駐車場付きアパート経営のメリット・デメリットは?エリア選びの注意点も

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アパートの物件選びでは「駐車場付き」の選択肢があります。日本国内では車離れが進んでいますが、その一方で、国土交通省からは1世帯の自動車保有台数は1台以上という発表もあり、車需要の見込めるエリアも少なくない状況と言えるでしょう。

そこで今回のコラムでは、駐車場付きアパートにはどのようなメリットとデメリットがあるのか、データも用いながら解説していきます。

目次

  1. 駐車場付きアパートのメリット
    1-1.入居者ニーズに応えられる
    1-2.駅から遠い土地でも入居者を確保できる
    1-3.ファミリー物件では駐車場が必須条件になることもある
    1-4.土地を有効活用できる
  2. 駐車場付きアパートのデメリット
    2-1.同じ敷地面積から得られる収入額は少ない
    2-2.経理作業に手間と労力がかかる
    2-3.駐車場管理のノウハウが必要になる
  3. 駐車場付きアパートの土地探しのポイント
  4. まとめ

1 駐車場付きアパートのメリット

この項目では駐車場が付いたアパートを経営する際のメリットについて解説していきます。

1-1 入居者ニーズに応えられる

国土交通省の「数字で見る自動車2021」によると、2020年3月末現在の1世帯あたりの自動車保有台数は1.39台、そのうち自家用乗用車は1.04台となっており、1世帯に自家用車が1台以上あるということです。

自家用車を持っている世帯にとって、駐車場の無い住宅での生活は不便なものとなります。車需要の多いエリアの世帯をターゲットとするのであれば、駐車場付きのアパート経営は有効な手段と言えるでしょう。

1-2 駅から遠い土地でも入居者を確保できる

アパートを建築する際や不動産投資を始める際には、「最寄り駅から近い物件」の重要性は高いと言えます。それは、駅から近いと通勤や通学するのに便利であり、スーパーやコンビニなどの生活利便施設も複数あって利便性が高いからです。

しかし、駅から近いエリアにばかり人が住むわけではありません。反対に「にぎやかなところは苦手」な人や、「車があるし、駅から遠くても大丈夫」という賃貸需要も少なからずあります。そうした入居者に対して訴求できるのが駐車場付きアパートです。

例えば、最寄り駅から遠い土地を親から相続して所有しているとします。この場合、利便性を求めている入居希望者を獲得することは難しいと判断し、入居者ターゲットを車の所有者に絞ることが戦略の一つとして考えられます。

駐車場を設けるのに加え、居室を広くしたり、また窓から見える眺望をよりよくするなどによって、駅から遠い土地にアパートを建てる場合でも入居者を獲得できるように工夫をすることができます。

1-3 ファミリー物件では駐車場が必須条件になることもある

内閣府が発表している「消費動向調査 令和3年3月実施調査結果」によると、二人以上の世帯の乗用車普及率と、100世帯あたりの保有数量は下記のように推移しています。

実施年月日 乗用車普及率 100世帯あたりの保有数
2017年3月 79.1% 125.2台
2018年3月 79.9% 128.4台
2019年3月 79.6% 126.3台
2020年3月 78.5% 125.7台
2021年3月 79.4% 126.9台

若干の増減はありますが、二人以上の世帯では約80%で自動車を保有しており、その台数は2台以上の世帯もあることを示しています。つまりファミリー向け物件を探している場合、車を手放そうというケースでなければ「駐車場付き(あるいは近隣に駐車場がある)」であることが必須条件となっていると考えられます。

駐車場付きのアパートは、二人以上の世帯が物件を探している際には駐車場のないアパートに比べて利便性が高く、選ばれる可能性があるということが言えるでしょう。

1-4 土地を有効活用できる

都市景観や都市計画の観点から、各自治体では住宅地や商業地といった用途地域を設けて土地の利用法を限定しています。その制限の一つに「建ぺい率」と「容積率」があります。これらは建てる建物に関する制限で、下記のようなルールがあります。

  • 建ぺい率…敷地面積に対して建築できる建築面積の割合
  • 容積率…敷地面積に対して建築できる延床面積の割合

つまり同じ敷地面積でも、土地に設定されている建ぺい率と容積率が異なると、建てられる建物の大きさが異なるのです。

例えば、敷地面積が100㎡の土地を所有していたとします。この土地の建ぺい率が60%であれば100㎡の土地のうち建物が建てられる面積は60㎡で、残りの40㎡には何も建てられないということになります。ただしこの場合、何も建てられない40㎡を駐車場にすることで、入居者の利便性を向上させつつ、土地の有効活用ができるということになります。

2 駐車場付きアパートのデメリット

アパートに駐車場を設けることで一定の需要はありますが、デメリットもありますので、この項目で見ていきましょう。

2-1 同じ敷地面積から得られる収入額は少ない

メリットの項目で、アパートに駐車場を設けると土地の有効活用ができると紹介しましたが、それは「建ぺい率で建物が建てられない敷地がある場合」という条件があります。単純に同じ敷地面積であれば、駐車場にするよりもアパートの居室を設けた方が土地から得られる収入額は多くなります。

100㎡の面積でアパートを建てる場合と駐車場を設ける場合の一例を見てみましょう。ここでは分かりやすいように建ぺい率や容積率を無視して解説しています。

  • 駐車場を設けた場合:10台分の駐車スペースができ、月額1万5000円で運用とすると、月額収入は15万円
  • 3階建てのアパートを建てた場合:15の居室ができ、家賃6万円で運用すると、月額収入は90万円

初期費用も含めると投資効率などは異なりますが、単純にひと月に得られる収入額で言えば駐車場にした方が低くなってしまうのです。

2-2 経理作業に手間と労力がかかる

同じ賃貸料として経理上は処理される「家賃」と「駐車場代」ですが、消費税の扱いは異なります。そのため経理業務を行う際には手間がかかり、デメリットと感じる可能性もあります。

家賃は非課税で、駐車場代には10%の消費税がかかります。そのため、居室と駐車場の両方を借りている入居者と、居室だけを借りている入居者から振り込まれる賃料は分けて処理することになります。

例えば、家賃10万円で駐車場が消費税込みで16,500円だとすると、下記のように分けて計上していきます。

  • 居室のみ:賃料10万円(非課税)として処理
  • 居室と駐車場:賃料8.4万円(非課税)+駐車場代16,000円(消費税10%)

日々の経理業務や確定申告、消費税の納税などに影響がありますので、手間や労力が増えることになるのです。

2-3 駐車場管理のノウハウが必要になる

アパート管理を管理会社に委託する場合、駐車場管理が適切に行われない可能性もあります。それはアパート管理には実績があっても、駐車場管理には慣れていないケースもあるからです。稀に「駐車場管理はできない」と断られることもあります。

また駐車場を設けることで、新たに発生するトラブルがあります。代表的なものを下記に挙げました。

  • 無断駐車
  • 車両放置
  • 盗難や窃盗
  • 敷地内のごみ投棄
  • 駐車している自動車の破損
  • 敷地内での事故

このようなトラブルが起きた際には適切な対処をしなければなりません。管理会社に任せることもできますが、オーナーとして駐車場管理についての知識を獲得することも必要です。

3 駐車場付きアパートの土地探しのポイント

これまで紹介してきたメリットとデメリットを踏まえて、駐車場付きのアパート経営を行う際は下記の点に注意して物件を選ぶようにしましょう。

  • 広い敷地面積がある(1階に駐車場を設ける方法もある)
  • 学校や公園の近くなどファミリー層が多いエリアを選ぶ
  • 土地の有効活用を考えるのであれば建ぺい率が低いエリアを選ぶ
  • 道路事情の良い場所を選ぶ
  • 自動車の保有台数が多い地域を選ぶ

例えば、一般財団法人自動車検査登録情報協会が発表した「都道府県別の自家用乗用車の世帯あたり普及台数(2020年3月末時点)」によると、順位の上位と下位は下記のようになっています。

1位~5位(都道府県別の自家用乗用車の世帯あたり普及台数)

順位 都道府県 世帯あたりの保有台数
1位 福井県 1.715台
2位 富山県 1.660台
3位 山形県 1.654台
4位 群馬県 1.602台
5位 栃木県 1.581台

43位~47位(都道府県別の自家用乗用車の世帯あたり普及台数)

順位 都道府県 世帯あたりの保有台数
43位 兵庫県 0.899台
44位 京都府 0.810台
45位 神奈川県 0.689台
46位 大阪府 0.633台
47位 東京都 0.422台

都道府県別に自家用車の保有率が異なるため、駐車場付きのアパートに対する需要も異なります。例えば、福井県や富山県でアパート経営をするのであれば、駐車場付きアパートの賃貸需要が多く見込め、東京都や大阪府などの大都市圏では駐車場付きのアパートの需要があまりないとも考えられます。

しかし、上記の順位は都道府県という大きなエリアの枠組みで調査されたものであり、エリアを細かく見てみると実態が大きく異なるということも考えられます。例えば、東京都の最も保有台数の多いエリアと、福井県のもっとも少ないエリアを比較した場合、どのような結果になるのかということは上記の表からは判断ができません。

不動産投資のエリア選定では、大きな枠組みの市場傾向を参考としつつも、ミクロの視点で投資判断を行うことも重要なポイントとなります。また、保有台数が多いエリアがアパート経営に適しているかどうか、ということについて、別の視点での判断が必要となってきます。

アパート経営を行う際は、「駐車場付き」「駐車場無し」などのように二元論的に検討するだけではなく、ターゲットの絞り込みと実態の賃貸ニーズの調査から検討してみると良いでしょう。

例えば、賃貸用アパートの開発・販売を手掛ける「アイケンジャパン」では、入居者が入り続けるエリアや土地を厳選し、建物には入居者のターゲットである「社会人女性」がよろこぶ充実の設備を標準搭載することで、入居率99%以上という実績があります。(※2020年6月時点、アイケンジャパンが企画開発を手がける物件の入居率)。

アパート経営は短期的な投資手法ではなく、長期運用を行って徐々に資産の増加を目指す運用方法です。購入時点のニーズだけでなく、長期的な視点を持って、エリア選定を行うことも重要なポイントとなってきます。まずは不動産会社から、土地に合わせたアパート経営のシミュレーションの提案を受けてみることを検討されてみるのも良いでしょう。

【関連記事】アイケンジャパンのアパート経営、メリットやリスクは?オーナーの口コミを分析

まとめ

今回紹介した以外にも、駐車場を設けた方が初期費用が抑えられるなどのメリットがある一方、部屋が満室なのに駐車場に空きが出てしまった場合の対処法が難しい、などのデメリットもあります。

全国的に見ると自動車の保有台数は1世帯に1台以上あり、駐車場付きアパートには需要があるように思えます。しかし、地域によって需要が異なることが多く、地域特性などによる判断が欠かせません。

地域のことに詳しい不動産会社やアパートメーカーなどからアドバイスを受けるなどして、総合的な視点から判断するようにしましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。