株式会社NTTデータ経営研究所は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に「企業における不動産テックの取り組み動向調査」を実施、15日に結果を発表した。金融の「フィンテック」などと比べると認知度が低いものの、「知っている」という回答者の所属企業の3社に1社に当たる35.8%が不動産テックに取り組んでいた。
FinTech(金融)をはじめとするテック系ビジネスの動向に目を向けると、金融の隣接領域とも言える不動産領域において不動産テック(PropTechもしくはReal Estate Techとも呼ばれる)の注目度が急激に増している。米国では、1000億ドル(約11兆円)の超巨大ファンドSoftbank Vision Fundはコワーキングスペース開発・運営のWeWorkに44億ドル(約4800億円)、テクノロジーを活用した不動産仲介会社Compassに8.5億ドル(約950億円)、買取再販プラットフォームを展開するOpendoorに4億ドル(約450億円)と立て続けに巨額投資を行い、話題となった。
日本国内でも不動産テック専業のプロパティデータバンクやGA technologies(ジーエー テクノロジーズ)が東証マザーズへ上場、一般社団法人不動産テック協会やADRE不動産情報コンソーシアムが発足するなど盛り上がりを見せている。こうした動きを背景に、調査は「不動産テックに関する取り組みをしているか?」、「不動産テックで取り入れている先進テクノロジーは何なのか?」、「取り組んでいる不動産テックの成果はどうなのか?」、「どのような人的リソースを活用しているのか?」、「今後、有望だと考える不動産テックのサービスとは?」などの観点で各社の取り組み実態を聞いた。
結果として、不動産テックの認知度自体はまだまだ低いものの、不動産テックを知っている人の所属企業のうち3社に1社は不動産テックに取り組んでいた。続いて不動産テックに取り組む企業を業種別に見ると、不動産業は29.8%と平均以下なのに対し、建設業、金融業が50%、商社・卸売・小売業43.5%、製造業38.8%と、意外にも不動産テックと一番関係の深いはずの不動産業よりも他業種の企業のほうが積極的に取り組んでいることが明らかとなった。加えて、不動産テックのような取り組みは、ベンチャー企業や身軽な中小企業のほうが積極的に取り組むイメージだが、実際は規模が大きい企業の方が数多く取り組んでいた。
不動産テックで主に導入されているテクノロジーは、「AI(機械学習、ディープラーニング含む)」、「Web化・オンライン化」、「ビッグデータ(DMP:Data Management Platfor含む)」、「IoT」で、サービスの中心は「データの収集・分析・共有」に関するものだった。
一方、不動産テックの成果については「成果が得られた」とする回答が約半数だが、「十分な成果は得られていない」とする回答も4割近くに上った。これについて同社は不動産テック実現に向けたアライアンスや買収などのアクションの相関についても調査。成果が得られているとする内訳は、「有望企業へ出資または買収し、出資先の有望企業と積極的に協業・交流した」が89.5%だった。特に「有望企業へ出資または買収し、出資先の有望企業と積極的に協業・交流した」という企業は、「期待以上の成果が得られている」が57.9%と、他が4%程度であることと比べて突出していた。このことから「異業種間における提携・協業・交流は重要なファクター。出資や買収、さらに出資先企業との積極的な関係構築が期待以上の成果を上げるためには重要」と結論する。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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