不動産を所有する方法です。その場合、カンボジア人・カンボジア企業がその合弁会社の51%以上の持分を持つ必要があります。
この方法は合法であり法的トラブルも発生しにくいのですが、業務提携できるカンボジア人・カンボジア企業を探し出して合弁会社を設立し、その名義で不動産を購入するには大変な手間がかかります。万一相手とトラブルになった場合も、会社持分の過半数をカンボジア人・カンボジア企業が持っているので、法律的に争っても勝てる見込みは低いでしょう。
なお、カンボジアでは内戦中に土地制度が崩壊し、土地所有権の所在がいまだに整理されていません。したがって、都会の中心部を除き、登記されている土地自体が半数にも満たないと言われています。そのような土地の場合には土地所有者と売買契約を結び、登記は行わないことにより規制を回避することができます。しかし、その場合には所有権をめぐる紛争が起きた場合の法的リスクが極めて高いことを認識する必要があります。
3 まとめ
マレーシアやカンボジアをはじめ、東南アジア全体は経済成長率が高く、人口増加も見込まれているため、魅力的な投資エリアだと言われています。一方、日本国内での取引とは異なる海外投資ならではのトラブルが発生する可能性も高くなります。特に、途上国では法整備が行き届いていない国が多いため、投資する国の不動産投資に関する法制度を十分に調査する必要があります。
また、仲介する現地エージェントは安心できるかどうか、為替リスクや紛争リスクはどうかといった様々なリスクも十分に検討する必要があります。HEDGE GUIDEに掲載している会社の中で、マレーシアとカンボジアの投資に強いのがビヨンドボーダーズという会社です。
現地のディベロッパーとのネットワークを持っており、現在の不動産価格や利回りの相場、いまおすすめの物件などまで様々な情報を聞くことができます。海外不動産投資が初めてという方は、無料でもらえる「マレーシアの不動産投資ガイド」や「カンボジアの不動産投資ガイド」、マレーシアやカンボジアの現地の大手ディベロッパーと共催している無料セミナーなども利用できますので、ぜひ情報収集源として活用されてみることをおすすめします。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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