会社員が不動産投資ローンを組む時には、年収水準のほか、今の企業の勤続年数が審査に加味される傾向があります。そのため、転職直後にはローンを組みづらくなってしまう可能性があります。
今回の記事では不動産ローンの審査を踏まえた転職可能なタイミングや、融資審査で求められる勤続年数の目安などを紹介していきます。
目次
- 不動産投資ローンを組んだあとの転職
1-1.物件の引き渡し後であれば転職できる
1-2.転職活動の開始を引き渡し後とするのが望ましい
1-3.在籍確認の電話が来る場合もある
1-4.転職後はしばらくローンを組めない可能性が高い - 不動産投資ローンの融資審査で必要な勤続年数は?
2-1.最低でも勤続1年は必要になる可能性が高い
2-2.正社員であれば勤続年数3年が目安になる
2-3.勤続年数が短くても審査に通りやすい職業・属性
2-4.自営業・フリーランスはハードルが高くなる - 属性が低い場合に融資審査の通過率を上げる方法
3-1.購入予定の物件の担保性
3-2.借入額・自己資金の割合
3-3.保有資産の状況 - まとめ
1 不動産投資ローンを組んだあとの転職
不動産投資ローンを組んだ後の転職は特に問題ありませんが、タイミングには留意する必要があります。また、転職後はしばらくローンが組みづらくなる可能性が高くなるため、将来追加で物件購入を検討している人は注意が必要です。
1-1 物件の引き渡し後であれば転職できる
不動産投資ローンの審査においては、転職予定の有無を聞かれるケースが少なくありません。ローン審査においては勤続年数が審査基準の一つとなるため、契約のタイミングで転職を控えているとローンが通らない可能性もあると言えるでしょう。
ただし、この審査は将来の転職まで禁止するものではないため、完済するまで転職はできないかというと、そんなことはありません。金消契約と物件の引き渡しが完了した後であれば、転職を制限する根拠はありません。ただし、転職により年収が下がったり生活環境の変化で毎月の生活費が増えたりする場合、ローン返済で困ることもありえますので慎重に検討したほうが良いでしょう。
1-2 転職活動の意向がある場合は事前に担当者に伝えておく
ローン審査の中では転職の「予定」があるかと聞かれる場合もあります。例えば、審査と並行して転職活動を行なっていて、物件の引き渡し直後に転職した場合、確かに審査中に「転職」はしていませんが「転職の予定」はあったとみなされる可能性があります。
この時、審査において「転職の予定はない」と回答して審査を通してしまうと、銀行に虚偽申告をしたと受け取られかねません。この部分は判断が微妙な部分があり「転職エージェントに話しただけで転職の予定に含まれるのか?」「内定が出てなければ転職予定があるとはいえないのではないか?」などと意見が分かれるポイントです。
しかし、最後は銀行の審査担当部門が判断することになるので、不必要なリスクを負うグレーな行動をとるべきではないでしょう。審査段階で転職の意向がある場合は、担当者にきちんと伝えておくのが無難です。
1-3 在籍確認の電話が来る場合もある
具体的な対応は金融機関により異なりますが、金融機関によっては審査の過程で在籍確認の電話を職場に入れる場合があります。そのタイミングですでに退職手続き中だった場合などは、この時に転職予定があることが発覚するリスクがあります。
在籍確認の電話は金消契約前の本審査にて入ることがありますが、「どこかのタイミングで必ず在籍確認を入れる」と決まっているわけではありません。
1-4 転職後はしばらくローンを組めない可能性が高い
ローン契約後に転職をすることはタイミングさえ気をつければ問題ありませんが、逆に転職後はしばらくローンが組めなくなる可能性が高いので注意しましょう。
不動産投資ローンにおいては、一定の収入が見込めるかどうかの判断軸として、企業における勤続年数を見ます。当然ながら転職直後は一企業での勤続年数がリセットされるため、その企業での勤続年数が蓄積するまで新たなローンが組めなくなるのです。
その時点で手続き中の不動産を購入した後も、追加の不動産購入を視野に入れている人は、転職と不動産投資の拡大で優先順位づけをして適切に行動することが重要になってきます。
2 不動産投資ローンの融資審査で必要な勤続年数は?
転職後に不動産投資ローンを組む際には、勤続年数が短いと不利に働きます。ただし、どの程度の勤続年数で審査に通りやすくなるかは、転職先のステータスや転職回数などにも依存します。ここからは勤続年数や転職の融資審査に対する影響について見ていきましょう。
2-1 最低でも勤続1年は必要になる可能性が高い
ローンの審査を進める上で、勤続1年は事実上の最低要件となるケースが多いでしょう。ローン審査においては継続してローン返済を行えるかどうかを評価しますが、その際に長期的に一定の収入が見込めるかどうかを重視します。
勤続が短いと将来退職により収入が不安定になるリスクが高いと判断されるため、ローンが通りにくいのです。1年を最低限の基準としている金融機関が多いため、まずは最低でも勤続1年を経過するのが望ましいといえます。
2-2 正社員であれば勤続年数3年が目安になる
勤続1年〜3年程度は「致命的ではないが不利に働くこともある」というステータスであると考えられます。年収水準と借入額のバランスや自己資金の額、資産状況などでカバーできる部分が大きければ勤続年数が1年に近くても審査が通りやすくなるでしょう。
正社員の勤続年数としては、勤続3年が一つの目安です。3年継続して勤められる人は、将来の収入が見込みやすいとみなされ、勤続年数を理由に審査の評価がマイナスになるリスクは低いと考えられます。
2-3 勤続年数が短くても審査に通りやすい職業・属性
転職先の属性によっては勤続3年に満たなくとも審査に影響が出ない場合もあります。次に該当する人は転職後早めに動き出してみても良いでしょう。
- 士業系
- 公務員
- 東証プライム上場などの大手企業
- 同業他社でのキャリアアップ
士業とは弁護士や公認会計士、医師など難関国家資格をもとに働く役職を指します。これらで「独立」ではなく事務所や医院に勤務する場合は、特に属性が高くみなされることがあります。例えば、事務所から事務所への転職などにおいては、勤続年数が短くても障害にならないケースもあるでしょう。
公務員も解雇のリスクが非常に低い職業であり、勤続年数が短くても高く評価されやすい職業です。年収や物件の担保性にもよりますが、1年前後の勤続年数があれば審査を進めてもらえるでしょう。
一般企業については年収が高く、かつ大手企業であればあるほど勤続年数が障害になりにくくなります。特に東証プライムで上場している大手企業の正社員は信頼性が高いと判断されるため、勤続年数のハードルが低い傾向にあります。
また、同業他社でキャリアアップであることがわかる転職では勤続年数を大きく重視されないこともあります。「キャリアアップ」と見なされるには、年収が充分にアップしている、前職より事業規模の大きい大手企業への転職、役職を上げているなどがポイントになるでしょう。
一般企業への転職でも、このように評価が高くなるような転職であれば、1年程度の勤続年数でも審査を通過できる可能性があると言えます。
2-4 自営業・フリーランスはハードルが高くなる
逆に自営業やフリーランスは収入が不安定であるとみなされる傾向にあります。独立1〜2年ビジネスを続けた程度では、その人が営む事業の将来性が不確定なため、審査を通過させるのは困難です。
毎年一定の収入を自身の事業から得られると示すためには、3〜5年程度は事業を継続し、収支状況をアピールする必要があるでしょう。
3 属性が低い場合に融資審査の通過率を上げる方法
不動産投資ローンの審査は、転職の状況や勤務先の情報だけで審査を進めているわけではありません。購入予定の物件や借入額、拠出予定の自己資金や保有する資産規模なども審査には関係します。
裏を返せば、勤務状況がややネガティブに働いてもその他のポイントを押さえておくことで審査を通過できる可能性が高くなります。融資審査の通過率を上げる方法について見て行きましょう。
3-1 購入予定の物件の担保性
不動産投資ローンは物件を担保に入れて融資を受けるスキームとなっています。担保はもし債務者の返済が滞ったときに、金融機関が差し押さえなどを行なって損失を回避するために活用されるものです。そのため、担保の対象、すなわち購入予定の物件の資産価値が重要になります。
資産価値が高く長期にわたって維持されやすいと判断されれば、返済遅延が起きた際の担保として利用しやすくなるため、審査上評価が高くなるでしょう。不動産の価値はさまざまな要因で個々に評価されるため一概にはいえませんが、例えば次のような物件の方が審査は通りやすいといえます。
- 大都市圏・駅至近などで地価が高い
- 新築もしくは築浅
- 耐用年数が長い(木造よりRC造など)
勤務状況の面で不利に働きそうな人は、評価が高くなりそうな物件を探しに行くのも一つの方法です。
3-2 借入額・自己資金の割合
不動産投資ローンの借入額が少ないほど、融資審査には通りやすくなります。つまり、自己資金を多く準備しておくことで、不動産投資ローンの借入額を低く抑え、物件を購入できる可能性を高めることができます。
しかし、空室リスクの高い物件が安価で販売されていて、これを担保にローンを組もうとすると、物件価格が低いことで確かに借入額は抑えられますが、物件の担保価値が認められず審査が通りづらくなる可能性があります。
このように借入額を抑えながらも物件の担保価値について着目し、借入額と準備できる自己資金の割合を考慮していくことが重要になります。
もう一つ、具体例をみて行きましょう。担保価値として申し分ない築浅の一棟アパートと、より低価格な区分マンションがあったとします。この時、万が一の貸し倒れの時に金融機関の損失リスクが小さいのは、価格の安く借入額が抑えられる区分マンションです。
上記の例では、区分マンションの方が融資が通りやすくなると期待されます。このように審査上問題のない物件であれば借入額を抑えられた方が融資審査を通過しやすいと言えるでしょう。
また、前述したように自己資金額も重要な要素になります。不動産投資を一つの事業とみなしたとき、自己資金は会計上の「自己資本」となり、融資は「他人資本」になります。自己資本割合が大きいほど、経営上のリスクが限定されることになります。
不動産投資においても、自己資金の比率が高ければ物件から得られる賃料収入に対して毎月の返済額を抑えられるため、低リスクの不動産経営が可能になります。従って、より多くの自己資金を支払って借入比率を抑えた方が、審査は通りやすくなります。
3-3 保有資産の状況
審査においては不動産購入の自己資金以外も含めた保有資産の状況も重要です。不動産経営の中で収支が赤字になる局面があっても、資産を潤沢に保有していればローン返済を続けられるため、金融機関としては貸倒れリスクの低い人とみなしやすくなります。
保有資産は多いに越したことはありませんが、どのような形で資産を保有しているかも評価に影響します。最も高く評価されやすいのは現預金で、投資信託や株式など短期間で現金化可能な有価証券がこれに続きます。また、生命保険の中で、現時点で途中解約しても返戻金がもらえるものも一定程度の評価を得られます。
保有資産に対する評価は金融機関によっても判断軸が異なるので、複数の金融機関や金融機関と繋がりのある不動産投資会社と相談しながら、自分の資産状況において審査を有利に進めやすい機関を選んで活用するのが良いでしょう。
まとめ
不動産投資ローンの審査における評価に大きな影響を与える転職は、実行タイミングを慎重に検討する必要があります。不動産購入が終わった後の転職自体は問題ありませんが、実際に行動するのは、引き渡しが完了したのちに転職活動を始められると良いでしょう。また、審査段階で転職意向がある場合は、担当者にきちんと伝えておくようにしましょう。
また、転職後はしばらくローンを組みにくくなる点にも注意しましょう。勤続年数が少ないうちは追加の物件購入ができなくなりますが、士業や大手企業への転職、キャリアアップの転職である場合などは比較的早期から審査を通せるようになります。
購入物件や自己資金などにも気を配ることで、勤務状況が審査上マイナスになりそうな場合でもある程度カバーできる可能性があります。自身の勤務状況が審査においてマイナスに評価されてしまわないよう、タイミングや転職先に気を配って行動していきましょう。
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