不動産投資で賃貸を続けるべきか売却すべきかを判断するためのコツ

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資産運用には、株式投資や投資信託など数多くの手段がありますが、その中で不動産投資を行っている方も多くいます。不動産投資は、入居者がいる限り長期的な家賃収入が得られるのが1つの魅力ですが、築年数経過とともに修繕が必要になる、入居率が低下するといった可能性があるため、いつまでも長期的な家賃収入が得られるとは限りません。

そのため、運用を行っていく中で、賃貸を続けるべきか売却すべきかの判断が必要になります。この記事では、不動産投資で賃貸を続けるべきか売却すべきか判断するためのコツを紹介します。

目次

  1. 不動産投資では出口戦略を考える必要がある
  2. 賃貸を続けるべきか売却すべきかを判断するコツ
    2-1.想定していた利益が得られない場合
    2-2.キャピタルゲインが期待できる場合
    2-3.売却価格が返済残高を上回る場合
    2-4.大きな修繕が発生する前
    2-5.満室になっている場合
    2-6.まとまったお金が必要な場合
  3. まとめ

1 不動産投資では出口戦略を考える必要がある

不動産投資は、自己資金が少ない場合でも融資条件を満たしていれば金融機関から融資を受けて始めることが可能です。また、入居者がつけば月々長期的な家賃収入が期待できるため、資産運用の手段として不動産投資を選んでいる方も多くいます。

株式投資やFXなどは値動きが激しく、利益が得られるかは不確実ですが、不動産投資は入居者がいる限りは長期的な家賃収入が確保できます。しかし、逆に空室であれば家賃収入が入らず、借入金の返済や経費の支払いなど支出のみが生じてしまうほか、築年数の経過とともに修繕費が増えて利回りが下がってくるため、どこかのタイミングで出口戦略を考えなければなりません。

不動産投資における出口戦略とは、一言でいえば「運用を手じまいすること」であり、主に所有している不動産を売却することを指します。出口戦略を考える際には、主に以下の3つの判断方法が挙げられます。

  1. 賃貸を続ける
  2. 売却して現金化する
  3. 物件を建て直して新たに賃貸を始める

物件を建て直して新たに賃貸を始めるのは費用が大きくなるため、修繕を繰り返しつつ賃貸を続ける、売却して現金化する、のどちらかを選ぶのが一般的です。

2 賃貸を続けるべきか売却すべきかを判断するコツ

賃貸を続けるべきか売却すべきかを判断するコツとして、以下の6つのポイントを確認しておくことが挙げられます。

  1. 想定していた利益が得られない場合
  2. キャピタルゲインが期待できる場合
  3. 売却価格が返済残高を上回る場合
  4. 大きな修繕が発生する前
  5. 満室になっている場合
  6. まとまったお金が必要な場合

それぞれのコツについて詳しく見ていきましょう。

2-1 想定していた利益が得られない場合

不動産投資を行う際は、物件の利回りを考慮しながら投資する物件を取得します。しかし、必ず想定通りの利回りが得られるとは限りません。物件を取得したものの、想定していた利回りを確保できず運用が思わしくない場合には、賃貸を続けるべきか売却すべきかを判断する1つのタイミングと言えます。

賃貸を続けていく中で家賃収入を上げ必要経費を抑えることができれば、そのうち想定していた実質利回り(経費を考慮した利回り)に達する可能性もあるかもしれません。しかし、想定していた利回りに達するまでは、不動産投資を始める際に契約した融資の返済が大きな負担になりかねません。そのため、賃貸を続けることが正しい選択とは必ずしも言えません。

想定していた利益が得られない場合には、無理に賃貸を続けようとするのではなく、早期に売却した方が将来的な損失を小さく抑えられる可能性があると言えます。

2-2 キャピタルゲインが期待できる場合

資産運用で得られる利益は、キャピタルゲインとインカムゲインの2つに分類されます。キャピタルゲインとは、資産価値の上昇により生じる売却益のことです。インカムゲインとは、不動産投資や債券などの資産を保有し続けることによって安定的・継続的に得られる利益のことです。

不動産投資は、安定的・継続的に得られるインカムゲイン(家賃収入)を主な目的としていますが、不動産価格も変動が生じることからキャピタルゲインを狙うことも可能です。

2008年にアメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破綻した「リーマンショック」後、不動産価格は下落していましたが、2013年からは回復基調です。国土交通省が公表した平成31年の地価公示価格によると、三大都市圏に限らず地方圏でも住宅地価格が上昇に転じています。そのため、物件価格が低い頃に不動産投資を始めた人の場合、現在売却すればキャピタルゲインが得られる可能性もあるでしょう。

しかし、不動産市場に影響を与えるような事態がいつ発生するかは誰にも分かりません。そのため、売却でキャピタルゲインが期待できる場合には、賃貸を続けることから売却に戦略を切り替えることも1つの選択肢と言えるでしょう。

2-3 売却価格が返済残高を上回る場合

投資用の不動産を取得した際の価格よりも売却価格の方が上回っている場合には、売却を判断する1つの良いタイミングが来ていると言えます。しかし、売却価格が融資の返済残高を上回る場合も、売却を判断する1つの選択肢が現れたと言えます。

不動産投資では、得られた家賃収入から融資の返済を行っていきます。ある程度の返済が終了すると、物件の売却価格が融資の返済残高を上回るようになります。

このタイミングで不動産を売却すれば、手じまい後にはほぼ確実に現金が手元に残ることになります。不動産投資を行っているものの、思ったような収益が出ていない場合には、このタイミングで売却を判断するのも良いでしょう。

2-4 大きな修繕が発生する前

新築物件で不動産投資を始めた場合でも、ある程度の築年数が経過すると、少しずつ修繕が必要になります。修繕を行うと支出が増えることから、利回りは低くなります。家賃収入が発生していても、融資の返済を考えた場合に利益をきちんと確保できなくなる可能性もあるため、そうなる際には賃貸を続けるべきか考えなければなりません。

例えば、マンションでは各設備の耐用年数に合わせて修繕が行われます。特に25~30年に1回、各設備の耐用年数が合わさるため、膨大な修繕費用が発生します。マンションの区分所有者はこうした修繕に備え、修繕積立金として毎月ある程度の修繕費用を積み立てるのですが、修繕費用によってはそれだけで足りるとは限りません。

25~30年に1回行われる大規模修繕工事が近づいてくると、修繕費用の上乗せにより支出が増えるケースも多いため、大きな修繕が発生する前に売却を判断するのも方法の1つと言えるでしょう。

2-5 満室になっている場合

「満室になっている場合は、家賃収入が十分にあるからむしろ賃貸を続けた方が良いのでは?」と考える方も多いかもしれませんが、反対に空室が目立つと買い手の需要が低くなるため、満室時は物件の売却を判断する1つのタイミングとも言えます。

投資用不動産の売却価格は、通常の不動産の売却価格と同様に、築年数の経過による影響を受けます。しかし、築年数より「利回りが高いか、低いか」ということの方が重要なことも多くあります。利回りが高い物件であれば、築年数が経過していてもある程度需要が期待できますが、利回りが低くかつ築年数が経過している物件は一般的に需要が低くなります。

そのため、満室になっている状況では、賃貸を続けたいという思いが強いかもしれませんが、絶好の売り時を逃す可能性もあるため、よく考えることが重要と言えるでしょう。

2-6 まとまったお金が必要な場合

子供が大学に進学する、家を購入する、車を買い替えるといったようにライフイベントにはまとまったお金が必要になる場合があります。このような場合には、投資用不動産を担保に金融機関からお金を借りるという方法もありますが、不動産を売却してまとまったお金を手に入れるということも1つの方法と言えます。

ただし、焦って不動産を売却した場合には、必要以上に安く売却してしまうことになる可能性もあるので注意が必要です。そのため、まとまったお金が必要になることが事前に分かっている場合には、そこに向けて売却計画を立てておくことも重要と言えるでしょう。

3 まとめ

不動産投資を行っている方の中には、賃貸を続けるべきか売却すべきかで悩んでいる方も多いと思います。長期的な家賃収入を得られている場合、まだ売却を検討する必要はないと考えている方もいるかもしれませんが、入居率が低くなったり、築年数が経過したりするとスムーズに買い手を見つけられなくなる可能性もあるので注意が必要です。

不動産をうまく売却できるタイミングは限られています。例えば、想定していた利益が得られない時、キャピタルゲインが期待できる時、売却価格が返済残高を上回る時などです。いつまでも安定的・継続的に家賃収入を得られるとは限らないため、タイミングを見ながら売却を含む出口戦略を常に検討しておくことが重要と言えるでしょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。