ワンルーム投資の収益には利回りが大きく関係します。利回りが大きいほど物件価格に対する収益が大きく、それに伴いストックできるキャッシュフローが大きくなります。しかし、利回りの良い物件には築古の物件が多くなるなどの傾向があり、設備の修理費用がかかったり、空室期間が長引いたりするリスクもあります。
今回はワンルーム投資の利回りに関する基本知識を確認した上で、利回りを良くするためのポイントをご紹介します。
目次
- ワンルーム投資の利回りの基本知識
1-1.表面利回りと実質利回り
1-2.利回りが良い物件とは
1-3.利回りは地域によって違いがある
1-4.築年数が多く経過している物件の方が利回りは良い - 利回りの良い物件探しは再開発エリアを狙う
2-1.再開発エリアは物件価格と家賃が上がる
2-2.再開発が完了する前の中古物件を購入する - 郊外の物件は利回りが良い
- 郊外の物件で長期的なニーズを得るための工夫
4-1.色々な路線が通っているターミナル駅の近くを狙う
4-2.リノベーション物件を狙う
4-3.ネット環境や設備を整え家賃を落とさない - できるだけ低い価格で購入する
5-1.非公開物件を狙う
5-2.売り主と直接交渉し値引きをしてもらう - 利回りだけに振り回されないように注意すること
6-1.実際に購入する際は実質利回りで試算する
6-2.建物の劣化や損傷に注意する - まとめ
1.ワンルーム投資の利回りの基本知識
利回りの試算法や考え方など、利回りの基本的な知識について確認してみましょう。
1-1.表面利回りと実質利回り
利回りは「物件価格に対する年間収入の割合」のことで、一般的にパーセンテージで表します。利回りを出すには、
利回り=年間家賃収入÷物件価格×100
という計算式で算出します。例えば年間家賃収入が120万円、物件価格が2,500万円の場合、
120万円÷2,500万円×100=4.8(%)
となり、4.8%の利回りということができます。しかし、この計算法には税金や管理費などの支出が含まれていませんので、実際に手元に残る収益を試算した場合の利回りは4.8%ではなくなります。収入から経費などを引いたぶん利回りが悪くなるからです。
上記の計算法で算出した利回りを表面利回りと言い、経費などを算入して求めた利回りのことを実質利回りと言います。実質利回りは、
実質利回り=(年間家賃収入−管理費や税金、修理代などの経費)÷物件価格
という計算方法で算出します。表面利回りで試算した場合、実際に手元に残る資金がいくらあるのかがわかりにくくなりますので、自分で計算する際は実質利回りで試算します。
しかし、管理費や税金、修理代などの支出は物件によって異なりますので、今回は主に表面利回りをもとに解説します。
1-2.利回りが良い物件とは
例えば同じ価格の物件が2件ある場合、家賃収入が多い方が利回りは良くなります。逆に同じ家賃収入の物件が2件あった場合、物件価格が低い方が利回りは良くなります。このように、家賃を高くするか物件の購入価格を低くすることで、利回りを良くすることができます。
実際にワンルームマンションを所有する場合、購入してから家賃を高く設定することもできますが、相応の理由がなければ入居者が付かない可能性が高くなってしまいます。そのため、購入時に価格帯の低い物件を探して購入することも利回りを良くする一つの方法になります。
1-3.利回りは地域によって違いがある
利回りは場所によって違いがあります。以下の表は地域別の2019年4月時点の平均利回りを示したものです。
全国 | 7.74% |
北海道 | 13.23% |
東北 | 12.64% |
首都圏 | 6.59% |
東海 | 9.73% |
関西 | 8.31% |
九州・沖縄 | 10.17% |
*健美家「収益物件市場動向マンスリーレポート2019年4月期」をもとに筆者作成
こちらの表から地域によって利回りに大きな違いがあることがわかります。なお、例えば東京都内でも郊外の物件と都心の物件では利回りが違いますし、区によっても利回りが異なります。このことから利回りが良い物件を購入するには、地域も検討することが大切です。
1-4.築年数が多く経過している物件の方が利回りは良い
新築と中古の利回りを比較した場合、中古の方が利回りは良い傾向にあります。以下の表は首都圏における築年数別に見た利回り分布をまとめたものです。
新築時 | 築10年 | 築20年 | 築30年 |
---|---|---|---|
4.44% | 5.18% | 5.81% | 6.19% |
*東京カンテイ「築年数別に見る駅別利回り分布」をもとに筆者作成(2017年10月調査。データは2014-2017年の物件情報に基づく)
この表から築年数が浅い物件ほど利回りは低く、築年数が多く経過しているほど利回りが高いことがわかります。このことから、利回りの良い物件を購入するには築年数も検討して選択をすべきことがわかります。
2.利回りの良い物件探しは再開発エリアを狙う
以下から具体的に利回りの良い物件を探したり、購入した物件の利回りを高く保ったりするためには、どのような点に注意すれば良いのかを見てみましょう。まずは再開発エリアでの投資について解説します。
2-1.再開発エリアは物件価格と家賃が上がる
都市部では再開発があらゆるエリアで行われています。東京オリンピックの開催に伴う再開発を行うエリアもありますが、それとは関係なく、駅をリニューアルしたりマンションを建設したりする際に周辺のエリアも含めて再開発をすることがあります。
そのようなエリアでは再開発後に人が集まる可能性が高くなりますので、家賃が上がることが考えられます。そのため近隣の物件を購入しておけば利回りが良くなることもあります。一方、再開発によって近隣に新築物件の供給が増えるため、必ずしも利回りが上がるわけではなく、逆に空室率の増加に繋がる可能性もゼロではありませんので注意が必要です。
2-2.再開発が完了する前の中古物件を購入する
そこで検討したいのが、再開発の予定があるエリア付近の中古物件を購入するということです。例えば東京都市整備局では、ホームページで都内の再開発事業概要を公表しています。
再開発エリア近隣の中古物件を早い段階で購入しておき、再開発完了後に家賃が上がるのを待つ、ということも利回りを良くする方法の一つです。しかし、上述の通り必ず家賃が上がるというわけではありませんので、再開発後に上がる可能性があるかどうかなど、不動産会社に相談をして話を進めることが大切です。
3.郊外の物件は利回りが良い
利回りだけを考えるなら郊外の物件の方が都心部よりも利回りが良く、おすすめの物件と言えます。東京カンテイ発表の資料によると、東京都心では平均利回り4%未満が多いのに対し、都心から遠ざかるにつれて利回りが上昇し、郊外では10%以上の地域が多くなります。
このことから利回りの良い物件を購入するなら、エリアを郊外に絞ると良いことが考えられます。ただし、郊外に行くほど空室率が高くなったり、家賃が低くなったりする傾向にあります。借り手が付くかどうか、キャッシュフローが十分に確保できるかどうかを慎重に調査し検討するようにしましょう。
4.郊外の物件で長期的なニーズを得るための工夫
郊外の物件は利回りが高い傾向にあることには触れましたが、築年数が長く経過している物件の場合だと、築古が原因で入居率が低くなることも考えられます。そのようなリスクを軽減するためにも、色々と工夫して物件を選択することが大切です。以下からどのような工夫をすればよいかを見てみましょう。
4-1.色々な路線が通っているターミナル駅の近くを狙う
郊外の利回りが良い物件を狙う上で心配なのが入居率の下落です。郊外で築年数が多く経過している物件の場合、購入時点では賃借人がいても、退去した後にすぐに入居者が付くかどうかが不安です。そこで、郊外の物件を選択する場合は複数の路線が通っているターミナル駅のあるエリアを狙うといいでしょう。
入居者の多くは通勤や通学に便利な駅を選ぶ傾向が強くなります。そのため、複数の路線が通っている駅であれば、色々な場所へ行くことができますので多くの人が住みたいと考える可能性が高くなります。
入居率が上がれば実質利回りが良くなりますので、郊外の物件を選択する場合は、最寄りの駅に複数の路線が通っているかどうかに注意して探すことが大切です。
4-2.リノベーション物件を狙う
近年の不動産会社のリノベーション技術は飛躍的に向上しています。リノベーションをすることで、築年数を感じさせない新築のような物件に仕上げたり、おしゃれなカフェのような雰囲気に変えたりと、単身者に好まれる物件に仕上げることができます。
そのような物件は何もしていない中古物件より価格帯が高くはなりますが、新築より利回りが良く、長期的にニーズがある可能性が高いことが考えられます。
郊外で築年数が多く経過していて空室が心配な場合は、リノベーション物件を狙うことも利回りを上げる一つの方法と言えます。また自分で購入後にリノベーションを行い、家賃アップを狙うことも検討できます。
4-3.ネット環境や設備を整え家賃を落とさない
築年数が多く経過すると、家賃を下げなければ賃借人が付かない可能性が出てきます。しかし、家賃は一度下げると上げることが難しくなりますので、なるべく下げないことが利回りを保つ意味では重要です。
周りの家賃相場が下がってきた場合、設備やネット環境を変えるなどして、競合の物件にない付加価値を付け家賃を下げない工夫をしてみましょう。
5.できるだけ低い価格で購入する
リノベーションをしたり、設備を最新式の物に変えたりして、家賃を下げない努力をする必要があることについて紹介しました。次に、他の物件の価格より低い価格で物件を購入する方法についてご紹介します。
5-1.非公開物件を狙う
不動産会社によっては収益性の良い人気物件をインターネットなどに公開していない会社もあります。公開されない物件の中には利回りが良かったり、建っているエリアが良かったりする一般的に「誰もが欲しい」と思える物件も存在します。
そのような非公開物件は、まず取引の多い不動産会社や関係の深い投資家などに紹介され、表にはあまり出てきません。しかし、不動産会社の中には優良な非公開物件をセミナー参加者に紹介して、新規顧客の獲得をしている会社もあります。
非公開物件には利回りの良い物件がある可能性がありますので、セミナー参加者限定の物件紹介があるセミナーに参加するのも、安くて利回りの高い掘り出し物を見つける一つの方法です。
5-2.売主と直接交渉し値引きをしてもらう
物件を購入する際には通常不動産会社を通しますが、実際に物件の内覧に行った際には売主と直接会える場合があります。そのような時に、利回りを良くするために値引き交渉をして価格を下げてもらうという方法もあります。
売主の中には、すぐに売却できるのであれば価格を下げても良い、という考えの方もいますので、そのような場合は値引きに応じてくれることがあります。また、直接売主と会えなくても、不動産会社を通して値引きをしてもらうこともできます。
利回りを良くするために、少しでも購入価格が下がる工夫をすることが大切です。
6.利回りだけに振り回されないように注意すること
利回りだけを見ていると、利回りが良くても手元に残る資金が少ない場合もありますので注意しましょう。どのような点に注意すれば良いのかを見てみたいと思います。
6-1.実際に購入する際は実質利回りで試算する
利回りには表面利回りと実質利回りがあることには触れました。実質利回りを算出するには経費の見積もりが必要なため、購入時には計算が簡単な表面利回りのみで考えがちです。しかし、実際に購入判断をする際のシミュレーションは、実質利回りベースで行うことが大切です。
利回りが高い物件を購入しても、すぐに修理が必要になって支出が発生したり、空室期間が長くなって収入がしばらく入らなかったりという場合、実際に手元に残る資金は少なくなるからです。
利回りが良くて購入した物件でも、手元に残る資金が少なければ安定した賃貸経営は難しくなります。このような点から、購入を検討する物件の利回りを試算する際は必ず実質利回りで試算するようにしましょう。
6-2.建物の劣化や損傷に注意する
区分所有のワンルームマンションを購入する際は、室内の設備などに対する修繕責任があるほか、外壁などの共用部の修繕のために毎月修繕積立金の拠出を行う必要があります。
しかし、近年では外壁などの修繕をする際の修繕積立金が実際に修繕費用に満たず、あとで不足分を支払わなければならなかったり、修繕積立金の積み立て額が上がったりするマンションも出るようになりました。そのような費用負担が増えると実質利回りが悪くなりますので、購入する際は建物の劣化や損傷に注意することが大切です。
また、事前に修繕費用や修繕の履歴などを把握するために、修繕履歴や修繕積立金の積み立て状況などを購入前に確認するようにしましょう。
まとめ
ワンルーム投資で利回りを良くするポイントについてご紹介しました。利回りには物件価格と年間の家賃収入が関係しますので、なるべく安く物件を購入し、また購入後は家賃が下がらないように工夫をすることが大切です。
また、利回りは築年数が多く経過している物件や、郊外にある物件ほど良い一方で、修理に費用がかかったり、空室になったりするリスクが高くなる可能性があります。そうしたリスクを見落とさないために、実際に購入する際には表面利回りではなく、運営後の費用を加味して求める実質利回りで試算した上で判断するようにしましょう。
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