海外不動産投資というと、東南アジアの新興国やアメリカなどに注目している方も多いのではないでしょうか。先進国の中ではイギリスも外国人向けに不動産市場を開放しており、日本人もイギリスの不動産に投資できます。
この記事では、イギリス不動産投資のメリット・デメリットについて、公的な統計なども交えて解説します。
目次
- イギリス不動産投資のメリット
1-1.不動産取引に関する制度の整備が進んでいる
1-2.2020年以降の住宅価格は上昇基調にある
1-3.留学生向けの学生寮投資が検討できる - イギリス不動産投資のデメリット
2-1.経済的に先行き不透明な要素が多い
2-2.物件購入の手続きが煩雑 - まとめ
1.イギリス不動産投資のメリット
イギリス不動産投資が持つメリットは、取引の過程で事故が起こりにくいことと、学生寮投資なども検討できる点が挙げられます。それぞれ詳しくみて行きましょう。
1-1.不動産取引に関する制度の整備が進んでいる
新興国などと比較して、イギリスは不動産の取引に関する制度の整備が進んでいます。イギリスの不動産取引では、ソリスターと呼ばれる弁護士が売主と買主との双方につくためです。
現地の法律に基づいて弁護士が書類の内容等をチェックするほか、マネーロンダリングチェックや取引の当事者に関する厳重な本人確認などが行われます。
不動産売買の取引においてトラブルが起こりにくいのがイギリス不動産投資の特徴です。また、買主は物件を購入する前に、不動産鑑定士に物件の状態確認を依頼できます。
鑑定結果によって物件の不具合が見つかった場合は、修繕の費用負担などについて売主との交渉も可能です。
1-2.2020年以降の住宅価格は上昇基調にある
イギリス政府の統計によると、2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大やEU離脱などの出来事がありましたが、2021年時点でイギリス不動産の価格は上昇基調にあります。
2021年8月時点では、イギリス不動産の平均価格は£280,921であり、日本円に換算すると4,326万1,834円(£1=154円換算)です。(※参照:日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場」
2015年1月の価格を100とすると、2021年8月時点のイギリス不動産価格指数は138.5となっています。イギリスは世界でも有数の先進国でありながら、不動産価格が長期的に上昇傾向にある点はイギリス不動産投資のメリットです。
ただし、上記のデータはこれまで不動産価格が上昇傾向にあるということを表していますが、将来的に値上がりが起こるという保証にはなり得ません。投資判断をするうえでの重要な指標の一つとして、参考にとどめておきましょう。
1-3.留学生向けの学生寮投資が検討できる
イギリスは海外からの留学生受け入れが非常に盛んな国です。2019年~2020年における留学生の数は55万6,625人でした。長期的な統計を見ても、イギリスの留学生数は増え続けています。(※参照:HESA「UK, 2019/20 – Where students come from and go to study」)
また、国際的な調査機関であるstatistaが発表している統計によると、イギリスで高等教育を受けている学生のうち約2割は留学生というデータが出ています。(※参照:statista「Countries with the largest amount of international students as a share of the total higher education population in 2020」)
このように、イギリスでは留学生が非常に多いことから、留学生の入居を狙った学生寮の投資も検討することができます。
学生寮の投資では住戸の面積が狭くても入居者が入るため、安価な価格で小さめの物件を取得できる可能性があります。イギリスの学生寮投資は、初期費用を抑えた投資を考える場合にも適した投資手法と言えるでしょう。
2.イギリス不動産投資のデメリット
イギリス不動産投資において注意すべきデメリットとしては、2021年時点では先行き不透明感が強いことや、取引の完了までに時間がかかることなどが挙げられます。
2-1.経済的に先行き不透明な要素が多い
2021年時点では不動産価格が上昇しているなど、明るい材料もあるように思えるイギリス不動産投資ですが、経済的な先行きは不透明な状況にあると考えられます。
イギリスは2021年1月1日時点で完全にEUを離脱しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、2021年11月時点、まだ終息時期も不透明な状況と言えます。
なお、2020年以降にイギリスで不動産価格が上がっているのは、新型コロナウイルス感染拡大の経済対策のため政策金利が引き下げられたことにより、住宅ローン金利が下がったことも要因の一つと考えられます。イギリスの政策金利推移は以下グラフの通りです。
イギリスのEU離脱は人の移動や物流などに影響を与えると予測されていましたが、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大したことにより、イギリスを含むヨーロッパの各国では、人の流れと物流とを止めざるを得なくなりました。
2021年時点では、イギリスのEU離脱によって具体的にどのような影響があったのか、明確に判断するのは難しい状況となっています。
また、多くの国と同じように、イギリスも2020年以降GDPを下げていますが、新型コロナウイルス感染症が終息した時にGDPなど経済指標がどこまで回復するかは不透明です。
2-2.物件購入の手続きが煩雑
既に解説した通り、イギリスでは不動産の取引制度が整備されているため、取引の信頼性が高い国の一つと言えます。しかし、取引の過程で求められる買主側の手続きや提出書類などが多く、全体的に手続きが煩雑な点はイギリス不動産投資のデメリットです。
イギリス不動産投資では、中古物件を購入する場合であっても、物件の購入申し込みを完了してから取引が終了するまでに3ヶ月~4ヶ月などの時間がかかります。3ヶ月以上など長い時間がかかると、その間に市場環境が変化する可能性も否定できません。
例えばアメリカ不動産投資でも、買主と売主との間にエスクローという第三者が入ります。しかし、アメリカ不動産投資の手続きはイギリス不動産投資よりも簡略なため、長くても購入申し込み後45日程度で手続きを完了させることができます。
イギリス不動産投資では、物件を選んでから実際の賃貸運用を開始するまでに時間がかかる点に注意を要します。
まとめ
イギリス不動産投資では、不動産取引の制度整備が進んでいるために新興国と比較して取引への信頼性が高いことや、学生寮投資を検討できるメリットがあります。
しかし、2021年時点のイギリスでは、新型コロナウイルス感染症が終息の兆しを見せておらず、EU離脱に伴う経済的な影響も不透明です。不動産価格は上昇基調にありますが、政策金利次第では今後落ち込む可能性もあると考えられます。
イギリス不動産投資を検討するのであれば、新型コロナウイルス感染症の状況や不動産価格の推移などに注意が必要です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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