山林の相続・売却・相続放棄のメリット・デメリットは?それぞれ比較

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「山林を相続してしまったが、どうしていいか分からない」「相続税はどのように計算される?」等、山林の相続にあたり悩む方も多いのではないのでしょうか。

山林は居住用の不動産とは異なり、相続した後での管理責任などが問われてしまう事業性の高い不動産です。山林の相続が発生するのであれば、慎重に検討することが大切です。

今回の記事では山林を相続して活用・売却、相続放棄した際のメリット・デメリットをご紹介します。相続する場合における、相続税が一定の割合で控除されるケースや延納制度についても解説していきます。

目次

  1. 山林を相続した時の手続きとは
  2. 相続・売却・相続放棄のメリット・デメリット
    2-1.山林を相続して活用するメリット・デメリット
    2-2.山林を売却するメリット・デメリット
    2-3.相続放棄のメリット・デメリット
  3. 山林を相続する時に知っておきたい税金の控除・延納制度等
    3-1.山林の相続税評価額の算出方法と評価額を抑えられるケース
    3-2.特例による相続税評価額の控除と延納制度
  4. まとめ

1.山林を相続した時の手続きとは

山林は戸建住宅やマンションなどの不動産とは少し異なり、相続した時に管轄の役所で登記の手続きを行うことが義務になっています。届出を行わなかった場合や虚偽の届出をした際は、10万円以下の罰金を科されることがあります。(※林野庁「森林の土地の所有者届出制度の概要」を参照)

相続の場合、財産分割がされていない時でも相続の開始日(山林の所有者が亡くなったことを知った日)から90日以内に法定相続人の共有財産として「森林の土地の所有者届出書」を林野庁のウェブサイトからダウンロードし、記入・提出する必要があります。

届出書には前の所有者と現在の所有者の氏名・住所の他、土地の所在場所や面積・持ち分割合を記載します。

また山林の土地を示す図面と登記事項証明書(写しでも可)、または土地売買契約書といった権利を取得したことが分かる書類を添付し、役所に提出します。

2.相続・売却・相続放棄のメリット・デメリット

山林を相続するにあたり、相続して活用・売却・相続放棄という3つの選択肢がありますが、どの方法を選べば良いのでしょうか?

活用する場合は山林の貸し出しや木材の売却等で利益を生むことができる一方、固定資産税の支払い義務があり管理の手間がかかります。売却することで納税と管理の義務はなくなりますが、売却価格が安く買い手が見つかりにくい可能性があります。

相続放棄は固定資産税に加え相続税も回避できますが、預貯金・有価証券等他の財産も受け継がないことになります。

このように、どの手段にもそれぞれのメリット・デメリットがあることが分かります。状況に合わせて適した方法を選択できるよう、以下でそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

2-1.山林を相続して活用するメリット・デメリット

山林を相続し、活用するメリットとしては、人に貸し出す、木材を売る等の行為で利益が出る点です。林業従事者や林産物(きのこや山菜等)の業者に有料で貸し出す事、自治体の制度を利用することで利益を得られます。

また、林野庁では2019年4月から「森林経営管理制度」というプロジェクトが開始しています。

この森林経営管理制度は、山林の活用を検討している所有者のために市町村に活用を委託、林業の経営者に再委託して経営・管理を実施する仕組みとなっています。

木材の販売により収益が出た場合、林業経営者に加え、山林所有者にも利益が分配されます。形状や場所によっては林業に適さない山林もありますが、その場合は市町村が山林の管理を行います。

その他、活用する上で山林の境界が曖昧の状態では、隣接の所有者とトラブルが起こる原因となるため注意が必要です。両者立会いの元、話し合った上で境界線を決定しましょう。

一方、活用のデメリットとしては、固定資産税と管理の手間がかかることです。都心の土地よりも収益化が低いこともネックと言えるでしょう。手間と収益のバランスを比較し、慎重に検討してみましょう。

2-2.山林を売却するメリット・デメリット

売却のメリットは固定資産税と管理の義務がなくなること、売却益が生じた場合は利益が得られる事です。山林を管理できる人がいない場合、手放すことでこれらの手間や義務を解消できることは大きなメリットと言えます。

ただし、山林は土地の広さの割に売却価格が安いため、場合によっては赤字になってしまう可能性もある点には注意しましょう。山林は流動性が低く売り手が見つかりにくい事から、売却が長期化する傾向があります。また計測が行われていない山林は、計測が必要となり時間と費用がかかります。

市町村へ寄付を行う事も検討できますが、山林の広さや形状によっては引き取ってもらえないケースがあります。

その他、森林組合(全国森林組合連合会)に加入すると、組合費はかかりますが売却をあっせんして貰えることがあります。民間でも山林買取サービスを行っている業者がありますので、条件を比較・検討した上で利用していきましょう。

また、山林の条件によっては売買専門の不動産会社で仲介を依頼できる可能性もあります。複数の不動産会社に査定・問い合わせをするのであれば、「不動産一括査定サイト」の活用を検討してみましょう。山林の売却依頼が出来るかどうか、山林を売却した際の想定価格など、同時に調査をすることが可能です。

下記、主な不動産一括査定サイトの一覧です。

主な不動産一括査定サイト

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2-3.相続放棄のメリット・デメリット

山林を相続する際、「処分が面倒なので相続放棄をしたい」という方も少なくないのではないでしょうか。この場合、相続の開始を知った日(山林の所有者が亡くなられたことを知った日)から3ヶ月以内に管轄の家庭裁判所に申立てを行うことで、相続放棄が可能です。

なお3ヶ月経っても処遇が決まらない場合には、期間を延ばす申立てを行う事が出来ます。申立てをしなかった場合は、「相続をした」とみなされ、債務を含めた財産全てを引き継ぐことになります。

相続放棄をすることで山林の管理や、固定資産税を払う必要がなくなりますが、相続を放棄するためには、その他のプラスの財産全てを放棄することとなります。

山林以外の財産も相続したい場合は、山林を含めた財産を全て相続した後、処分を行いましょう。一方で財産全てに対して引き継ぐ意思のない場合は、相続放棄が適していると言えます。

3.山林を相続する時に知っておきたい税金の控除・延納制度等

山林の相続では、相続税評価額が抑えられる場合や、特例による控除と延納制度があり、知っておくことで支払う税金を少なくできる、支払いを先に延ばせる可能性があります。

3-1.山林の相続税評価額の算出方法と評価額を抑えられるケース

山林の相続税評価は土地と立木に分けて計算を行います。

土地は純山林・中間山林・市街地山林の3つに分かれており、純山林・中間山林では固定資産税評価額に定められた倍率をかけて評価額を算定する「倍率方式」、市街地山林は山林を宅地(建物用の敷地)に転用するための費用を加味した「宅地比準方式」または「倍率方式」で算定されます。

山林の土地倍率は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認する事が出来ます。

市街地山林、中間山林、純山林の順番で、市街地に近くなるにつれて相続税が多くなっていく傾向があります。ただし市街地山林でも、①傾斜度が30度以上で宅地の造成が出来ない、②宅地比準方式の評価が純山林評価を下回る時は純山林として評価できる可能性があります。

相続税が抑えられる可能性がありますので、市街地山林である場合は上記の条件に当てはまるか確認をしておきましょう。

立木は国税庁が定める1ヘクタール当たりの標準価額に加え、スギやヒノキといった樹木の種類、運搬の利便性や地域の事情等を考慮し算定されます。立木の標準価額も国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」から閲覧する事が出来ます。

3-2.特例による相続税評価額の控除と延納制度

山林の土地と立木は、「保安林」と呼ばれる土砂災害の防止や水源の確保といった公共の利益を果たすために木材の切り落としが制限されている森林の場合、制限に応じて相続税評価額の30~80%が控除されます。

また都道府県知事がたてる「地域森林計画」が定められた山林、地域森林計画に基づいた上記のような社会に対して有益な役割を持つエリアは、一定の条件を満たした場合20%または40%、評価額から控除されます。

加えて税金の対象となる相続財産の半分以上を不動産(山林も含む)が占める場合、適用の要件を満たすことで相続税を延納する事が可能となります。

(※農林水産省「山林の相続に係る特例等《相続税》」を参照)

4.まとめ

相続・売却・相続放棄はそれぞれメリット・デメリットがありますので、比較・検討した上でどうしていくかを決定しましょう。

相続する場合は管理・運営の手間を考慮し、収益とのバランスを比較することが大切です。相続後に売却するのであれば、売却が長期化してしまうことや売却益が得られない可能性も考慮し、相続放棄も視野にいれて比較してみましょう。

また、相続をする場合、相続税評価額をおさえられるケースや特例による控除・延納制度を知る事で相続税の悩みが軽減できる可能性があります。それぞれの対策を順に講じ、メリット・デメリットを比較しながら検討していきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。