不動産投資をフルローンで始めるメリット・デメリットは?必要な年収や選べる物件の目安も

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不動産投資をフルローンで始めることができれば、自己資金をほぼ用意することなく不動産投資をおこなうことができるメリットがあります。しかし一方で、フルローンを組んだ不動産投資では返済比率が高くなり、月々のキャッシュフローを圧迫するデメリットやリスクもあります。

そこで本記事では、不動産投資をフルローンで始めるメリット・デメリットと、必要な年収や選べる物件の目安について説明します。不動産投資でフルローンを組むか悩んでいた方はご参考ください。

目次

  1. 不動産投資をフルローンで始めるメリット
    1-1.自己資金が少なくても不動産投資を始めることができる
    1-2.手元資金に余裕を持って不動産投資ができる
    1-3.レバレッジ効果により資産拡大がしやすくなる
  2. 不動産投資をフルローンで始めるデメリット
    2-1.返済比率が高くなり、キャッシュフローが圧迫される
    2-2.キャッシュが蓄積されにくく、修繕費などの支払いが厳しくなる
    2-3.売却時に残債を売却代金で返済できない可能性がある
  3. 不動産投資をフルローンで始めるのに必要な年収と物件の目安
    3-1.不動産投資ローンの審査基準
    3-2.フルローンに必要な年収
    3-3.フルローンを組みやすい物件の特徴
  4. まとめ

1.不動産投資をフルローンで始めるメリット

不動産投資をフルローンで始めるメリットとして、次のような点が挙げられます。

  • 自己資金が少なくても不動産投資を始めることができる
  • 手元資金に余裕を持って不動産投資ができる
  • レバレッジ効果により資産拡大がしやすくなる

以下で詳しくみていきましょう。

1-1.自己資金が少なくても不動産投資を始めることができる

不動産投資をフルローンで始めるメリットは、自己資金が少なくても不動産投資を始めることができる点です。

現物の不動産を投資対象とする不動産投資では、数百万円~数千万円の収益不動産を購入し、その家賃収入を主な収益源としています。不動産投資を始める際、収益不動産とその購入にかかる諸費用のすべてを自己資金で賄うには、まとまった規模の資金が必要となるでしょう。

しかし、フルローンで収益不動産を購入することができれば、購入にかかる諸費用のみを自己資金で拠出すれば不動産投資を始めることができ、比較的に少額資金でも不動産投資を始めることが可能です。

1-2.手元資金に余裕を持って不動産投資ができる

不動産投資をフルローンで始めることができれば、その分、手元資金を温存したまま不動産投資に臨むことができます。

不動産投資では、収益不動産の修繕や空室による家賃収入の減少などによって、不測の支出が発生することがあります。必要な資金を捻出することができず、追加で借り入れたり、あるいは収益不動産を手放したりすることにもなりかねません。

しかし、手元資金に余裕があれば、不測の支出にも動じることなく、粛々と不動産投資を継続することができます。

1-3.レバレッジ効果により資産拡大がしやすくなる

ローンを組んで不動産投資をおこなうことで、少額の資金であっても高額の不動産へ投資することが可能になります。高額の不動産に投資することで、家賃収入などによる収益も多額になる傾向があります。

特に、フルローンの場合は、収益不動産の購入価格の全額を不動産投資ローンで賄うことになり、このような不動産投資のレバレッジ効果を最大限に活用することができるようになります。

フルローンによって投資効率は最大化することになります。高いレバレッジ効果によって、その分、資産拡大のスピードも速くなる傾向があるといえるでしょう。

2.不動産投資をフルローンで始めるデメリット

次に、不動産投資をフルローンで始めるデメリットをみていきましょう。次のような点が挙げられます。

  • 返済比率が高くなり、キャッシュフローが圧迫される
  • キャッシュが蓄積されにくく、修繕費などの支払いが厳しくなる
  • 売却時に残債を売却代金で返済できない可能性がある

以下で詳しくみていきましょう。

2-1.返済比率が高くなり、キャッシュフローが圧迫される

不動産投資をフルローンで始めることにより、自己資金を準備して一部を不動産投資ローンで補う場合よりも借入総額が大きくなります。つまり、投資額に対する家賃収入の割合(利回り)が同一である場合、借入総額が大きいケースの方が少ないケースよりも返済比率は高くなることでキャッシュフローが圧迫されることになります。

ローン返済で月々のキャッシュフローを圧迫しないためには、借入期間を長くしたり、借入利率を低くしたりなど、毎月の返済額を減らす対策を検討してみましょう。

2-2.キャッシュが蓄積されにくく、修繕費などの支払いが厳しくなる

不動産投資をフルローンで始めると、返済比率が高くなり、キャッシュフローが圧迫される可能性があります。キャッシュフローが圧迫されやすいということは、キャッシュが蓄積されにくいということでもあります。

フルローンは初期投資額を抑えられるメリットがありますが、手元の自己資金に余裕がない状態でフルローンを組むのはややハイリスクな投資方法と言えるでしょう。キャッシュがあまり蓄積されていない段階で修繕費などの大規模な支出をする必要性が生じると、資金繰りが厳しくなる可能性があるためです。

フルローンを組む際は突発的な修繕や空室リスクについても考慮し、これらのトラブルに対応できる自己資金が準備できるかどうかも慎重に検討されてみると良いでしょう。

2-3.売却時に残債を売却代金で返済できない可能性がある

不動産投資ローンの元本返済のスピードと、収益不動産の価格下落のスピードには違いがあります。不動産投資ローンをフルローンで組んだ場合、元本返済スピードが価格下落に追いついていないと、売却のタイミングによって売却価格が残債を下回る可能性が高まってしまうという点もデメリットと言えるでしょう。

残債を一括返済できなければ、収益不動産の抵当権を外すことができず、売却することができません。ローンと売却価格の差額を自己資金で支払うか、ローンの支払いを継続して売却タイミングをずらすなどの対策が必要になります。

3.不動産投資をフルローンで始めるのに必要な年収と物件の目安

ここからは、不動産投資ローンの審査基準についてみたうえで、不動産投資をフルローンで始めるのに必要な年収と物件の目安について説明していきます。

3-1.不動産投資ローンの審査基準

不動産投資ローンは、不動産賃貸業に対する事業性ローンという側面が強く、融資審査の際、収益不動産の資産性を重視します。資産性とは、その物件の収益性と担保性であり、返済原資に充当する家賃収入がどれぐらい得られるか、返済が滞った場合の元本の回収は可能か、といった観点から評価されます。

ただし、実際の審査においては、不動産投資ローンの返済原資につき、収益物件の家賃収入だけではなく、本人の給与収入や金融資産なども考慮して審査されています。このような不動産投資ローンの審査における属性考慮の傾向は、住宅ローンの審査と近似していると言えるでしょう。

不動産投資ローンの属性評価で確認される主な審査項目

  • 年収(過去3~5年)
  • 年齢
  • 金融資産(自己資金)
  • 残債・返済状況・返済負担
  • 家計余力・家族構成
  • 勤務先情報

3-2.フルローンに必要な年収

フルローンに必要な年収に一般的な基準はなく、上述したように金融機関等によって、不動産投資ローンの融資基準は異なり、属性についての審査項目・基準も多岐にわたります。年収基準を公表している金融機関等の不動産投資ローンでは、税込年収が500万円~700万円以上としていることが多いといえ、この年収帯以上の年収であることが一つの基準となるでしょう。

また、ローン残高が年収の8倍を超えると融資承認率が落ちる傾向もあります。フルローンを組むことができるかどうかは、ローンの総額にも影響されるため、購入する収益物件の価格によっても異なってくるでしょう。他にローンがない方であれば、年収の8倍程度までの価格の収益物件であれば、フルローンを組むことができる可能性があると考えられます。

3-3.フルローンを組みやすい物件の特徴

不動産投資ローンの融資審査では、収益不動産の収益性と担保性が審査対象となります。

特に、担保性の審査において、土地については路線価による比準価格を用いて評価し、建物については再調達原価を用いて評価する積算法による審査がしばしばおこなわれます。したがって、積算法による担保評価額が高くなりやすい「好立地」で「築年数が新しい」収益不動産は、フルローンを組みやすいといえるでしょう。

具体的には、土地の路線価が高い物件や、建物の再調達原価が高いRC造マンションなどの物件が担保評価額が高くなる傾向があります。なおかつ、物件の規模に対して家賃収入が高めで収益性も高い物件であれば、収益性の評価も高くなり、フルローンも組みやすくなります。

まとめ

不動産投資をフルローンでおこなうのは、少ない自己資金でも始められ、手元資金を温存でき、資産拡大しやすいなどのメリットがあります。しかし一方で、キャッシュフローが圧迫され、不測の支出に窮する可能性があり、出口戦略の選択肢が減るなどのデメリットもあります。

フルローンを組む場合は年収に対して8倍程度が目安となり、好立地で収益が見込みやすい小規模な物件が対象となりやすいと言えます。ローンのレバレッジが高くなるため、十分にリスクについても考慮し、慎重に検討されていくと良いでしょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。