不動産投資の自己資金回収は何年かかる?区分マンション・アパートの目安を解説

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不動産投資においては、月々の収支管理だけでなく、当初支払った資金を回収できるまでの期間を見ておくことも重要です。初期投資の資金が回収できれば、あとは当面黒字を維持しつつ、残債が残らないように売却できれば、その不動産投資の収支はプラスに終えることができます。

今回は資金回収の考え方や、資金回収までにかかる目安を区分マンション・アパートごとに紹介します。また後半では、資金回収を達成したのちの不動産投資における注意点についてもみていきましょう。

目次

  1. 不動産投資における資金回収の考え方
    1-1.初期投資額を最終損益ベースで回収すること
    1-2.資金回収の期間はCCRもしくはその逆数のPBで算出できる
  2. 区分マンションとアパートの資金回収の目安
    2-1.資金回収期間は5〜10年を目安として物件を選ぶ
    2-2.アパート経営では短めの資金回収が望ましい
    2-3.区分マンションは10年程度を目指したい
  3. 資金回収=不動産投資の成功とは限らない
    3-1.大規模修繕によって新たなコストが発生
    3-2.時間が経つにつれて収支が悪化するリスク要因も
    3-3.出口まで想定しておくのが理想
  4. まとめ

1 不動産投資における資金回収の考え方

不動産投資の計画を立てる上で、資金回収の期間を知っておくことは大切です。資金回収が一巡すれば、ある程度不動産投資全体を黒字の状態で終える目処が経ちます。特に、長期保有を念頭に置く場合には中長期的には修繕費用などがかかってくるので、早めの初期投資額の回収が望まれます。まずは、不動産投資における資金回収の考え方や重要性についてみていきましょう。

1-1 初期投資額を最終損益ベースで回収すること

不動産投資における資金回収とは、初期投資額を最終損益の累積で回収し終えることを言います。例えば当初において自己資金1,000万円を投じて物件を購入した場合は、月々の賃料収入から諸経費やローン支払いなどのコストを差し引いて残った手取りの金額の累積が1,000万円を超えれば、資金回収が完了したことになります。

毎年の賃料収入に対してかかる所得税は、他の本業の年収などによっても水準が変わってくるため、含めずに考える人も少なくありません。しかし、所得税も不動産投資をする中で支払うコストの一部となるので、より保守的に考えるうえでは、所得税支払いも加味した上での累積損益で考えるのがよいでしょう。

1-2 資金回収の期間はCCRもしくはその逆数のPBで算出できる

資金回収までの期間はCCRもしくはその逆数のPBという数値で計算ができます。

CCRは自己資金収益率(配当率)というもので、年間の収益額を自己資金の投資額で割ったものです。

CCR:自己資金収益率(配当率)=年間収益額÷自己資金

  • 収益額=賃料収入-諸経費-ローン支払い-税金
  • 自己資金は物件価格ではなく購入時の諸費を含めた頭金

例えば、1,000万円の物件に対して、賃料収入が300万円、諸経費やローン支払い、税金などのコストを合計して200万円の場合は次のような計算となります。

CCR=(300-200)÷1,000=10%

PB=CCRの逆数

一方で、これを逆数にしたものがPB(資金回収期間)で、こちらはそのまま算出された数値が「資金回収までにかかる期間」を示します。

PB=自己資金÷収益額

先の例でいうと、CCRは10%でしたが、PBは逆数の10となり、資金回収までに10年かかることを意味します。

2 区分マンションとアパートの資金回収の目安

資金回収にかかる期間は5〜10年が目安になりますが、物件のタイプによって変わってきます。ここからは区分マンションとアパートに分けて、資金回収期間の目安をみていきましょう。

2-1 資金回収期間は5〜10年を目安として物件を選ぶ

物件のタイプに関係なく、一つの目安として5〜10年程度が適切と言われることがあります。購入から10年ほど経ってくると、新築だったとしても今度は修繕などを検討する時期に差し掛かってきます。

すなわち、資金回収の期間が10年を大きく超えてしまうと、自己資金を回収する前に修繕による新たなコストが発生する計算になり、資金回収が遠のくリスクが高くなります。大規模修繕のサイクルよりも短期間で資金回収をすることが、健全な不動産投資においては重要です。

2-2 アパート経営では短めの資金回収が望ましい

5〜10年が全ての不動産投資の目安とすると、アパートの場合は短めが望ましく、また短縮する余地も大きいと言えます。

アパートは物件を丸ごと所有する分、大規模修繕のコストが数百万円〜など大きくなる恐れがあります。大規模な修繕は10年前後のサイクルで発生し、アパートの一棟投資では修繕コストも数百万円単位となります。

10年以内に自己資金を回収できないとなると高額な修繕コストが乗ってくることで自己資金の投入額が増えるため、資金回収が長期化していく恐れがあります。

そのような状況で木造の耐用年数である22年を超えてしまうと、今度は減価償却費が計上できなくなることで毎年の税負担が急増する恐れが立つため、最悪資金回収の目処が立たない事態も想定されるのです。

そこまでのリスクを考えると、アパートでは10年以内の資金回収が不動産経営をする上では重要な視点であると言えるでしょう。5〜7年程度で資金回収ができる計画を立てて、仮に想定より空室率が高めで推移しても10年で回収の目処がつくようなシミュレーションが可能であるか検証してみましょう。

2-3 区分マンションは10年程度を目指したい

続いて区分マンションについては物件全体の修繕費用がかかるわけではなく、また近年では修繕に向けた積み立てを行いながら運用するスキームとなっている物件が多くなっています。

仮に修繕に充てる資金の積み立てを並行しているならば、アパートほどは資金回収に急ぐ必要はありません。それでも運用の効率性を考えると、10年程度で回収するのが一つの目安といえるでしょう。

しかしながら、区分マンションの場合は、資金回収を前提としていない案件も多く見られます。ローンが返済されるまではキャッシュフローがプラスで推移せず、中には赤字で資金が出ていくスキームの案件も少なくありません。

売却時に購入時と同程度かそれ以上の価格が出るならば、売却時に資金回収ができます。実際に都市部を中心にマンション価格は、これまでは上昇傾向だったため、保有期間中のキャッシュフローがほぼゼロで、売却時に資金回収するスキームでもうまく行った投資家は少なくありません。

ただし過去が上昇傾向だったからといって、今後の不動産価格も上昇するとは限らない点には注意しましょう。少なくとも、資金回収の目処がない不動産取引は「売却時の価格によって投資損益が大きく変わる」ことを覚えておく必要があります。

不動産価格のリスクを取りたくないという人は、10年程度の資金回収が見込める形で区分マンションを購入するのが、一つの投資戦略であると言えます。

3 資金回収=不動産投資の成功とは限らない

資金回収が完了するということは、ひとまず初期投資額を取り戻し「元本回収ができた」状態となります。しかし、気をつけなければならないのは、資金回収=投資の成功を意味するとは限らないことです。

資金回収をしたのちも、不動産投資にはさまざまなリスクが存在します。不動産投資をする際には、資金回収のさらに先までしっかりと計画を立てて進めていくことが大切です。

3-1 大規模修繕によって新たなコストが発生

特にアパート一棟買いの場合は、資金回収を終える頃には最初の修繕を検討する時期が到来します。大規模修繕となると数百万円規模の支出が新たに発生することに。せっかく自己資金の回収が完了しても、追加でまとまった自己資金を充てることになるのです。

資産価値の維持や事故リスクの軽減、入居者を集めやすくする上でも修繕は欠かすことができません。投資する前から、定期的に発生する修繕に対する資金をどのように確保するか、計画を立てておきましょう。

なお、1部屋だけを管理する区分マンションなら修繕費用は小さく済むケースが多いと言えますが、それでもトイレやお風呂などの設備の更新が必要になることもあります。時には修繕に充てる積立金が足りなくなって、やはり支出が発生する場合もあるでしょう。

月々のキャッシュフローや収益が小さくなりがちな分、小さな修繕でも資金回収に苦労する可能性あるため、やはり資金回収までではなく、投資期間全体を見据えた計画の策定が重要です。

3-2 時間が経つにつれて収支が悪化するリスク要因も

不動産投資では年数が経つにつれて収支が悪化するリスク要因がいくつかあります。資金回収を無事済ませたとしても、その後に赤字化して現金が出ていってしまうリスクもあるのです。

まず、賃料は通常築年数が古くなれば下がっていきます。特に築20年くらいまでは相対的に下落ペースが大きいため、資金回収の期間を経過してから収支がマイナスになる可能性があるのです。

もう一つ注意しなければならないのは税金面での支出です。下記二つの理由から、後々になって税金が増えるリスクがあります。

  • 不動産投資ローンの利息支払いの経費計上部分が減る
  • 減価償却期間を超えると経費計上が出来なくなる

一つは不動産投資ローンの支払いで、ローンの支払いは「元利金等返済」にしていた場合、徐々に返済額に占める利息支払い相当額が減っていきます。

確定申告においては金利負担部分は経費として申告できますが、元本返済部分はできません。すなわち、年数が経つにつれて、金利負担として経費に充てられる余地が減るので、逆に所得税には増加圧力がかかるのです。

さらに影響が大きいのが減価償却費です。減価償却は耐用年数が木造で22年、コンクリート造のマンションで47年となっております。

耐用年数が過ぎるまでは毎年物件の資産価値の一定割合を減価償却費として計上して所得を下げることができますが、耐用年数が過ぎれば計上ができなくなるため、所得税の増加要因となります。

これらの収支悪化要因は年数が経つにつれて厳しくなっていくことになります。資金回収ができたとしても、これらの追加経費についても注意していく必要があります。

【関連記事】アパート経営におけるデッドクロスの仕組みは?回避する10個の対策も

3-3 出口戦略を立てておく

不動産投資における「出口」とは保有している不動産を最終的にどのように売却・処分するかということを指しています。相続を検討しない場合には、どこかのタイミングで「売却」を考えることが基本的な出口戦略となります。

その場合は不動産投資のゴールは、投資期間全体の収支が、自己資金の拠出額も含めて黒字の状態で、売却により残債を返済し切れる状態を意味します。ここまでくれば不動産投資の利益が確定したと考えて良いでしょう。

しかし、購入や資金回収など目先の事情に囚われて物件を選ぶと、実は売却の目処が立たない物件を購入してしまうリスクもあります。長期間が経過したのちでも需要が期待できる物件を選ぶことが大切です。

4 まとめ

不動産投資の資金回収期間の目安は5〜10年程度ですが、アパート投資では後の修繕費用が大きくなるケースも多いため、相対的に短い期間で資金回収ができるように工夫することがポイントとなります。

他方、区分マンションの場合ではキャッシュフローによる手残り金を多く見込めないため、ローン返済を終えるか売却するまで資金回収の目処が立たない物件も少なくありません。これにより、少なくとも売却時の不動産価格に投資の成否が大きく依存することを覚えておきましょう。

また、資金回収は一つの通過点に過ぎず、累積で黒字を維持した状態で、売却など形で出口を迎えることが大切です。不動産投資を行う際には、出口戦略までの長期的な資金および投資計画を立てておきましょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。