投資用の不動産を売却したい方の中には、手続きの仕方がわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。不動産を相場より低い査定価格で売却してしまった後に後悔しないよう、売却の流れを把握した上で、ポイントとなる部分をしっかり抑えて売りに出すことが大切です。
今回は、はじめて不動産の売却をしようと考えている方や、不動産投資全体の流れを学びたい初心者の方に向けて、不動産売却の流れや査定の方法、注意点などを中心に解説したいと思います。
目次
- 不動産売却の流れ
1-1.不動産価格の査定
1-2.売却物件の募集開始
1-3.売買契約の締結と受け渡し - 自分で売却価格を決めて売りに出すことはできる?
- 不動産の査定依頼はどのようにすればよいか
- 何社くらいに不動産査定を依頼すれば良いか
- 訪問査定で不動産会社がチェックする点
- 不動産査定の相場を知る方法
6-1.ネットの物件情報を活用する
6-2.不動産一括査定サイトの価格を参考にする - 不動産の売却方法には仲介だけでなく買取もある
- 不動産ローンの残債はいつ支払う?
- 不動産売却の流れの中で注意する点
9-1.3ヵ月ごとに募集広告の見直しをする
9-2.不動産売却時にかかる税金がある
9-3.内覧には積極的に立ち会う - まとめ
不動産売却の流れ
まずは基本的な不動産売却の流れを知っておきましょう。順番に解説していきます。
不動産価格の査定
不動産を売却する場合、まずは売買仲介を行う不動産会社に物件情報を持参して相談を行います。これは不動産の価格を「査定」するためですが、相談をしてその場で価格が決まるわけではありません。
おおまかな試算価格に基づき、不動産会社の担当が実際に物件を見た上で最終的な価格を算出します。おおまかな試算を「簡易査定」と言い、物件を見て査定することを「訪問査定」と言います。
ただ、必ずしも訪問査定で査定した価格で売れるわけではありません。最終的には買主と売主が合意しなければ契約できませんので、周りの物件の相場や買主の意向などで売買価格は上下する可能性があります。
売却物件の募集開始
最終的な価格を確定させたら、不動産会社が買主を募集します。募集の作業は仲介をする不動産会社が行います。不動産会社は「レインズ」や不動産情報サイト、自社の店舗やホームページなどに広告を出し募集をかけます。また、既存の顧客などにも声をかけ買主を募ります。
不動産会社は、購入希望者から問い合わせがあったら、オーナーに連絡を入れ、内覧対応を行います。内覧後、希望者と売主ともに条件が折り合えば契約にすすみます。
この流れだけを見ると契約までスムーズに運びそうですが、購入希望者から問い合わせ時や内覧時に色々な質問を受けたり、価格交渉をされたりします。他に競合する物件があった場合は価格交渉により価格を下げざるを得ない場合も発生します。
売買契約の締結と受け渡し
購入希望者が内覧をして、条件に合意できれば契約を行います。売主は契約と同時に手付金を受け取ります。ここで知っておきたいのは契約をして手付金を受け取ったからといって「すぐに売却が完了するわけではない」ということです。
買主がローンを組んで購入する場合は、金融機関と契約をしてから融資が実行されるまで約2週間から1ヵ月程度かかります。
受け渡しが完了するのは融資実行の当日になります。融資実行日は所有権の移転や売主の抵当権抹消、買主の抵当権設定などが同時に行われます。
全体的な流れを確認しましょう。一般的には以下の流れで売却をします。
- 不動産会社に相談
- 簡易査定
- 訪問査定
- 募集広告を出す
- 購入希望者が物件を内覧
- 条件が合意すれば契約し売却
自分で売却価格を決めて売りに出すことはできる?
不動産を売却する際、不動産会社を通すと仲介手数料が発生します。そのため、不動産会社に相談をせずに自分で価格を決めて売りに出すことはできないのだろうか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。
もちろん自分で価格を決めて売却をすることはできますが、かなり難易度が高くなります。
というのも、売却価格を裏付ける説明が必要になりますし、個人だと不動産会社が使っている「レインズ」という情報ネットワークで広告を出すことができないからです。また、売買契約書や重要事項説明書などの書類を作成しなければいけませんし、登記などの法的手続きも必要になります。
特に面倒なのは買主とのトラブルが起きた場合です。売主にトラブルの原因があった場合、賠償責任が発生することもあります。不動産取引ではとても大きな金額が動きますので、一旦トラブルになると大きな問題に発展しがちです。
このような点を考慮した場合、不動産会社であれば専門的な知識がありますし、契約手続きにも慣れていますので、手数料を支払ってでも不動産会社に仲介を依頼した方がメリットは大きいと言えます。
自分で不動産を売却する際のメリットとデメリットをまとめました。
比較項目 | 自分で売却する | 不動産仲介会社に任せる |
---|---|---|
コスト | 〇(仲介手数料が不要) | ×(仲介手数料・広告料が発生) |
集客 | ×(すべて自分で行う) | 〇(レインズ、不動産サイトなどに掲載) |
値付け | △(自分で決める。根拠の説明が必要) | 〇(確かな根拠をもとに値付けしてくれる) |
リスク | ×(法的リスク大、トラブル対応困難) | 〇(法的知識があり、トラブルも回避できる) |
手間 | ×(契約・登記など諸手続きが面倒) | 〇(ほとんどお任せでOK) |
不動産の査定依頼はどのようにすればよいか
不動産売却の査定には「簡易査定」と「訪問査定」があることには触れました。では、最初に行う「簡易査定」はどのように依頼すれば良いのでしょうか。
依頼する際のポイントは、複数の不動産会社に依頼をするということです。1社だけだと査定価格が本当に合っているのかどうかがわかりません。複数の不動産会社に物件の概要や間取り、契約書などの資料を持ちこみ、査定を依頼するという流れになります。
ただ、複数の会社に依頼する場合、自分で各社に依頼して回るのは時間がかかりますし、不動産会社によって賃貸管理はしているが売買はしていない、といった会社もありますので、不動産会社を見分けたり、探したりするのに手間や時間がかかります。
そこでご紹介したいのが不動産一括査定サイトです。不動産一括査定サイトなら一度物件情報などを入力すれば複数の不動産会社にその情報が送られるため、簡単に複数社の査定結果が得られます。その中から話を進めても良さそうな会社に訪問査定を依頼する流れになりますので、非常に効率的です。
何社くらいに不動産査定を依頼すれば良いか
不動産売却の査定は3社以上に依頼することをおすすめします。先ほど触れた通り、査定価格が適正かどうかを正確に判断するためです。
とはいえ、あまり多くの不動産会社と接点を持っても、時間を多く取られてしまいますので、3社から多くても6社くらいがスムーズに話を進められる数だと言えるでしょう。
訪問査定で不動産会社がチェックする点
簡易査定から訪問査定に移行する際には、不動産会社が実際に物件を見に行きます。その時にチェックされる点は、不動産の劣化状態や駅からの距離、周辺環境などです。また資料では確認することができない日照状態や騒音、臭いなどもチェックされます。
加えて、再開発などで最近建てられた施設などは地図には載っていないケースがありますので、そのような建築物などが建てられていないかなどもチェックされます。
不動産査定の相場を知る方法
自分の所有している不動産の相場価格を知る、ということは買主との交渉などを考えた場合にとても大切なことです。買主から相場より高い、あるいは安い理由を聞かれたときに相場を知らずに慌てるようでは、交渉を優位に進めることが難しくなってしまいます。
ではどのようにすれば不動産の相場を知ることができるのでしょうか。
ネットの情報を活用する
インターネット上には多くの不動産情報サイトがありますので、そこで自分の物件に近いエリアや築年数などの情報で検索を行い、出てくる物件と自分の物件を比較することで相場を把握できます。
ほとんどの物件は査定された価格で広告を出していますので、条件が近い物件であれば同じような査定価格になることが予想されます。
また、レインズであれば、実際の成約事例を見ることができます。成約事例を掲載しているレインズは不動産会社ではなくても見られるようになっています。
不動産情報サイトを検索して見られる結果は「今売りに出されている物件」ですので、実際にいくらで売買されるかはわかりません。しかし取引事例は実際に成約した事例になりますので、実際にいくらくらいで売れそうかをシミュレーションするには適していると言えます。ぜひ確認してみましょう。
不動産一括査定サイトの価格を参考にする
不動産一括査定サイトを利用することで、複数の査定価格を見ることができます。最高値や最安値も知ることができますし、多くの不動産の価格を見ることでおおよその相場価格がわかります。
また、不動産一括査定サイトで提示された価格に、一般のネットで掲載されている情報を合わせて見ることで、より多くの情報の中から相場を把握することができます。
不動産一括査定サイトの代表的なサービスとして、「すまいValue」という一括査定サイトがあります。小田急不動産、東急リバブル、三菱地所の住まいリレー(三菱地所ハウスネット)、住友不動産販売、三井不動産リアルティ、野村不動産ソリューションズという大手不動産会社6社によって共同運営されており、利用者の95.5%が「安心感がある」と回答(※2019年4月1日~2022年3月31日にすまいValueで媒介した顧客を対象に行ったアンケート結果)しています。
すまいValueでは最大6社から不動産売却の提案を受けることができます。それぞれの会社に査定理由を確認することで、自分の物件の良い点・悪い点などが客観的に分かり、その後の売却の戦略も立てやすくなるというメリットがあります。
提案の中で気に入った会社があれば、本格的に売却を依頼してみると良いでしょう。
不動産の売却方法には仲介だけでなく買取もある
不動産の売却では、仲介会社に依頼をすることのほか、買取という手段もあります。仲介の場合、不動産を購入するのは不動産会社でなく第三者になりますが、買取は不動産会社が直接買い取ってくれるサービスとなります。
不動産会社は物件の買取をした後、リフォームなどをして再販します。不動産会社は買取価格と再販価格の差額が利益になりますので、一般的に買取価格は仲介の価格よりも20%から30%程度は低くなります。一方、売主にはすぐに現金化できたり、リフォームをしなくて良かったりする、といったメリットがあります。
不動産ローンの残債はいつ支払う?
不動産ローンの残債が残っている場合は、残債を完済してしまわなければ所有権の移転ができません。一般的には受け渡し日に、不動産を売却して買主から受け取った資金から返済をします。当日は金融機関に出向き手続きを行います。
ここで注意したいのは、金融機関が抵当権抹消の準備をするには2週間くらいかかりますので、金融機関への連絡が遅れると抵当権の抹消ができず、受け渡しができなくなることがあるということです。受け渡し日が決まったらなるべく早く連絡するようにしましょう。
不動産売却の流れの中で注意する点
不動産売却の流れについて、不動産会社への問い合わせから受け渡しまでを解説いたしました。ここからはより高い価格で売却するために注意しておきたい点について解説いたします。
3ヵ月ごとに募集広告の見直しをする
募集広告を出した場合、一般的には3ヵ月くらいで引き合いがあると言われています。もし引き合いがない場合はよほど築年数が古いか、価格が相場とあっていない、あるいは募集広告の内容が良くないことなどが考えられます。
他にも、募集広告を長期間同じ内容で掲載すると、広告を見ている人から何か売れない理由があるのではないかと敬遠される可能性があります。
また、専任媒介契約という契約方式では契約期間が3ヵ月ですので、3ヵ月ごとに戦略を練り直すことがなるべく早く売却するためのポイントになってきます。販売価格の見直しや広告の内容など、不動産会社とよく相談して見直しを図っていきましょう。
不動産売却時にかかる税金がある
不動産を購入する際には不動産取得税および登録免許税がかかりますが、売却した際にも税金がかかる場合があります。売却した価格から取得した価格や取得した際にかかった経費などを引いて、プラスになる場合です。以下を確認しましょう。
課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
さらに、不動産を所有してから5年以内に売却した場合と、5年を超えて所有してから売却した場合で税率は変わります。以下を確認しましょう。5年以内の所有期間で売却した場合を短期譲渡所得と言い、5年を超えた場合を長期譲渡所得と言います。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 0.15 | 5% |
短期譲渡所得 | 0.3 | 9% |
*国税庁「土地や建物を売ったとき」から引用
この表から、所有してから5年以上保有したうえで売却した方が税率を抑えられることがわかります。売却する上での一つの戦略として取り入れると良いでしょう。
内覧には積極的に立ち会う
購入希望者が物件を内覧をする際には極力立ち会うようにしましょう。不動産会社の担当だけが購入希望者と会って人を介して話を聞くより、現場で購入希望者から直接話を聞いた方が意思疎通しやすくなります。また値引きの判断などもその場でできますので、購入を即決してもらえる可能性も広がります。
また、購入希望者の求めていることや購入したい理由を直接聞くことで、自分の物件の良い点や改善点を知ることができます。内覧にはなるべく立ち会って、購入希望者と直接話をすることが少しでも早く売却する上でのポイントになります。
まとめ
良い不動産であれば購入したいという人は多く存在します。売却したい不動産の情報をそういった人の目に届かせるまでには、価格査定をしたり、募集広告を作成したりという手順があります。
本当に査定した価格で売れるのか不安になることもあるかもしれませんが、スムーズに売却をするためには、必要な書類を早めに準備したり、定期的に募集広告の内容を見直したりするなどの工夫をすることが大切です。売却の際は流れを一通り確認し、その時何をすればよいかを考えて行動するようにしましょう。
西宮光夏
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