ひとことで不動産投資と言っても、大きく分けて「区分」「一棟」「戸建て」の3つ投資先があります。
不動産投資をはじめる方の中には「どれから始めたらいいのか?」と迷う方も多いのではないでしょうか。この3つにはそれぞれ特徴があり、さらにメリットとデメリットも違うからです。
そこで今回のコラムでは、不動産投資をスタートする際に重要なポイントとなる「区分投資」「一棟投資」「戸建て投資」のメリット・デメリットを比較してご紹介します。
目次
- 区分投資とは
1-1.区分投資のメリット
1-2.区分投資のデメリット - 一棟投資とは
2-1.一棟投資のメリット
2-2.一棟投資のデメリット - 戸建て投資とは
3-1.戸建て投資のメリット
3-2.戸建て投資のデメリット - まとめ
1 区分投資とは
アパートやマンションの一室を所有することを「区分所有」と言いますが、区分所有している1室で投資をするため「区分投資」と言います。アパートで行うこともありますが、ほとんどはマンションで行っています。
マンションには、ワンルームや1LDKなどの単身者向けの部屋や、2LDK~4LDKのようなファミリー向けの部屋もありますが、どちらのタイプでも不動産投資を行うことができます。
ただし価格が比較的安く、入居者をつけやすいということで、単身者向けのマンションからスタートするケースが主流となっています。
1-1 区分投資のメリット
区分投資の最大の特徴は1室から投資ができることです。将来的には、部屋数を増やしたり、ワンルームと4LDKといったように違ったタイプの部屋で投資することも目指せます。
低予算から始められる
区分投資の大きなメリットと言えば、低予算から始められることです。ワンルームなら新築の安い物件では1000万円台、中古物件なら最安で200万円程度の物件もあります。
管理がしやすい
自分が所有する1室だけの管理になるため、管理による手間はそれほどありません。退室時の原状回復工事や設備機器の更新、入居者づけなどの知識があれば対応可能で、管理会社に委託する際の費用も数千円からとなります。
買いやすく売りやすい
単身者向けの中古マンションは価格が安いため、流動性が高いことが特徴です。特にワンルームを求める買い手は多く、価格が相場に適していれば物件の売却もしやすい点はメリットとなります。
リスクヘッジがしやすい
リスクヘッジとは投資に関するリスクに備えることですが、区分投資は1室ごとに投資しているため、リスクを分散しやすいのが特徴です。
一棟マンションの場合、自然災害に遭った際の被害が大きくなる傾向がありますが、区分投資では複数戸の所有物件のエリアを分散させることができるためです。
1-2 区分投資のデメリット
区分投資は1室だけの投資になることで、得られる収入が限られてしまうことが大きなネックです。物件を選ぶ際は大規模修繕費や管理費も確認することがポイントです。
空室になると収入がゼロになる
区分投資は投資先が1室なので、所有戸数が1つだけの場合、入居者がいれば収入はありますが入居者がいなければ収入はゼロになります。
不動産投資による収入がゼロでも、管理費や税金、ローンが残っている場合はローンの支払いなどがありますので、支出はマイナスになってしまいます。
実質利回りが低い
物件のスペックやエリアによって異なるものの、市場で売買されている区分投資用物件の利回りは、1棟投資物件と比較して高くありません。
加えて、管理費、大規模修繕費の積立金が毎月必要になり、固定資産税や都市計画税、損害保険料なども必要になるため、投資前には慎重にシミュレーションを行うことが重要です。
投資家による管理やリフォームなどの自由度が低い
メリットのひとつでもあった管理の手軽さが実は裏返しでデメリットにもなります。それは部屋の中だけしか管理できないことがマイナスになることもあるからです。
例えば、空室対策としてリフォームをしようとしても、建物の外観などをリフォームすることはできません。また、清掃が頻繁に行われない、建物にひび割れが目立つといったようにマンションの建物管理体制に不備がある場合も管理組合を通さねばならず、オーナー1人の意思では改善できません。
2 一棟投資とは
一棟投資とは、アパートやマンション一棟を所有して投資をすることです。物件価格が大きくなるため一定の自己資金は必要ですが、軌道に乗れば大きなリターンを見込めるのが特徴です。
一棟投資の対象物件には2~3部屋の物件もあれば、20部屋以上の大規模な物件もあり、投資先の選択肢は幅広くなっています。
2-1 一棟投資のメリット
一棟投資は1つの物件で投資できる部屋の数が多いため、物件価格に対して収入が多くなるのが特徴です。そのため利回りが高く、運営が軌道に乗れば空室対策などに費用がかけられるのもメリットとなります。
空室が出た際の収益の減少幅が少ない
所有する物件の部屋の数にもよりますが、複数戸あるために1室が空室になっても収入に影響が少ないことは大きなメリットです。
区分投資では1つの物件あたりの収入が大きく変動してしまいますが、10部屋ある一棟投資では1部屋が空室になった場合でも残り9部屋の家賃があるため、収入が大きく目減りしない特徴があります。
不動産の管理・運用にオーナーの意思を反映させやすい
1棟投資は不動産全体の所有者がオーナー本人のものとなるため、改修やリノベーション、家賃設定などの管理・運営の戦略の自由度が高くなります。
その他、敷地内に自動販売機を置いたり、カーシェアサービスを行ったりなど、物件を活用した経営も検討できるメリットがあります。
2-2 一棟投資のデメリット
古い中古アパートでも価格は1000万円台後半からというのが相場で、不動産投資ローンの融資審査も通りづらくなることから多額の自己資金を必要とする傾向があります。
自己資金の回収のためには長期的な視点が必要であり、区分投資と比較して投資のハードルが高い投資方法と言えます。
維持管理費用が高い
建物一棟を所有しているため、税金や損害保険料、管理費といった維持管理費用は高額になります。また外壁や屋根、廊下や入口、エレベーター、駐車場などの共有部分も含めて管理が必要になるほか、経年劣化に伴う修繕費用も高額になる傾向にあります。
区分マンションと比較して流動性が低い
一棟投資の場合、区分投資と比較して売却のタイミングがより難しくなります。
また、空室が目立つ物件では市場での評価が低くなりがちで、売却価格と利回りの設定に工夫が必要になります。売却期間が長くなると「売れない物件」の印象を与えてしまい、すぐに売却したいときに売れない悪循環に陥るケースもあります。
入居条件の悪い部屋があることも
建物を一棟所有するということは、さまざまな条件の部屋を抱えることになります。例えば、5階建ての建物であれば、5階の部屋と1階の部屋、北向きと南向きの部屋、というように部屋の条件が細かく分かれることになります。
つまり一棟の建物の中に入居者がつきやすい部屋とつきにくい部屋が出てきます。家賃に差をつけて入居者を募集することで対策が可能ですが、それでも日当たりが悪いなどの条件によっては入居者が付きづらいことがあります。
3 戸建て投資とは
共同住宅の部屋を貸す区分投資と一棟投資に対して、土地付きの戸建を第三者に貸し出すのが戸建て投資です。投資目的で購入する場合もあれば、転居などで住まなくなった住宅を貸し出すケースもあります。
3-1 戸建て投資のメリット
アパートやマンションに比べて、最寄駅より遠い場所でも入居者を見込めるのが戸建て投資の特徴です。中古物件を購入する際は再建築が可能な物件かも確認しましょう。
入退去の頻度が少なく、原状回復のコストが削減できる
戸建て投資の入居者のターゲットはファミリー層になることが多く、入居者がつけば10年以上など長く住んでもらうこともあります。入退去の頻度が少ないために、原状回復のコストも削減しやすいメリットがあります。
出口戦略の選択肢が多い
不動産投資には「不動産を相続するのか、売却するのであればどのタイミングで行うのか」、という出口戦略が重要なポイントとなります。
小規模な戸建て投資であれば、そのときの事情や条件などに合わせて複数の選択肢があります。例えば、入居者が退去した場合には、別の入居者を探すほか、オーナー自身が住むこともできます。
また、投資用物件として売却したり、住居用として売却することも可能です。また建物の老朽化の状態によっては更地にして土地だけで売却することも検討できます。
3-2 戸建て投資のデメリット
中古物件を購入して始めるケースが多いため、長期的な運用ができるかは物件の見極めが不可欠です。雨漏りやシロアリ対策などは見落としがちです。長期的な視点を忘れないようにしましょう。
利回りが低い物件が多い
立地や築年数にもよりますが、まずは利回りの低さが挙げられます。物件価格は一棟アパートとそれほど変わらない場合でも、戸建て投資の場合は入居者が1家族となるため家賃収入が限定されるからです。
反面、高利回りの戸建てはエリア全体の賃貸需要が減少しているケースも多く、ハイリスクな投資対象である傾向があります。戸建投資で利回りを求めるのであれば、より慎重に検討することが大切になります。
物件数が少ない
市場に出回っている物件は古い住宅がほとんどで、比較的新しい物件の場合は利回りが低くなっています。物件の数が少ないため、自分の理想とする投資ができない可能性があります。
経年劣化に伴う工事費用が高額となる
戸建ての経年劣化に伴う改修工事を行う場合、工事費用が高額になる傾向があります。これは、建物管理費を複数のオーナーで分散している区分所有と違って、外壁などの修繕を1人のオーナーの資金で行う必要があるためです。
この点は一棟投資と同様ですが、利回りが高く収益力が高い一棟投資に比べて、戸建て投資の場合は投資費用の回収に時間がかかります。
まとめ
今回のコラムでは、不動産投資における3つの種類についてメリットとデメリットを紹介しました。
投資目的や個々人の事情、自己資金などの条件によって適した投資対象は異なります。それぞれのメリットとデメリットを比較し、自身に適した投資スタイルを検討していきましょう。
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倉岡 明広
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