フィリピンは人口の増加と経済の発展が著しい新興国の一つです。今後不動産市場がますます活性化していくと予想し、成長性が大きい市場でキャピタルゲインを狙った投資を検討している人も多いのではないでしょうか。
しかし、フィリピン全体では不動産価格は上昇していますが、エリアごとに住宅タイプ別の価格推移を比較していくと、首都圏とそれ以外のエリアとで状況は大きく異なります。
首都圏では特にコンドミニアムが値上がりしている一方、首都圏以外のエリアでは、コンドミニアム以外のタイプが特に大きく値上がりしている状況です。
この記事では、首都圏とそれ以外のエリアとで、タイプ別の住宅価格推移について解説します。
目次
1.フィリピン全体の不動産価格推移
フィリピン全体の不動産タイプ別不動産価格指数の推移は、以下グラフのようになっています。
※フィリピン中央銀行「Residential Real Estate Price Index (RREPI)」を参照し、筆者作成
不動産全体では、2016年第1四半期に106.9だった価格指数が2020年第1四半期に134.9まで上がっており、4年間で約1.26倍に上がっていることが分かります。
不動産タイプ別に価格指数の推移を見ると、どのタイプも2016年から2020年までの間に値上がりしていますが、戸建は上がり幅が最も小さくなっています。戸建の価格指数は、ほとんどの時期を100前後で推移しており、2020年の第1四半期だけ110を超えています。
戸建は唯一不動産全体の価格指数を下回っているので、タイプ別に見ると、フィリピン国内では戸建が比較的割安な物件タイプであると言えるでしょう。
一方、物件タイプ別の価格指数で最も上昇幅が大きかったのはコンドミニアムです。コンドミニアムの価格指数は、2016年第1四半期には123.2でしたが、2020年第1四半期に179.5となりました。
フィリピン全体では、コンドミニアムの価格が4年間で約1.5倍になっています。また、2014年第1四半期と比較すると、約1.8倍まで上がった計算になります。
なお、デュープレックス(=2戸の集合住宅)も2020年第1四半期の価格指数が167.3で、2016年第1四半期から比較すると約1.46倍、2014年第1四半期から比較すると約1.7倍になりました。
そしてタウンハウス(=長屋式の集合住宅)の価格指数は2020年第1四半期が141.8で、2016年第1四半期から比較すると約1.32倍、2014年第1四半期から比較すると約1.4倍に上がっています。
フィリピンでは、戸建に関してはそれほど価格が変わっていない一方で、集合住宅に関してはこの6年間で価格が大幅に上がっている状況です。
2.フィリピン首都圏の不動産価格指数推移
つづいて、フィリピン首都圏(NCR)のタイプ別不動産価格指数について解説します。首都圏とは、マニラを中心とした行政区であり、以下地図における赤枠内の範囲を指しています。
※引用:Google Map
フィリピン首都圏の不動産タイプ別不動産価格指数の推移は、以下グラフのとおりです。
※フィリピン中央銀行「Residential Real Estate Price Index (RREPI)」を参照し、筆者作成
首都圏では、タイプ別の価格動向が、フィリピン全体よりもかなり明確に分かれています。2020年第1四半期の価格指数が100を超えているのはタウンハウスとコンドミニアムで、戸建とデュープレックスについては、価格指数が100を割り込んでいます。
また、特に戸建に関しては、2016年から2020年まで常に価格指数が100以下となっており、2014年と比較すると価格が下がっている状態です。2020年第1四半期の価格指数は82.2で、2割ほど下がっています。
デュープレックスは上下動が激しく、大半の期間で価格指数が100を下回っており、2020年第1四半期の価格指数は78.8です。
タウンハウスは、2018年末に約120まで価格指数が上がりましたが、2020年第1四半期では110.5となっており、2014年からの値上がり幅は10%程度にとどまっています。
他の3タイプとは違い、コンドミニアムは特に値上がり傾向が顕著です。2020年第1四半期のコンドミニアム価格指数は187.2で、2014年初から6年間で約1.9倍まで値上がりしました。2016年第1四半期と比較しても、約1.5倍となっています。
不動産全体の価格指数は2020年第1四半期時点では156.7で、2014年から約1.6倍、2016年から約1.38倍まで上がりました。しかし、タイプ別の価格指数動向を確認すると、コンドミニアムの価格上昇が非常に大きな要因となっていると言えるでしょう。
3.フィリピン首都圏以外の不動産価格指数推移
つづいて、フィリピン首都圏外におけるタイプ別不動産価格指数について解説します。首都圏以外のエリアでは、タイプ別の不動産価格指数は以下グラフのように推移しています。
※フィリピン中央銀行「Residential Real Estate Price Index (RREPI)」を参照し、筆者作成
首都圏以外のエリアでは、不動産全体の価格は2019年第2四半期頃までほぼ横ばいでした。2019年の後半から10%程度上昇しており、2020年第1四半期の価格指数は122.7となっています。
タイプ別に見ると、戸建はフィリピン全体および首都圏内と同じく不動産全体の価格指数を下回っています。戸建の2020年第1四半期価格指数は116.0です。2016年第1四半期は101.0だったので、4年間で15%程度値上がりしています。
一方、デュープレックスは首都圏と同じく値動きが大きくなっています。一番指数が低い時期で109となっていますが、2020年第1四半期には230.3まで上がっています。
フィリピンでは、デュープレックスは都心でも地方でも値上がりする可能性があるものの、あまり相場が安定しないのが特徴と言えるでしょう。
また、デュープレックスの次に値上がり幅が大きいのはタウンハウスです。タウンハウスは2020年第1四半期時点で価格指数が161.3となっており、2014年から約1.6倍・2016年から約1.4倍に値上がりしています。
首都圏外では、コンドミニアムは、デュープレックスやタウンハウスよりも値動きが小さくなっています。2020年第1四半期の価格指数は146.5で、2014年から約1.5倍、2016年から約1.28倍値上がりしました。
これらの数値から、首都圏以外の地域では、コンドミニアムよりもデュープレックスやタウンハウスの値動きが大きいということが分かります。
【関連記事】フィリピンで不動産投資を始めるメリットとデメリットは?手順も解説
まとめ
フィリピン全体で見ると、不動産価格は2014年から2020年までの間に約1.35倍値上がりしました。フィリピン全体で見ると、値上がり傾向が特に顕著なのはデュープレックスやコンドミニアムなどの集合住宅です。
しかし、首都圏と首都圏以外のエリアとで価格推移を比較してみると、状況は大きく異なります。
首都圏では特にコンドミニアムの値上がりが顕著で、2014年から2020年までの間に約1.9倍値上がりしたのに対し、戸建とデュープレックスは価格を下げています。タウンハウスも価格を上げていますが、上がり幅は大きくありません。
一方、首都圏以外のエリアでは状況が異なり、デュープレックスとタウンハウスの方がコンドミニアムよりも大きく値上がりしています。
フィリピンでキャピタルゲインを狙った不動産投資をするならば、首都圏とそれ以外のエリアとで違った戦略を立てるなど、エリアや状況に合わせた投資方法を検討してみましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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