不動産投資型クラウドファンディングの仕組みは?他の不動産投資との違いも

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不動産投資型クラウドファンディングは、少額資金で間接的に不動産へ投資ができる投資方法です。注目度が高まっている一方で、仕組みについてはよく分かっていないという方も少ないのではないでしょうか?

そこで今回は、不動産投資型クラウドファンディングの仕組みについて紹介します。また、ソーシャルレンディングを始め、他の投資方法との違いも紹介するので、参考にしてください。

目次

  1. 不動産クラウドファンディングとは
  2. 不動産投資型クラウドファンディングの仕組み
    2-1.不動産投資型クラウドファンディングの投資対象不動産
  3. ソーシャルレンディングの仕組み
  4. 不動産投資型クラウドファンディングとソーシャルレンディングとの違い
    4-1.リスクに対する対策の違い
    4-2.運用方法・リターンの違い
    4-3.関連する法律や規制の違い
    4-4.投資先の匿名性の違い
    4-5.収益予測の立てやすさの違い
  5. 不動産投資型クラウドファンディングと現物不動産投資との違い
    5-1.最低投資金額の違い
    5-2.レバレッジ効果の違い
    5-3.不動産管理コストの違い
    5-4.流動性の違い
    5-5.所得の種類の違い
  6. 不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITとの違い
    6-1.最低投資金額の違い
    6-2.リスク分散の違い
    6-3.流動性・ボラティリティの違い
    6-4.投資物件の選択の違い
    6-5.所得の違い
  7. まとめ

1.不動産クラウドファンディングとは

2017年の法改正により「インターネットを通じた不動産投資」ができるようになり、3つ目の不動産投資手法として不動産投資型クラウドファンディングが誕生しました。不動産投資型クラウドファンディングは、比較的新しい不動産投資手法といえます。

不動産クラウドファンディングとは、投資家から資金を集めて不動産を賃貸・取得して、賃貸料や不動産売買益を分配金として投資家に還元する投資手法のことをいいます。

不動産投資型クラウドファンディングでの平均的な利回りは2%~8%程度で、分配金の頻度は毎月・半年ごと・1年ごと・償還時のみなど、ファンドやサービスによって異なります。

2.不動産投資型クラウドファンディングの仕組み

不動産投資型クラウドファンディングでは、一般投資家からの出資を募り、集まった資金を使って不動産物件を賃貸したり、取得したりしたのち改修や運営を行います。

運営によって発生した利益は、出資比率に応じて投資家に分配されるというのが、不動産投資型クラウドファンディングの基本的な仕組みです。そのうえで、不動産投資型クラウドファンディングには3つの特徴的なポイントがあります。

  • 物件の運用・管理は事業者が行う
  • 入金して分配金を待つだけの投資手法
  • すべての手続き・やり取りはインターネット上で完結する

物件の修繕や入居者の管理といった「運用管理業務」はすべて事業者が行い、投資家に運用管理の手間や費用が掛かることはありません。

そのため、不動産投資型クラウドファンディングでは投資したいファンドを選択して入金する手続きを行うだけで、定期的に分配金を受け取ることができます。そして、サービスへの登録から、案件の申込み、分配金の受取まで、すべてインターネット上で完結します。

2-1.不動産投資型クラウドファンディングの投資対象不動産

不動産クラウドファンディングで提供されるファンドでは、さまざまな種類の不動産物件を投資対象としています。

不動産の種類によって大まかな収益性やリスクが異なるため、サービスやファンドを選ぶ際はどんな不動産にどんなスキーム(具体的な方法や枠組み)で投資するのか確認することが重要になります。

例えば、マンションなどの居住用不動産の場合、高い利回りを望むことは難しいですが、その分リスクを抑えた投資が可能です。

逆に、ホテルなどの宿泊施設では、景気によって稼働率が大きく変動します。好景気では需要が増加し利回りも高くなりますが、不景気で観光客が減少すると需要が一気に現象することがあります。投資リスクが高くなる傾向にあるため、その分利回りは比較的高く設定されます。

このように、投資対象不動産の種類によって、収益性とリスクのバランスが異なってきます。自分の状況に合わせたサービスやファンドを選んだり、一つのファンドへ集中投資をせず資産を分散させるなどの対策を検討してみましょう。

3.ソーシャルレンディングの仕組み

ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)とは、インターネット上でファンドの募集を行うことで投資家から出資を募り、集まった資金をもとにファンド業者を通じて事業者に融資する仕組みのことをいいます。

ソーシャルレンディングでは、ソーシャルレンディング業者と出資する投資家との間で「匿名組合契約」が結ばれます。これは、業者が行う「融資によるファンド運用事業」で発生した利益を、組合員(投資家)に分配するという契約です。

一方で、ソーシャルレンディング業者と資金の借り手となる事業者とでは、「金銭消費賃借契約」が結ばれ、投資家の出資で集まった資金を元手に融資を行います。

融資を受けた事業者は利息と合わせて元本の返済を行います。ソーシャルレンディング業者は利息から管理報酬などの経費を差し引き、残りを分配金として投資家に分配します。

ソーシャルレンディングは、リスクを取りながら効率的に資産運用を行いたい投資家のニーズ、資金を調達したい事業者のニーズ、その双方に応えられる仕組みといえます。

4.不動産投資型クラウドファンディングとソーシャルレンディングとの違い

不動産型クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違いをまとめると下記の通りです。

違い 不動産投資型クラウドファンディング ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)
リスク対策 優先劣後スキームによる損失保全
マスターリース契約による空室リスクの回避
担保の設定によるデフォルトリスクの低減
運用方法 不動産の取得と運営 事業者からの融資と利息の返済
リターン 賃料収入
物件の売却益
事業者からの返済金利
関連する法律規制 国土交通省の許可(不動産特定共同事業法に基づく取引に該当) 第二種金融商品取引業の登録(匿名組合契約が金融商品取引法のみなし有価証券に該当)
貸金業の登録(資金を貸し付ける行為が貸金業法に規定する貸付行為に該当)
投資先の匿名性 情報が公開されていることが多い 匿名性が高い
収益予測 予測が立てにくい(不動産価格・入居率が変動するため) 予測が立てやすい(金利収入であるため)

4-1.リスクに対する対策の違い

ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングでの違いの1つが、リスクに対する対策の取り方です。

不動産投資型では優先劣後スキームによる損失保全、マスターリース契約による空室リスク回避などを行いますが、ソーシャルレンディングでは担保の設定によってデフォルトリスクの低減を図ります。

4-2.運用方法・リターンの違い

不動産投資型クラウドファンディングは「不動産の取得(売買)と運営」によって運用され、賃料収入や物件売却によってリターンが発生します。

ソーシャルレンディングは「事業者から融資の返済」によって運用され、事業者からの返済金利からリターンが発生します。

4-3.関連する法律や規制の違い

不動産投資型クラウドファンディングとソーシャルレンディングでは、それぞれの事業内容が異なるため、関連する法律・規制・登録なども異なります。

不動産投資型クラウドファンディングでは、不動産特定共同事業法に基づく取引となるため、「国土交通省の許可」が必要になります。

一方でソーシャルレンディングは「第二種金融商品取引業の登録」(匿名組合契約が金融商品取引法のみなし有価証券に該当するため)と「貸金業の登録」(資金を貸し付ける行為が貸金業法に規定する貸付行為に該当するため)が必要になります。

なお、不動産投資型も匿名組合契約ではありますが、契約上の権利はみなし有価証券の定義から外れるため、第二種金融商品取引業の登録は不要となります。

4-4.投資先の匿名性の違い

不動産投資型クラウドファンディングとソーシャルレンディングの大きな違いの1つが、投資先の匿名性です。不動産投資型では、投資先物件の情報が公開されていることが多く、詳細な情報を提供しているケースもあります。情報を入手しやすく、投資判断の検討材料にしやすいといえます。

一方、ソーシャルレンディングでは融資先企業の企業名や所在地などの情報が伏せられているため、匿名性が高くなっています。

4-5.収益予測の立てやすさの違い

不動産投資型は、経済状況や社会情勢などによって、入居率が変動したり、不動産価格が反動したりする可能性があります。

想定価格で不動産が売却できないケースもあり、案件募集時の予定分配率が大きく下がる可能性(上がる可能性も)あるため、物件の売却時には特に注意が必要です。

一方、ソーシャルレンディングは金利収入であるため、原則的に予定分配率(利回り)が一定となります。そのため、不動投資型と比較して収益予測を立てやすくなります。

【関連記事】ソーシャルレンディング徹底比較!利回り・特徴・リスクなど

5.不動産投資型クラウドファンディングと現物不動産投資との違い

不動産投資型クラウドファンディングと現物不動産投資の違いは下記の通りです。

違い 不動産投資型クラウドファンディング 現物不動産投資
最低投資金額 1万円~ 数百万円~
レバレッジ効果 期待できない 期待できる
流動性 原則、譲渡はできない 低い
所得の種類 雑所得 不動産所得

5-1.最低投資金額の違い

不動産投資型クラウドファンディングは1万円程度の資金があれば投資可能ですが、現物不動産投資では最低でも数百万円、高い場合は数千万円以上の投資資金が必要になります。

そのため、現物不動産投資では不動産取得のために金融機関から融資を受けるケースが多く、審査のために事業計画書の作成・提出が必要になり、時間と手間が掛かります。

また、融資を受けた場合は毎月の返済義務や、登記費用・不動産取得税などのコストが発生します。

5-2.レバレッジ効果の違い

現物不動産投資では、不動産投資ローンを活用して物件を購入し、利益を上げることができるため、レバレッジ効果が高くなります。この場合、現金のみで不動産投資を行うよりも大きなリターンが期待できることになります。

一方、不動産投資型クラウドファンディングでは、金融機関からの融資を受けられません。すべて自己資金で投資するため、レバレッジ効果を得ることはできません。

5-3.不動産管理コストの違い

不動産投資型クラウドファンディングでは業者が運営管理を行うため、不動産を管理するコストや手間は発生しません。

現物不動産投資では、投資家自らが管理を行う必要があります。時間や手間が掛かるうえに、管理コストはすべての投資家の負担となります。

また、管理会社に任せる場合でも、選定や委託のための手続きなどが必要になるため、こちらも手間やコストが掛かります。

5-4.流動性の違い

流動性とは、ある資産に対する換金のしやすさを指します。不動産投資型クラウドファンディングは、一度投資すると契約期間または運用期間が終わるまで途中解約できないサービスが多い傾向にあります。

中には途中解約や譲渡が可能であるサービスもありますが、その場合も解約の手数料がかかってしまったり、譲渡先を自身で探す必要があったりなどの条件が設定されています。

現物不動産においても、売りに出してから売却が決まるまで数ヶ月から数年掛かることもあるため、流動性はかなり低いといえます。しかし、売却のタイミングを自身でコントロールすることができ、売却先を見つける際も不動産仲介会社を利用することが可能です。

5-5.所得の種類の違い

不動産投資型クラウドファンディングで発生した利益は「雑所得」の扱いとなり、総合課税の対象となります。

現物不動産所得で発生した利益は「不動産所得」となり、こちらも総合課税の対象となりますが、所有している土地や建物を売却した場合は分離課税の対象となり、他の所得と区分して税金を計算します。

その他、減価償却費の損益通算や、相続時における相続税評価額での税計算など、現物不動産にだけ適用される税制上のメリットは少なくありません。不動産クラウドファンディングは不動産を所有するわけではないため、これらの税制度の利用ができない点に注意が必要です。

【関連記事】上場している不動産投資会社7社の実績・評判まとめ

6.不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITとの違い

J-REITとは、投資家から資金を集めてマンションやオフィスビルなど複数の不動産を購入し、賃貸収入や売買益を投資家に分配する「不動産投資信託」のことをいいます。

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REIT(不動産投資信託)との違いは下記の通りです。

違い 不動産投資型クラウドファンディング J-REIT(不動産投資信託)
最低投資金額 1万円から 数万円から
リスク分散 低い 普通
流動性 低い 高い
ボラティリティ(価格変動制) 原則価格変動はしない 高い
投資物件の選択 選択可 選択不可
所得の種類 雑所得 譲渡所得・配当所得

6-1.最低投資金額の違い

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITでは、最低投資金額が少額で済むことは共通しています。

ただし、不動産投資型クラウドファンディングでは一口1万円から投資できるサービス・ファンドがあることに比べて、J-REITでは数万円の資金が必要になります。

6-2.リスク分散の違い

不動産投資型クラウドファンディングでは、1つのファンドにつき1件~数件の物件に投資することになります。そのため、1つのファンドに投資したとしても、分散効果はあまり高くありません。

一方、J-REITでは多くの銘柄で1つのファンドにつき複数の物件に投資できます。不動産投資型クラウドファンディングと比べて、分散効果は高いといえます。

6-3.流動性・ボラティリティの違い

J-REITは法律において上場投資信託として扱われており、株式と同じように取引所が開いている間は、好きなタイミングかつリアルタイムで売買できます。不動産型クラウドファンディングと比較して、流動性はかなり高いといえるでしょう。

ただし、J-REITは上場しているため、基準価額が変動するという特徴があります。分配金で利益を上げていても、基準価額が下がってしまうと大きな損失が生まれてしまうリスクがあるため、注意が必要です。

6-4.投資物件の選択の違い

不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITの大きな違いの1つが、投資物件の選択権です。

不動産投資型クラウドファンディングでは、投資したい不動産物件を投資家が直接選択することができます。一方、J-REITでは購入するファンドは選択できるものの、具体的な購入物件を選択することはできません。

6-5.所得の違い

J-REITへの投資によって発生した配当利益は「配当所得」、J-REITの売却による利益は「譲渡所得」となり、株式取引などと同じ扱いとなります。

申告分離によって他の所得とは分離して税金を計算することが可能となります。また、特定口座での投資ができる点も、不動産クラウドファンディングとの大きな違いと言えます。

【関連記事】REIT(リート)の始め方は?初心者でも分かる投資手順や銘柄選びを解説

まとめ

今回は不動産投資型クラウドファンディングの仕組みやソーシャルレンディングとの違いについて紹介しました。

不動産投資型クラウドファンディングサービスを利用した投資を行う場合、どんな仕組みになっているのか、他の投資方法とどう違うのか、把握しておくことが重要です。本記事を参考に理解を深めておきましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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