長期的な投資方法である不動産投資では、空室リスクや物件価格の下落リスクなどを下げるために、過去の人口や不動産価格の推移を調査し、現時点での収益だけでなく将来の収益を予測することが重要です。
しかし、国内と違って情報を取りづらい海外不動産投資では、なるべくリスクを下げるためにはどの国で投資すればいいのかわからないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、投資先として選択できる国ごとに、人口と不動産価格指数データの動向を解説します。海外不動産投資の投資先に悩まれている方はご参考下さい。
目次
- 海外不動産投資、各国の人口および不動産価格指数推移
1-1.アメリカの人口と不動産価格
1-2.オーストラリアの人口と不動産価格
1-3.マレーシアの人口と不動産価格
1-4.フィリピンの人口と不動産価格 - まとめ
1.海外不動産投資、各国の人口および不動産価格指数推移
海外不動産投資先の中でも、先進国と新興国とに分けて人口および不動産価格指数の推移を解説します。
1-1.アメリカの人口と不動産価格
アメリカは世界最大クラスの先進国ですが、増加率は小さいながらも確実な人口増加を続けています。2015年以降におけるアメリカの人口推移は以下グラフの通りです。
※参照:US Census Bureau
なお、毎年の人口増加率を計算すると、以下の表のようになります。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
---|---|---|---|
0.53% | 0.80% | 0.44% | 0.33% |
アメリカの人口はすでに3億2,000万人を超えていることもあり、人口増加率自体はそれほど高くありません。過去に人口増加を続けてきたのは、世界中から移民を受け入れているためです。
2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、移民の受け入れ数が減少しているとの報道もあります。アメリカの人口増加ペースは、新型コロナウイルス感染症などの外的な要因を受けやすいと言えるでしょう。
次に、アメリカの住宅価格指数についてですが、こちらは2020年まで階段状に上昇してきました。しかし、2020年以降は上昇のペースが上がっています。上昇のペースが上がったのは、新型コロナウイルス感染症拡大による経済のダメージ軽減を狙いとして、政策金利が引き下げられたためです。(参考:セントルイス連邦準備銀行)
政策金利の引き下げによって住宅ローン金利も下がったため、2020年のアメリカでは住宅需要が大きく拡大しました。その一方で、アメリカの不動産マーケットでは中古住宅が大半を占めていることもあり、住宅の供給量はそれほど増えていません。需給バランスが崩れた結果、アメリカの住宅価格は過去最高のペースで上昇しました。
アメリカの住宅価格が急激に上昇したのは、人口増加による需要の拡大が原因ではなく、新型コロナウイルス感染症拡大という一過性の要因が強かったと言えます。
州ごとに状況は異なるものの、不動産マーケットが成熟しているアメリカでは、急激な住宅価格の上下動は起こりにくいのが実態です。しかし、2019年以前の値動きを見ても、住宅価格が下落している局面はほとんど見当たらないことから、アメリカ不動産は比較的低リスクと考えられます。
【関連記事】【7分で分かる】アメリカで不動産投資を始めるための10のステップ
1-2.オーストラリアの人口と不動産価格
オーストラリアも着実に人口増加を続けてきましたが、2020年の下半期には人口が減少に転じています。オーストラリアにおける四半期ごとの人口推移は以下グラフの通りです。
※参照:オーストラリア政府統計局
オーストラリアもまた、移住者の受け入れ数が多い特徴を持った国です。2020年の第3四半期は4,200人の人口を減らしており、第2四半期との比較では0.02%の減少幅となりました。
なお、前年同期比では約22万人の人口が増加していますが、増加した人口のうち約39%は海外からの移住者でした。自然増加の割合は約60%に止まっています。オーストラリアの人口も、世界情勢など外的要因の影響を受けやすい点が特徴的です。
日本では政府が移民の受け入れを認めていない一方、海外に目を向けると、移民の受け入れに積極的な先進国は少なくありません。アメリカやオーストラリアなど移民を受け入れている国では、平常時は人口増加の傾向が強いものの、有事の際には増加傾向が弱まる点に要注意です。
オーストラリアの主要8都市における住宅価格指数推移は以下のグラフの通りです。
※参照:オーストラリア政府統計局
オーストラリアの主要8都市には、以下の都市が含まれます。
- シドニー
- メルボルン
- ブリスベン
- アデレード
- パース
- ホバート
- ダーウィン
- キャンベラ
過去6年間における住宅価格指数の推移を見ると、長期的には上昇傾向があるものの、上昇時期と下降時期とが明確に分かれている様子が伺えます。下降していた時期は2018年から2019年上半期にかけてであり、新型コロナウイルス感染症が拡大する前です。
同時期に人口は増加を続けていましたが、住宅価格は下落していたことになります。また、その後2020年第3四半期は人口が減少していますが、住宅価格は下落していません。オーストラリアでは人口推移と住宅価格とがあまり関連していない様子が伺えます。
オーストラリアで不動産投資を検討するのであれば、市場動向に関するリスクを見極めるためには、現地の不動産エージェントにアドバイスをもらうなど、最新の現地情報を収集することが重要です。
1-3.マレーシアの人口と不動産価格
マレーシアでは、人口増加傾向が続いているものの、2018年以降は増加の勢いが弱まっています。マレーシアの人口推移は以下グラフの通りです。
※参照:マレーシア政府統計
また、マレーシアにおける2016年以降の人口増加率は以下の表の通りです。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|
1.43% | 1.23% | 1.12% | 0.43% | 0.41% |
マレーシアの人口増加率は年々低下しており、2019年以降は人口増加率が1%を切っていることがわかります。2021年時点では、マレーシアはまだ新興国の部類に入りますが、すでに中進国とも言える状況になっており、周辺諸国と比較すると社会が成熟に向かっていることが伺えます。
2021年以降も人口増加率の下落が続くか、0.4%前後で落ち着きを見せるかは不透明ですが、今後大幅な人口増加は見込めない可能性もあります。なお、マレーシアの住宅価格指数は以下のように推移しています。
※引用:マレーシア政府統計局
2010年以降、マレーシアの住宅価格指数は毎年上昇していますが、上昇幅は2012年以降段階的に縮小しています。また、マレーシアでは住宅の供給過剰が社会問題化しており、過去数年にわたって政府が対策に乗り出していますが、2021年初頭の時点ではまだ解決に至っていません。
供給過剰状態が解消すれば、マレーシア不動産は再び上昇傾向を強める可能性もあります。しかし、新型コロナウイルス感染症が収束の兆しを見せない2021年5月時点では、先行き不透明となっています。
マレーシアの不動産市場は供給過剰という独自の問題点を抱えているため、東南アジアの新興国の中では先行き不透明感が強く、リスク判断が難しいと言えます。
1-4.フィリピンの人口と不動産価格
フィリピンは、発展著しい東南アジアの中でも特に人口増加の勢いが強い国です。フィリピンの人口推移は以下のグラフの通りとなっています。
※参照:フィリピン政府
フィリピンの人口は、これまで解説した各国と比較して最もきれいな右肩上がりで推移しています。なお、毎年の人口増加率は以下の表の通りです。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|
1.68% | 1.60% | 1.52% | 1.45% | 1.38% |
フィリピンの人口増加率も下落を続けてはいますが、5年間の下落幅は0.3%とまだ軽微な下落で済んでいます。
また、アメリカのCIAが発表している統計によると、フィリピンの年齢中央値は2020年の予測値で24.1歳とまだ若いのが特徴的です。フィリピンでは今後まだ人口増加が長期間にわたって継続すると予測されています。(※参照:CIA)
フィリピンにおける4半期ごとの住宅価格指数推移は以下のグラフの通りです。
※参照:フィリピン中央銀行
フィリピンの住宅価格指数は2019年以降動きが非常に大きくなっている点が特徴的です。2020年第2四半期は新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大した時期ですが、フィリピンの住宅価格指数は過去最高値を記録しました。その後、第3四半期には再び第1四半期と同水準まで下落しています。
2020年に大幅な上下動を見せたのは、REIT市場が海外向けにも開放されるなど、規制緩和が進んだことも原因と考えられます。フィリピンの不動産市場には中国・韓国系の資本が多く流入しているため、規制緩和の動きに合わせて投機的な値動きをしたとも言えるでしょう。
フィリピン不動産投資は、人口増加などを鑑みるとリスクが低いと言えますが、投機的な値動きをすることもあるので要注意です。
【関連記事】フィリピン不動産投資、日本人が所有できる物件の種類や特徴は?
まとめ
比較した4カ国の中で住宅価格指数の動向を鑑みると、アメリカは最もリスクが低いと考えられます。
アメリカの人口推移には移民頼みの側面もあります。しかし、人口増加を続けているほか、新築住宅が供給されにくい不動産マーケットの背景も相まって、急激な値動きをしにくい環境が整っていると言えるでしょう。
反対に、オーストラリアでは2020年に人口が減少する時期もあったほか、住宅価格指数も上下動を繰り返しており、値動きが大きい特徴が見て取れます。オーストラリアでは、慎重に情報収集を進めないと価格下落のリスクが高まる点に要注意です。
また、不動産は個別性の高い資産であり、全体的に上昇傾向にあったとしても実際の投資物件のエリアや築年数、収益性によって投資のパフォーマンスは大きく異なります。今回ご紹介したような全体傾向も投資判断の参考にしつつ、投資案件ごとに詳しく調査し、慎重に検討していきましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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