2015年に北陸新幹線が開通して県庁所在地でもある古都・金沢をはじめ首都圏からも行きやすくなった石川県ですが、不動産投資をするにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
今回のコラムでは、この石川県の人口や地価、さらに家賃の推移を検証し、不動産投資を始めるメリットとデメリットについて解説していきます。
目次
- 石川県の不動産投資に関する基本情報
1-1.石川県の人口推移
1-2.石川県の地価推移
1-3.石川県の家賃推移 - 石川県で不動産投資を始めるメリット
2-1.大学が多く学生向け物件の需要がある
2-2.住みやすい環境でファミリー層の需要もある - 石川県で不動産投資を始めるデメリット
3-1.石川県景観計画に基づく届出が必要になる
3-2.湿気対策など建物管理への配慮が必要になる - まとめ
1 石川県の不動産投資に関する基本情報
この項目では、石川県で不動産投資を始める前に確認しておきたい、人口推移と地価推移、さらには家賃相場の推移についてデータを紹介していきます。それぞれ詳しく見て行きましょう。
1-1 石川県の人口推移
不動産投資で重要なのが入居者の賃貸需要があるかどうかという点です。そこで、石川県の人口がどのように推移しているのか、総数を表にしました。
集計年月日 | 人口総数 |
---|---|
2000年10月1日 | 1,180,977人 |
2003年10月1日 | 1,179,168人 |
2008年10月1日 | 1,169,167人 |
2013年10月1日 | 1,159,015人 |
2017年10月1日 | 1,147,447人 |
2018年10月1日 | 1,142,965人 |
2019年10月1日 | 1,137,181人 |
2020年10月1日 | 1,132,526人 |
2021年10月1日 | 1,125,914人 |
2022年4月1日 | 1,118,405人 |
※参照:石川県いしかわ統計指標ランド「石川県の人口と世帯(毎月)」より抜粋。
石川県では人口減少が長く続いており、最新のデータである2022年4月1日の推計人口は1,118,405人となっています。2000年10月1日からの減少は約6万人となっています。
1-2 石川県の地価推移
次に不動産投資をするために必要な土地の価格推移を見ていきます。下記は、石川県が公表している地価公示の住宅地の平均地価を表にしたものです。
集計年月日 | 住宅地の平均価格 |
---|---|
2018年1月1日 | 50,100円 |
2019年1月1日 | 51,600円 |
2020年1月1日 | 53,400円 |
2021年1月1日 | 54,100円 |
2022年1月1日 | 55,100円 |
※出典:石川県企画振興部企画課土地対策グループ「地価調査・地価公示について」より抜粋
表を見てみると県全体の地価は上昇傾向が続いており、2018年から2022年までの5年間で10%ほど上昇しています。
1-3 石川県の家賃推移
次に家賃相場を見ていきましょう。国土交通省が公表している「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点の1カ月の家賃・間代は44,888円となっています。
全国平均よりも低くなっていますが、北陸4県では新潟県に続いて2番目の高さです。1畳当たりの家賃・間代(1カ月)も新潟県に続いて2番目になっています。
都道府県 | 家賃・間代(1カ月) | 1畳当たりの家賃・間代(1カ月) |
---|---|---|
東京都 | 81,001円 | 5,128円 |
新潟県 | 45,038円 | 2,472円 |
富山県 | 42,992円 | 2,350円 |
石川県 | 44,888円 | 2,431円 |
福井県 | 42,374円 | 2,224円 |
全国平均 | 55,695円 | 3,074円 |
※出典:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」より抜粋
家賃相場の増減についても確認していきましょう。下記は2008年、2013年、2018年時点での、北陸4県の「1か月当たり家賃・間代」を「土地統計調査」から抜粋したものです。
都道府県 | 2008年 | 2013年(増減数) | 2018年(増減数) |
---|---|---|---|
新潟県 | 41,974円 | 43,635円(104.0%) | 45,038円(103.2%) |
富山県 | 42,820円 | 43,706円(102.1%) | 42,992円(98.3%) |
石川県 | 44,348円 | 43,759円(98.7%) | 44,888円(102.6%) |
福井県 | 43,126円 | 43,342円(100.5%) | 42,374円(97.8%) |
※出典:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」「平成25年住宅・土地統計調査」「平成20年住宅・土地統計調査」より抜粋
2008年から2013年にかけては下落したもの、2013年から2018年にかけては102.6%の上昇になっています。2008年の水準よりもわずかながら上昇しています。
2 石川県で不動産投資を始めるメリット
人口は減少傾向が見えるものの、全体の土地価格は上昇しているのが石川県の特徴です。この石川県で不動産投資を始めるメリットについて解説していきます。
2-1 大学が多く学生向け物件の需要がある
石川県には金沢大学をはじめ14の大学が設置されており、「令和3年(2021年)版石川100の指標」によると人口当たりの大学数が全国2位の学都となっています。下記は北陸4県の大学数の数と学生数の数です。
都道府県 | 大学設置数 | 学生数 |
---|---|---|
新潟県 | 21校 | 32,050人 |
富山県 | 5校 | 12,157人 |
石川県 | 13校 | 32,059人 |
福井県 | 6校 | 11,249人 |
※出典:文部科学省「文部科学統計要覧(令和3年版)」より抜粋
「文部科学統計要覧(令和2年版)」によると、石川県の大学在学生は31,384人となっており、「文部科学統計要覧(令和3年版)」では約700人増えていることが分かります。
石川県では人口が減少している一方、学生の数は増えており、大学近くでは賃貸需要が増加していると推測できます。大学の近くの物件であれば学生向けにターゲットを絞りやすく、不動産投資に参入する際の一つの選択肢と言えるでしょう。
2-2 住みやすい環境でファミリー層の需要もある
石川県統計分析グループの「令和3年(2021年)版石川100の指標」では、下記のような子育てしやすい環境が広がっていることが報告されています。
- 女性就職率(女、就業者/15歳以上人口):全国2位
- 児童福祉施設定員数:全国5位
- 病院病床数(人口10万人当たり):全国13位
- 防災士認証登録者数(人口10万人当たり):全国4位
石川県ではファミリー向けの環境整備が整っており、ファミリー層向けの物件の供給にも向いていると推測できます。細かくエリアごとの特徴を見ていくことで、単身者だけでなくファミリー層向けの不動産投資も選択肢に入ってくることが分かります。
3 石川県で不動産投資を始めるデメリット
一方、石川県で不動産投資を始める際に、気を付けておきたいデメリットやリスクについても解説していきます。
3-1 石川県景観計画に基づく届出が必要になる
石川県の県庁所在地である金沢市周辺は加賀藩前田家の城下町として栄えましたが、大きな戦災を受けなかったため歴史的建造物や古都ならではの街並みが今でも残っているエリアの一つです。こうした良好な景観を維持するため、石川県全域で「いしかわ景観総合計画」を策定しています。この計画によって地域の特性に合わせた景観形成の方針を立てており、それに合わせて規制や誘導を行っています。
具体的には、屋根の勾配や壁面、色彩、屋外設備などに対する基準が設けられているケースがあるほか、景観計画区域によって異なりますが、高さ13m(4階程度)や高さ10m(3階程度)以上などの建築物を建築する場合は届出が必要になります。
新たにアパートなどの物件を建てて不動産投資を始めるケースでは、これらの景観条例について適切に対応してくれる不動産会社やアパートメーカーなどの協力が必要になります。オーナーの意向や嗜好で進められないことも考えられ、この点はデメリットとなる可能性があります。
3-2 湿気対策など建物管理への配慮が必要になる
石川県の冬は日照時間が少なく、冬の湿度が高いのが気象上の特徴です。
都道府県 | 1月 | 2月 | 3月 |
---|---|---|---|
北海道札幌 | 69% | 68% | 65% |
宮城県仙台 | 66% | 64% | 61% |
東京都東京 | 51% | 52% | 57% |
石川県金沢 | 74% | 70% | 66% |
大阪府大阪 | 61% | 60% | 59% |
福岡県福岡 | 63% | 62% | 63% |
※出典:気象庁「過去の気象データ検索 平年値(年・月ごとの値)相対湿度1991〜2020」より抜粋
上記の表を見て分かる通り、北海道札幌、東京都東京、宮城県仙台、大阪府大阪、福岡県福岡などに比べて1月から3月までの湿度が高くなっています。
このような湿気の多さに加えて冬は降雪や積雪があり、換気をしないという事情もあるため、冬でもカビが発生することがあります。そのため賃貸用物件のオーナーとしては冬場の寒さに加えて湿気対策やカビ対策も必要で、建設費は高めになる可能性があります。また物件を運営している期間は、建物管理を丁寧に行うことも求められると言えるでしょう。
表面利回りが高い物件でも、これらの対策のための費用や修繕費がかかり、キャッシュフローを圧迫している可能性もあるため注意が必要です。中古物件の購入を検討する際は、これらのランニングコストにも注意を払い、検証していきましょう。
まとめ
石川県で不動産投資を始めるには、学生やファミリー層もターゲットになるため選択肢が多いのが特徴です。しかし景観条例や気象条件などに対する対策が必要になります。
石川県で不動産投資を始めるには、こうした地元の特性を把握している不動産会社の協力を得ることも検討されてみると良いでしょう。月々のランニングコストや周辺の家賃相場の調査など、細かな情報についても確認していくことが大切です。
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倉岡 明広
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