不動産投資における収入は、家賃収入などのインカムゲインと物件を売却した際のキャピタルゲインの2つあります。
不動産投資におけるキャピタルロスとは、売却時に損失が出ることです。不動産の建物部分は経年劣化して徐々に資産価値を減少していくため、不動産投資を始める際はキャピタルロスのリスクについても慎重に検証していくことが重要になります。
今回のコラムでは、不動産投資におけるキャピタルロスについて取り上げて解説して行きます。不動産投資を検討している方、出口戦略について悩む方はご参考ください。
目次
- 不動産投資におけるインカムゲインとキャピタルゲイン
- 不動産投資におけるキャピタルロス
- キャピタルロスを回避するための対策方法
3-1.土地価格が下落しないエリアを選ぶ
3-2.物件の資産価値を下げない
3-3.購入と売却のタイミングを考える - まとめ
1 不動産投資におけるインカムゲインとキャピタルゲイン
「インカムゲイン(Income Gain)」と「キャピタルゲイン(Capital Gain)」は、資産を運用する際の専門用語であり、投資によって得られる利益のことです。不動産投資だけでなく、株式投資や投資信託といった資産運用の方法でも、原則としてインカムゲインとキャピタルゲインが発生します。
具体的な違いは下記のように説明できます。
- インカムゲイン…資産を保有していることで得られる利益
- キャピタルゲイン…資産を売却することで得られる利益
株式投資でインカムゲインに相当するのが配当で、株を売却した際の購入金額との差益がキャピタルゲインとなります。一方、不動産投資の場合は、賃料収入がインカムゲイン、物件を売却したときの差益がキャピタルゲインです。
不動産投資におけるインカムゲインの特徴は、毎月決まったタイミングで決まった収入があることです(空室時は除く)。これに対してキャピタルゲインは不動産を売却する必要があり、継続的に狙うことの難しい収入になります。
また、キャピタルゲインは必ずしも得られるものではなく、損失が出ることがあります。それがキャピタルロス(売却損)です。
2 不動産投資におけるキャピタルロス
不動産投資の場合、不動産を売却して生じる譲渡所得を求めることで、売却益が生じたかどうかが分かります。計算式は下記のようになります。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)-特別控除
この譲渡所得における取得費は、次のように計算します。
取得価格+取得の際要した費用+取得後の改良費-減価償却費(建物の場合のみ)
この計算によって譲渡所得がプラスであればキャピタルゲイン(売却益)、マイナスであればキャピタルロス(売却損)が生じているということになります。つまり、不動産投資を行う場合、インカムゲインとキャピタルゲインの両方によるトータル収支で検証することが大切です。
例えば、インカムゲインが毎年100万円ある物件を10年間運用した場合、トータルでのインカムゲインは1,000万円となります。一方、3,000万円で購入した物件が10年後の売却価格が2,000万円となっている場合、トータル収支はゼロ円ということになります。
なお、建物の劣化がひどかったり、周辺エリアの賃貸需要が減少しているなどで売却価格が1,000万円まで下がると、トータル収支はマイナス1,000万円になります。つまり売却価格によってキャピタルロスが起きると、経営状態に大きな影響が及ぶ可能性もあります。
不動産投資を行う際は月々のインカムゲインも重要なポイントとなりますが、物件の資産価値の推移にも気を配り、トータル収支で考えてキャピタルロスを防ぐような対策をすることがより良い経営につながります。
3 キャピタルロスを回避するための対策方法
不動産投資でキャピタルロスが起きてしまう大きな要因は、経年劣化や賃貸需要の減少などにより物件の資産価値が下がることです。
不動産投資では実物資産を所有して、家賃収入を得るビジネスモデルです。実物資産である建物は経年劣化していくため、株式のような金融資産とは異なり、原則的には資産価値の低下が起こりやすい資産と言えます。
このようなキャピタルロスを回避して売却益を狙うにはどのような方法があるのか、下記に3つの対策方法を紹介しますので、参考にしてください。
3-1 土地価格が下落しないエリアを選ぶ
建物の価格は経年によって下落していきますが、土地価格は需要が増加すると上昇していきます。つまり、土地価格が下落しにくい場所の物件を所有することが、売却時にキャピタルゲインを得られる条件の一つになります。
土地価格の下落が起きにくいエリアとして、主には下記のような特徴が挙げられます。
- 人口が今後も増える見込みがある
- 用途制限が少なく利用しやすい土地形状である
- 周辺地域で再開発計画がある
- 一等地、超一等地など元々土地価格が高額、など
3-2 物件の資産価値を下げない
建物の経年劣化をできるだけ防ぐのも、資産価値を下げない方法の一つです。代表的な方法は定期的なメンテナンスやリフォーム、リノベーションなどです。
メンテナンス
賃貸用物件は快適に暮らす環境を構築することで、入居者を確保することができます。新築時の快適性を長く維持するために、早めに劣化部分を発見して修理をしておくのがポイントです。
例えば、壁に入った小さな亀裂もやがて大きくなり、修繕するのに費用が高額になることもあります。また小さなシミのような汚れも、時間が経つと取れにくくなることもあります。こうしたことでも資産価値を下げてしまうため、メンテナンスを定期的に行い、大きなトラブルになる前に対処することが大切なのです。
ただし、入居者が居住中は部屋の中に入ることができませんので、空室時などのタイミングを見て行うようにしましょう。
リフォーム
原状回復工事などで、劣化した箇所を適切に改善するようにしましょう。例えば、壁紙は部屋の中の印象を決めるため、汚れがあれば入居者が決まりにくく、投資用物件としての価値は下がります。
またキッチンやバスルーム、トイレなどの水回りも汚れが目立ちやすく、さらに入居者候補からもチェックされやすい箇所です。設備が古いと部屋全体に古さを感じるため、適度なタイミングで更新することが大切です。
ただし、単にリフォームするだけではなく、入居者のターゲット層に合わせて他物件と差別化することも重要です。例えば、ファミリータイプのマンションであれば部屋数に合わせてエアコンを設置したり、多機能のシャワートイレを導入するといった方法も考えられます。
リノベーション
間取りや仕様などに古さを感じる場合は、リノベーションをすることで資産価値を上げられる可能性があります。設備を更新するだけではなく、現代の暮らしに合わせた間取りにしたり、カウンターキッチンやアイランドキッチンを導入したり、収納スペースを多めに設けるなどで、より快適な暮らしを提供することに繋がります。
3-3 購入と売却のタイミングを考える
キャピタルロスを回避する、あるいはキャピタルゲインを得るためには、購入時よりも売却時の価格を上昇しているタイミングで売却するということになります。
原則として不動産の売買は売主と買主の相対取引になります。買いたい人や買える人が多い場合は価格が上昇し、売りたい人が多い場合は価格が下落するため、不動産市場の状況を適切に把握することが重要になります。
不動産価格を決める重要なポイントとしては、金融機関の融資姿勢があります。金融機関が投資用不動産への融資を積極的に行っていない場合、買主の資金調達のハードルが上がり、購入可能な人が少なくなることで不動産価格も下落していくことになります。
例えば、2022年7月時点、金融緩和によって各金融機関では非常に低い金利が設定されており、不動産への融資利用はしやすい環境にあると言えるでしょう。
ただし、不動産売却のタイミングは上記のような全体傾向だけでなく、それぞれ個別の不動産事情に合わせて検討していくことも大切です。エリアの人口動態や家賃相場、築年数などを参考に、不動産ごとの売却タイミングを考えて行きましょう。
売却タイミングを考えるには、定期的に不動産査定を受け、実際の価格がどのように推移しているのかを検証していくのもポイントとなります。例えば、投資用不動産の査定を最大10社に依頼できる「リガイド」や、大手不動産会社6社に絞って査定依頼ができる「すまいValue」があります。
これらの不動産一括査定サイトは無料で利用することができ、査定後に売却するかどうかを判断することができます。定期的に査定を受けて売却タイミングを知っておきたい場合にも活用することができるため、利用を検討されてみると良いでしょう。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
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まとめ
不動産投資における収入は、家賃収入などのインカムゲインと物件を売却した際のキャピタルゲインの2つあり、不動産投資におけるキャピタルロスとは、売却時に損失が出ることです。
不動産投資では、インカムゲインだけでなくキャピタルロス(ゲイン)とのトータル収支で検証していくことが重要になります。不動産の立地選びや、メンテナンスを徹底などの対策によって、キャピタルロスを防ぐ対策も重要です。
その他、不動産の定期的な査定を行い、実際にどのような価格を推移しているのか定点観測しておくのも良いでしょう。これらの対策によって、適切な売却タイミングを見極めていくことも重要なポイントとなってきます。
倉岡 明広
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