サステナブル企業に投資するファンドは?日本や世界のESG市場動向も

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環境問題や社会課題への関心が高まり、環境や社会をより良くしようとするサステナブル企業の動向にも目が向けられるようになってきています。また、最近は個人投資家向けにサステナブル企業に投資できるファンドも増えてきています。今回の記事ではサステナビリティやESG投資の現状も紹介しつつ、サステナブル企業に投資できるファンドを4つ紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※特記ない限り、この記事は2022年11月17日時点の情報を基に作成しております。

目次

  1. サステナブル企業とは?
    1-1.サステナブル企業とESGやSDGs
    1-2.サステナブル企業の取り組み事例
    1-3.企業がサステナビリティを重視する理由
  2. サステナブル企業に投資できるファンド4選
    2-1.ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド
    2-2.ニッセイSDGsグローバルセレクトファンド
    2-3.脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称:カーボンZERO)
    2-4.NEXT FUNDS SolactiveジャパンESGコア指数連動型上場投信
  3. ESGの市場は世界および日本ともに拡大
    3-1.そもそもESG市場とは?
    3-2.世界のESG市場動向
    3-3.日本のESG市場動向
  4. まとめ

1 サステナブル企業とは?

サステナブル(長期にわたり持続可能)な社会を実現するために、積極的な取り組みをおこなう企業をサステナブル企業といいます。まずは、サステナブル企業の現状についてまとめました。

1-1 サステナブル企業とESGやSDGs

サステナブル企業は「SDGs」や「ESG」に積極的な企業と捉えられることが多くなっています。SDGsはSustainable Development Goalsの略で「持続的な社会を達成するための目標」という意味でサステナブルな社会を実現するために達成すべき目標がまとめられたものです。また、ESGはE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス、企業統治)の課題解決を推進する取り組みを意味しますが、これらの諸問題の解決や状況の改善が、地球環境や社会の持続性を高めると考えられます。

これらを踏まえると、サステナブルな社会を実現するための具体的な目標がSDGs、改善への具体的なプロセスがESGの取り組みと捉えることができます。

ESGとSDGsを積極的に推進している企業は、それぞれの枠組みの下で課題解決に取り組み、社会のサステナビリティ向上に貢献しているといえるでしょう。

1-2 サステナブル企業の取り組み事例

サステナビリティに対する積極的な取り組みを示す企業は着実に増えています。ここでは2つほど事例を見てみましょう。

例えばイギリスに本社を置くユニリーバは「サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする」ことを企業の存在意義としています。サステナブルな社会を実現するために、多数の独自目標を「ユニリーバコンパス」にて設定しています。地球環境、人々の健康、差別や不平等のないインクルーシブな世界の実現という3つの領域への貢献を積極的に推進しています。

ユニリーバコンパスの目標の例

  • 2039年までに、原料調達から店頭販売までのすべての過程で、製品からの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする
  • 2022年までに、食品製品の85%で、消費者の1日あたりの塩分摂取量を5g以下に減らせるようにする
  • 2030年までに、ユニリーバに物品やサービスを直接提供するすべての人々が最低でも生活賃金または収入を得られるようにする

また、銀行に目を向けると、主たるビジネスである融資を通じてサステナビリティに貢献するケースも。例えば三菱UFJフィナンシャルグループでは、2019年5月にサステナブルな社会の実現のための方針を示し、2030年までに累計35兆円を「サステナブルファイナンス」として実行することを発表しました。

これは、環境や社会に貢献する事業に絞って融資をするもので、資金供給の積極化を通じてサステナブルな社会を実現するビジネスに貢献しようとするものです。同銀行では毎年「サステナビリティレポート」を発行して、自身のサステナビリティに対する取り組みをまとめています。

現場レベルではまだまだ課題も多くあると考えられますが、毎年、環境・社会のどのような項目にいくらファイナンスをおこなったかを公表することで、サステナブルファイナンスへのコミットメントを高めようとしています。

1-3 企業がサステナビリティを重視する理由

企業がサステナビリティを重視し、投資や事業に積極的に取り入れようとしている背景には次の4つのポイントがあります。

  • サステナビリティ推進が企業の理念に組み込まれているから
  • 投資家・ステークホルダーが企業のサステナビリティを重視するから
  • 対顧客のブランディング上重要だから
  • 自社が長期に発展するうえでも有効だから

そもそもサステナビリティの精神が企業の理念・経営方針として元から組み込まれていた企業は少なくありません。直接的に「サステナビリティ」という言葉では表現されていなかったとしても、「社会の発展」「地球環境の改善」などを以前より重視してきた企業は多数存在します。そういった企業にとってはサステナビリティの推進が存在意義の一部となっており、近年では「パーパス経営」などと呼ばれることがあります。

更に、近年はESG投資の市場が拡大し、投資家はESGやSDGsの概念を通じてサステナビリティを重視する企業に積極的に投資しています。また、顧客などビジネス上のステークホルダーについて、サステナビリティを推進する先を高く評価し、積極的に取引をおこなう企業も増えています。こうした潮流があるため、サステナビリティを重視して経営を進めると、資金調達やビジネス拡大をより円滑に進められるというメリットがあるのです。

また、顧客との関係性を考えるうえでも、サステナビリティへの取り組みは重要です。現代の生活者や企業の調達・購買部門は、商品の質や価格だけでなく、企業の経営方針や取り組みに納得できる製品やサービスを積極的に利用する傾向にあります。サステナビリティへの積極的な取り組み方針を掲げて具体的な取り組み内容を発信をすることは、企業のブランディングや顧客からの信頼向上につながるのです。

以上のような背景から、持続的な社会の実現に貢献しようというサステナブル企業は着実に増えてきています。

2 サステナブル企業に投資できるファンド4選

個人投資家がESG投資を実施する方法の一つとして、サステナブル企業を投資対象とするファンドを購入して、間接的にサステナブル企業のビジネスに貢献する方法があります。ここからは、サステナブル企業に投資するファンドについてみていきましょう。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

2-1 ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド

「エコディスカバリー」という愛称がつけられており、運用会社ピクテが世界中の環境関連企業に投資をおこなうファンドです。ESG系のファンドとしては相対的に古く、2010年から運用が継続しています。

世界中の環境重視の企業群において分散投資をおこなうことで、設定当初10,000円で始まる基準価額は2022年10月19日時点で33,981円(年2回決算、為替ヘッジなし)と約12年で3倍超に上昇しているなど、長期で見れば順調なパフォーマンスが実現しています。地球環境の改善という観点で社会貢献性が高く、持続的な成長が期待できる企業に投資をおこなってきた結果が過去の実績に表れているといえるでしょう。

2022年9月末時点の組入上位10社

銘柄 業種 投資比率
ネクステラエナジー 米国 再生可能エネルギー 5.7%
オン・セミコンダクター 米国 エネルギー効率化 5.5%
アルベマール 米国 エネルギー効率化 4.6%
シノプシス 米国 省資源化 4.2%
RWE ドイツ 再生可能エネルギー 4.1%
アナログ・デバイセズ 米国 エネルギー効率化 3.8%
エンフェーズ・エナジー 米国 再生可能エネルギー 3.8%
アプライド マテリアルズ 米国 省資源化 3.6%
NXPセミコンダクターズ オランダ エネルギー効率化 3.5%
トップビルド 米国 エネルギー効率化 3.3%

出所:ピクテ投信投資顧問「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし2022年9月30日月次レポート

このように、米国を中心にグローバルのサステナブル企業に投資できるのが特徴です。ピクテ社によると、足元では再生可能エネルギー関連、EV(電気自動車)関連やエコ・ロボティクス関連といった、今後の環境改善に寄与する分野に着目して投資を行っています。地球環境の改善への貢献が期待できる、世界中のサステナブル企業へ投資できるファンドといえるでしょう。

月次レポートでは主要テーマ別の投資比率も見ることができます。

2022年9月末時点の環境テーマ別投資比率

環境テーマ 投資比率
EV(電気自動車)関連 28.8%
エコ・ロボティクス関連 44.4%
再生可能エネルギー関連 25.7%
コール・ローン等、その他 1.0%

出所:ピクテ投信投資顧問「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし2022年9月30日月次レポート

なお、このファンドは4つのタイプがあり、為替ヘッジあり、なしと毎月決算、年2回決算をそれぞれ選択可能です。今後も同じ方針が維持されるとは限りませんが、毎月決算については2022年9月までは概ね毎月分配が出ています。分配金の有無を基準に選ぶのも一つの考え方です。

当ファンドは、大手の野村證券三菱UFJモルガン・スタンレー証券のほか、ネット証券会社のSBI証券などで購入可能です。

2-2 ニッセイSDGsグローバルセレクトファンド

SDGsが世の中に浸透するなかで、SDGsに積極的に取り組む企業にも関心が高まっています。SDGsがSustainable Development Goalsの略であることからもわかるように、SDGsに積極的な貢献を示す企業もまた、サステナブル企業と見ることができるでしょう。

ニッセイSDGsグローバルセレクトファンドは「SDGs達成に関連した事業を展開する企業のなかから、株価上昇が期待される銘柄を厳選」して投資をおこなうファンドで、まさにSDGsを推進する企業に投資できます。運用会社はニッセイアセットマネジメントです。

同ファンドに投資すれば、地球環境や社会への貢献性が高いグローバル企業に投資できます。2022年には、投資家の資産形成に貢献できるファンドに贈られる「R&Iファンド大賞」を受賞するなど、対外的にも高い評価を得ています。

2022年9月末時点の投資上位5ヵ国

投資比率
米国 77.4%
スイス 7.3%
ドイツ 4.3%
オランダ 3.2%
オーストラリア 2.2%

出所:ニッセイアセットマネジメント株式会社「ニッセイSDGsグローバルセレクトファンド(資産成長型・為替ヘッジあり)/(資産成長型・為替ヘッジなし)マンスリーレポート2022年9月末

また、月次レポートでは組入上位銘柄のSDGsにおける具体的な取り組みまで確認することが可能です。自分がファンドを通じて投資している代表的なサステナブル企業がどのように貢献しているかを確認したうえで、投資することができます。

2022年9月末時点の組入上位5社の概要

アルファベット(アメリカ、コミュニケーションサービス、投資比率4.5%)

  • Googleなどを擁するオンライン広告最大手
  • 自動運転部門のWaymonでは公道での完全無人運転テストを行うなど技術革新を推進
  • クラウド利用促進や効率的なデータセンター利用による電力消費の効率化

マイクロソフト(アメリカ、情報技術、投資比率4.0%)

  • ソフトウェア世界最大手
  • 100%カーボンニュートラルとなっているデータセンターの活用
  • クラウドの高い需要を背景に持続的な売上成長、利益率改善を見込む

SIG グループAG(スイス、素材、投資比率3.9%)

  • 飲料・食品用の無菌紙容器を製造
  • 常温保管が可能なため貧困地域にも栄養価の高い乳製品を配送可能に
  • 海洋汚染の原因となるプラスチックボトルの削減を推進

サービスナウ(アメリカ、情報技術、投資比率3.6%)

  • ワークフローを自動化するクラウドベースのサービスを提供
  • デジタル技術で変革を促すDXを促進し、世界中の企業の生産性向上等に貢献
  • 事業コストや環境負荷の低減を顧客にもたらすと期待される

ネクステラ・エナジー(アメリカ、公益事業、投資比率3.5%)

  • 電力事業および風力、太陽光発電を手掛ける
  • 再生可能エネルギー分野で世界最大級の発電規模
  • 米国におけるインフラ投資関連の景気刺激策や脱炭素化の需要を背景に持続的な成長が期待

出所:ニッセイアセットマネジメント株式会社「ニッセイSDGsグローバルセレクトファンド(資産成長型・為替ヘッジあり)/(資産成長型・為替ヘッジなし)マンスリーレポート2022年9月末

グローバルに株式市場が下落傾向にあることもあり、2022年度9月末時点で過去1年のリターンは−17%(為替ヘッジなし、資産成長型)でした。一方で2018年5月の設定来では49%とプラスのリターンを維持しています。サステナビリティへの取り組みが企業業績や価値向上に寄与するには時間がかかるケースも少なくないため、じっくり長期投資するのも一つの選択肢です。

なお、為替ヘッジあり・なしを選択することができます。ヘッジなしの場合は各企業の所属地域の通貨と円の為替変動リスクを受けることになります。為替リスクをとって良いかどうかを踏まえたうえで、自分に合ったコースを選びましょう。

当ファンドは購入可能な証券会社が多数あり、ネット系ではSBI証券、楽天証券、松井証券マネックス証券などが販売しています。また中堅の証券会社でも多数取り扱っています。

2-3 脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称:カーボンZERO)

特定のサステナビリティに関するテーマにフォーカスしたファンドも多数あります。ここではその中で、2022年10月20日時点で680億円以上の運用資産残高を持つ脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称:カーボンZERO)を紹介します。運用会社は大和アセットマネジメントですが、米生命保険会社ニューヨークライフ・インシュアランス・カンパニー傘下のカンドリアムという運用会社からの助言のもと運用されています。

その名の通り、脱炭素社会の実現に向けて、テクノロジーやサービスの面からソリューションを提供する企業へ投資を行います。このファンドへの投資を通じて脱炭素社会の実現に貢献ができるというわけです。

2022年8月末時点の組入上位10社

銘柄 業種 投資比率
MICROSOFT CORP 米国 情報技術 4.7%
WASTE CONNECTIONS INC 米国 資本財・サービス 4.3%
TRIMBLE INC 米国 情報技術 3.3%
AIR PRODUCTS & CHEMICALS INC 米国 素材 3.1%
MASTEC INC 米国 資本財・サービス 2.9%
THERMO FISHER SCIENTIFIC INC 米国 ヘルスケア 2.7%
AIR LIQUIDE SA フランス 素材 2.7%
TOPBUILD CORP 米国 一般消費財・サービス 2.6%
WUXI LEAD INTELLIGENT EQUI-A 中国 資本財・サービス 2.4%
APTIV PLC 米国 一般消費財・サービス 2.4%

出所:大和アセットマネジメント株式会社「脱炭素テクノロジー株式ファンド 愛称:カーボンZERO 2022年8月31日月次レポート

トップのマイクロソフトなどは日本でも知名度の高い企業ですが、脱炭素にフォーカスして企業を厳選していると言うこともあり、そのほかは、あまり聞き覚えのないという方も少なくないでしょう。

例えば投資比率2番手のWASTE CONNECTIONS INCは、米国・カナダで廃棄物の収集や処理を行なっています。リサイクルや効率的な資源回収を通じてゴミ焼却を減らす取り組みが、脱炭素に貢献すると評価されています。

また、6番手に入っているTHERMO FISHER SCIENTIFIC INCは、ビジネス自体はヘルスケアやライフサイエンスに関する分析機器の開発や診断・研究や化学薬品開発などを行なっていますが、2050年にCO2排出ネットゼロを達成するというコミットを発表したことが高く評価されています。

このように本業が脱炭素に貢献する企業や、企業のスタンスとしてCO2削減に積極的な企業が多く組み入れられているファンドです。なおこのファンドは年2回決算となっていて、運用状況により決算のタイミングでは分配金が出ます。例えば2022年1月には250円の分配が出ています。

2-4 NEXT FUNDS SolactiveジャパンESGコア指数連動型上場投信

一つ目は「NF・日本株ESGコアETF」という愛称がつけられたETF(上場投資信託)です。ETFなので、東京証券取引所が開いている時間帯であればリアルタイムで取引できます。

NEXT FUNDSとは野村アセットマネジメントのETFシリーズです。その中で同ファンドは2022年4月に設定されたもので、「Solactive ジャパン ESG コア指数」に連動することを目指して運用されるインデックスファンドです。

「Solactive ジャパン ESG コア指数」は日本の大型・中型株の中で、中長期的な成長が期待され、かつESGスコアの高い銘柄を採用する指数です。ESGに積極的で、かつ企業自体も持続的な発展が期待できる企業が集約される指数です。

2022年9月末時点の組入上位10社

銘柄 業種 投資比率
トヨタ自動車 輸送用機器 5.7%
第一三共 医薬品 4.4%
キーエンス 電気機器 4.1%
ソニーグループ 電気機器 3.9%
武田薬品工業 医薬品 3.4%
HOYA 精密機器 3.3%
リクルートホールディングス サービス業 3.0%
任天堂 その他製品 2.9%
ダイキン工業 機械 2.7%
東京エレクトロン 電気機器 2.3%

出所:野村アセットマネジメント株式会社「2850 NF・日本株ESGコアETF(愛称)2022年9月30日月次レポート

投資銘柄数は2022年9月末時点で99銘柄に上り、分散投資が図られています。持続性を基に構築される指数を参照して投資をおこなうファンドであることから、相対的に長期投資目線の企業が含まれると期待できます。一方で日本の企業のみに投資をおこなうファンドであるため、海外のサステナブル企業に投資したい場合は、この後紹介するような、世界の株式を投資対象とするファンドも検討してみましょう。

まだ設定して半年程度で、設定来のリターンは報酬等控除後で-4.1%となっていますが、サステナビリティに対する取り組みは中長期的な視点でおこなわれるものであるため、短期的な騰落にとらわれず、長期で保有を継続するというのも一つの考え方といえるでしょう。

3 ESGの市場は日本でも世界でも拡大

ESG市場は近年順調に拡大しています。現代のサステナビリティ投資の大きな部分を占めるESGの現状についておさえておきましょう。

3-1 そもそもESG市場とは?

ESG投資は、環境・社会・ガバナンスの各カテゴリーの諸問題や課題解決に取り組んでいる企業への投資を意味します。

もともとESGは2015年に国連が提唱した責任投資原則に基づいて、世界中の機関投資家が実践するようになったものです。しかし近年は資産運用の世界に限らず、一般企業でもESGの観点を経営に取り入れたESG経営が当たり前のように求められる時代になっています。

そのため、世界中の企業がESGにおいて事業投資と資産運用の双方を積極化していることから、ESGの市場は拡大し急成長しています。

3-2 世界のESG市場動向

世界のESG投資残高を集計しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が2021年7月に公表した報告書「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020」によると、2020年時点で世界のESG投資総額は全体で35.3兆ドルと推計されています。2018年から15%、2016年からは55%の増加となり、ESG投資市場が引き続き拡大傾向にあることが伺えます。

全世界で見れば市場成長が期待される分野ですが、欧州では「見せかけ」のESGへの取り組みを規制する動きが見られ、成長ペースの減速要因に。2018年にEUにて打ち出された「サステナブルファイナンス行動計画」において、実効性のないESGへの取り組みを排除すべく、ESGのルールが策定されました。

欧州の各企業では、ルールを遵守するために事業や投資先をこれまでより厳選する傾向にあるため、成長ペースの減速要因となっているのです。

3-3 日本のESG市場動向

GSIAの同レポートでは地域別のESG投資額も公表しており、日本については2018年から32%増加し、2.9兆ドルとなりました。同様に運用資産残高全体に対するESG投資の比率も集計されていますが、日本は24%で、カナダ(62%)、欧州(42%)、米国(33%)などと比較すると依然として低水準です。

日本の年金運用をおこなうGPIFをはじめ、多くの日本の機関投資家がESGを積極的に推進しています。運用会社や金融機関各社では、自社の投融資に加えて、個人投資家向けのESGファンドの販売などを通じてESG投資市場の拡大を後押ししており、今後さらに日本におけるESG投資の拡大が期待されるところです。

まとめ

ESGをはじめとしたサステナビリティへの投資は金融市場でもビジネスとしても着実に拡大しています。取引先や金融機関の企業評価においても、サステナビリティが重視されるようになってきていることから、この潮流は今後も継続するでしょう。

個人投資家としてサステナブル企業に投資するためには、今回紹介したようなサステナブル企業に投資できるファンドを購入するのも一つの選択肢です。必ずしも短期的な利益を追求するものではありませんが、中長期で見れば、社会貢献を果たしながら、自分の資産形成にも役立つでしょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。